筋トレと食事には、深い関係があります。思うようにトレーニングの成果が出ないとしたら、普段の食事に原因があるかもしれません。
実は、タンパク質を摂るだけでは不十分です。筋トレの効果を最大限に得るためには、目的やライフスタイルに応じた食事の選び方が重要。さらには筋トレ前と筋トレ後にどのような栄養素を摂るかも大きなポイントです。
本記事では、筋トレ時におすすめしたい食事のタイミングやメニューを紹介します。「筋肥大」「減量」「健康維持」など目的別に加え、年齢・男性または女性・忙しい人にも対応した食事戦略を分かりやすく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
筋トレと食事の基本を押さえよう
まずは、筋トレと食事の基本について知っておきましょう。
- なぜ筋トレに食事が重要なのか
- 摂るべき基本の栄養素
- 食事のタイミングがカギ
なぜ筋トレに食事が重要なのか
筋トレ後、筋肉が損傷から回復しトレーニング前より強化されるプロセスを「超回復*1」といいます。このときに、疲労回復を促進したり、筋肉痛を和らげたりする効果が期待できる栄養素が必要になるのです。
筋肉は実はトレーニング中ではなく、回復するときに成長すると考えられています。筋肉が回復する際に必要な栄養が不足していると、回復が遅れるだけではなく、せっかく行った筋トレの効果も十分に得られない可能性があります。
摂るべき基本の栄養素
筋トレをするときには、以下の栄養素を意識的に摂取しましょう。
タンパク質
筋肉は主にタンパク質でできているため、筋肉の回復には欠かせない栄養素です。特に筋トレ後30分〜1時間以内(ゴールデンタイム)にタンパク質や必須アミノ酸(EAA)を摂取すると、筋タンパク質合成が効率よく促進され、筋肥大につながりやすくなります*2。糖質(炭水化物)
炭水化物は筋肉内にグリコーゲンとして貯蔵されており、筋トレ時にエネルギーとして使われます。特に高強度のトレーニングを行う際には、炭水化物を十分に摂取しておくことで、パフォーマンスの維持と筋肉の分解予防に役立ちます*3。脂質
脂質はエストロゲンやテストステロンなどの性ホルモンの合成に関わる栄養素で、ホルモンバランスの維持に必要不可欠です。オメガ3脂肪酸のような良質な脂質を摂取するのがポイントです*4。ビタミン・ミネラル
ビタミンやミネラルには、上述した三大栄養素の吸収や利用効率を高める働きがあります。バランスよく摂取することで、筋肉の回復や免疫機能の維持に役立ちます*5 *6。食物繊維
腸内環境を整え、各栄養素の吸収効率を高めることができます。野菜・果物・豆類・海藻類などから摂取しましょう*7。食事のタイミングがカギ
筋トレの効果を最大化するには、「何を食べるか」だけではなく、「いつ食べるか」も非常に重要です。特にトレーニングの1〜2時間前に炭水化物とタンパク質を、トレーニング後30分〜1時間以内にタンパク質を摂取するのが理想的です。
トレーニング前の食事は、筋肉の分解を防ぎ、パフォーマンスを高める効果があります。トレーニング中のエネルギー源となる炭水化物を意識的に摂取しておくとよいでしょう。
トレーニング後の食事は、損傷した筋肉の回復をサポートする効果があります。できるだけ早めにタンパク質を摂るようにしましょう。
筋肉の成長と回復を促すためには、1日3回の食事に加えて、適度な間食を取り入れるのが効果的です。食事と食事の間が長時間空くと、筋肉の分解が進みやすくなるため、3〜4時間おきに栄養を摂ることを心がけましょう。特にタンパク質を意識的に補給することで、筋肉の分解を防ぎ、常に合成が促される環境を整えられます。
トレーニング後や間食に役立つのが、プロテインです。プロテインドリンクやプロテインバーは、カロリーを抑えつつ、手軽かつ効率的にタンパク質を補給できます。
目的別、筋トレの成果を最大化する食事戦略
筋トレの効果を最大限に引き出すためには、自分の目的に合った食事戦略が欠かせません。目的によって、摂るべき栄養や食べ方は変わってくるからです。
以下では目的別に最適な食事法を紹介します。
- 筋肥大(バルクアップ)したい人向け
- 減量・ダイエット目的の人向け
- 筋力維持・健康維持目的の人向け
筋肥大(バルクアップ)したい人向け
筋肉を大きくしたい人には、「オーバーカロリー」(消費カロリーよりも摂取カロリーを多くすること)が基本です。1日複数回に分けて効率よくエネルギーを摂りましょう。
ただし、単にたくさん食べればよいわけではなく、質の高い栄養素をバランスよく取り入れることが重要です。高カロリーで脂っこい食事ばかりだと、脂肪が増えて太るだけになってしまうので、注意しましょう。
<1日のメニュー例>
- 朝
- オートミール、目玉焼き、ゆでたブロッコリー、野菜のたくさん入った味噌汁
- 昼
- 白米、ゆでた牛赤身肉、キャベツの千切り、ゆで卵
- 間食
- プロテインバー、ヨーグルト、サラダチキン、無塩ナッツ
- 夕食
- 玄米、サーモンのソテー、ゆでたブロッコリー、野菜のたくさん入った味噌汁
減量・ダイエット目的の人向け
脂肪を落としつつ筋肉を維持したい場合は、高タンパク・適正カロリーの食事を心がけましょう。極端な食事制限は筋肉の分解を招くため、炭水化物や脂質も適量は必要です。鶏むね肉、卵、大豆製品など高タンパクで低カロリーな食材を活用して、栄養バランスの取れた食事を意識しましょう。
減量中の空腹対策には、間食を上手に取り入れることが大切です。プロテインや無塩ナッツ、ギリシャヨーグルトなどは食べることで満足感が得られ、食べ過ぎ防止につながります。1日3食+間食1~2回を目安にすると、無理なく継続しやすいでしょう。
<1日のメニュー例>
- 朝
- 玄米、焼き魚、野菜のたくさん入った味噌汁、バナナ
- 昼
- 雑穀米、豆腐ハンバーグ、ひじきの煮物、野菜のたくさん入った味噌汁
- 間食
- プロテイン、ヨーグルト
- 夕食
- 月見うどん、温野菜のサラダ
筋力維持・健康維持目的の人向け
筋トレを習慣にしながら健康を維持したい人には、筋肉の維持や回復などを目的としたメンテナンス食が基本です。過剰でも不足でもない適正カロリーで、三大栄養素をバランスよく摂取することを意識しましょう。
毎食タンパク質をしっかり摂りつつ、炭水化物と野菜を組み合わせると、無理なく栄養バランスが整います。
<1日のメニュー例>
- 朝
- 全粒粉のトースト、ゆで卵、牛乳、バナナ
- 昼
- 玄米、鶏むね肉のソテー、サラダ
- 間食
- プロテイン、リンゴ
- 夜
- 雑穀米、サバの味噌煮、酢の物、キノコの味噌汁
忙しい人・初心者向け、手軽に続ける筋トレ食
毎日忙しく過ごしている人や、筋トレを始めたばかりの初心者にとって、食事管理はハードルが高く感じがちです。しかし、ポイントを押さえれば、無理なく続けられます。
ここでは、コンビニや外食、サプリメントなどを活用した手軽な筋トレ食のコツを紹介します。
- コンビニ、冷凍食品、外食でもできる筋トレ食
- サプリメントの選び方と活用タイミング
コンビニ、冷凍食品、外食でもできる筋トレ食
コンビニや冷凍食品、外食の筋トレ食の選び方のポイントは「高タンパク・低脂質・適度な炭水化物」です。
例えばコンビニなら、サラダチキン+ゆで卵+玄米おにぎりの組み合わせがおすすめ。タンパク質をしっかりと摂取できる組み合わせです。
冷凍食品なら、冷凍ブロッコリーやグリルチキンが筋トレ食に最適です。特にブロッコリーはビタミン・ミネラル・食物繊維が豊富で低カロリーなため、筋トレ食に最適な食材です。
外食では、焼き魚定食や照り焼きチキン定食など、タンパク質と野菜が十分に摂れる定食スタイルを選びましょう。カツ丼やラーメンなど脂質の多いメニューは控えめにするのもポイントです。
忙しい日こそ、栄養バランスを意識して、手軽に筋トレ食を楽しみましょう。
サプリメントの選び方と活用タイミング
サプリメントは、筋トレ効果をサポートする補助アイテムとして非常に便利です。筋トレ中に役立つサプリメントの代表といえば、プロテイン。トレーニング後はもちろん、朝食や間食のタイミングでの摂取もおすすめです。
必須アミノ酸は筋タンパク質の合成を促進するため、トレーニング中〜直後に摂取すると効果的です。また、マルチビタミンやオメガ3脂肪酸(魚油)は、代謝や炎症抑制をサポートし、筋肉の回復に役立ちます。
ただし、サプリメントはあくまで食事で足りない部分を補うものです。基本は食事から栄養を摂ることを心がけましょう。忙しい日や食欲がないときに、無理なく続ける工夫としてサプリメントを活用するのがコツです。
年齢・性別で変わる筋トレ×食事のポイント
筋トレの成果を高めるためには、年齢や性別に応じた食事の工夫も欠かせません。代謝やホルモンバランス、筋肉のつきやすさは世代や男女で異なる*8ため、それぞれに合った栄養戦略が必要です。
以下では、年代別・性別の食事のポイントを紹介します。
- 20〜30代向け
- 40〜50代向け
- 60代以上
20〜30代向け
20〜30代は代謝が高く、筋肉もつきやすい世代です。この時期は、量・質・回数をしっかり確保した食事が、筋肉の成長に直結します。筋トレの頻度や強度が高い人は、糖質も意識的に摂り、エネルギー切れを防ぎましょう。白米・バナナ・オートミールなどの炭水化物は、運動前後の補給に最適です。
男性は筋肥大しやすい特徴がありますが、脂質過多に注意が必要です。プロテインや赤身肉、大豆製品で質のよいタンパク質を摂るようにしましょう。
女性はホルモンバランスの変化が体調に影響しやすいため、鉄分やビタミンB群の摂取が重要です。食事バランスに気をつけつつ、サプリも上手に活用しましょう。
40〜50代向け
40〜50代は筋肉の減少と基礎代謝の低下が始まる時期です。「食欲がない」「太りやすくなったから……」と食事量を落とし過ぎると、必要な筋力の維持が難しくなるため注意しましょう。
タンパク質はしっかり摂り、脂質は適度に控えるようにするなど、バランスが大切です。消化に優しく、胃腸に負担をかけない食事を意識しながら、定期的な軽い運動と食事の組み合わせで健康的な体作りを目指しましょう。
男性は内臓脂肪が付きやすくなるため、脂質の質と摂取量を意識してください。同じ食材でも揚げ物ではなく、グリルや蒸し料理でいただくのがおすすめです。
女性は更年期を迎えることで骨量の減少やホルモン変化が起きやすいため、大豆イソフラボンやカルシウムの摂取も重要になります。大豆製品、乳製品を意識的に摂取するとよいでしょう。
60代以上
60代以降は「サルコペニア(加齢などにより筋肉量が減少すること)*9」の対策がカギとなります。無理のない運動を習慣化することと並行して、食事では吸収のよいタンパク質を意識的に摂ることが重要です。魚・卵・豆腐・納豆などは消化に優れており、毎日の献立にも取り入れやすいでしょう。また、歯や胃腸の状態に配慮し、煮物やスープなど食材を柔らかく仕上げる調理法で、咀嚼(そしゃく)の負担を減らす工夫も必要です。
男性は筋力の低下に加え、活動量も減る傾向があるため、食事量が落ちても質重視で十分な栄養を摂るようにしてください。
女性は骨密度の維持にも気を配り、カルシウムやビタミンDを含む食品を積極的に摂りましょう。小魚、キノコ、牛乳などがおすすめです。
筋トレ食は「続けやすさ」が命
筋トレの成果を最大限に引き出すには、トレーニングと食事をセットで考えることが重要です。目的や年齢、ライフスタイルによって最適な食事法は異なりますが、何より大切なのは継続すること。知識があっても、無理な計画では長続きしません。
まずは朝食にタンパク質を取り入れるなど、小さな一歩から始めましょう。完璧を目指さず、無理なく長く続けられる筋トレ食が、理想の体作りへの近道です。
編集:はてな編集部
編集協力:株式会社イングクラウド
体力作りには、運動・食事・睡眠を3本柱とした、日々の生活習慣の見直しが欠かせません。
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※フォーネスビジュアス検査は、医療機関の医師を通じて提供します。
*1:参考:新百合ヶ丘総合病院「リハビリテーション科コラム『超回復』について」
*2:参考:「運動後の筋タンパク質合成のためのタンパク質・アミノ酸栄養[PDF]」
*3:参考:「運動および栄養摂取による筋グリコーゲンの変化と疲労回復−ヒトを対象として−[PDF]」
*5:参考:厚生労働省 生活習慣病などの情報「ビタミン(びたみん)」
*6:参考:厚生労働省 生活習慣病などの情報「ミネラル(みねらる)」
*7:参考:厚生労働省 生活習慣病などの情報「食物繊維(しょくもつせんい)」
*8:参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)『日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書』[PDF]」