筋トレに糖質は必要? 効果的な摂取タイミングと食材・サプリ完全ガイド

筋トレに糖質は必要? 効果的な摂取タイミングと食材・サプリ完全ガイド

筋トレにおいて、炭水化物などの糖質は欠かせないエネルギー源です。近年の糖質制限ブームの影響で「太る原因」「ダイエットの敵」と考える人も少なくありませんが、筋肉を動かすためにも、回復を促すためにも必要な栄養素です。

無理に避けると、トレーニングの質が低下し、せっかく鍛えた筋肉が失われるリスクもあります。筋トレの効率を上げるには、適切な摂取量やトレーニングの前か後かといった摂取タイミングなどの正しい知識をつけることが重要です。

本記事では、筋トレと糖質の関係性や基礎知識をまとめました。具体的な食材やサプリメントの活用法も解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。

(執筆者)中島正雄

合同会社ユイロード 代表社員
2020年10月より、大阪府茨木市にてパーソナルトレーニングジムを運営。2025年6月まで、延べ100名以上の利用者に筋トレやダイエットを指導。2023年には健康経営アドバイザー資格を取得。自身のダイエット経験や、コーチングやNLPを学んだ経験を活かした「クライアントに寄り添った」指導が特徴。

エネルギー源としての役割

筋トレに糖質が欠かせない理由は、体内で「エネルギー源」としての役割を果たしているためです。ここでは、糖質が筋トレに影響する仕組みと、不足した場合のデメリットを解説します。

糖質は筋肉のガソリン

体のエネルギー源になる糖質は、「筋肉のガソリン」とも言い換えられます。

体内に摂取した糖質(炭水化物)は、消化・分解の過程で「グルコース(ブドウ糖)」となり、血液中を流れます。その多くは「グリコーゲン」という貯蔵型のエネルギー源に変換され、主に筋肉(筋グリコーゲン)と肝臓(肝グリコーゲン)に蓄えられます*1

中でも筋グリコーゲンは、高強度のトレーニングに欠かせないエネルギー源です。例えば、スクワットやベンチプレスなどの筋トレでは、即座に利用できるエネルギー源として筋グリコーゲンが消費されます。

このときに体内のエネルギーが不足すると、いわゆる「ガス欠」が起きやすい状態になります。最後までパワフルに体を動かせなくなるため、糖質不足の状態では質の高いトレーニングは望めません。

不足時のデメリット

体内のグリコーゲンが枯渇すると、体にさまざまな不都合が生じます。

一つ目は、トレーニング時のパフォーマンス低下です。エネルギー不足により、平常時と同じ回数や重量のトレーニングをこなせなくなるため、筋肉に十分な刺激を与えられません。

また、エネルギー源が不足した体は、筋肉を構成しているタンパク質(アミノ酸)を分解してエネルギーを作り出そうとします。いわゆる「筋分解(カタボリック)」を誘発するため、本来は筋肉を増やすためのトレーニングが、逆に筋肉を減らしてしまう可能性もあるのです。

さらに、脳の主要なエネルギー源(ブドウ糖)が不足することで、集中力が低下するデメリットも軽視できません。血糖値が下がると集中力が散漫になり、フォームの乱れやケガのリスクにつながります。

【目的別】筋トレの糖質戦略

糖質の摂取方法は、筋トレの目的によって変える必要があります。以下では3つの目的に分けて、糖質戦略の考え方について解説します。

筋肥大期(バルクアップ)

筋肉の増量を目指すバルクアップ期は、「摂取カロリー>消費カロリー」の状態を作り出す必要があります。この時期に過度な糖質制限をすると、エネルギー不足によるパフォーマンス低下や筋分解を招きかねません。

バルクアップ期には十分な糖質を摂取し、筋肉の合成に使われるインスリンの分泌を促しましょう。おすすめの糖質戦略は以下のとおりです。

  • トレーニング前
    • 運動開始の1〜2時間前に、消化のよい糖質を摂取します。バナナやおにぎり、うどんなどの食品がおすすめです。
  • トレーニング中
    • 長時間のトレーニングを行う場合は、エネルギーをすばやく補給しましょう。スポーツドリンクや、マルトデキストリン(粉末状の糖質)を溶かしたドリンクが適しています。
  • トレーニング後
    • 筋肉の修復と成長のために、枯渇したグリコーゲンを速やかに回復させましょう。タンパク質と合わせて、ご飯やパスタ、芋類などで糖質を摂取する方法がおすすめです。

減量期(ダイエット)

体脂肪を減らしたい減量期でも、糖質は大切なエネルギー源です。極端な制限は筋分解を招き、基礎代謝の低下につながります。

リバウンドしやすい体になることを防ぐために、減量期には「タイミング栄養学」の考え方を取り入れる方法もあります。この考え方では、1日の総摂取カロリーを管理しつつ、糖質摂取を朝食やトレーニング前後の時間帯に集中します。

例えば、朝食にはオートミール、トレーニング前には小さなおにぎりを食べ、夕食には高タンパクな食品を選ぶような方法です。このような工夫により、摂取した糖質が脂肪として蓄積されにくく、エネルギーとして消費されやすくなります。

持久系トレーニングを組み合わせる場合

筋トレと持久系トレーニングを組み合わせる場合は、エネルギー切れとも呼ばれる「ハンガーノック」に注意が必要です。

長時間の有酸素運動は、筋トレ以上にグリコーゲンを消費します。60分を超えるような持久系トレーニングでは、エネルギーを補給しないとパフォーマンスが著しく低下することも。

安定したパフォーマンスを維持したい方は、スポーツドリンクやエネルギーゼリーなどを携帯し、30~40分ごとに補給しましょう。また、運動後にもしっかりと糖質を取り、グリコーゲンを補充することが大切です。

性別・年齢による糖質戦略の工夫

性別・年齢による糖質戦略の工夫

糖質の最適な摂取量は、トレーニングをする人の体質によって変わります。ここからは、性別・年齢別の糖質戦略や、工夫のポイントを紹介します。

男性と女性の違い

一般的に男性は筋肉量が多く、基礎代謝も高い傾向にあるため、運動中にはより多くのエネルギーを消費します。特にバルクアップを目指す場合は、やや多めの糖質をしっかりと摂取しましょう。

一方で、筋肉量が少ない女性は、糖質が脂肪として蓄積されやすい傾向にあります。したがって、1日の総摂取量を管理しつつ、「摂取のタイミング」に重点を置いたアプローチが有効です。

年齢による違い

20〜30代は基礎代謝が高く、トレーニングに対する体の反応もよいため、糖質がエネルギーとして消費されやすい傾向にあります。特に体を大きくしたい方は、運動の前後に多めの糖質を摂取し、積極的にトレーニングの強度を高めましょう。

40代以上の中高年は、加齢とともに基礎代謝がゆるやかに低下します。次第に体脂肪が増えやすくなるため、糖質の過剰摂取には注意してください。

食品選びで迷う場合は、血糖値の急上昇を抑え、ゆるやかにエネルギーを供給する「低GI(グリセミック・インデックス)食品」がおすすめです。例えば、白米を玄米に、食パンを全粒粉パンに変えるなどの工夫をすると、適切な摂取量を維持しやすくなります。

実践的な食品・レシピのアイデア

実践的な食品・レシピのアイデア

筋トレと糖質の理論は、日々の食事に落とし込むことが大切です。ここでは、手軽で効果的な食品や簡単なレシピを紹介します。

トレーニング前におすすめの食品

トレーニング前の食事では、消化がよく速やかにエネルギーに変わる食品を選びましょう。運動開始の「30分〜1時間前」を目安に、以下の食品を取る方法がおすすめです。

  • バナナ
    • 糖質に加えてカリウムも豊富なため、痙攣の予防につながります。
  • 和菓子(ようかん、大福など)
    • 砂糖が主成分のため、すばやくエネルギーに変換されます。
  • おにぎり(具は鮭や梅干しなどシンプルなもの)
    • 腹持ちがよく、エネルギー源を効率的に摂取できます。
  • エナジージェル
    • トレーニングの直前や、時間がないときに手軽な選択肢です。

トレーニング後におすすめの食品

トレーニング後は、筋肉の修復とエネルギーの回復を促すために、糖質とタンパク質をセットで取りましょう。おすすめの食品は以下のとおりです。

  • ご飯+鶏むね肉
    • 高タンパク・低脂質の王道ともいえる組み合わせです。
  • サンドイッチ(鶏肉や卵)+牛乳
    • サンドイッチの具にもこだわることで、必要な栄養素をバランスよく摂取できます。
  • ヨーグルト(特にギリシャヨーグルト)+果物
    • 糖質に加えて、タンパク質とビタミン類も同時に摂取できます。

コンビニで買える手軽な組み合わせ

食事を作ることが難しい方は、コンビニで買える以下の食品を活用しましょう。

  • サラダチキン+おにぎり
  • プロテインドリンク+バナナ
  • 納豆巻き+豆乳
  • ゆで卵+全粒粉のブランパン

手軽に買える食品でも、栄養素を意識してうまく組み合わせると、効率的に糖質を摂取できます。

簡単レシピの例

自宅で調理をする方に向けて、以下では簡単なレシピをまとめました。

  • オートミールプロテイン丼
    • 耐熱容器にオートミール30gと水100mlを入れ、電子レンジで1分半ほど加熱します。卵1個、ツナ缶(ノンオイル)半分、醤油少々を入れたら、そのままかき混ぜましょう。エネルギーを手軽に摂取できるため、忙しい朝のトレーニングにおすすめです。
  • ハニーヨーグルト焼き芋
    • 焼き芋を半分にカットし、ギリシャヨーグルトとはちみつをかけます。良質な糖質やタンパク質のほか、食物繊維も取れるデザート兼リカバリー食です。

筋トレ中の食事にこだわりたい方には、以下の記事もおすすめです。手軽に続ける筋トレ食のほか、年齢別・男女別に意識したいポイントや、食事戦略の考え方を解説しています。
筋トレは食事が命?タイミングや目的別の食事メニューを徹底解説 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ

サプリメントの上手な使い方

糖質サプリメントは、食事での栄養補給が難しい場合や、高いパフォーマンスを発揮したいときに有効な選択肢です。ここからは、主な糖質サプリメントの特徴や選び方を解説します。

粉末タイプ

粉末タイプのマルトデキストリンやクラスターデキストリンは、ブドウ糖がつながった構造の糖質サプリメントです。砂糖よりも甘さが控えめで、水に溶けやすい特徴があります。

BCAA(分岐鎖アミノ酸)やEAA(必須アミノ酸)などのドリンクに混ぜて飲むと、パフォーマンスの維持に役立ちます。胃への負担が気になる方は、消化吸収が穏やかなクラスターデキストリンを選びましょう。

ゼリー・ドリンクタイプ

エネルギー補給ゼリーは、スーパーやドラッグストアで手軽に購入できるサプリメントです。持ち運びがしやすく、手を汚さずに素早くエネルギーを補給できる特徴があります。

特に外出先でトレーニングをする方や、短いすきま時間を活用したい方などにおすすめです。

選び方のポイント

糖質サプリメントを選ぶ際は「吸収速度」と「用途」を重視しましょう。

トレーニング中に素早くエネルギーを補給したい場合は、吸収が速いマルトデキストリンやゼリータイプがおすすめです。一方で、トレーニング前のエネルギー補給では、持続性に優れた製品(複合炭水化物が含まれたものなど)を選びましょう。

購入前には必ず成分表示を確認し「不要な脂質や添加物が多く含まれていないか」や「カロリー含有量が目的に合っているか」を確認することも大切です。

よくある疑問Q&A

ここからは、筋トレ期間中の糖質摂取についての疑問にお答えします。

Q1:糖質を取ると太りませんか?
太るかどうかは、量とタイミング次第です。

1日の総消費カロリーを超える糖質を摂取すると、余剰分は脂肪として蓄積されます。一方で、筋トレ前後のタイミングで摂取する糖質は、優先的に筋肉のエネルギー源や回復に使われるため、脂肪になりにくい傾向があります。

むやみに怖がるのではなく、エネルギー源として賢く取り入れましょう。

Q2:夜のトレーニング後に糖質を摂るのはNGですか?

完全にNGというわけではありません。

トレーニングで消費されたエネルギーを回復させるために、少量の糖質はむしろ有効です。ただし、寝る直前に大量の糖質を摂取すると、消費されずに脂肪として蓄積されやすくなります。

プロテインシェイクにバナナを半分ほど加えるなど、量をうまくコントロールしましょう。

Q3:筋肉をつけるには、プロテインだけではダメなのですか?

プロテイン(タンパク質)だけでは、筋肉の合成効率が下がってしまいます。

糖質を摂取すると、血糖値を下げるために「インスリン」というホルモンが分泌されます。このインスリンは、血液中のアミノ酸を筋肉細胞へと効率的に取り込ませる成分です。

いわゆる「運び屋」としての役割があるので、トレーニング後には糖質とタンパク質を同時に摂取しましょう。

Q4:トレーニング前後の糖質補給に、甘いお菓子を食べてもいいですか?

種類によります。

ケーキやクッキー、スナック菓子といった脂質が多く含まれる洋菓子は、消化吸収が遅く、胃もたれの原因になるため不向きです。一方で、大福やようかんなどの和菓子は、主成分である砂糖(ショ糖)がブドウ糖と果糖にすばやく分解されます。

脂質も少ない傾向にあるため、どうしても食べたい場合は和菓子を選びましょう。

Q5:糖質ゼロのスポーツドリンクは、筋トレに効果がありますか?

エネルギー補給という観点では、効果は期待できません。

ただし、汗で失われる水分やナトリウム、カリウムといった電解質は補給できます。水分補給の役割は十分に果たすため、脱水症状や熱中症の予防につながるでしょう。

長時間のトレーニングで大量に汗をかく場合は、エネルギー補給用の糖質ドリンクと、水分補給用の糖質ゼロ飲料を使い分ける方法もおすすめです。

糖質摂取は「タイミングと質」を意識しよう

糖質は、決して筋トレの敵ではありません。適切な摂取量を守れば、トレーニングのパフォーマンスを高めて、効率的な回復をサポートしてくれる味方になります。

重要なポイントは、摂取量を制限することではなく、「タイミングと質」を意識することです。自分の目的や年齢、性別に応じた工夫を取り入れて、糖質を賢くコントロールし、理想の体作りを加速させましょう。

編集:はてな編集部
編集協力:株式会社YOSCA


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*1:参考:農畜産業振興機構「時間栄養学から見た糖質代謝と食育