
「筋肥大」とは筋肉を大きくすることを指します。しかし、筋トレを続けているのに、なかなか大きくならないといった悩みを抱えていませんか?
実は正しい回数などの負荷設定や十分な休養、そして食事による栄養管理が必要です。筋繊維の仕組みをきちんと理解しておかないと、効率的な計画を立てることは難しいでしょう。
本記事では、筋肥大のメカニズムやトレーニングの原則、年齢・性別に応じた実際のアプローチを紹介します。
目次
筋肥大のメカニズム
筋肥大は「超回復」と呼ばれるプロセスの一環で起こります。ここでは、筋肥大で筋肉が成長するメカニズムや、筋力向上との違いについて解説します。
トレーニングで筋肉が大きくなる理由
超回復とは、損傷した筋繊維が修復される際に、以前よりも強く再構築するプロセスです。超回復のサイクル(損傷→修復→強化)が繰り返されると、筋肉の断面積が少しずつ増えていき、その結果として筋肥大を達成できます*1*2。
筋肉を損傷させるには、高強度の筋力トレーニングなどで負荷をかけることが必要です。適度な負荷をかけると、筋肉を構成する筋繊維に微細な損傷が生じ「筋肉痛」と呼ばれる症状を引き起こします。
筋肉の超回復には、修復をサポートする成長ホルモン*3などが欠かせません。これらのホルモンが十分に分泌されると、修復から強化までのプロセスが促されるため、効率的な筋肥大につながります。
筋肥大を目指すときの基本原則
筋肥大を誘発するには、休養面・栄養面も含めたトレーニングの計画が欠かせません。以下では、筋肥大を促す4つの基本原則をまとめました。
1.負荷と回数
一般的には、8〜12回で限界を感じる重量設定(8~12RM)が望ましいとされています。物理的ストレスと化学的ストレスを、バランスよく筋肉に与えることが重要です。
2.漸進性過負荷の原則
筋肉を成長させるには、より強い刺激を与え続ける必要があります。これを「漸進性過負荷の原則*4と呼び、具体的なアプローチとしては「重量を少しだけ増やす」「回数を1回だけ多くこなす」「セット数を増やす」などの方法があります。
3.休養とリカバリー
筋肉はトレーニング中ではなく、休んでいる間に成長します。一般的に、トレーニング後は「48時間〜72時間」の休養が必要とされており、同じ部位のトレーニングは週2〜3回が目安になります。
4.栄養との相乗効果
筋肉を修復する過程では、タンパク質などの栄養素が不可欠です。必要な栄養素が不足すると、筋肥大は起こりづらくなります。
年齢・性別・目的別アプローチ

筋肥大を目指すトレーニングでは、どのような種目を選ぶとよいでしょうか。以下では、年齢・性別・目的別のアプローチを紹介します。
男性
男性は筋肉増強につながるホルモンであるテストステロン*5の分泌量が多いため、もともと筋肥大が起こりやすい体質です。
スクワットやベンチプレスなど、高重量を扱うようなコンパウンド種目を取り入れてみましょう。
スクワットのやり方については、下記の記事で詳しく解説しています。
スクワットの効果。1日5回でもOK? 効果的なやり方のヒント - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ
女性
女性はホルモンの影響で、男性のように急激な筋肥大は期待しづらい傾向があります。
まずはヒップアップや脚の引き締めなどを目的にして、ボディメイクの観点から筋肥大のアプローチを取り入れてみましょう。12~15回程度のメニューで「筋肉に効かせること」を意識したトレーニングがおすすめです。
高齢者
高齢者の場合、加齢による筋肉量の減少(サルコペニア)を防ぎ、健康寿命を延ばすことが主な目的になります。
15回以上をこなせるような軽めの重量設定で、安全性を最優先したトレーニングを心がけましょう。マシンを使ったり椅子に座って行ったりなど、関節への負担が少ない種目がおすすめです。
健康維持やボディイメイクなど目的別
健康維持が目的の方は、全身の筋肉をバランスよく鍛えましょう。一方でボディメイクを目指している方には、特定の部位を重点的に鍛えるアプローチがおすすめです。
スポーツのパフォーマンス向上が目的の場合は、パワーや持久力など、取り組んでいるスポーツに必要な要素を判断した上で、適切なメニューを考えることが大切です。
栄養と生活習慣の実践的ガイド

質の高いトレーニングをこなしても、生活習慣が乱れると立派な身体は作れません。ここでは、筋肥大の効率を上げるために、栄養と生活習慣のポイントを解説します。
三大栄養素
筋トレの効果を最大化するには、以下の三大栄養素が欠かせません。
タンパク質
筋肉の主成分であり、筋肥大に最も重要な栄養素です。体重1kgあたり1.6〜2.0g程度を目安に、毎食こまめに摂取することを意識しましょう。体重を70kgとすると、1日の摂取量は112g~140gが目安になります*6。
糖質(炭水化物)
体を動かす際の、主要なエネルギー源になる栄養素です。糖質が不足すると、身体は筋肉を分解してエネルギーを作り出そうとします。トレーニングのパフォーマンスを維持する観点でも、エネルギー源となる糖質は欠かせません。
脂質
重要なカロリー源に加えて、筋肉の成長に関わるホルモン(テストステロンなど)の材料にもなる栄養素です。食事にナッツや魚、アボカドなどを取り入れて、日ごろから良質な脂質を摂取しましょう。
筋トレと聞くとタンパク質のイメージが強いかもしれませんが、糖質や脂質もバランスよく摂取することが大切です。
食事タイミング
栄養を効果的に吸収するには、食事のタイミングも重要です。
トレーニングの「1~2時間前」を目安に、エネルギー源となる糖質を補給しましょう。食品としては、消化のよいバナナやおにぎりがおすすめです。
トレーニング後は「2時間以内」を目安に、タンパク質と糖質を補給します。食事での摂取が難しい場合は、プロテインシェイクなどを活用してみてください。
睡眠中には筋肉が分解されるため、就寝前の栄養補給もおすすめです。ヨーグルトやカッテージチーズ、カゼインプロテインなど、吸収がゆるやかな食品でタンパク質を摂取しましょう。
モデル食事プラン
筋トレ中には栄養バランスを意識する必要があるため、実際の食事メニューに悩まされがちです。以下では、三大栄養素をバランスよく摂取できる食事プランをまとめました。
- 朝食:卵3個、オートミール、ご飯1杯
- 昼食:鶏むね肉200g、ブロッコリー、玄米1杯
- 間食:プロテインシェイク、バナナ
- 夕食:焼き魚(鮭など)、ほうれん草のおひたし、玄米1杯
筋トレ中の食事については、以下の記事でも詳しく紹介しています。初心者や忙しい方に向けて、手軽に済ませるメニューなどもまとめているので、ぜひ参考にしてください。
筋トレは食事が命?タイミングや目的別の食事メニューを徹底解説 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ
睡眠・ストレス管理
筋肉の修復を促す成長ホルモンは、深い眠りについている時に最も多く分泌されます。身体をしっかり休めるためにも、7時間以上の質の高い睡眠を確保しましょう。
また、慢性的なストレスを抱えると、筋肉の分解を促す「コルチゾール*7」が分泌されやすくなると考えられています。趣味の時間を増やすなど、自分なりのリラックス方法を見つけることも大切です。
「疲れているのに寝れない……」と悩んでいる方には、以下の記事がおすすめです。こちらの記事では、不眠タイプ別の対処法や、どうしても眠れないときの過ごし方を解説しています。
眠れない時の対処法は?タイプ別の不眠対策、どうしても眠れない夜の過ごし方も - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ
サプリメント
クレアチンやEAA(必須アミノ酸)などは、筋肥大をサポートする成分といわれています。ただし、サプリメントはあくまで食事の補助役であるため、過剰摂取をする必要はありません。
まずは日々の食事を整えた上で、不足しがちな成分をサプリメントで補いましょう。
筋肥大をサポートする飲み物と注意すべき飲料
筋肉の約75%は水分なので、こまめな水分補給も忘れてはいけません。「体重(kg)×30~40ml*8」を目安に、積極的な水分補給を意識しましょう。
筋肥大をサポートする飲み物は、補給のタイミングによって変わります。
- トレーニング前
- コーヒーなどのカフェイン飲料を選ぶと、集中力を高め、パフォーマンスを向上させる効果が期待できます*9。
- トレーニング中
- BCAA(分岐鎖アミノ酸)/EAA(必須アミノ酸)ドリンクや、電解質を含んだスポーツドリンクがおすすめです。これらの飲み物は、長時間のトレーニングにおける持久力維持や、筋分解の抑制に役立ちます。
- トレーニング後
- タンパク質と水分を同時に補給できるプロテインシェイクや、牛乳がおすすめです。
一方で、アルコール飲料はタンパク質の合成を阻害し、筋肉の回復を遅らせてしまいます。また、砂糖が多く含まれるジュースや清涼飲料水も体脂肪の増加につながるため、過剰摂取には注意してください。
トレーニング計画の具体例
筋肥大を目指すトレーニングメニューは、身体能力に合わせることも重要です。ここでは「初心者・中級者・上級者」に分けて、おすすめのメニューや計画の立て方を紹介します。
初心者
運動に慣れていない方には、1回のトレーニングで全身を鍛える「全身法」がおすすめです。
週2〜3回を目安に、スクワットやベンチプレス、腕立て伏せ、デッドリフト、懸垂などの基礎的なコンパウンド種目を取り入れましょう。安全なトレーニングのためにも、まずは正しいフォームの習得を優先してください。
中級者
中級者には、特定の筋肉にアプローチする「分割法」がおすすめです。
トレーニングの頻度も週4回に増やし、各部位を集中的に鍛えましょう。例えば「上半身の日」と「下半身の日」を作ったり、あるいは「押す筋肉の日(プッシュ)」と「引く筋肉の日(プル)」に分けたりする方法があります。
上級者
上級者になったら、週5〜6回の高頻度でトレーニングを行います。
胸、背中、脚のように、さらに部位を細かく分割する方法がおすすめです。それぞれの筋肉に対して最大のトレーニングボリュームを確保し、筋肥大を目指してみてください。トレーニング強度を周期的に変化させる、ピリオダイゼーション*10も有効とされています。
近年では、常に限界まで追い込むトレーニングではなく、限界の手前で終わる「RIR(Reps In Reserve)」も注目されています。RIRを取り入れると、過度な疲労を避けることができるため、トレーニング全体の質と量を高められる可能性があります。
また、その日の体調に合わせて重量を調整する「オートレギュレーション」も、長期的な筋肥大を目指す上では有効なアプローチです。
さまざまな方法を試しながら、ご自身に合ったアプローチを探してみましょう。
筋肥大が停滞したときの打開策
筋肥大に向けたトレーニングは「停滞期」に直面することがあります。主な原因としては、栄養不足やカロリー不足、オーバートレーニング、同じ負荷に慣れるトレーニングのマンネリ化などが挙げられます。
停滞期の打開策は、食事内容の見直しが基本です。それでも改善しない場合は、トレーニングの負荷を1〜2週ほど軽くする「デロード週」を設けましょう。また、普段とは異なる種目を取り入れたり、回数やセット数を変えたりする方法も有効とされています。
トレーニングのモチベーションを維持するために、自身の成長を把握することも大切なポイントです。
例えば、体組成計で筋肉量や体脂肪率をチェックすると、努力の成果をデータで確認できます。見た目の変化を把握したい方は、同じ条件下で写真を撮影したり、腕や胸のサイズをメジャーで計測したりする方法も試しましょう。
よくある疑問Q&A
ここからは、筋肥大のよくある質問と回答をまとめました。
筋肉痛がないと、筋肉は成長しない?
筋肉痛は筋肥大のサインにはなりますが、必須条件ではありません。筋肉痛がなくても、筋肉に適切な負荷と栄養が与えられていれば、筋肥大を促すことができます。
プロテインは1日に何回飲めばいい?
一般的には、トレーニング後と、食事の間隔が空いてしまう時間帯の間食として、1日に1〜3回ほどの摂取が望ましいとされています。
食事で摂取しきれないタンパク質を補うことが目的になるため、過剰摂取をする必要はありません。
有酸素運動は筋肥大に悪影響?
必ずしも悪影響ではありませんが、過度な有酸素運動は筋肉の分解を促す場合もあります。
ウォーキングやジョギングを取り入れたい方は、「週2~3回」「1日30分程度」を目安にしましょう。軽めの有酸素運動であれば、血行を促進して身体の回復を助けるなど、プラスの効果を期待できます。
トレーニング中は水かスポーツドリンクか?
1時間以内のトレーニングであれば、基本的には水で十分です。大量に汗をかく場合や、長時間のトレーニングを行う場合は、スポーツドリンクでミネラルも補給しましょう。
無理なく続けられるトレーニングを
筋肥大を促すには、トレーニング・休養・栄養の3本柱が欠かせません。筋肉に負荷をかけるだけの根性論では、筋肉がなかなか成長しないばかりか、大きなケガにもつながってしまいます。
ご自身の年齢や目的、ライフスタイルに合わせたアプローチを意識し、無理なく続けられるトレーニング計画を立ててみましょう。本記事を参考にしながら、理想の身体に向けた一歩を踏み出してみてください。
編集:はてな編集部
編集協力:株式会社YOSCA
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※フォーネスビジュアス検査は、医療機関の医師を通じて提供します。
*2:参考:厚生労働省 健康日本21アクション支援システム~健康づくりサポートネット~「筋力・筋持久力」
*3:参考:筋肉痛のとき筋トレしてもいい?痛みの程度別の対処法と回復法を解説 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ
*4:参考:厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
*5:参考:国立病院機構 西別府病院「テストステロンの成長に伴う変化」
*6:参考:東京医療保健大学「プロテインの必要量や摂取タイミングの誤解」
*7:参考:九州大学「健常者におけるコルチゾール上昇と筋力・筋肉量の因果関係を解明」
*8:参考:日本静脈経腸栄養学会雑誌 3(1 4 ):25-30:2019「小児内科領域の栄養管理」
*9:参考:別府大学機関リポジトリBUILD「コーヒー摂取による作業成績の向上とストレス反応の軽減」
*10:参考:日本アスレティックトレーニング学会「ピリオダイゼーション」