認知症になりにくい人とは? 発症リスクを低める生活習慣を知って対策を

認知症になりにくい人とは? 発症リスクを低める生活習慣を知って対策を

認知症になりにくいのはどんな人なのか、気になる方は少なくないでしょう。今後の予防につなげるためにも、認知症になりにくい人の特徴や傾向を知っておきましょう。また、認知症リスクを低下させる生活習慣のポイントも併せて紹介します。

(監修者)矢島隆二 先生

総合リハビリテーションセンター みどり病院 副院長 認知症疾患医療センター 副センター長

脳神経内科・認知症・総合内科等専門医。新潟大学医学部卒業後、高度急性期医療から地域の総合病院まで幅広く臨床経験を積み重ね、新潟大学附属脳研究所で認知症の研究を行い、医学博士号を取得。現在は認知症や神経難病を中心に、リハビリテーションにも重点を置いた神経内科の臨床現場で活動中。認知症や神経難病などの治験も行うかたわら、講演や執筆にも精力的に取り組む。

こんな人におすすめ

  • 自分が認知症になりやすいかどうかを知りたい人
  • 認知症を予防したいと考え、自分で対策を調べている人
  • 認知症の対策につながる考え方や生活習慣を知りたい人

認知症になりやすい人、なりにくい人がいるって本当?

厚生労働省の推計 [PDF]によると、2025年の日本の認知症高齢者数は約700万人にも上ると予測されています。これは65歳以上のおよそ5人に1人が認知症になる計算で、誰もが認知症になるかもしれないリスクを抱えているといえます。一度発症した進行性の認知症を改善させること は大変困難であることから、認知症に対して最も重要なのは「予防に取り組むこと」だと指摘されています*1

現時点では、認知症と性格・性質の直接的な関係は明らかになっていないものの、認知症になりやすい人、なりにくい人にはそれぞれ、行動や趣味嗜好、普段の過ごし方などに一定の特徴・傾向が見られることが分かってきています。こうした特徴や傾向を知り、予防的視点から、ご自身の生活習慣の参考にしてみるのはいかがでしょうか。

なりにくい人の特徴・傾向って?

認知症になりにくい人とは? 発症リスクを低める生活習慣を知って対策を

ここでは、認知症の発症リスクが低いといわれる人の特徴や行動の傾向をご紹介します。ただし、持って生まれた性格や嗜好はその人の個性。無理に矯正するのではなく、あくまで傾向として捉え、極端に気にし過ぎないことも大切です。

開放的・おおらか

普段から開放的でおおらかな人は、細かいことを気にせず、毎日を明るく過ごせることが多いもの。そうした人は、認知症になりにくい傾向があると考えられています。その要因として、閉塞的でくよくよ悩む人よりも行動範囲や交友関係が広くなりやすく、コミュニケーション量や外部刺激が増えることが挙げられます。

ちなみに、高齢になって急に怒りっぽくなったり、以前にも増して頭に血が上りやすくなったりするのは、認知症の兆候の1つです*2。高齢の家族などに対し、「最近、性格がきつく、攻撃的になってきた」「些細なことで突然怒り出す」といった傾向を感じた場合は、医療機関に相談してもよいかもしれません。

真面目で勤勉

真面目で勤勉な人は、規則正しい生活習慣を保ち、食生活や運動習慣、睡眠リズムなどを整えようと努力する人が多いものです。生活習慣の乱れは認知症の発症リスクを高めるといえるため、こうした努力ができる真面目で勤勉な人は、認知症になりにくいと考えられています。

また、こうした性質を持つ人は、自分の身の回りをきちんとしておきたいと考えるものです。「最近忘れっぽくなってきた」「物事にうまく反応できなくなってきた」など、自分の認知機能が低下している兆しを感じたときに、原因を検討して対処しようとしたり、予防に努めたりした結果、それ以上の認知機能低下を抑制し、認知症の発症・進行リスクを抑えられるのではないかと考えられています。

人付き合いが好き

コミュニケーション量が多い人は、そうでない人よりも認知機能が低下しにくいといわれています*3。人と話すのが好きな人、人と一緒に何かをするのが得意な人は、他者との会話や大人数での食事などの機会が多くなり、それだけ人とのコミュニケーション量が増えます。そのため、人付き合いが好きで、誘ったり誘われたりする機会が多い人は、認知症になりにくい傾向があるのです。

体を動かすことが好き

日常的に運動の習慣がある人は、ほとんど運動しない人よりも、認知症の発症リスクが低いという報告があります*4。そのため、体を動かすことが好きで、高齢になっても続けられる運動を見つけられる人は、認知症になりにくいといえるでしょう。

夢中になれる趣味がある

趣味活動に没頭できる人は、認知機能が低下しにくくなる可能性があります*5。特に、読書やボードゲーム(囲碁、将棋、チェスなど)、音楽活動(楽器の演奏、歌を歌うなど)、芸術活動(絵を描く、ものづくり、書道など)を行うことは、認知機能改善に有効ではないかと指摘されています*6

中でも、誰かと一緒に楽しめる趣味は、コミュニケーション面でも認知症予防に効果があると考えられているのでおすすめです。ただし、趣味を見つけるときに大切なのは、「心から楽しめる趣味である」こと。脳トレーニングのためのドリルも、楽しんでやっていれば心地よい刺激となりますが、修行のような気持ちで嫌々取り組んでいるとストレスがかかり、逆効果になることも。文字通り、本人が「夢中になれる」ことに取り組めるとよいですね。

周囲の意見や情報を取り入れる

周囲の声に耳を傾けたり、必要な情報を探して取り入れようとしたりする人は、認知症になりにくい傾向があるといいます。その理由は、新しいこと、変化することを嫌がらずに取り入れる姿勢が脳への刺激となることに加え、認知症のリスクに対しても最新情報を収集し、実践しようとするからだと考えられます。

周囲に勧められても「自分には必要ない」と判断してしまう人もいるかもしれませんが、ときには柔軟さも必要です。家族や友人・知人の意見や勧めに耳を傾け、認知症予防に努めたり、医療機関で受診したりすることは、認知症を予防する上でも必要な視点なのです。

危機感を持っている

認知症をはじめとする自身の課題に対し、危機感を持って対処しようとする人は認知症にもなりにくいといえるでしょう。「このままではいけない」と気付くことが予防の第一歩。危機感を持っているからこそ、意識的に生活習慣改善などに取り組むことができます。

反対に「認知症になりやすい」傾向がある人の口癖や行動の特徴については、下記の記事もあわせて参考にしてみてください。

👉認知症になりやすい人の口癖は?注意したい特徴と予防法 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ

👉認知症になりやすい人の特徴は? 注意したい生活習慣、予防策を紹介 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ

なりにくい生活習慣を知ることで、対策につなげよう

認知症になりにくい人とは? 発症リスクを低める生活習慣を知って対策を

生活習慣が整っている人は認知症になりにくいとされていますが、具体的にどういったことに気をつければよいのでしょうか。ここからは、現在分かっている範囲で、認知症予防に効果的な生活習慣について紹介します。

規則正しい生活を心がける

規則正しい生活習慣には、いくつかのポイントがあります。主に次の4つを意識しましょう。

  • 1日3食、バランスのよい食事を規則正しくとること
  • 適度な運動を定期的に行うこと
  • 睡眠習慣を整えること
  • 過度な飲酒や喫煙を控えること

さらに詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてみてください。

👉認知症予防に効果的な食べ物は? 最適な食事方法や食材を紹介 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ

👉認知症はトレーニングで予防。今日から始める運動習慣で認知症のリスクを軽減しよう- lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ

👉認知症と睡眠は関連がある? 発症や症状への影響と改善方法を解説 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ

人との交流を楽しむ

認知症になりにくい人は、人とのつながりや交流を大切にしています。家族や友人との会話や食事、外出、社会活動の頻度が多い人は、認知症になりにくいことが分かっており*7、認知症予防のためには意識的にコミュニケーションを増やすとよいでしょう。家に閉じこもらず、一歩外に出てみることが心身の健康の元になり、認知機能低下を防ぐことにもつながります。

ただし、楽しくない集まりなどに無理に参加しても、逆にストレスがたまるばかりで効果が出ないこともあるといいます。無理はせず、気が置けない家族や友人など、自分が楽しめる場でのコミュニケーションを優先してください。

趣味を楽しむ

自分が心から楽しめる趣味があれば、できる範囲で継続して取り組むとよいでしょう。また、興味があれば新たなことに挑戦してみるのもおすすめです。例えば、読書や映画鑑賞、将棋・囲碁などのボードゲーム、音楽活動や芸術活動といった趣味活動が刺激となり、認知症になりにくくなる効果が期待できます。

周囲の人とのコミュニケーションがとれる趣味ならより効果が出やすいという指摘もありますが、一人で取り組む趣味でも心地よい刺激が得られればOK。読書や映画鑑賞なら、趣味仲間と感想などを語り合える場を探すのもよいですね。

基礎疾患を治療する

いくつかの基礎疾患が認知症の発症リスクを高めることが分かっています*8。認知症を予防するためには、体の不調や疾患を放置しないことも大切です。

特に糖尿病や高血圧といった生活習慣病、歯周病などが認知症の発症や進行に関わっていることが報告されています。高齢の人の糖尿病は、アルツハイマー型認知症、血管性認知症などになりやすいといわれています。糖尿病による高血糖、または糖尿病治療の副作用による重篤な低血糖は、ともに認知症の発症リスクを高めるとされ、適切な治療を行って血糖値をコントロールすることが不可欠なのです。また、中年期(40〜64歳)に高血圧を生じている人は、65歳以上の高齢期に認知症を発症しやすくなることも分かっています*9

「自分は健康だから大丈夫」と思っている人でも、物忘れ外来などを受診した際の検査で、初めて糖尿病などの疾患が見つかることも。高齢になると、働いているときは毎年受けていた健康診断などがおろそかになる人も少なくありません。定期的な健診を含め、医療機関を適切に受診し、必要があればきちんと治療を行いましょう。

なりにくい生活習慣を知り、実践してみよう

認知症になりにくい人とは? 発症リスクを低める生活習慣を知って対策を

認知症になりにくい人には、いくつかの特徴や傾向があることが分かりました。認知症になりにくい行動や生活習慣などを参考にしながら、毎日をいきいきと過ごしましょう。はつらつとした規則正しい生活が認知症予防の近道かもしれません。

編集:はてな編集部
編集協力:株式会社エクスライト


フォーネスライフが提供する疾病リスク予測サービス「フォーネスビジュアス」では、20年・5年以内(※5年以内は65歳以上が対象)の認知症をはじめとした各種疾病の将来の発症リスクを予測できます。さらには結果を踏まえて、コンシェルジュ(保健師)がご自身に合った生活習慣改善方法を提案しますので、自分では難しい食生活や運動習慣の改善をプロと一緒に進められます。認知症になりにくい生活習慣に向け、今からできることを始めましょう。

※フォーネスビジュアス検査は、医療機関の医師を通じて提供します。

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*1:参考:国立研究開発法人国立長寿医療研究センター「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック」 [PDF]

*2:参考:厚生労働省「認知症ケア法-認知症の理解」 [PDF]

*3:参考:国立研究開発法人国立長寿医療研究センター「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック」 [PDF]

*4:参考:国立研究開発法人国立長寿医療研究センター「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック」 [PDF]

*5:参考:国立研究開発法人国立長寿医療研究センター「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック」 [PDF]

*6:参考:国立研究開発法人国立長寿医療研究センター「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック」 [PDF]

*7:参考:国立研究開発法人国立長寿医療研究センター「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック」 [PDF]

*8:参考:国立研究開発法人国立長寿医療研究センター「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック」 [PDF]

*9:参考:国立研究開発法人国立長寿医療研究センター「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック」 [PDF]