筋肉痛がある状態で、有酸素運動を続けることは望ましいのでしょうか。「今日もランニングやジョギングで走って大丈夫?」「ウォーキングをしてもけがにつながらない?」などと不安を感じている方も多いはず。
一概に悪いと決めつけられるものではなく、メニューや強度によっては、血流を促進して回復を早めてくれるものもあります。
本記事では、筋肉痛の捉え方や注意点、安全に有酸素運動を行うポイントをまとめました。「続ける・休む」の判断基準を分かりやすく解説します。
目次
筋肉痛でも有酸素運動はOK? 基本の考え方
筋肉痛があるときに有酸素運動を行ってもよいかどうかは、状況によって異なります。痛みの種類や程度、部位などを確認した上で、無理がないかを慎重に判断することが大切です。まずは、有酸素運動が身体に与える影響から見ていきましょう。
有酸素運動が身体に与える主な影響
軽めの有酸素運動にはリカバリー効果がある一方で、無理をすると逆効果になるため、慎重に判断することが大切です。有酸素運動をすると全身の血流が促され、筋肉の修復に必要な酸素や栄養素がスムーズに行きわたります。痛み・疲労の原因となる乳酸などの老廃物も排出されるため、身体の回復を助ける「積極的休養(アクティブレスト)*1」として機能します。緊張して硬くなった筋肉がほぐれると、痛みが和らぐ効果も期待できるでしょう。
その反面で、ランニングのような衝撃の強い運動や、長時間にわたる過度な運動は禁物です。筋肉に負担をかけ過ぎると、さらなるダメージにつながり炎症を悪化させるリスクがあります。
有酸素運動に加えて筋トレも考えている方は、下記の記事をチェックしてみてください。
筋肉痛のとき筋トレしてもいい?痛みの程度別の対処法と回復法を解説 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ
動いていい、休むべきの判断は?
筋肉痛がある場合は、痛みの種類や程度から「運動するべきか」を判断しましょう。具体的な判断基準として、以下では筋肉痛を3つのタイプに分類し、それぞれの対処法を解説します。遅発性筋肉痛(DOMS)
遅発性筋肉痛(DOMS:Delayed Onset Muscle Soreness)*2は、不慣れな運動の翌日~3日後に痛みのピークがくる筋肉痛です。筋線維が微細に損傷し、修復過程で起こる炎症反応によって痛みが生じます。多くの人が「筋肉痛」と認識している種類で、普段は使わない筋肉に負荷をかけたり、高強度のトレーニングを行ったりすると発生します。「痛いけど、動かせないほどではない」といった感覚を伴うことが特徴です。
遅発性筋肉痛の場合、軽い有酸素運動は回復面でプラスに働きます。無理のない範囲で、全身の血流を促進するメニューを選びましょう。20分程度のウォーキングや軽い負荷でのエアロバイク、水中ウォーキングなどがおすすめです。
疲労が蓄積している場合
筋肉が常に緊張状態にあり、血行も悪くなっている状態では「特定の部位が常にだるい」「筋肉の張りが何日も抜けない」といった症状が見られることがあります。疲労が抜けにくいのは、身体の回復力が追いついていないためと考えられます。オーバートレーニング(練習のやり過ぎ)や栄養不足、睡眠不足などの複合的な要因が考えられるため、無理に有酸素運動をすることは控えましょう。
積極的に休養を意識し、可能であれば、軽いウォーキングやストレッチで血流を促し、身体のリズムを整えましょう。
また、トレーニングの頻度や強度を見直すと同時に、食事面や睡眠などの生活習慣も改善してみてください。
局所的な痛み・鋭い痛み
局所的な痛みや鋭い痛みは、通常の筋肉痛とは異なる危険なサインです。特に以下のケースに該当する場合は、筋線維の深刻な断裂(肉離れ)や、靭帯・腱の損傷リスクがあります。- 明らかな腫れがある
- 患部に熱感がある
- 関節の可動域が著しく制限される
このタイプの痛みがある場合は、すべての有酸素運動を中止しましょう。完全な休養を取り、患部を冷やすためにアイシングを行います。
症状が改善しない、または悪化するようであれば、迷わず整形外科などの診療科を受診してください。無理をすると、長期的な離脱や後遺症につながりかねません。
どの運動がいい? 痛みをふまえたおすすめ度

ここでは代表的な有酸素運動について、筋肉痛への影響とおすすめ度をまとめました。以下の内容を参考にしながら、現在の状態に合ったメニューを選びましょう。
- ウォーキング:最も安全で、負荷の調整が容易な「積極的休養」の王道
- バイク(自転車):着地衝撃がないため、関節への負担を抑えられる
- 水中運動:水の浮力が体重を支えてくれるため、関節や筋肉への負荷が少ない
- ランニング:着地のたびに、体重の約2〜3倍もの衝撃が足腰にかかるため注意が必要
運動種目 | 筋肉痛時のおすすめ度 | ポイント |
---|---|---|
ウォーキング | ◎ | ・20〜30分が目安 ・会話ができるペースで行うのが理想的 ・硬くなった筋肉を、心地よくほぐす効果も期待できる |
バイク(自転車) | ◯〜△ | ・15〜20分が目安 ・負荷を最も軽く設定する方法がおすすめ ・太ももの前側(大腿四頭筋)や後ろ側(ハムストリングス)に、強い痛みがある場合は要注意 |
水中運動 | ◎ | ・リハビリに用いられるほど安全性が高い ・心身のリフレッシュ効果も期待できる ・水圧が全身をマッサージするように、血行を促進してくれる |
ランニング | △〜× | ・筋肉痛時は、肉離れなどの深刻なケガにつながりかねない ・低負荷な運動への切り替えがおすすめ |
メニューで迷ったら、負担が少ないウォーキングや水中運動を選びましょう。20分程度の短い時間から始めると、安全性の高い有酸素運動になります。
正しい対処法は年齢・性別で異なる
筋肉痛のリスクや回復のプロセスは、年齢・性別によって異なります。正しいケアができるように、ここからは女性と男性の違いや、中高年以上の対処法について紹介します。女性の傾向と対策
女性はホルモンバランスが周期的に変動するため、筋肉痛との付き合い方に工夫が必要です。以下では、特に押さえておきたい傾向をまとめました。- 男性より筋肉量が少ないため、筋肉痛が起こりやすい
- 一般的にはタンパク質の合成能力も低いため、回復に時間がかかりやすい
- 特に冷え性の女性は、血行不良が筋肉痛の回復を妨げる要因になる
女性が筋肉痛のときに有酸素運動を行う場合は「身体を温めるケア」をセットで行いましょう。例えば、入浴で身体を芯から温める、ストレッチで血行を促進する、保温性の高いウェアを着用するなどの方法がおすすめです。
また、有酸素運動自体も低負荷なメニューに変えて、ウォーキングなどを取り入れてみてください。
男性の傾向と対策
一般的に、男性は筋肉量が多いため、体力に自信があるとつい無理をしてしまいます。特にトレーニングに熱心な人は「痛みは気合で乗り越えるもの」と考えることもあるでしょう。筋肉痛などの痛みは、身体が「今は休息が必要」と教えてくれているサインです。無理をしてトレーニングを続けると、回復のプロセスを妨げたり、悪化したりするリスクがあります。
痛みのレベルは客観的に判断し、少しでも「いつもと違う」「鋭い痛みだ」と感じたら計画を変更しましょう。自身の身体を過信しないようにしてください。
中高年・高齢者が気を付けたいこと
年齢を重ねると、若いころに比べて身体の回復は緩やかになり、筋肉や関節の柔軟性も低下する傾向にあります。痛みが長引きやすく、関節症(変形性膝関節症など)を患っている方も増えるため、運動メニューはより慎重に選ぶことが必要です。基本的にランニングなどの衝撃がかかる運動は避けて、関節への負担を抑えたメニューにしましょう。例えば、水中ウォーキングは関節と筋肉への負担が少ないため、中高年にとっては理想的なリカバリー方法です。
また、椅子に座ったままの足踏み運動や、フィットネスバイクを使った有酸素運動も、安全に血行を促せるメニューです。
筋肉痛の回復には「栄養・睡眠・水分補給」
筋肉痛の回復プロセスには、栄養・睡眠・水分補給も欠かせません。ここでは、筋肉の修復を促すポイントや、理想的な休養方法について解説します。必要な栄養と摂取のポイント
損傷した筋線維の修復には、タンパク質が使われます。鶏むね肉や魚、卵、大豆製品などを積極的に取り入れて、毎日多くのタンパク質を摂取しましょう。「体重1kgあたり1.2g〜1.6g程度/日」を目安にするのがおすすめです。また、エネルギー代謝を助けるビタミンB群*3や、コラーゲンの生成を助けるビタミンC*4も必要です。豚肉や玄米、パプリカ、ブロッコリーなどの食品も、できるだけ取り入れてみてください。
さらに抗酸化成分*5がある食品(トマトや緑茶など)も、炎症を抑えつつ筋肉の回復をサポートしてくれます。
サーモンやアボカドに含まれる良質な脂質(オメガ3脂肪酸*6など)は炎症を抑制して筋肉痛や疲労の緩和につながる栄養素なので、積極的に摂取しましょう。
トレーニング期間の食事については、以下の記事でも詳しく解説しています。
筋トレは食事が命?タイミングや目的別の食事メニューを徹底解説 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ
ベストな睡眠時間とおすすめの習慣
筋肉痛の回復には、筋線維の修復を促す成長ホルモンが欠かせません。成長ホルモンは主に睡眠中に分泌され、睡眠直後の深いノンレム睡眠中に分泌がピークに達します。睡眠時間については、最低でも7時間以上を確保しましょう。睡眠不足になると、成長ホルモンの分泌が阻害され、筋肉痛の回復が遅れてしまいます。
ただし、運動直後は交感神経が優位になり、興奮状態(過覚醒)になって寝つけないことも。そのような場合は、就寝の1〜2時間前に休息モードに切り替える習慣を取り入れてみてください。
具体的な習慣としては、クールダウンのストレッチや、ぬるめのお湯にゆっくりと浸かること、リラックスできる音楽を聴くことなどが挙げられます。睡眠時の悩みを抱えている方は、以下の記事もチェックしてみてください。
眠れない時の対処法は?タイプ別の不眠対策、どうしても眠れない夜の過ごし方も - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ
水分補給
筋肉の回復プロセスでは、水分補給も重要な役割を果たします。筋肉の約75%は水分で構成されている*7ため、身体の水分量が不足すると、回復プロセスに必要な化学反応がスムーズに行われません。血流の悪化により、栄養素の運搬や老廃物の排出が滞ることもあります。「のどが渇いた」と感じる前に、こまめに水分補給する習慣をつけましょう。
多くの汗をかいた運動後には、ナトリウムなどの電解質(ミネラル)を補給することも大切です。スポーツドリンクなどを活用し、身体の最適な水分バランスを保ってください。
筋肉痛のときに避けたいNG行動

筋肉痛の対処を誤ると、けがをしたり回復が遅れたりするおそれがあります。以下では、筋肉痛のときに避けたいNG行動をまとめました。
痛みを我慢してトレーニングする
無理をしてトレーニングをすると、炎症が悪化して回復が遅れることもあります。最悪の場合は、肉離れなどの深刻なけがにつながりかねません。身体のサインを敏感に察知し、適度に休養する期間を設けましょう。安静にし過ぎる
軽い筋肉痛のときに動かないでいると、かえって血流が滞り、筋肉が硬直してしまう可能性があります。回復に必要な栄養素も行き届きにくくなるため、適度な運動を心がけましょう。ただし、激しい痛みがある場合は安静にしてください。マッサージのやり過ぎ
炎症を起こした部位を強く揉みすぎると、過剰な刺激となって毛細血管をさらに傷つけます。炎症が悪化することもあるので、周りを優しくさする程度に抑えましょう。上記のほか、栄養不足や睡眠不足、身体を冷やすこともNG行動です。いずれも身体の自然治癒力を低下させ、筋肉の回復プロセスを妨げる可能性があります。
これらのNG行動に気をつけながら、安全に有酸素運動を取り入れましょう。
身体の調子と相談しながら適切な運動メニューを
筋肉痛があるからといって、すべての運動を中止する必要はありません。ウォーキングのような低負荷の有酸素運動であれば、むしろ血流を促進し、回復を早める効果が期待できます。ただし「どんな種類の痛みか」「身体はどういった状態なのか」は、冷静に判断しなければなりません。身体から危険サインが出ている場合は、積極的休養を優先して取り入れましょう。
ご自身の身体と対話をしながら、サボりすぎない範囲で有酸素運動を続けてみてください。
編集:はてな編集部
編集協力:株式会社YOSCA
下記の記事でも、有酸素運動のヒントを紹介しています。
👉有酸素運動と筋トレの順番はどちらが先?初心者・中高年・忙しい人のライフスタイル別メニュー - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ
運動初心者や30代以上の女性、中高年層などに向けて、自身に合った「有酸素運動と筋トレ」メニューの考え方と無理なく続ける始め方をまとめています。👉有酸素運動は毎日やる?ダイエットなどの効果が出る頻度とやり方 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ
有酸素運動を毎日やってもいい? 毎日行うメリットとデメリットを整理しながら、ダイエットや健康維持、筋肉作りなど目的別の最適な頻度を解説しています。👉毎日30分の有酸素運動で効果!ダイエット等で運動の頻度を高めたい人向けに習慣化のコツも - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ
あなたに合ったちょうどいい「30分の有酸素運動習慣」を見つけるヒントを、目的別・年代別・生活スタイル別の実践法をもとに紹介しています。さらに詳しい有酸素運動の情報は、下記のページからもどうぞ。
有酸素運動 カテゴリーの記事一覧 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ
有酸素運動をはじめとした運動習慣をつけることは、健康な生活を送る上で大切なポイントです。
近年では、健康状態を見える化して分析できるサービスが登場しました。ご自身の運動習慣を把握し、生活や健康面を改善していくために、こうしたテクノロジーを取り入れてみるのもひとつの方法です。
👉フォーネスビジュアス|病気になる前にわかる(NECグループ発)フォーネスライフが提供する疾病リスク予測サービス「フォーネスビジュアス」は、従来とは異なるアプローチで健康状態を把握できるサービスです。体力を可視化する「心肺持久力」や、食事量と運動量の手がかりになる「安静時代謝量」などを参考にしながら、ご自身の身体と向き合えます。
さらに、将来の疾病リスクを可視化し、専門資格を持つコンシェルジュから生活習慣に関するアドバイスも受けられます。フォーネスビジュアスをぜひ活用し、ご自身に合った運動メニューや食事、睡眠習慣などを把握しましょう。
※フォーネスビジュアス検査は、医療機関の医師を通じて提供します。
*1:参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「身体と心の 疲労回復」
*2:参考:「遅発性筋痛に対するストレッチの効果」
*3:参考:厚生労働省「(2)水溶性ビタミン」[PDF]
*5:参考:「抗酸化作用を有したサプリメントの摂取が身体的疲労度およびスポーツパフォーマンスに与える影響」[PDF]
*6:参考:日本脂質栄養学会「毎日のオメガ3脂肪酸で身体能力の維持を」