認知症対策は何をすればいい? 日常生活でできる予防法を紹介

認知症対策は何をすればいい? 日常生活でできる予防法を紹介

年齢を重ねるにつれ「自分も認知症になるのでは?」「ならないための対策方法はあるのだろうか」と不安になる方はきっと多いはず。特に、両親に認知症の既往歴がある方などは、「遺伝的に発症リスクが高いのでは……」と心配になることでしょう。

実際、一部の認知症の危険因子が加齢というのは、間違った認識ではありません。つまり、歳を重ねれば、誰でも認知症になる可能性が高まってきます。

ところで、認知症と生活習慣病に関連性がある、ということをご存じですか? 「生活習慣の改善」が認知症の予防につながるという研究結果*1もあり、福岡県認知症医療センターの認知症予防に関する情報ページでは、早めに対策方法を習得し、実践することで、認知症の発症を遅らせることができる場合がある*2とされています。

本記事では、認知症を予防する方法の1つである、生活習慣の改善方法について解説していきます。

(監修者)矢島隆二 先生

総合リハビリテーションセンター みどり病院 副院長 兼 認知症疾患医療センター副センター長
脳神経内科・認知症・総合内科等専門医。新潟大学医学部卒業後、高度急性期医療から地域の総合病院まで幅広く臨床経験を積み重ね、新潟大学附属脳研究所で認知症の研究を行い、医学博士を取得。現在は認知症や神経難病を中心に、リハビリテーションにも重点を置いた神経内科の臨床現場で活動中。認知症や神経難病などの治験も行うかたわら、講演や執筆にも精力的に取り組む

こんな人におすすめ

  • 認知症とその要因について知りたい人
  • 自分が認知症にならないために、どんなことをすればよいのかを知りたい人

認知症の予防に、生活習慣の見直しが有効

認知症の原因疾患のなかでも特に割合の高い疾患として「アルツハイマー病型認知症」と「血管性認知症」の2つが挙げられます*3。統計によっても変わってきますが、この2つの疾患で認知症のおよそ8割ほどを占めるとされています。そして、残念ながら現時点ではこれらの発症を完全に予防することは困難です。

しかし、近年の研究結果で、生活習慣の是正によって認知症の発症を予防できる余地が示されてきています。特に、代表的な認知症疾患である「アルツハイマー型認知症」は、高血圧や糖尿病、脂質異常症などといった生活習慣を背景として生じやすくなることが知られています。アルツハイマー型認知症の原因について、より詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
👉アルツハイマー型認知症の原因は? 主な症状と予防法についても解説 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ

認知症を予防するには、その前段階である「軽度認知障害(MCI)」の段階で対策をしておくことが重要です。そのために、生活習慣の改善が役立つ可能性が注目されています。

ここからは、厚生労働省の『あたまとからだを元気にするMCIハンドブック [PDF]』でも発信されている、生活習慣を改善して認知症を予防する方法を、1.食生活、2.体や頭を動かし、睡眠をとる、3.マインドセットという3つの観点からご紹介します。

対策のポイント:食生活

食事を食べさせるヘルパーさんの画像

食生活の改善によって、認知症リスクを軽減するには、どのようなことに取り組むべきなのでしょうか。その手法*4について、詳しく紹介します。

規則正しく食べる

まずは、食事のタイミングの見直しです。なるべく決まった時間に、慣れ親しんだ環境で、「1日3食」を心がけましょう。誰かと会話しながら食事できれば、より効果的です。また、食事の時間を忘れがちな方は、「この時間は食べる」と、ルールを定めてしまうのも1つの手です。

バランスよく食べる

「認知症の予防に効果的な食事」として、地中海式食が知られています。ただ、日本で日々の食事に取り入れていくのは難しいところもあります。そこで、「十分な量でバランスよく食べるのが好ましい」と考えるのが良いでしょう。

一方で、糖質や塩分、脂質を摂り過ぎると、生活習慣病の悪化につながる可能性があるので注意しておきましょう。また、特定のサプリメントではなく、食事で必要な栄養素を摂取することが望ましいです。

よく噛んで食べる

しっかりとよく噛んで食べると認知症の罹患リスクを下げられる、という指摘もあります。咀嚼の回数が減ると「アミロイドβ(アルツハイマー型認知症の原因物質と考えられているたんぱく質)」が増加するといわれているためです*5。また、よく噛むと脳の活性化にもつながり、これも認知症のリスクを下げる一因になる可能性があります。

食生活を見直す上でのポイントについては、下記の記事もあわせてご覧ください。

👉認知症予防に効果的な食べ物は? 最適な食事方法や食材を紹介 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ

対策のポイント:体や頭を動かし、しっかりと睡眠をとる

ゲームをする笑顔の高齢女性の画像

2つ目の予防方法として、適度な運動を習慣化させることと良質な睡眠をとることも挙げられます*6。詳細を見ていきましょう。

軽い運動を習慣にする

運動も生活習慣の改善に効果的とされています。とはいえ、運動教室やフィットネスクラブに通うのは、ハードルが高いと感じる方もいることでしょう。その場合は、ウォーキングや散歩などの軽い運動から始めてみてください。週3回、1回30分以上が目安です。

こういった時間を作ることも難しい場合は、駅で階段を使うことを意識したり通勤を徒歩に切り替えたりする、通勤しない場合は家の中でストレッチや体操をするなど、日常生活の中で少しずつ運動習慣をつけていきましょう。

運動習慣を身につける上でのポイントについては、下記の記事もあわせてご覧ください。

👉認知症はトレーニングで予防。今日から始める運動習慣で認知症のリスクを軽減しよう - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ

脳の刺激となるようなゲームに取り組む

脳トレーニング(脳トレ)や認知トレーニング、ボードゲームなどは認知機能の改善が期待できるため、取り入れる介護施設が増えてきているといいます。

さらに近年は、テレビゲームの効果を検証した研究結果も発表されてきています。指を動かしながら視覚や聴覚を駆使するため、認知機能の改善に役立つという説も提唱されているといった背景があるようです。老後の新たな趣味、コミュニケーションの場として、さまざまなゲームを生活に取り入れることも検討してよいでしょう。

昨今は介護施設でも、テレビゲームを取り入れているところもでてきている*7ようです。その他にも、eスポーツを推進する自治体もあります*8

脳トレの取り入れ方については、下記の記事もあわせてご覧ください。

👉認知症予防に脳トレを取り入れよう。期待できるメリットとおすすめのトレーニング方法 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ

音楽に触れてみる

楽器の演奏や、歌うこと、さらには音楽に合わせてダンスをすると、呼吸のコントロールや体の動きを意識するため、認知機能の向上につながるという研究結果*9があります。

ここで意識しておきたいのは、「聞くだけでは十分な効果が得られない」ということ。あくまで能動的に、演奏したりダンスしたりする必要があります。演奏会や合唱など、集団での音楽活動にチャレンジできれば、コミュニケーションの機会も増えていくので、よりいっそう効果的でしょう。

睡眠をとる

睡眠と認知症には、深い関連性があるといわれています。睡眠時間が短過ぎたり、あるいは長過ぎたり、睡眠の質が悪かったりすると、認知症の発症リスクが高まる可能性があるとされています。不眠や睡眠に関する病気がある人は、適度な認知症を発症するリスクが約1.2倍にもなるケースもある*10ようです。

認知症の予防のためにも、なるべく睡眠時間を確保しましょう。寝付きが悪い、夜中に起きてしまう……といった場合は、睡眠時無呼吸症候群など、他の疾患にかかっている可能性もあります。この場合も、医療機関に相談するのがよいでしょう。

質の良い睡眠をとるポイントについては、下記の記事もあわせてご覧ください。

👉認知症と睡眠について。発症や症状への影響と改善方法を解説 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ

対策のポイント:マインドセット

眼鏡と本の画像

3つ目の予防アプローチはマインドセット*11。つまりは「気の持ちよう」、ということです。詳しくみていきましょう。

積極的に出かけてみる

社会活動を意識して、まずは「家から出る」ことを習慣化してみましょう。「社会活動」と聞くとハードルが高く感じてしまうかもしれませんが、自分が楽しめるものに取り組むために外出をすることも、立派な社会活動です。図書館や料理教室、近所の公園など行き先はどこでもかまいません。身支度、公共交通機関のダイヤを意識して行動するだけでも、脳への好影響があるとされています。

また、毎日1回は出かけることを意識できれば、気持ちの落ち込みを防ぐこともできるでしょう。さらに、外出する頻度が増える=運動の回数が増えるということ。つまりは生活習慣病のリスクを下げることにもつながるかもしれません。外出のメリットは大きいので、意識しておくとよいでしょう。

他者との交流を意識する

「会話」も認知症を予防する一手です。家族と積極的に話をしたり、地域活動や習い事に参加したり、さまざまな人との会話を楽しみましょう。人との会話が多いほど、認知症の予防につながる可能性があります。もし、直接会話する機会を作るのが難しければ、電話やビデオ通話などをうまく活用し、週1回以上は会話の機会を持つとよいでしょう。

認知症になりにくい人の傾向については、下記の記事もあわせてご覧ください。

👉認知症になりにくい人とは? 発症リスクを低める生活習慣を知って対策を - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ

「認知症予防」は、無理なく、楽しく取り組める方法で

ここまで紹介してきたアプローチには、「無理なく取り組むこと」が重要です。何より重要なのは習慣化。まずは自分に合った方法を選択してみましょう。難しいことをする必要はありません。毎日の生活に取り入れながら、少しずつ始めてみることが大切です。

生活習慣改善という「一手」は、試す価値あり

認知症対策は、まだまだ研究中の分野。確実な方法は解明されていないのが現状です。しかし、生活習慣を見直すことで認知症予防につながる「可能性はある」のは確かなことです。まずは、できることから取り組みましょう。

編集:はてな編集部
編集協力:株式会社エクスライト


先々の認知症の疾病リスクを予測し、自分に合った生活習慣の改善策を検討するには、フォーネスビジュアスを利用してみるのも一手です。認知症だけではなく、心筋梗塞や脳卒中、肺がんなどの発症リスクが分かります。検査後は、結果に合わせた生活習慣改善サポートも受けられるため、生活習慣を見直したいという方は、ぜひ一度お問い合わせください。

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*1:参考:砂川市「認知症を予防するには?

*2:参考:福岡県認知症医療センター「認知症とは

*3:参考:厚生労働省「認知症施策の総合的な推進について [PDF]」

*4:参考:厚生労働省「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック [PDF]」

*5:参考:公益社団法人 日本臨床矯正歯科医会 トレンドウォッチ Vol. 5「キレイな咬み合わせで、めざせ!健康長寿

*6:参考:厚生労働省「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック [PDF]」

*7:参考:第3回和歌山県データ利活用コンペティションより「認知症予防×テレビゲーム ~低迷する高齢者の消費行動を促進する新たな可能性~ [PDF]」

*8:参考:兵庫県eスポーツ推進検討会「兵庫県におけるeスポーツの取組の方向性 [PDF]」

*9:参考:京都大学 大学院総合生存学館・こころの未来研究センター「楽器訓練で高齢者の認知機能が向上することを確認 -訓練による脳活動の変化を高齢者で初報告-

*10:参考:厚生労働省「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック [PDF]」

*11:参考:厚生労働省「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック [PDF]」