
腕の筋トレは、たくましい上半身や引き締まった二の腕を作り出すトレーニングです。
本記事では、上腕二頭筋、上腕三頭筋などの筋肉に関する基本的な知識から、腕を太くしたい、痩せたいなど目的に合わせたメニューの考え方を解説します。
また、安全かつ効率的に鍛えたい方に向けて、食事や続けるためのコツ、ケガ予防のポイントなどもまとめました。
目次
腕の筋肉の基礎知識
腕の筋トレに取り組むと、どのような効果が期待できるのでしょうか。ここでは、効率的な腕トレに欠かせない基礎知識を紹介します。
腕の主要な筋肉

腕の主要な筋肉は、以下のとおりです。
- 上腕二頭筋(力こぶ)*1
- 腕の前面に位置し、一般的には「力こぶ」として知られる筋肉です。日常では肘を曲げる動作(屈曲)や、手のひらを上に向ける動作(回外)で使われており、重いものを持ち上げるときなどに活躍します。
- 上腕三頭筋(二の腕)*2
- いわゆる「二の腕(腕の後面)」に位置する筋肉です。上腕二頭筋よりも体積が大きく、腕全体の太さや見た目に影響します。日常では、主に肘を伸ばす動作(伸展)で使われます。

- 前腕筋群
- 肘から手首までの部分を構成する、小さな筋肉の集まりです。手首を曲げ伸ばしする動作や、ものを強く握る「握力」に影響します。
上記の違いを正しく理解すると、効率的なトレーニングの計画を立てやすくなります。
それぞれの筋肉を鍛える効果
腕の筋トレは、どの筋肉にアプローチをするかで効果が変わります。以下では3つの筋肉に分けて、鍛えたときの主な効果をまとめました。
- 上腕二頭筋
- 上腕二頭筋を鍛えると、力強さの象徴である力こぶが発達します。腕の前面に盛り上がりが生まれるため、腕全体のシルエットがたくましくなります。
- 上腕三頭筋
- 上腕三頭筋も、たくましい腕には欠かせない筋肉です。鍛えると後ろ側のたるみがなくなり、引き締まったシャープなラインが生まれます。
- 前腕筋群
- 前腕筋群を鍛えると握力が向上するため、重い荷物を持ちやすくなったり、ビンの蓋を開けやすくなったりなどの効果が期待できます。日常動作が楽になることに加え、スポーツ(テニスや野球など)のパフォーマンス向上にもつながります。
腕トレの目的を踏まえて「どの筋肉を重点的に鍛えるか」について考えてみましょう。
目的別のアプローチ

腕の筋トレは、目的によって適したアプローチ方法が異なります。ここでは3つの目的に分けて、意識したいポイントやおすすめの種目を紹介します。
腕を太くしたい人(筋肥大重視)
たくましい腕を目指す場合は、筋肉に強い負荷をかけて筋繊維を太くするアプローチが基本です。
目安としては8〜12回で限界を感じる高重量・低回数のトレーニングで、上腕二頭筋や上腕三頭筋を強く刺激しましょう。
おすすめの種目は以下のとおりです。
- ダンベルカール(上腕二頭筋)
- 力こぶを作る、最も基本的な種目です。体の反動を使わず、肘を固定して行うことを意識しましょう。
- スカルクラッシャー(上腕三頭筋)
- 仰向けでダンベルやバーベルを額に向かって下ろし、上腕三頭筋の力で押し上げる種目です。適度な負荷をかけることで、腕の厚みを作れます。
- 懸垂(広背筋と同時に二頭筋強化)
- 背中の広背筋と同時に、上腕二頭筋にも強い負荷がかかるコンパウンド種目です。
筋肉の成長には、トレーニング後の休養も欠かせません。同じ部位のトレーニングは中1〜2日ほど空けて、超回復の時間をしっかりと確保しましょう。
腕を引き締めたい人(ダイエット・女性向け)
しなやかで引き締まった腕を目指す場合は、高負荷をかける必要はありません。
5〜20回程度をこなせる重量設定で、筋肉の持久力を高めつつ脂肪燃焼を促すアプローチが効果的です。
以下では、腕を引き締めたい人におすすめの種目をまとめました。
- プッシュアップ(腕、肩、上腕三頭筋)
- 腕や肩と同時に、上腕三頭筋も鍛えられる種目です。自重を負荷にすることで、上半身の引き締め効果を期待できます。負荷が大きい場合は、膝をついた状態でもかまいません。
- キックバック(上腕三頭筋)
- 前傾姿勢でダンベルを持ち、肘を支点にして腕を後ろに伸ばす運動です。上腕三頭筋をピンポイントで鍛えられるため、二の腕のたるみを解消したい方に向いています。
- アームサークル(腕全体)
- 両腕を横に広げて、円を描くように回すシンプルな自重運動です。肩周りの血行が促進され、腕全体をすっきりと見せる効果も期待できます。
腕全体の引き締めは、腕だけの筋トレでは限界があります。スクワットやランニングといった全身運動と組み合わせて、全身の脂肪燃焼を促しましょう。
スクワットのやり方については、下記の記事で詳しく解説しています。
スクワットの効果。1日5回でもOK? 効果的なやり方のヒント - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ
有酸素運動と筋トレの組み合わせについては、こちらの記事もどうぞ。
有酸素運動と筋トレの順番はどちらが先?初心者・中高年・忙しい人のライフスタイル別メニュー - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ
パフォーマンスを上げたい人(スポーツ・機能改善)
スポーツのパフォーマンス向上や、日常生活での機能性を高めたい場合は、握力や手首の強さにつながる前腕筋群の強化がポイントになります。おすすめの種目は以下のとおりです。
- リストカール(前腕)
- ダンベルを持ち、手首のスナップを使って巻き上げる運動です。正しいフォームで行うと、前腕の内側を鍛えられます。
- ファーマーズウォーク(握力、体幹、全身の持久力)
- 両手に重いダンベルを持ち、背筋を伸ばしたまま歩くトレーニングです。握力や体幹、全身の持久力を同時に鍛えられます。
- デッドハング(握力、肩周りのストレッチ)
- 懸垂バーにぶら下がるシンプルな運動です。握力の強化に加えて、肩周りのストレッチ効果も期待できます。
上記の筋トレを組み合わせると、野球やテニスなどの道具を握るスポーツや、柔道、クライミングなどのパフォーマンスを向上できます。
レベルやライフスタイルに合わせた工夫
ここからは、身体能力や性別、ライフスタイルに合わせた腕トレの工夫を紹介します。
初心者向け
腕トレの初心者は、自身の体重を負荷にする自重トレーニングから始めましょう。自重トレーニングはケガのリスクが低く、正しいフォームを習得しやすい特徴があります。
トレーニングの頻度は週2~3回、1回あたりの時間は15~20分程度で十分です。壁を使った腕立て伏せや、椅子に手をついてお尻を上げ下げする「リバースプッシュアップ(ディップス)」など、身近なものを活用して無理なく始めましょう。
中級者以上向け
自重トレーニングに慣れたら、ダンベルやトレーニングチューブで強度を高める方法がおすすめです。負荷を徐々に上げると、漸進性過負荷の原則*3によって筋肉の成長が促されます。
また「胸の日は三頭筋」「背中の日は二頭筋」のように分割法を取り入れると、各部位を効率的に鍛えられます。インクラインダンベルカールやナローベンチプレスなど、種目のバリエーションを増やすアプローチも有効です。
女性向け
美しいボディラインを作りたい女性には、引き締めメニューを中心にトレーニングを組む方法がおすすめです。15〜20回を目安に重量設定をすれば、筋肉で腕が太くなり過ぎることを防げます。
腕の筋トレは、猫背の改善や肩周りの血行促進、肩こりの解消といった効果も期待できます。美しさと健康の両面にアプローチできるため、高回数のメニューを積極的にこなしましょう。
自宅派・ジム派のアプローチ
自宅で腕の筋トレを行う場合は、ダンベルやトレーニングチューブ、椅子などの道具を活用しましょう。専用のマシンがなくても、各種目を丁寧にこなすとトレーニングの効果を最大化できます。
ジムに通える場合はマシンを活用し、腕の筋肉をピンポイントで鍛えましょう。例としては、ケーブルマシンを使ったプレスダウンやカール、プリチャーカールマシンでのトレーニングが挙げられます。
フリーウェイトとマシンを組み合わせて、ターゲットの筋肉にさまざまな刺激を与えてみてください。
腕の筋トレを継続するコツ
腕の筋トレは、一朝一夕で成果が表れるわけではありません。理想の腕を手に入れるには、継続するための工夫も必要です。ここでは1カ月のトレーニングプランや、モチベーション維持のコツを紹介します。
1カ月のトレーニングプラン例
無理なく腕を鍛えたい方は、週3回程度のトレーニングから始めましょう。以下では、バランスの取れた1カ月のプラン例をまとめました。
- 月曜日(押す日)
- プッシュアップ(胸・三頭筋)3セット
- ダンベルショルダープレス(肩・三頭筋)3セット
- ダンベルカール(二頭筋)3セット
- 水曜日(引く日)
- 懸垂 or ラットプルダウン(背中・二頭筋)3セット
- ダンベルキックバック(三頭筋)3セット
- ハンマーカール(二頭筋・前腕)3セット
- 金曜日(腕集中日)
- ナローベンチプレス(三頭筋・胸)3セット
- コンセントレーションカール(二頭筋)3セット
- リストカール(前腕)2セット
上記を参考にしながら、ご自身の目的やレベルに合ったプランを考えてみてください。
モチベーションの維持法
腕の筋肉は比較的小さいため、成果を実感するまでには時間がかかります。途中で諦めないように、身体が変化する時期はあらかじめ理解しておきましょう。
最初の1カ月で表れる成果は「扱える重量や回数の伸び」「握力の向上」といった機能的な変化です。見た目の変化が起こるのは、早くても2~3カ月後。この時間差をきちんと理解すると、焦ることやモチベーションの低下を防げます。
見た目の変化を早めに自覚したい方は、以下のような工夫をしてみましょう。
- 月に1度、同じポーズで写真を撮って比較する
- 腕の太さをメジャーで測って記録する
- トレーニングアプリやSNSで、仲間と進捗を共有する
扱える重量や回数についても、成長の記録をつけておくとモチベーションの維持につながります。
栄養面や生活習慣のポイント
筋トレの効果を最大化するには、トレーニング以外の過ごし方も大切です。ここでは、栄養面と生活習慣のポイントを解説します。
筋肉を成長させる栄養
トレーニングで鍛えた腕の筋肉は、十分な栄養がないと強化されません。
中でも意識したい栄養素が、筋肉の主成分となるタンパク質です。「トレーニング後2時間以内」を目安に、プロテインシェイクや鶏むね肉、卵などを取りましょう。
また、主要なエネルギー源である炭水化物も忘れてはいけません。炭水化物が不足すると力が出ないだけでなく、筋肉を分解してエネルギーを作り出そうとします。これを防ぐために、トレーニング前にはおにぎりやバナナなどを取りましょう。
さらに、体内の水分不足にも注意が必要です。水分は代謝効率に影響し、不足するとパフォーマンスの低下やケガにつながります。のどの渇きを感じる前に、こまめな水分補給を心がけてください。
トレーニング中の食事については、以下の記事でも分かりやすく紹介しています。腕の筋トレ効果を高めたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
筋トレは食事が命?タイミングや目的別の食事メニューを徹底解説 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ
睡眠と休養
筋肉の修復と成長を促す「成長ホルモン」は、睡眠中に多く分泌されます。特に、深く眠っている最初の1.5〜2時間ごろに分泌量がピーク*4に達するため、質のよい睡眠を心がけましょう。
また、高強度のトレーニングを行った後は、48〜72時間の休養(超回復期間)が必要とされています。体を休める意味でも、同じ部位を連日で鍛えることは基本的に避けて、最低でも毎日7時間以上の睡眠を確保するようにしてください。
睡眠の悩みを抱えている方には、以下の記事がおすすめです。こちらの記事では、不眠タイプ別の対処法や、どうしても眠れないときの過ごし方などを紹介しています。
眠れない時の対処法は?タイプ別の不眠対策、どうしても眠れない夜の過ごし方も - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ
ケガの予防法と正しいフォーム

闇雲にトレーニングをして、ケガをすると逆効果です。ケガの予防法と正しいフォームについても理解し、安全なトレーニングを心がけましょう。
ウォームアップの方法
トレーニング前には5分程度のウォームアップを行い、関節や筋肉を温めましょう。前回し・後ろ回しのアームサークルや、肩甲骨を寄せる・離すなどの軽い運動で、血流を促す方法がおすすめです。心拍数を上げたい場合は、軽い有酸素運動を取り入れましょう。
正しいフォーム解説
ここでは、代表的な腕の筋トレについて、正しいフォームのポイントを解説します。
- ダンベルカール
- 脇を締め、肘の位置を身体側でしっかりと固定します。上腕二頭筋の力だけで、ゆっくりとダンベルを上げ下げすることを意識しましょう。体を反らせるなど、反動を使った動かし方はNGです。
- プッシュアップ
- 頭からかかとまでが一直線になるように、お腹に力を入れて体幹を意識します。腰が反ったり、お尻が上がったりしないように注意してください。
上記以外のトレーニングについても、正しいフォームを調べてから取り組みましょう。
ケガのリスク回避
見栄を張って、コントロールできない重量や回数に挑戦することはおすすめできません。肘や肩の関節はデリケートなので、一度痛めると治りにくい場合もあります。
トレーニング中に少しでも違和感や痛みを感じたら、勇気を持ってその日のトレーニングを中止し、休養を優先しましょう。
目的に合ったメニューを正しく実践しよう
腕の筋トレは、目指している身体によってアプローチが変わります。まずはご自身の目的を明確にして、それに合ったメニューを正しいフォームで実践しましょう。
また、努力を成果へと結びつけるには、休養と栄養も忘れてはいけません。本記事を参考にしながら、無理なく安全に、そして楽しみながらトレーニングを続けてみてください。
編集:はてな編集部
編集協力:株式会社YOSCA
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筋トレ カテゴリーの記事一覧 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ
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*1:参考:日本ストレッチング協会「上腕二頭筋(じょうわんにとうきん)の起始と停止と作用」
*2:参考:日本ストレッチング協会「上腕三頭筋(じょうわんさんとうきん)の起始と停止と作用」
*3:参考:厚生労働省 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023「筋力トレーニングについて」