筋肉痛のとき筋トレしてもいい?痛みの程度別の対処法と回復法を解説

筋肉痛のとき筋トレしてもいい?痛みの程度別の対処法と回復法を解説

トレーニング後に筋肉痛を感じると「このまま筋トレをしてもいい? それとも休むべき?」と悩む人は少なくありません。実際に筋肉痛の状態で無理にトレーニングを続けると、逆効果になることもあるため注意が必要です。

本記事では、筋肉痛が起こる仕組みやタイプ別の対処法、腹筋や背中など部位別のトレーニングスケジュール、超回復を意識した効果的な回復方法などについて、分かりやすく解説します。安全かつ効果的に筋トレを続けるためのヒントを知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

(執筆者)岡本あお

サプリメント管理士・ヘルスケアライター

筋トレや栄養改善に関する記事を7年間で500本以上執筆。体作りや体幹トレーニングに取り組む人に向けて、栄養補助食品の選び方や最新の研究知見を分かりやすく発信している。これまでに大手健康メディアなどで150本以上のヘルスケア関連コンテンツを手がけ、正確かつ有益な情報を信頼できる形で届けることを大切にしている。ユーザーの不安や疑問に寄り添いながら、専門的な内容も丁寧に伝えることを心がけている。

筋肉痛の原因

筋肉痛の主な原因は、トレーニングによって筋肉が損傷し、それを修復する過程で炎症が起こるためだと考えられています*1

特に普段あまり運動をしていない人が急に体を動かしたり、いつもより高強度なトレーニングに取り組んだりした場合に、筋肉痛が起こりやすいです。

筋肉が損傷から回復してトレーニング前よりも強い状態になるプロセスは「超回復」と呼ばれ、筋力アップや筋肥大にとって重要です。

筋肉痛があるときに筋トレしてもいいの?

筋肉痛があるときには、体の状態に合わせて無理なくトレーニングを行うことが重要です。

筋肉の部位によって大きさや構造などが異なるため、超回復にかかる時間も異なります。一般的な基準は以下の通りです*2

  • 胸筋や背筋などの大きな筋肉:約72時間
  • 腕や肩などの比較的小さな筋肉:約48時間
  • 腹筋やふくらはぎなどの小さく使用頻度が高い筋肉:約24時間

筋肉痛が残っている状態で同じ部位に再び負荷をかけると、筋肉の回復を妨げてしまいます。筋トレの効果が下がるだけでなく、ケガのリスクも高まります。

特に強い痛みがある場合や、日常生活に支障をきたすようなケースでは、無理にトレーニングを続けるのではなく、しっかりと休息を取ったり、痛みが強い場合は病院を受診したりすることが大切です。筋肉の状態をよく観察しながら、効率的にトレーニングを進めましょう。

筋肉痛の程度に合わせたトレーニングの判断ガイド

筋肉痛があるときは、痛みの強さに応じてトレーニングを続けるかどうかを判断しましょう。ここでは、痛みの程度別の対応策と、具体的な対処方法を紹介します。

痛みの程度別の対応策

筋肉痛の痛みの程度によって、適切な対応策は異なります。

痛みの程度 対応策
軽度(違和感がある程度) ストレッチや低強度のトレーニング、有酸素運動を行う
中度(動作時に痛みを感じる) 該当部位のトレーニングは避け、別の部位のトレーニングにとどめる
重度(安静時にも痛みを感じる) 完全休養を取り、痛みの軽減を待つ。軽減しない場合は病院の受診を検討。炎症を起こして熱を持っている場合には、炎症を抑えるために該当部位を冷却する

痛みが強い場合には該当部位のトレーニングは避けて、しっかり筋肉を休ませましょう。

痛みがある場合の具体的な対処法

筋肉痛が軽度の場合、無理のない範囲で体を動かすようにすると、血行がよくなり筋肉の回復を助けます。具体的には以下のような運動がおすすめです。

  • ウォーキング
  • サイクリング
  • ヨガ
  • ピラティス

筋肉痛が中度の場合には、無理のない範囲で痛みのない部位のトレーニングを行うようにすると、筋肉の回復を待ちながら運動量をキープできます。

例えば脚に筋肉痛がある場合は、上半身のトレーニングを集中的に行いましょう。具体的には以下のようなトレーニングがおすすめです。

  • 脚が筋肉痛の場合:ダンベルローイング(背中)、プッシュアップ(腕)
  • 腕が筋肉痛の場合:レッグプレス(太もも)、レッグレイズ(腹)
  • 腹が筋肉痛の場合:スクワット(下半身全体)、チェストプレス(胸・肩)

筋肉痛を早く回復させるためのポイント

筋肉痛の回復を促進するためには、以下のポイントを意識しましょう。

  • 栄養補給
  • 十分な睡眠
  • 適度なストレッチやマッサージ

それぞれ詳しく解説します。

栄養補給

筋肉痛を和らげ、筋肉の修復を促進するためには、必要な栄養素をしっかり摂ることが欠かせません。以下の食材を意識的に摂りましょう。

栄養素 働き 主な食材
タンパク質 傷付いた筋肉を修復する 鶏むね肉 卵 豆腐
糖質(炭水化物)*3 筋肉の修復に必要なエネルギー源 ご飯 パン 麺類 バナナ 芋類
ビタミンB1*4 エネルギー代謝をスムーズにして、疲労回復を助ける 豚肉 ウナギ 玄米
ビタミンB2*5 脂質をエネルギーに変える レバー チーズ サバ 納豆
ビタミンC*6 活性酸素の働きを抑制し、筋肉の炎症を抑える ブロッコリー 赤ピーマン キウイフルーツ レモン

さまざまな食材をバランスよく組み合わせて摂取するのがおすすめです。

<おすすめメニュー例>

  • ブロッコリーと鶏むね肉の温野菜サラダ
  • 納豆チーズオムレツ
  • 赤ピーマンの豚肉詰め

食事のコツについては、下記の記事で詳しく解説しています。
筋トレは食事が命?タイミングや目的別の食事メニューを徹底解説 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ

十分な睡眠

筋肉の回復には、十分な睡眠が必要不可欠です。睡眠中には成長ホルモンが多く分泌され、筋繊維の修復や疲労の回復を助けてくれるためです*7。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド 2023[PDF]」によれば、理想的な睡眠時間は、成人で6〜8時間、子どもの場合は年齢に応じて以下が目安といわれています。

  • 1〜2歳児:11〜14時間
  • 3〜5歳児:10〜13時間
  • 小学生:9〜12時間
  • 中学・高校生:8〜10時間

成長ホルモンは睡眠直後のノンレム睡眠で活発に分泌されるため、睡眠の質を高めることを意識しましょう。睡眠の質を高めるために、就寝の最低3時間前にはカフェインやアルコールの摂取を控えるのがおすすめです。

また、ブルーライトは脳を覚醒させて、スムーズな入眠を妨げるといわれています*8。就寝前最低1時間前にはスマホやパソコンの使用をやめるようにしてください。

就寝前にはぬるめのお風呂に入ったり、読書をしたり、リラックスして過ごしましょう。

眠れない時の基本的な対処法については、下記の記事で詳しく解説しています。
眠れない時の対処法は?タイプ別の不眠対策、どうしても眠れない夜の過ごし方も - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ

以下の記事では、漫画家のあやめゴン太さんが睡眠の専門家と「よく眠る」ことについて対談しています。こちらもあわせてお読みください。

👉多忙な毎日で「よく眠る」には? 33歳で脳梗塞になった漫画家・あやめゴン太さんが専門家に聞いた - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ

適度なストレッチやマッサージ

ストレッチや軽い運動による血行促進は、筋肉に必要な栄養素や酸素を届け、炎症反応で生じた他の代謝産物や発痛物質の排出を助けることで、筋肉の回復をサポートし、結果として筋肉痛の軽減につながります。

いくつかおすすめのストレッチを紹介します。

肩甲骨まわりのストレッチ

両手を組んで前に伸ばし、背中を丸めて肩甲骨を広げます。肩の筋肉を優しく伸ばすことを意識しましょう


ハムストリングス(太もも裏)のストレッチ

床に座り、片足を伸ばしてつま先に手を伸ばします。反対の足は曲げて体の内側に。呼吸を止めずに30秒キープしましょう。太ももの裏が気持ちよく伸びていることを感じてください。


フォームローラーを使った筋膜リリース

筋膜リリースとは、筋肉を包む「筋膜(きんまく)」と呼ばれる結合組織の緊張や癒着をゆるめ、筋肉の柔軟性や動きやすさを改善するための手法です*9

手軽な方法としてフォームローラーがあり、筋肉をほぐして痛みを和らげるのに効果的です。たとえば太ももなら、フォームローラーの上に太ももを乗せて、体重をかけながら転がします。刺激が強すぎると筋肉痛や炎症が悪化する可能性があるため、体重のかけ方を調整し、痛気持ちいい程度に抑えましょう。

ストレッチの後にはマッサージを行うと、より効果的です。手のひらで優しく円を描くようにマッサージしてください。強く押し過ぎないのがポイントです。

ストレッチやマッサージの前にはお風呂に入っておくと、全身の血行がよくなるので、効果がより高まります。38〜40度程度のぬるめのお湯に、15分程度を目安にゆったりと浸かりましょう。

筋肉痛時のNG行動

筋肉痛の回復を妨げるような行動を続けると、治りが遅くなるだけでなく、筋肉や関節に大きな負担をかけてしまうことがあります。以下のようなNG行動には十分注意しましょう。

  • 無理なトレーニングの継続
  • 過剰なマッサージや強い圧迫
  • 同じ部位を毎日鍛えるスケジュール設計
  • 栄養不足
  • 睡眠不足

無理なトレーニングの継続

筋肉痛がある状態で無理にトレーニングを続けると、筋肉を痛めてしまう危険があります。特に中度〜重度の痛みがある場合は、関節や靭帯への負担も増え、ケガのリスクが高まります。

強い痛みを感じるときには、思い切って休息を取り入れ、回復を優先させましょう。

過剰なマッサージや強い圧迫

筋肉痛を早く治したいからといって、マッサージで強く揉んだり押したりすると、逆効果になることもあります。筋肉の炎症が悪化し、かえって回復を遅らせてしまうのです。

手で優しくさする程度にとどめるのが安全です。

同じ部位を毎日鍛えるスケジュール設計

同じ部位を毎日鍛え続けると、筋肉の疲労が蓄積し、オーバートレーニング症候群に陥るリスクがあります*10。オーバートレーニング症候群とは、疲労が回復しないままに積み重なり慢性疲労状態となり、パフォーマンスの低下や抑うつ状態を引き起こすことです。

筋肉の部位ごとに回復に必要な時間(24〜72時間)を考慮して、異なる部位をバランスよく鍛えられるようなトレーニングスケジュールを組みましょう。

栄養不足

筋肉の修復には、タンパク質やビタミン・ミネラルなどの栄養素が必要不可欠です。食事が不規則だったり、糖質や脂質に偏った食生活を続けたりすると、筋肉の再生がうまく進みません。

「栄養補給」の項目で紹介した栄養素をしっかり摂取できるよう、バランスの取れた食事を心がけましょう。

睡眠不足

睡眠時間が不足すると成長ホルモンの分泌が減少し、筋肉痛の回復が遅れるだけでなく、体全体のコンディションも悪化しやすくなります。

トレーニング後はしっかりと睡眠を取り、回復のサイクルを整えるよう意識しましょう。

水分不足

水分不足も、筋肉痛の回復を遅らせる大きな要因です。水分が不足すると血流が悪くなり、筋肉への栄養や酸素の供給が滞るため、老廃物の排出もスムーズに行われなくなります。また、脱水状態では筋肉の柔軟性が低下し、ケガのリスクも高まります。

トレーニング中だけでなく、日常的にこまめな水分補給が重要です。目安として1日あたり体重1kgあたり30〜40ml(体重60kgの場合1.8〜2.4L程度)を意識し、特に運動後は失った水分量以上を補給するよう心掛けましょう。

筋肉痛とうまく付き合うための習慣作り

筋肉痛とうまく付き合っていくためには、無理なくトレーニングを継続できる習慣を作ることが重要です。

  • トレーニング記録をつける
  • 計画的なトレーニングスケジュールを立てる

自分のペースで続けていける方法を探してみましょう。

トレーニング記録をつける

日々のトレーニング記録をつけることで、自分の体の状態を客観的に把握できるようになります。

  • トレーニングした部位
  • 使用重量
  • 回数
  • 時間
  • 筋肉痛の有無(あった場合には部位や痛みの強さ)

トレーニング内容の詳細を記録しておけば、次回のトレーニング計画を立てる際の目安になります。また、筋肉痛の情報も記録することで、自分に合った回復ペースを把握でき、ケガ予防にもつながります。

メモ帳やアプリなど、自分が無理なく継続できる方法で始めてみてください。

計画的なトレーニングスケジュールを立てる

トレーニング記録をもとに、回復時間を考慮した部位別のトレーニングスケジュールを組みましょう。毎日同じ部位を鍛えるのではなく、日ごとに鍛える部位を分ける「分割法」を取り入れることで、休息と鍛錬のバランスが取れ、効率的にトレーニングができます。

<3分割スケジュールの一例>

  • 月曜:胸・肩・上腕三頭筋
  • 水曜:背中・上腕二頭筋
  • 金曜:脚・腹筋

このように部位をローテーションすることで、毎回違う筋肉を刺激しながら、前回使った部位を休ませられます。無理なく継続でき、効率的に筋力アップを目指せるでしょう。

筋肉痛時こそ、賢くトレーニングを

筋肉痛は、筋肉が成長する過程で起こる自然な反応です。だからこそ、無理に動くのではなく、痛みの程度や部位に応じて正しく対処することが大切です。

適切な休息や栄養、回復を意識しながらトレーニングを継続すれば、筋力向上やパフォーマンスアップにもつながります。焦らず体の声に耳を傾けながら、賢く効率的に筋トレを習慣化していきましょう。

編集:はてな編集部
編集協力:株式会社イングクラウド


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*1:参考:社会福祉法人 恩賜財団 済生会 症状別病気解説「筋肉痛 (きんにくつう) とは

*2:参考:医療法人社団 三成会 新百合ヶ丘総合病院 医療コラム「超回復」について

*3:参考:厚生労働省 e-ヘルスネット「炭水化物 / 糖質

*4:参考:一般社団法人 日本栄養治療学会 学会誌JSPEN 1巻 2号ビタミンB1

*5:参考:独立行政法人日本スポーツ振興センター ハイパフォーマンススポーツセンター「ビタミン‐ビタミンB₂

*6:参考:日本医科大学医学会雑誌 9巻 3号「活性酸素と抗酸化物質の化学

*7:参考:医療法人社団 ヤマナ会 東広島整形外科クリニック「成長期の筋肉に必要な生活習慣

*8:参考:地方独立行政法人 筑後市立病院 広報誌「いずみ」元気のツボ「Vol. 43 睡眠不足とブルーライト

*9:参考:一般社団法人 日本血液製剤機構 メンテナンス体操「肩こり4

*10:参考:社会福祉法人 恩賜財団 済生会 病気解説特集「運動のやりすぎで心にもダメージ! 『オーバートレーニング症候群』