認知症になりやすい人の特徴は? 注意したい生活習慣、予防策を紹介

認知症になりやすい人の特徴は? 注意したい生活習慣、予防策を紹介

認知症に関する研究が進んだ結果、認知症になりやすい人にはいくつかの共通した特徴や生活習慣があることが分かっています。どのような特徴があるか、対策とともに紹介します。

(監修者)矢島隆二 先生

総合リハビリテーションセンター みどり病院 副院長、認知症疾患医療センター 副センター長
脳神経内科・認知症・総合内科等専門医。新潟大学医学部卒業後、高度急性期医療から地域の総合病院まで幅広く臨床経験を積み重ね、新潟大学附属脳研究所で認知症の研究を行い、医学博士号を取得。現在は認知症や神経難病を中心に、リハビリテーションにも重点を置いた神経内科の臨床現場で活動中。認知症や神経難病などの治験も行うかたわら、講演や執筆にも精力的に取り組む。

こんな人におすすめ

  • 認知症の原因となるような自分の要因や生活習慣を把握したい人
  • 発症を避けたいと考え、自分で対応策を調べている人
  • 認知症になりやすい人の特徴や生活習慣の傾向を知りたい人
  • 上記を知った上でリスクを減らしたい、予防したいと考えている人

認知症になりやすい人の行動は?

認知症になりやすい人には、下記のような特徴があると考えられています。

会話の機会が少ない

人との交流や会話においては、相手の感情や意図をくみ取ったり、状況や文脈を理解したりしながら自分も発言をするという、高度な対応が必要になります。

これらは「社会的認知」と呼ばれる認知機能であり、人との会話や交流によってこの機能を活性化させることは、認知症の発症や進行予防に重要です。

逆に言うと、人との会話や交流が少ない人は、認知症の発症リスクが高くなりやすいと考えられます。認知症と人との交流について調べた研究では、「同居人以外の他者との交流頻度が週に1回未満の場合、自立した生活を送る能力の低下や認知症発症、ひいては早期死亡のリスクが有意に高くなる」という報告*1もあります。

外出が少ない

外出は、心と体の健康を保つことと深く関連しています。

外出には、活動量が増えて体の健康を保つだけではなく、憂うつな気分になりにくい効果もあるといわれています。一方、外出が少ない場合、認知機能の低下や生活機能障害、死亡といったさまざまなリスクが上昇することが報告されていて、認知症になりやすいと考えられます。「外出頻度が週に1回未満の人は、ほぼ毎日外出する人と比べて要介護状態に陥るリスクが高まる」という研究結果もあります*2

趣味などで頭や体を使う機会が少ない

絵を描く、書道をする、楽器を演奏する、歌を歌う、物づくりをするなどのいわゆる芸術文化活動には、認知機能を改善する効果があることが報告されています。

一つの作品を完成させるまでにさまざまなことを考えたり、体を動かしたりすることで、脳に刺激を与えられるためだと考えられます。反対に、これといった趣味がなく、頭や体を使う機会が少ないと、認知症になるリスクが高まりやすいといえるでしょう。

睡眠が適切にとれていない

睡眠が適切にとれていないと、認知症になる可能性が高まるといわれています。仕事によって生活リズムが不規則だったり、心配ごとが多かったりして睡眠時間が不足すると、認知症のリスクにつながります。

なりやすい人の生活習慣は?

テーブルに肘をついている男性の画像

認知症になりやすい生活習慣としては、下記のようなものが挙げられます。

喫煙

タバコは血流を低下させることなどから、脳血管性をはじめとした認知症の発症リスクに関連があります。喫煙者は非喫煙者よりも認知症のリスクが高いほか、認知症を発症する可能性のある年齢よりも前に死亡するリスクが高くなるといわれています。

過度の飲酒*3

アルコールは脳に影響を与え、飲酒量が増えるほど脳が萎縮することが分かっています。したがって大量の飲酒は脳の変化をもたらし、認知障害を引き起こすリスクを高めます。例えば、350mLのビールを週に7本以上飲む人の認知症発症リスクは、まったく飲酒しない人の約1.5倍、14本以上飲む人は約2.5倍になるという調査結果があります*4

運動不足

人は、加齢とともに徐々に運動量が減少する傾向にあります。運動量が低下すると筋肉量が減少し、ますます運動がおっくうになり、積極的に動かなくなります。その結果、運動から得るはずだった脳への刺激が減り、認知症を招きやすくなると考えられます。

なりやすい人がかかっている病気・けがは?

健康診断の結果の画像

下記のような病気にかかっていたり、体調の異常があったりする場合、認知症になりやすい傾向があります。

高血圧*5

高血圧は脳梗塞などの脳血管障害や心不全の危険因子として知られ、長い間治療がなされないままだと、やがて血管性認知症に至ることも多い病態です。また、理由は明確になっていませんが、未治療の高血圧がある場合に「アミロイドβ」というたんぱく質が蓄積しやすくなることが示されており、高血圧はアルツハイマー型認知症の発症にも関与していると考えられています。

糖尿病*6

糖尿病も、動脈の血管が硬くなる“動脈硬化”を引き起こすことがあり、その結果として血管がつまりやすくなっていきます。そのため、高血圧と同様に認知症の発症リスクを高めます。

さらに、糖尿病になるとインスリンというホルモンを多く必要としますが、このインスリンを分解する酵素がアミロイドβの分解にも関わることが明らかになっています。糖尿病患者さんはインスリンの分解にその酵素が多く消費されることになり、分解されずに残ってしまうアミロイドβが徐々に蓄積していって、アルツハイマー病の発症リスクが高まるといわれています。

抑うつ*7

うつ病と認知症には深い関わりがあります。高齢者のうつ病では、物忘れや判断力の低下を訴えることが多く、認知症と間違われることがあります。一方で、認知症の初期の症状や行動・心理症状として、うつ症状が現れることも。うつ病を発症する年齢が高くなるほど、認知症の発症リスクも高まることから注意が必要といえます。

聴力の低下*8

聴力の低下は、海馬や嗅内皮質を含む側頭葉の容積の急激な減少と関連していて、認知症のリスクを大きく高めると考えられています。ほかに、聞こえが悪くなることで、人とのコミュニケーションや社会的交流がしにくくなることも認知症を引き起こす理由の一つです。何度も聞き返すのが嫌で人との会話が減ったり、外出の機会が減ったりする傾向があります。

頭部の外傷*9

交通事故やスポーツ、または日常生活などで頭をぶつけて脳しんとうなどを起こすと、認知症のリスクが高まるという報告があります。脳の損傷度合いが高くなるほど認知症のリスクが高くなり、若年性アルツハイマーを発症する人もいます。

認知症と遺伝は関係がある?

遺伝子・二重らせんの画像

認知症のなりやすさに遺伝要因が関係することもあります。アルツハイマー病の中には、遺伝要因が関連する「家族性アルツハイマー病」があるといわれています*10

家族性アルツハイマー病の特徴は大きく二つあります。一つは40~60代の比較的若い世代で発症するケースが多いこと。もう一つは、進行が速いことです。症状は、高齢者のアルツハイマー型認知症と同様のこともありますが、物忘れよりも、道に迷ったりうまく言葉が出なかったりという症状が先行することもあります。

ただし、認知症は遺伝要因だけでなく、生活習慣や環境などさまざまな要素が重なって発症します。したがって、家系内に認知症の方が複数人いたとしても、すぐに遺伝要因が関係していると思い込む必要はありません。遺伝要因を過度に心配するよりも、生活習慣を見直すなど、自分で変えられる要因を見つめ直すことが重要です。

予防する方法は?

笑顔で会話をする女性たち

認知症になりやすいとされる行動や生活習慣をあらためて、認知症の発症や進行を遅らせていきましょう。

高血圧や糖尿病などの持病を適切に管理する*11

高血圧や糖尿病などの持病がある場合は、医師の指示に従って薬を飲んだり、食生活を改善したりして、病気が進行しないよう努めましょう。これらの病気は自覚症状があまりないため、治療を続けるモチベーションを保ちづらいかもしれませんが、病気の進行をきっかけに認知症などのさまざまな病気を発症することもあるため、適切に管理することが重要です。

運動する

認知症の予防には、ウォーキングやジョギングといった週3日以上の有酸素運動がおすすめです。運動は脳の神経細胞を活性化させ、さらには身体機能の維持にも有効とされています。高齢になると筋肉量が落ち、転倒してケガをしやすくなります。ケガによって活動量が低下すると、脳への刺激が低下し、認知症のリスクを高めることにもつながるため、年代に合わせて適切に対応していきましょう。

禁煙する*12

高齢であっても喫煙をやめれば、認知症の発症リスクは軽減されます。一人でやめるのが難しい場合は、禁煙外来に行くなどして、専門家の力を借りるのもよいでしょう。

飲酒は少量にとどめる

大量のアルコールは、脳への影響によって認知機能低下のリスクを高めます。飲酒する場合は1日に350mlのビール1本相当とし、最低でも週に1日は控えるよう意識しましょう*13

睡眠時間を確保する

睡眠と認知症との関連については研究が進み、証明されつつあります。認知機能の低下を防ぐには、睡眠時間が長過ぎても短過ぎても良くありません。認知症予防には、5~7時間程度の睡眠時間が適切という報告があります*1。適切な睡眠時間には個人差があるので、5~7時間を一つの目安に、自分に合った適切な睡眠時間をとるようにしましょう。

外出や人との交流をはかる

外出をしたり、人とコミュニケーションをはかったりすると、認知機能低下や生活機能障害などのリスクの軽減につながります。週に1回以上、できれば1日に1回以上は外出をして、誰かと話すことを心がけるとよいでしょう。

生活習慣を改善し、認知症になりにくい生活を心がけよう

認知症の原因には生活習慣に関することが多く、生活習慣を見直すことが、対策につながります。生活習慣の改善は、個人の努力だけでは難しいこともあるため、必要に応じてプロの力を借りると効果的な対策が立てられます。

編集:はてな編集部
編集協力:株式会社エクスライト


フォーネスライフが提供する疾病リスク予測サービス「フォーネスビジュアス」では、20年・5年以内(※5年以内は65歳以上が対象)の認知症をはじめとした各種疾病の将来の発症リスクを予測できます。さらには結果を踏まえて、コンシェルジュ(保健師)がご自身に合った生活習慣改善方法をご提案しますので、自分では難しい食生活や運動習慣の改善をプロと一緒に進められます。認知症になりにくい生活習慣に向け、今からできることを始めましょう。

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*1:参考:国立研究開発法人国立長寿医療研究センター「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック」 [PDF]

*2:参考:国立研究開発法人国立長寿医療研究センター「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック」 [PDF]

*3:参考:厚生労働省 e-ヘルスネット「アルコールと認知症

*4:参考:Mukamal KJ, Kuller LH, Fitzpatrick AL et al. Prospective study of alcohol consumption and risk of dementia in older adults. JAMA, 289:1405-1413, 2003.

*5:参考:まえだ循環器内科「血圧管理と認知症

*6:参考:医療法人社団 瑞芳会 石垣内科医院 院長のアドバイスブック「糖尿病と認知症

*7:参考:国立長寿医療研究センター「高齢者「うつ」の原因は?」、 健康長寿ネット「認知症とうつ

*8:参考:「Dementia prevention, intervention, and care: 2020 report of the Lancet Commission」、国立研究開発法人国立長寿医療研究センター「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック」 [PDF]

*9:参考:「Dementia prevention, intervention, and care: 2020 report of the Lancet Commission」、徳島大学脳神経外科「外傷性認知症研究

*10:参考:桑名眼科脳神経クリニック「アルツハイマー型認知症ー遺伝・危険因子ー

*11:参考:「Dementia prevention, intervention, and care: 2020 report of the Lancet Commission

*12:参考:「Dementia prevention, intervention, and care: 2020 report of the Lancet Commission

*13:参考:e-ヘルスネット「アルコールと認知症