
「運動を始めたい」と思いつつ、最初の一歩が踏み出せない。過去の挫折経験から、続ける自信がない──。誰もが一度は経験する「運動の習慣化」の壁。
でも、もし「三日坊主になってもいい」「誰でもできるようになる」と言われたら、少しだけ心が軽くなりませんか……?
今回お話を伺ったのは、164万人が支持するYouTubeチャンネル「のがちゃんねる」ののがちゃん。彼女もかつてはダイエットに失敗し続けた一人でした。
そんなのがちゃんがたどり着いたのは、誰でもまねできるトレーニングの“仕組み”と“哲学”。その「最初の一歩」として、特別な器具もいらない手軽な有酸素運動を紹介します。
この記事を読めば、のがちゃん流の続けやすいワークアウトのコツが分かり、最初の一歩を踏み出せるはずです。
目次
失敗続きのダイエット。運動が「楽しみ」に変わった瞬間

── 毎日のようにワークアウト動画を投稿されていますが、のがちゃんが運動を始めたきっかけを教えてください。
のがちゃん:学生時代は部活やトレーニングをやっていたわけではなくて、体重は今よりも10キロぐらい太っていたんです。
当時は「運動しよう」というより、とにかく「痩せたい、痩せたい」っていう気持ちが強くて。いろいろなダイエットに挑戦して、その流れでジムにも行っていました。
ちょっと頑張って運動をして痩せることもありましたが、痩せたらジム通いをやめてしまうから、結局はリバウンドしてしまう。そういうターンを何回も繰り返して、最終的な成功にはつながりませんでした。
── 以前の運動に対するイメージというのは、今とはちょっと違うものでしたか。
のがちゃん:やっぱり「痩せたい」という気持ちが前面にあって、「運動を楽しむ」というところまで気持ちが届いていませんでした。手段としての運動という見方しかできてなかったですね……。だから「つらい」とか「頑張らなきゃ」というネガティブな気持ちもありました。
その頃は、メディアで話題になるダイエット法にもすぐ飛びついていました。お米を食べない「糖質制限」とか、ひたすら同じ食事メニューにするとか、長時間「半身浴」をするとか……。どれも長続きはしませんでしたね。
── 失敗続きだったのに、なぜ現在は続けられているのでしょうか。
のがちゃん:実はトレーニングより、YouTubeを始めたのが先だったんです。当初は「10時間で絵がどれくらい描けるようになるか」とか「10時間でスノボはどれぐらい上達するか」とか、いろんなチャレンジ企画を投稿していました。
企画の一つとして「腹筋を毎日2分続けたら、1カ月でどれくらい割れるか」というトレーニング動画に挑戦したんです。最初はそんな軽いノリだったのですが、毎日2分続けてみたら、少しずつ成果が出てきて。そのとき初めて「運動って楽しいかもしれない!」と思えたんです。それが、今に続く全ての始まりでした。
それまではダイエットという目的のための運動だったから、やっぱり挫折もしたし、短期的な目標を達成してやめてしまっていましたから、私の中ではものすごく大きな変化でした。
── 「楽しい」という発見で、トレーニングへの向き合い方はどう変わりましたか。
のがちゃん:腹筋だけではなく、いろいろな運動に興味が湧くようになりました。その流れで自然に手軽に体脂肪率を落とせる有酸素運動にもチャレンジしましたね。
有酸素運動は特別な知識や器具は不要で、例えば「少し早歩きする」だけでもいい。その「始めるハードルの低さ」が、当時の私にはぴったりでした。
初心者でも続けやすい! 運動までのステップを減らす実践例
── YouTubeでは筋トレを中心に投稿されていますが、有酸素ワークアウトをどのように取り入れていますか。
のがちゃん:私の場合は筋トレと食事管理を基本として、さらにブーストをかけたいときに有酸素運動を取り入れています。例えば、食べ過ぎてしまった日に消費カロリーを上乗せするような「掛け算」のイメージですね。
まずは「ついでウォーキング」から始めてみる
── ちなみに最初に取り組んだ有酸素運動は何でしたか。
のがちゃん:一番最初はウォーキングです。それまでは本当に歩いて移動することが嫌いで「痩せたい」と言いながら、家から駅までタクシーに乗っていたんですよ(笑)。でも毎日とにかく歩いて、少しずつ消費カロリーを稼ぐようになりました。
音楽を聴きながらとか、人と話しながらとか、気が紛れることをしながら歩くというのが、最初にやった有酸素運動でしたね。
── 苦手意識のあったウォーキングを、どのように日常に取り入れたのですか。
のがちゃん:「短時間で痩せたい」という考えから「長期的に少しずつ習慣を重ねていこう」という考え方に変わったのが大きかったですね。そこから、一番手軽に始められるウォーキングを日常に取り入れることにしました。この手軽さなら、どんな方でもまねしやすいと思います。
── 時間帯や歩くコースは決めていますか。
のがちゃん:朝にめっちゃくちゃ歩いています。遠めのカフェに、本を持って歩いて行って、また歩いて帰る。「どこかに行くついでに歩く」と長続きします。
カフェも毎回同じじゃなくて、駅前のチェーン店、大きい公園の中のカフェ……と気分転換する。片道15分くらいで、合計だと20~30分くらいかな。
── とはいえ、「毎日30分」と思うと、少し気負ってしまいそうです。
のがちゃん:そうなんです。「30分歩かなきゃ」と思うと、寝坊した日に「やめておこう」となってしまいますよね。だから私も「何分歩こう」とは意気込んでいません。でも、ゼロよりは5分でも10分でも歩いた方が絶対にいい。
例えば、疲れている日は一番近くのお店にする、それで全然大丈夫です。一度やめてしまったことを再開するのは、心理的なハードルがすごく上がります。そのハードルを上げないためにも、毎日少しずつでも繰り返すことが、とても大事だと思っています。
わざわざ着替えなくていい。マットも敷きっぱなしでOK

── 自宅でワークアウトをするときのおすすめアイテムを紹介していただきたいです。
のがちゃん:ウェアは気合いの入ったものではなくて、そのままでも寝られるし、コンビニにも行ける、ぐらいのもので大丈夫です。速乾性のあるTシャツや、ストレッチ性のあるジョガーパンツとかジャージ。トレーニングのために着替えるんじゃなくて、寝て起きて始められるような、本当に楽な格好ですね。
元気がなくて「着替えるの面倒だし、今日はやめようかな」っていうとき、あるじゃないですか? 運動をする上でのハードルを一つでも減らすことが大事なので、すぐに始められる服装がいいんです。私自身、いつでも動ける服で日常生活するようにもなりました。靴も基本はスニーカーです。
あと、トレーニングでヨガマットを使うのですが、マットも敷きっぱなしです。基本的には「取り出して敷く」という動作もなくしたい。
── 運動までのステップを徹底的に減らしているんですね……! 自宅の場合、騒音対策が気になる人もいそうです。
のがちゃん:基本的に私はジャンプは家でやらないですね。これも先ほどの話と同じで、そのために防音用のマットを敷かなきゃとか気にするくらいなら、飛ばない(笑)。ジャンプしなくてもできる代わりのワークアウトはたくさんありますから。
有酸素運動の効果をブーストする!おすすめの短時間ワークアウト
── ウォーキングのような有酸素運動に加えて、自宅で簡単にできる筋トレのようなものもあると、さらに効果が高まりそうですね。
のがちゃん:はい。すごく人気があるのは、寝たままできるお尻のトレーニングです。すぐにできる手軽さはもちろんですが、下半身の筋肉は全身の中でも6~7割を占めると言われているので、トレーニング効率もいいんです。ここからスタートして下半身を鍛えると、その後のハードなトレーニングにも進みやすくなります。
── ダラダラしそうな朝におすすめのワークアウトもありますか。
のがちゃん:「ダイエッター最高の朝習慣」ですね。これも寝たままの状態から始めて、終わる頃には自然と立ち上がっているような流れなので、気持ちよく一日をスタートできます!
のがちゃん:それと、背中のストレッチも、慣れている人は大したことない運動ですけど、初心者の人は結構、汗をかくと思います。
のがちゃん:運動習慣がないと使わない・日常の動きでは全く使わない部位を毎日ちょっと伸ばすだけでも、意味があると思います。
意志に頼らない! 「仕組み」を作るツール
── モチベーションがなくても続けられるように、ツールなどは使用していますか。
のがちゃん:私はスマートフォンで時間管理をするアプリを使っています。
例えば「朝起きて、歯磨き2分」とか。自分が行うメニューを組み込むと、その時間になると次は「〇〇です」と教えてくれる。言われた通りに動けばいいので、自分のルーティンを作れるんです。
「時間がない日の朝用」「帰ってから用」「週末用」と何パターンか作っておくと、それを再生すれば、自分に意志がなくてもそのまま動けばいいのでおすすめです。
── お話を聞いて「運動しよう」と意志を持つのは、結構大変なんだなと気付きました。
のがちゃん:そうですね。ルーティンを決めるのは自分ですけど、そのあとはアプリの指示に従った方が楽な気がします。
特に朝とか休日の午前中とか、なんとなく過ごしてしまいそうな時間帯に、効率よく運動をやりたいと思っていて。ワークアウトしたい時間を中心に、その前後の予定を決めています。
効果を高める! 有酸素運動の正しいやり方

── 初心者がいきなりハードな運動をすると、体を痛めることもありますよね。安全かつ効果的に運動を始めるためのポイントを教えてください。
のがちゃん:体が固まっているなと感じるときは、まずウォームアップから始めましょう。おすすめは、ラジオ体操のような動きのある「動的ストレッチ」です。逆に運動後は、翌日に疲れを残さないために、深呼吸をしながらじんわりと筋肉を伸ばす「静的ストレッチ」でクールダウンするのが効果的です。
── 最初は、どのくらいの時間から始めるのがいいですか。
のがちゃん:初心者の方は10〜20分をイメージしがちですが、いきなりそこを目指す必要はありません。まずは3分や5分など「今の自分より、ほんの少しだけ先」を目標にしましょう。最終的に10分できるようになればいい、というくらいの気持ちで大丈夫です。
── “ちょうどいい”キツさの目安はありますか。
のがちゃん:個人差があるので一概には言えませんが、一番分かりやすいのは「会話はできるけど、歌は歌えないくらい」の強度ですね。「中強度」とも言われますが、少し息が上がるこの状態が、有酸素運動の目安としてちょうどいいです。慣れてきたらスマートウォッチで心拍数を測るのも良いと思います。
── 忙しい毎日の中で、運動する時間を確保するにはどうすればいいでしょう。
のがちゃん:「いつが効果的か」と考えるより「どうすれば毎日続けられるか」が何より大切です。「If-Thenプランニング」という考え方があるのですが、「〇〇をしたら、運動をする」というように、毎日の行動に紐づけてしまうのがおすすめです。
── 具体的には、どのように紐づけるのでしょう。
のがちゃん:私は、お風呂のスイッチを入れた後の「お湯が沸くまでの時間」を筋トレタイムにしています。汗をかいたら、そのままお風呂に入ってしまう(笑)。こんなふうに「朝起きて着替えた後」や「歯磨きを終えた後」など、自分の生活リズムに合わせて組み込んでみてください。朝でも昼でも夕方でも、夜中でもいいですよ!
── ケガを防ぐためのアドバイスもお願いします。
のがちゃん:有酸素運動でケガをすることはほとんどないと思いますが、もし体に違和感があれば、すぐに運動をやめてください。当たり前のことですが、痛かったらお医者さんに診てもらう。無理をしない、痛みをがまんしない。自分の体の声に耳を傾けることが大事です。
挫折しない! トレーニング継続と習慣化のコツ

── 一度でも休んでしまうと、「また三日坊主だ」と諦めてしまいがちですが、のがちゃんはどうやって運動を習慣にできたのでしょうか。
のがちゃん:私なんて「三日坊主」の連続でした。でも、それでいいんです。明確な習慣化のタイミングがあったわけではなく、「少し休んでも、また戻ってきているな」と感じたときに、自然と続けられていることに気づきました。
みんな「三日坊主」を恐れていますけど、続ける・やめるの繰り返しの中で、ちょっとずつ続けられる日数が伸びていったり、再開までの間隔が短くなったりする。だから、周りは気にせず、平気な顔してまた始めればいいんですよ(笑)。
その上で大事なのは「反省をしない」こと。「昨日できなかった分を取り戻そう」とすると、さらにハードルが上がってしまいます。過ぎてしまったことは気にせず、「今日やるか、やらないか」だけを考える。今日できたら、むしろプラスですよね?
── 実際に運動を続けていることでポジティブな変化を感じることはありますか。
のがちゃん:すごくあります! ちょっとずつ続けるという考え方は何に対しても適用できることなので、ペン習字や日記など、いろいろなことが継続できるようになりました。
体が疲れてよく眠れるというのもありますが、なんと言っても気持ち明るくなった感じがします。気分がモヤモヤしているときに、ちょっと運動すると、一気に気持ちが晴れることもあるので、メンタルにはすごくいいなって。
── 何だか運動したくなってきました(笑)。あらためて習慣化しやすいおすすめのトレーニングを教えていただきたいです。
のがちゃん:おすすめはスクワットです。マットもいらないし、立つスペースがあればできる。背中、お尻、太もも、ふくらはぎ、足首と全身を使うので「トレーニングの王様」とも言われています。
年齢を重ねていくと、だんだんお尻とか太ももの筋肉が落ちていく。高齢者で歩けなくなったり、転んで骨折したりする人もいます。歩けることは健康のためにすごく大事なので、スクワットはとてもおすすめです。そして何より、「1回からでもできる」という手軽さが、習慣化の第一歩として最適です。
1日1分のストレッチ、1回のスクワットから始めてみよう
── 運動が習慣化できたら、次のステップとしてどんな楽しみ方がありますか。
のがちゃん:「0→1」の段階を越えたら、何か具体的な目標を持つのはすごくいいと思います。例えば登山やマラソン、格闘技に挑戦するとか。目標を持って、そのためにトレーニングすると大きなモチベーションになって継続できるはずです。
── とはいえ、子育てなどで忙しくなって、続けるのが難しいと感じる人もいます。
のがちゃん:状況が変わったり、優先順位が変わったら、やっぱり前とは同じにはできません。だから以前と比較したり、同じ運動量をこなそうとしたりしなくていい。そのときのベストを尽くす。私はベビーカーを押すのも運動だと思ってカウントしています。
── これまで全く運動してこなかった人でも、のがちゃんのようにできるようになるのでしょうか。
のがちゃん:もちろん、絶対にできるようになります! 多くの人が失敗するのは、ずっと運動を続けてきた人をいきなり目標にしてしまうから。
そうではなく、全くやってこなかった人は、本当に1日1分のストレッチからでいいんです。時間はかかるかもしれませんが、自分でトレーニングをする習慣は、誰でも絶対にたどり着ける場所です。焦らず、「昨日より今日が少しできていればOK」という気持ちで進んでみてください。
── 最後に、この記事を読んで「運動を始めたい」と思った読者に、背中を押すメッセージをいただきたいです。
のがちゃん:もしそう思ってくださったのなら、ぜひ何も準備せず、この場でスクワットを1回だけやってみてください(笑)。とにかく「始める」ということから、全ては始まると思うので。皆さんの挑戦を、心から応援しています!

もっと動きたくなったら。のがちゃんおすすめの全身トレーニングに挑戦!👇
取材:山田井ユウキ
撮影:小野奈那子
構成・編集:はてな編集部
「ちょっとずつが、一番の近道」──のがちゃんが教えてくれたのは、未来の自分のために、今日からできる小さな一歩の大切さでした。
運動で体を動かすこと。そしてもう一つ、今の自分の健康状態を知ることも、未来に向けた大切な一歩です。
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