「認知症対策にはDHA(ドコサヘキサエン酸)が効果的」という話を聞いたことはありませんか? 本記事では、いくつかの研究データを元に、DHAが認知症対策にどのように役立つのかについて解説。そして、DHAが豊富に含まれる食材と、健康を維持するための1日の摂取量目安についても紹介します。
こんな人におすすめ
- 認知症とDHAの関連を知りたい人
- 認知症対策のために、食生活を改善したい人
- 家族の認知症発症リスクに不安を感じている人
DHAは認知症対策に効果がある?
DHA(ドコサヘキサエン酸)は、私たちの脳を構成する重要な成分の一つです。DHAは記憶力や判断力の向上に効果があると考えられており、特にアルツハイマー型認知症対策として期待が持たれています*1。
また、国立長寿医療研究センターの「老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)*2」で、60歳以上の地域在住者を対象に、血液中のDHA濃度と認知機能低下リスクの関係を調査。10年後に認知機能が低下するリスクをDHA濃度が低い人と比べると、DHA濃度が中程度の人は0.11倍、DHA濃度が高い人では0.17倍となり、認知機能が低下しにくいという結果が出ました。
このことから、DHAが認知機能の維持に役立つ可能性が示されています。ただし、DHAは体内での合成が難しい脂肪酸です。そのため、食事から積極的に摂取する必要があります。
DHAの働き
DHAが持つもう一つの重要な効果は、アルツハイマー型認知症の原因物質である異常タンパク質「アミロイドβ」の働きを抑制することです*3。このことから、DHAはアルツハイマー型認知症の進行を遅らせる可能性があるとされています。それだけでなく、脳卒中のリスクを低減する効果や、中性脂肪値を下げる効果もあるといわれています*4。
DHAが豊富な食材と摂取量の目安
DHAは魚類に多く含まれています。代表的な魚類は下記のとおりです。
【DHAが豊富に含まれている魚類の一例】
・アジ
・イワシ
・ウナギ
・カジキ
・サケ
・サバ
・サンマ
・タイ
・ブリ
・マグロ
厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準」によると、1日のDHAを含むn-3系脂肪酸※の摂取量の目安は「成人男性:最大2.2g」「成人女性:最大1.9g」*5とされています。具体的な分量で換算すると、ブリの切り身100gに約1.7gのDHAが含有されているため、1日の摂取量目安の大半を満たせることになります。
※ DHAはn-3系脂肪酸(オメガ3)の一種です。「日本人の食事摂取基準」では、DHA単体の指標が設定されていないため、本記事ではn-3系脂肪酸の摂取量の目安を記載しています。
しかしながら、食の好みや食べる量を考えると、「毎日の食事に魚を取り入れるのは難しい」と感じる方がいるかもしれません。その場合は、市販のDHAサプリメントを利用することも一つの手段です。
また、DHAを含む魚類以外にも、認知症対策に有効な食材は多数存在します。n-3系脂肪酸、ビタミンE、葉酸などを豊富に含むナッツ類などです。詳しくはこちらの記事で解説しています。
👉認知症予防に効果的な食べ物は? 最適な食事方法や食材を紹介 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ
DHAおよび魚の取り過ぎには要注意
DHAや魚類の摂取は認知症対策や健康維持に効果的ですが、適量を超えてしまうと次のようなリスクが伴います。
・DHAの過剰摂取のリスク
DHAは血液をサラサラにする効果があります。それによって出血時には血が止まりにくくなることもありえるため、過剰な摂取は避けましょう。特に手術を控えていたり、血液をさらさらにする薬を服用していたりする方などは注意が必要なので、摂取するにあたっては医師に相談してください。
・魚の過剰摂取によるリスク
マグロやカジキ、深海魚など大型の肉食魚は、自然界の食物連鎖を通じて、取れた地域などに関係なく微量の水銀を含有しています。成人や子どもへの直接的な問題は少ないとされていますが、胎児に影響を与える可能性があるため、妊娠中の方は先述したような水銀の含有量が多い魚の摂取を控えた方が良いでしょう*6。
魚中心の食生活で、認知症対策に取り組もう
魚に多く含まれるDHAは、脳の健康をサポートする重要な栄養素であることが分かりました。アルツハイマー型認知症対策として効果が期待されているほか、脳卒中のリスクを下げたり、中性脂肪値を改善したりと、全身の健康にも寄与することが明らかになっています。
私たち日本人にとって、魚は古くからなじみ深い食材です。生鮮魚だけでなく、加工品や缶詰としても手軽に摂取できます。豊富な栄養を含む魚は、健康的な食生活をサポートする強い味方です。この機会に、魚を取り入れた食生活の見直しを検討してはいかがでしょうか。
また、認知症の対策につながる生活習慣の改善について詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。
👉認知症になりやすい人の特徴は? 注意したい生活習慣、予防策を紹介 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ
👉認知症対策は何をすればいい? 日常生活でできる予防法を紹介 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ
編集:はてな編集部
編集協力:株式会社エクスライト
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*1:参考:橋本道男「食事・運動と認知症予防」(2015)[PDF]
*2:参考:国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター「すこやかな高齢期をめざして No.18『食事と認知機能(1) 【認知症予防】』」
*3:参考:宮城大学食産業学群フードマネジメント学類 西川正純「<総説>ドコサヘキサエン酸(DHA)の中枢神経に及ぼす影響~イオンチャネルからのアプローチ~」[PDF]
*4:参考:厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』「オメガ3系脂肪酸」
*5:参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」[PDF]
*6:参考:厚生労働省「魚介類に含まれる水銀について」