なかなか眠れない時、つい布団の中でスマホを手にしてしまい、結局寝付けない……誰しも経験したことがあるのではないでしょうか。不安や焦り、イライラなどが原因で、疲れているのに眠れないこともよくありますよね。
本記事では眠れない時の基本的な対処法や不眠のタイプ別の対処法について、分かりやすく解説します。どうしても眠れない夜に焦らないコツも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
眠れない時の基本的な対処法
眠れない時には、まずは基本的な対処法を試してみましょう。2つのポイントと、覚えておきたいNG行動を紹介します。
「寝ようとし過ぎない」のがポイント
眠れない時には、寝ようと意識し過ぎないようにしましょう。寝ようと意識し過ぎると「眠らなければならない」とプレッシャーがかかって交感神経が優位になり、かえって頭がさえてしまうため、余計に眠れなくなる可能性があるためです。
寝なければと焦らずに、心身の緊張をゆるめることを意識するとよいでしょう。
心身の緊張をゆるめる方法には、次のような例があります。
腹式呼吸:
次のようなやり方で、横隔膜を使って深く呼吸する方法です。
- 仰向けに寝てリラックスする
- 手を当ててお腹が膨らむのを感じながら、鼻からゆっくり息を吸う(約4秒)
- お腹がへこむのを意識しながら、口をすぼめてゆっくり息を吐く(約6〜8秒)
- 1~3を、心を落ち着けるつもりで何度か繰り返す
漸進的筋弛緩法
体の部位に力を入れてから一気に脱力することで、心身をリラックスさせる方法です。
- 両手:ぎゅっと握って5秒キープ→一気に脱力してパーに手を開く
- 両肩:顔に近づけるように上げて5秒キープ→一気に脱力してストンと肩を下ろす
- 両足:つま先を遠くに伸ばすようにして足全体に力を入れて5秒キープ→一気に脱力して足全体をゆるめる
30分ほどたっても眠れないなら、いったん起きるのもあり
布団に入って30分たっても眠れない場合は、いったん起きてリセットするのも有効です*1
間接照明のもと、リラックスして過ごすと、再び眠気が訪れやすくなります。
- 静かなクラシック音楽や環境音を聴く
- 読書する
- 軽いストレッチをする
「自然に眠くなったら寝よう」というスタンスでいることが大切です。
やってはいけないNG行動とは?
眠れない時にやってしまいがちな行動が、実はさらに睡眠を妨げていることもあるので覚えておきましょう*2。
- 寝る直前にスマホや時計を何度も確認する(脳の覚醒につながる)
- 過度なカフェイン摂取(覚醒作用や利尿作用がある)
- お酒(眠りの質を下げる)
例えば、寝る前に布団の中でスマホを見る人は多いですが、スマホの光やSNSの情報で脳が刺激され、余計に覚醒します。また、時計を何度も確認するのも逆効果。寝付けない不安が強まり、焦りが増すからです。
夜遅い時間の飲酒もNG。一時的には眠気を誘うように見えて、睡眠の質を下げる要因になります。
さらに、夜遅い時間だけではなく日中のカフェイン摂取が、眠れない原因になっていることもあります。過度なカフェイン摂取は覚醒作用や利尿作用があるため、日中でもカフェインが含まれるものを摂取する際には適量を心がけましょう。
あなたに合う対処法は? 不眠タイプ別のアドバイス
眠れない原因は人によってさまざまです。自分のタイプに合った対処法を知って、眠れないストレスから抜け出しましょう。
- 明日に大事な予定がある人(プレッシャー型)
- 身体は疲れているのに眠れない人(自律神経型)
- 頭がさえて眠れない人(思考ぐるぐる型)
① 明日に大事な予定がある人(プレッシャー型)
「明日は早い」「寝坊できない」などのプレッシャーが強いと、かえって眠れなくなることがあります。
このようなタイプは、思考の整理が有効です。明日の予定や不安を書き出して脳の整理をしたり、寝る前にリラックスできるルーティン(例:入浴→音楽→読書)を取り入れたりすると、プレッシャーから気持ちをそらせます。
② 身体は疲れているのに眠れない人(自律神経型)
身体は疲れているのに眠れないと感じる人は、自律神経が乱れている可能性があります。
軽いストレッチを行ったり、足湯や湯たんぽなどで手足を温めて温感刺激を与えたりして、副交感神経を優位に導くことが有効です。ぬるめのお風呂に浸かったり、ゆったりとした気持ちで深呼吸したりするのも効果的です。
③ 頭がさえて眠れない人(思考ぐるぐる型)
頭がさえて眠れない人は、脳が活性化して考え過ぎ状態になっているかもしれません。
寝床に入る前に頭を整理して、寝床を「考える場所」にしない工夫をしましょう。不安なことや気がかりなこと、明日やらなければいけないことなどをノートに書き出すと、思考が整理できて頭がスッキリします。
また、イメージ呼吸法も、考え過ぎの防止に効果的です。
イメージ呼吸法
イメージ呼吸法のやり方は以下の通りです*3 。
- 楽な姿勢で目を閉じ、数回ゆっくり深呼吸をする
- 山や森など、気持ちよく呼吸ができそうな風景を思い浮かべる
- 吸う息で山や森のおいしい空気を吸い込む、吐く息で体がゆるむイメージでゆっくりと呼吸する
全身に酸素がいきわたる感覚で頭がクリアになり、気持ちよく眠りにつけるでしょう。
「眠れる体を作る」ための1日の過ごし方
気持ちよく眠れる夜を迎えるには、日中の過ごし方も重要です。1日の過ごし方の工夫を紹介します。
【朝】朝日を浴びる
朝目覚めたら、できるだけ早く太陽の光を浴びましょう*4。朝日を浴びることで体内時計が整いやすくなり、夜に自然な眠気が訪れやすくなります。
天気の良い日はベランダや外に出るのもおすすめです。時間がない場合には、カーテンを開けて5分間ほど光を浴びるだけでも効果が期待できます。
【昼〜夕方】日中の活動量と運動も眠気を生む鍵
夜にぐっすり眠れるように、日中は無理なく体を動かしましょう*5。
日中の活動量が不足すると、夜の眠気が訪れにくくなります。また、適度な運動は体温を上げ、その後の体温低下がスムーズな入眠を促します*6。
運動は、ウォーキングやラジオ体操、ヨガなど、自分が楽しんで継続できるものを選びましょう。
運動のタイミングは、夕方までに済ませるのがベストです。寝る直前に激しい運動をすると、交感神経が刺激されて、かえって頭がさえてしまうためです。
【昼〜夕方】昼寝・カフェイン摂取・夕食のタイミングを見直そう
遅い時間の昼寝や長時間の仮眠は、夜の睡眠に悪影響を与えます。昼寝をする場合は15時くらいまでに済ませ、15〜30分にとどめましょう*7。
また、カフェインは就寝の4時間前までに控えると安心です。1日のカフェイン摂取量は、400mg(コーヒーをマグカップで3杯程度)を超えないようにしましょう*8。
夕食は就寝の2時間以上前に済ませ、消化の負担を軽くすることも重要です*9。
【寝る前】おやすみ前の「マイ睡眠ルーティン」を作ろう
毎晩同じ流れで過ごす「睡眠ルーティン」を作ると、脳が「今は寝る時間だ」と認識しやすくなります。
たとえば、照明を落とす→軽いストレッチ→リラックスできる音楽を聴く→読書をする→就寝など、自分なりの流れを決めておくとよいでしょう。
【寝る前】睡眠の質を高める環境作り
質の良い睡眠のためには環境作りも大切です。
快適な睡眠環境の理想的な室温は、冬は16〜20℃、夏は25〜28℃程度、寝具内温度を33℃程度に保つとよいとされています。湿度は40〜60%程度が目安です*10。ラベンダーなど、好きな香りのアロマを活用するのもおすすめです。
照明は、刺激の少ない間接照明にして、照明は暖色系の間接照明にして、照度は30ルクス(本を読むには少し暗い程度のほの暗さ)以下に抑えると、入眠に最適な環境になるといわれています。
スマホやパソコンのブルーライトは、メラトニンの分泌を抑制し、快眠を妨げます。デジタル機器の使用は就寝1時間前までとして、夜間は通知が来ないように設定する、寝室に持ち込まないようにするなど工夫しましょう*11。
「どうしても眠れない夜」の過ごし方
「いろいろと対処法を試したけれど、どうしても眠れない……」そんな夜は、無理に寝ようとせず、心地よく過ごす時間に切り替えましょう。
「寝なきゃ」がつらい夜は、眠らない時間を“整える”
眠れないことを責めず、眠れなくても大丈夫と自分に言い聞かせ、穏やかに受け入れましょう。「今夜は休息の時間」と切り替えることで、自然と眠気が訪れることもあります。
好みの香りのアロマを炊く、ヒーリング音楽を聴く、柔らかい毛布に包まれてお気に入りの本を読むなど、好きなことを楽しんでください。
おすすめの“眠れない夜ルーティン”
眠れない夜のために、いくつかアイテムを準備しておくのもおすすめです。ブランケット・読書灯・お気に入りの本・ノートとペンなどの、「眠れない夜用リラックスセット」を用意しておくと、いざ眠れない時にぱっと気持ちを切り替えられるでしょう。
また、眠れない時は「何かをしなきゃ」と考えずに、「何もしない時間=ボーっとする時間」をあえて持つことも大切です。
ぼんやり空を見たり、自然の音に耳を傾けたり。意識的に何も考えず過ごす中で、脳がゆるやかに休息モードへと切り替わっていきます。焦らず自分のペースで、静かな夜を過ごしましょう。
不眠が続くなら考えたい「根本対策と相談先」
眠れない日が長期間続く場合には、専門的な対処が必要な場合があります。
不眠が長期間続く場合は
国立精神・神経医療研究センターによれば「不眠が週3日以上、3カ月以上持続する場合は治療が必要な慢性不眠症の可能性」があります*12。
生活習慣の見直しやセルフケアを行ってもなかなか改善しない場合は、一人で抱え込まずに医師に相談することをおすすめします。
心療内科や睡眠外来では、心身の状態を診て不眠の原因を特定した上で、専門的なサポートが受けられます。
漫画家のあやめゴン太さんが睡眠の専門家に「よく眠る」ことを聞いた記事がlala a liveにも掲載されています。こちらもあわせてお読みください。
👉多忙な毎日で「よく眠る」には? 33歳で脳梗塞になった漫画家・あやめゴン太さんが専門家に聞いた - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ
焦らず、眠れる習慣を作っていく
もしも今夜眠れなくても、焦らなくて大丈夫です。睡眠は努力して得るものではありません。完璧を目指すのではなく「まあいいか」と割り切ることも大切です。
今回紹介した対処法や習慣の中から、無理なくできるものを少しずつ試して、眠れる自分を育てていきましょう。
編集:はてな編集部
編集協力:株式会社イングクラウド
眠れない夜が続くと、心や体の調子にも影響が出てしまうことがあります。まずは日々の習慣を少しずつ見直し、無理なく自分に合った睡眠環境や生活リズムを整えていくことが大切です。
最近では、自分の健康状態を「見える化」して、より良い生活習慣作りをサポートするサービスも登場しています。
👉フォーネスビジュアス|病気になる前にわかる(NECグループ発)
フォーネスライフが提供する「フォーネスビジュアス」は、体力を可視化する「心肺持久力」や食事量と運動量の手がかりになる「安静時代謝量」など、従来とは異なる形で体の状態を把握することができるサービスです。
さらには将来の疾病リスクを可視化し、専門資格を持つコンシェルジュから生活習慣に関するアドバイスが受けられます。食事や運動をはじめ、自分に合った睡眠習慣などについても、専門的な視点から知ることができます。
「眠れない」をきっかけに、自分の健康とじっくり向き合ってみる──そんな第一歩としても、フォーネスビジュアスの活用をおすすめします。
※フォーネスビジュアス検査は、医療機関の医師を通じて提供します。
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毎日の睡眠を記録して睡眠状況を確認できるほか、アプリ内の「快眠のヒント」から得た知識をもとに記録した睡眠状況を振り返ることで、よりよい睡眠習慣を見つけ出すことができます。睡眠の改善に興味のある方は、こちらもぜひご活用ください。
*1:参考:厚生労働省「良い目覚めは良い眠りから 知っているようで知らない睡眠のこと」[PDF](健康づくりサポートネット「睡眠」)
*2:参考:厚生労働省「良い目覚めは良い眠りから 知っているようで知らない睡眠のこと」[PDF]
*4:参考:厚生労働省「良い目覚めは良い眠りから 知っているようで知らない睡眠のこと」[PDF]
*5:参考:厚生労働省「良い目覚めは良い眠りから 知っているようで知らない睡眠のこと」[PDF]
*6:参考:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」[PDF](「睡眠対策」より)
*7:参考:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」[PDF]
*8:参考:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」[PDF]
*9:参考:燕市「つばめ食育だより 平成31年1月19日号」
*10:参考:NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター「温度、湿度と睡眠」
*11:参考:厚生労働省「良い目覚めは良い眠りから 知っているようで知らない睡眠のこと」[PDF]
*12:参考:国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所睡眠・覚醒障害研究部「不眠症(Insomnia)」