カレーが認知症の発症リスクを下げる? 効果的な食べ方と理由を解説

カレーが認知症の発症リスクを下げる? 効果的な食べ方と理由を解説

「認知症の予防にはカレーが良いらしい」と聞いたことはありませんか? 最近の研究によると、カレーに含まれるスパイスが認知症の発症リスクを下げる可能性があることが示されています。本記事では、カレーに含まれるスパイスが認知機能に与える影響をはじめ、効果的なカレーの食べ方、スパイスと腸内環境と認知症の関連性について解説します。

(監修者)佐治直樹 先生

国立長寿医療研究センター もの忘れセンター 客員研究員。「もの忘れセンター」にて認知症の危険因子に関する研究を行うかたわら、もの忘れ外来担当医として、認知症の臨床現場でも活動中。2021年には、東北大学、久留米大学、株式会社テクノスルガ・ラボとの共同研究にて、日本食の食事パターンと腸内細菌、および認知症との関連を発見。研究結果等に関する講演活動にも、積極的に取り組んでいる。

こんな人におすすめ

  • 認知症とカレーの関連を知りたい人
  • 認知症対策のために、食生活を改善したい人
  • 家族の認知症発症リスクを不安に感じている人

カレーを食べ続けると認知機能が良好になる?

カレーが認知症の発症リスクを下げる? 効果的な食べ方と理由を解説

ハウス食品グループ、東京大学、二松学舎大学の共同研究により、カレーを定期的に食べる食習慣が、良好な認知機能と関係していることが分かりました。この研究は、日本未病学会学術総会で発表されています*1

この研究では、日本人の中高齢者を対象に、カレーを月に4回以上(週1回以上)の頻度で食べる群と、月に1回未満の頻度で食べる群とを比較。その結果、頻繁にカレーを食べる群の方が、認知機能が有意に良好であることが確認されました。

この関連の一因と考えられるのが、カレーに含まれるさまざまな種類のスパイスです。それぞれのスパイスがもたらす効果を解説します。

スパイスの種類とそれぞれの効果

カレーは、さまざまなスパイスが組み合わされた料理で、それぞれのスパイスが健康に良い影響を与えることが知られています。認知機能の保持に寄与する可能性がある代表的なスパイスとその効果は次のとおりです。

・ターメリック(ウコン)
ターメリックはカレーの色を鮮やかにする目的で使用されるスパイスです。主成分の「クルクミン」は、ポリフェノールの一種。ポリフェノールは植物に含まれる苦味や渋味、色素のもとになっている化合物で、強力な抗酸化作用を持っていることが特徴です。「クルクミン」には抗酸化作用のほかに抗炎症作用もあります。

2つの作用により、過剰に産生されると細胞を傷つけてしまう活性酸素を除去したり、細菌やウイルスが体内に侵入した際に炎症反応を促進する有害な炎症性サイトカインの産生を抑制したりします。この働きによって神経炎症性経路を調整し、神経が保護されるのです*2

また、ハエを使った検証ではありますが、アルツハイマー型認知症の発症に関わる異常なタンパク質・アミロイドβの蓄積を阻害する作用があることも分かっています。これらの特性により、クルクミンは認知症発症の対策につながる可能性があるとされています*3

ポリフェノールと認知症対策との関係性については、下記の記事もご覧ください。
👉ポリフェノールと認知症の関連は? 豊富に含む飲料や食材を紹介 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ

・クミン、コリアンダー
クミンとコリアンダーもまた、カレーに欠かせないスパイスであり、抗酸化作用を持っています。消化液の分泌を活発化させる働きがあり、整腸や解毒作用に効果があるため、認知症発症の要因となりうる生活習慣病の対策にも有効です*4

上記のスパイスが含まれていれば、日本風のカレーライス、インドカレー、タイカレーなどの種類を問わず、認知機能の向上に効果的だといえるでしょう。

栄養バランスの良い優秀な一品

認知症対策には、主食・主菜・副菜のそろったバランスの良い食事をとることが大切です。その観点から見ると、1皿に主食であるご飯、主菜となる肉や魚、副菜となる野菜がバランスよく含まれているカレーライスは優秀な料理だといえます。

しかし、食べ過ぎはカロリーなどの取り過ぎにつながります。また消化管疾患の有無や、胃腸の強さなども考慮し、食べ過ぎには注意しましょう。

カレーと相性抜群、認知症対策に有効な食材

認知症対策に効果的な食材は数多くありますが、その中でも特にカレーと相性が良い食材を紹介します。カレーを作る際の参考にしてみてください。

緑黄色野菜

にんじん・ほうれん草・かぼちゃなど、緑黄色野菜に含まれるビタミンE、ビタミンC、βカロテンが持つ抗酸化作用に認知症の発症を抑制する効果が期待できるほか、認知症の危険因子となる生活習慣病を予防する効果もあると考えられています。また、緑黄色野菜に含まれる葉酸やカリウムにも、認知症の危険因子となる生活習慣病を予防する働きがあります。

緑黄色野菜は季節を問わず手に入れやすいですが、味や栄養価が最も高まる旬の時期に食べるのがおすすめです。緑黄色野菜を購入する際は、下記の例を参考にしてみてください。

【季節ごとにおすすめの緑黄色野菜】*5

グリーンアスパラガス・さやえんどう など
トマト・ピーマン・オクラ など
かぼちゃ など
ブロッコリー・ほうれん草 など

大豆・大豆製品

大豆製品と認知症の直接的な関連についてはまだ研究途上ですが、大豆に含まれるイソフラボンや納豆に含まれるナットウキナーゼなどに、認知機能の低下を抑える可能性があるという報告もあります*6。カレーの具に入れたり、上にトッピングしたりして手軽に取り入れられるのでおすすめです。

チーズ

チーズの摂取が認知機能改善に効果的だという研究結果があります。特にカマンベールチーズの効果を示した報告がよく見られ、加齢により低減する血中BDNF濃度が増加することが報告されています。

※BDNF:神経細胞の発生・成長・維持・再生を促進させる神経栄養因子で、認知機能との関連が指摘されている

また、カマンベールチーズに含まれるβラクトペプチドには、アルツハイマー型認知症の要因となるアルツハイマー病を予防する効果が期待できること、記憶力や注意集中力を改善する効果があることも報告されています*7。ただし、チーズには飽和脂肪酸が含まれているので、食べ過ぎには注意が必要です。カレーにチーズを加える際には、適量を心がけましょう。

以上のように、カレーと相性の良い食材を取り入れることで、認知症対策の効果をさらに高められます。

また、こちらの記事では、そのほかの認知症対策に有効な食べ物や、おすすめの食生活について解説しています。
👉認知症予防に効果的な食べ物は? 最適な食事方法や食材を紹介 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ

腸内環境にも良い影響が

カレーが認知症の発症リスクを下げる? 効果的な食べ方と理由を解説

カレーに含まれるさまざまなスパイスが腸内環境に与える影響は、科学的にも注目されています。抗菌作用を有するスパイスに、腸内の有害物質を減少させる効果が発見されました。さらに、腸内のアンモニア濃度を下げることも確認されており*8、この変化が認知症と相関関係にあることが示されています。

腸内細菌と認知機能の関係とは?

腸内細菌のバランスが崩れることによって発生する炎症性サイトカインの増加は、アルツハイマー病などのリスクを高めることが分かっています*9。このため、腸内環境を整えることは、認知症対策にも効果的だといえそうです。

しかし、腸内細菌は人種や性別、年齢などによって異なることから、カレーと腸内細菌の良い関係を示すには、これからも引き続き検証が必要です。現時点では限定的ではありますが、カレーを含むバランスの取れた食事が腸内環境に与えるプラスの効果は、認知症対策の一環として期待できるかもしれません。

スパイスを上手に取り入れて、おいしく健康的な食生活を

「カレーが認知症対策に効果がある」というのは、カレーに含まれている豊富なスパイスによるものでした。認知症対策に効果的な食材を組み合わせやすい点からも、カレーはおすすめできる料理です。

ただし、カロリーなどの取り過ぎにつながりやすい料理であるため、食べ過ぎには注意しましょう。栄養バランスを心がけつつ、スパイスを取り入れておいしく工夫しながら、食事を組み立ててみてはいかがでしょうか。

編集:はてな編集部
編集協力:株式会社エクスライト


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