認知症と睡眠は関連がある? 発症や症状への影響と改善方法を解説

認知症と睡眠は関連がある? 発症や症状への影響と改善方法を解説

認知症と睡眠は深く関連しており、睡眠不足によって認知症の発症リスクを高める可能性や、認知機能の低下によって睡眠障害が引き起こされる場合もあります。

本記事では、睡眠不足が認知機能障害の進行に与える影響、認知症の初期症状と考えられる睡眠障害の症状、そして認知症の予防につながる睡眠の改善方法などについて解説します。

(監修者)佐治直樹 先生

国立長寿医療研究センター もの忘れセンター 客員研究員。「もの忘れセンター」にて認知症の危険因子に関する研究を行うかたわら、もの忘れ外来担当医として、認知症の臨床現場でも活動中。2021年には、東北大学、久留米大学、株式会社テクノスルガ・ラボとの共同研究にて、日本食の食事パターンと腸内細菌、および認知症との関連を発見。研究結果等に関する講演活動にも、積極的に取り組んでいる。

こんな人におすすめ

  • 認知症とその要因について知りたい人
  • 認知症と睡眠の関連について知りたい人

睡眠不足が認知症の発症リスクを高めることがある?

認知症と睡眠は関連がある? 発症や症状への影響と改善方法を解説

アメリカのブリガム・アンド・ウィメンズ病院などが2021年に公開した調査結果では、一晩あたりの睡眠時間が5時間以下の人は、一晩あたりの睡眠時間が7〜8時間の人と比較して、認知症を発症するリスクが2倍であることが分かったと報告しています*1

睡眠不足が認知症を発症する要因となる理由は、主に次の3点です。

・アルツハイマー型認知症の原因となる異常タンパク質(アミロイドβ)の蓄積が促進される
・認知機能と関係がある成長ホルモンの分泌が不足する
・睡眠不足を原因とした食欲増加によってメタボリックシンドロームになると、体内で慢性炎症を引き起こし*2、脳細胞組織にダメージを与えて認知症の発症リスクを高める*3

以上のことから、認知症を予防するには十分な睡眠を取ることが望ましいといえますが、中には「睡眠の重要性は分かっているけれど、昔に比べて自然と早く目が覚めるようになり、長く眠れなくなった」という方もいるのではないでしょうか。そこで、加齢によって起こる睡眠の変化について解説します。

加齢とともに睡眠・覚醒のリズムが変化する

私たちには体内時計(正式には概日リズム)が備わっていて、約25時間周期で体温・血圧・ホルモン分泌などの生体機能を調整しています。しかし、加齢とともに生体機能を変化させる周期が前倒しになり、自然と早寝早起きになるのです*4。また、睡眠の浅い時間が増えるため、尿意や物音などで目が覚めやすくなることもあります。ただしそれ自体は加齢によるもので、健康上の異常ではありません。

睡眠不足が続くと「睡眠障害」になってしまうことも

睡眠不足が過度に進行し、日常生活に支障をきたすようになると「睡眠障害」と呼ばれる病気になります。睡眠障害は、睡眠にまつわるさまざまな病状を指し、主に次の3つに分類されます*5

・不眠症:睡眠の質または量が不足している状態
・過眠症:日中に過剰に眠くなる状態
・睡眠時随伴症:睡眠中に起こる寝ぼけ行動(過度な寝言、眠りながらの歩行、トイレ以外の場所での放尿、悪夢を見るなどの望ましくない現象)

「加齢とともに睡眠は浅くなるものだから、これくらい大したことないだろう」と油断していると、気づかないうちに睡眠障害へ発展してしまう可能性も。認知症をはじめ、生活習慣病を予防するためにも睡眠の質と量に意識を向けることが大切です。

認知症の初期症状と考えられる睡眠障害とは

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睡眠障害が先にあって認知症を発症するケースがあれば、認知症の発症後に初期症状の一部として睡眠障害を引き起こすケースもあります。そのため、下記の症状に該当する場合は、認知症を発症している可能性があるため注意が必要です。

睡眠・覚醒リズム障害

先述したとおり、私たちの体内時計は約25時間周期になっています。地球の周期は24時間なので1時間のずれが生じていますが、日光・食事・仕事や学校などの社会的活動によって自然に調整しているのです。

このずれを調整できないために起こる睡眠障害が「睡眠・覚醒リズム障害」です*6。これにより下記のような影響があらわれ、十分な睡眠が取れない状態になります。

・夜間に適切に眠れない
・夜中に目が覚める(中途覚醒)
・朝早い時間に目が覚める(早朝覚醒)

レム睡眠行動障害

レビー小体型認知症の方に多く見られる症状です。夢で見た内容に反応して体を動かしたり、大声で寝言を発したりする特徴があります。

この症状が出る人は、夢の内容をはっきりと覚えていることが多く、声をかけられると容易に目覚めます。通常、レム睡眠中の筋肉はリラックス状態にあり、夢を見ていても体は動きません。しかし、レム睡眠行動障害を持つ人は、筋肉をリラックスさせる神経の調節機能がうまく働かず、夢の中での行動が実際に体の動きとして現れてしまいます。

この状態は、特に50歳以降の男性に多く見られ、年齢が上がるにつれて発生率が増加する傾向にあります。この障害により、隣で寝ている人を叩いたりベッドから転落したりして、本人や周囲の人がけがをすることがあるため注意が必要です*7

せん妄

せん妄は、しっかりと目が覚めず、もうろうとした状態になる症状です。深い睡眠から突然目覚めた際や、長期間にわたる睡眠不足の後に発生しやすいとされています。

夜間に落ち着きなく動き回ったり、興奮状態になったりします。一方で、昼間には寝ぼけたり、ぼんやりしたりする状態が多く見られます。本人は自分が何をしているのか完全には理解できないことが多いです。

改善する方法は?

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睡眠の量と質を向上させることで、認知症の発症リスクを抑えたり、認知症の進行を遅らせたりする効果が期待できます。睡眠を改善するための具体的な方法を5つ紹介します*8

就寝環境を快適にする

寝室は13〜29度の範囲で快適な室温に保つのが良いとされています*9。季節や居住環境によって異なるため、夏は風通しを良くしたり、冬は暖房をつけたりと調整が必要です。寝る前には部屋を暗くして、静かに眠れる環境を作りましょう。また、体に合ったマットレスや枕を選び、清潔にしておくことも重要です。

日光を浴びる

起床直後に日光を浴びると体内時計がリセットされるので、健康的な睡眠リズムの調整に効果的です。また、日光は睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌を正常化させるので、より良い夜の睡眠につながります。

起床・就寝、食事のリズムを規則正しく整える

起床・就寝と食事の時間を整えることは、生活に一定のリズムをもたらし、体内時計の機能を支えます。

また、適切な睡眠時間の確保も重要です。季節・年齢・体質によって必要な睡眠時間は異なりますが、成人では一般的に6〜8時間が推奨されています。自身にとって適切な睡眠時間かどうかを判断するには、日中の眠気の有無や目覚めたときの感覚を参考にすると良いでしょう。

長時間の昼寝を控える

過度な昼寝は、夜間の睡眠の質を低下させる原因になります。短時間の昼寝(20〜30分程度)は、効果的であるとされていますが、それ以上の長時間にわたる昼寝は避けた方が良いでしょう。その分、日中の活動量を増やせばエネルギー消費が促され、夜にはより深い睡眠を得やすくなります。

アルコール、カフェイン、ニコチンの摂取を控える

お酒に含まれるアルコール、コーヒーやお茶に含まれるカフェイン、たばこのニコチンには、それぞれ強い覚醒作用があります。摂取すると心拍数が増加し、神経に刺激が加わるので、覚醒状態を招く原因となります。

また、アルコールには寝つきを良くする効果が知られていますが、体からアルコールが排出される過程で夜間の覚醒を引き起こすため、結果として良質な睡眠の妨げになってしまいます。

カフェインは夕方までの摂取であれば問題ありません。夕食時にカフェインの入った飲み物を摂取する習慣がある場合は、デカフェ(カフェインの量が少なくなるように加工した製品)に変更したり、カフェインを含まない飲み物(麦茶など)に代えたりしましょう。

たばこは吸わないことが最適ですが、どうしてもという場合は就寝時刻の2時間以上前までには喫煙をやめるように習慣づけましょう。これは、ニコチンの血中半減期(血液中の成分が半分まで減る時間)が摂取してから約2時間後であるためです。ニコチンの摂取量が多いほど睡眠の質が下がるので、なるべく喫煙を控えることを心がけてください。

質の良い睡眠を取るコツについては、下記の記事もあわせてお読みください。

睡眠不足に注意して発症リスクを減らそう

睡眠不足は「アミロイドβ」と呼ばれるタンパク質の蓄積を促進するとされ、認知症の中で最も発症の割合が多いアルツハイマー型認知症を引き起こす原因となります。体内でアミロイドβが蓄積し始めると、認知症を発症するまでには一般的に20年前後の期間があります。認知症のリスクを低減するために、早いうちから良質な睡眠を確保するようにしましょう。

編集:はてな編集部
編集協力:株式会社エクスライト


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