「150歳まで生きて筋トレしたい」新日本プロレスリング株式会社社長兼エース・棚橋弘至が語る健康と老後


日本最大のプロレス団体・新日本プロレスのエース・棚橋弘至さんは経営不振に陥っていた団体を復活させ、プロレス人気を回復させた立役者です。

2023年12月には代表取締役社長に就任し、現役プロレスラーと二足の草鞋を履くことになりました。長年に渡り、プロレス界の第一線で活躍してきた棚橋さんを支えた肉体はどのようにして維持されているのか。後編では棚橋さん自身の健康とセカンドキャリアについてお届けします。

前編記事:棚橋弘至「体の変化に合わせて戦い方を変えていく」プロレス界を盛り上げるためにも、自ら学び続ける

プロレスラーのセカンドキャリアの選択肢を、新日本プロレスとしても増やしていきたい

──棚橋さんは長いプロレスラー人生の中でいろいろな先輩プロレスラーのセカンドキャリアを見てきたと思いますが、印象的なキャリアの築き方をしている先輩プロレスラーはいますか?

棚橋弘至さん(以下、棚橋):僕が学生時代に好きだったのは現在石川県知事の馳(浩)先生(2023年12月時点)です。プロレスラーとして知的な部分をずっと残していて、引退前に政界に進出して国会議員プロレスラーになって、文部科学大臣になって、地方行政の道に進んで、石川県知事になっている。そういった人生設計はさすが頭のいい人だなと思いました。

現役選手では真壁(刀義)さんみたいにスイーツ好きという個性を生かして、テレビ番組にたくさん出たり、選手を続けながら何か世間に通用するような自分のスキルを磨いたりしておくことはとても大事だと思いますね。あとは長州(力)さん。僕は長州さんのようなナチュラルな面白さがないので(笑)、いいキャラしているなあと思っています。世間のプロレスラーに対するイメージは「大きくて、少し粗雑で、大食い」だと思うんですが、僕はどれも当てはまらない。プロレスラーの割には勉強ができるという個性しかないので、長州さんのような先輩を見ると羨ましいですよ。

──長州さんの独特の言葉は、プロレス界隈を飛び越えて世間で話題になりますよね。

棚橋:そうですよね。でも、あのユニークさは後天的に身につくものじゃないので、長州さん枠は難しいです。

──では、プロレスラーのセカンドキャリアについてどのようにお考えですか?

棚橋:これは僕だけに限らずプロレスラーのセカンドキャリアは飲食業をしたり、地元に帰ったり、政治家になったりした人がいますが、選択肢が少ないですよね。ただ、海外だとプロレスラーを引退しても団体のエージェントとして残ったり、コーチになったり、ファーム団体(二軍の団体)の責任者になったりとさまざまな形でレスリングビジネスに関わっている方が多いんです。

新日本プロレスとしては選手引退後のセカンドキャリアをゼロからのスタートではなく、何かしら選手のキャリアを生かした形で団体に関わったり、何かを事業を始めるにしても新日本プロレスとして協力できるような体制にしたりしたいです。

──棚橋さん自身のセカンドキャリアはどう考えていますか?

棚橋:昨年末に社長に就任しましたが、選手を引退してもプロレスに関わり続けたいですね。やっぱり僕はプロレスを通じて人間として成長させてもらったので、僕だからできる新日本プロレスの広め方や後輩プロレスラーの売り込み、団体のPRに一役買いたいですね。選手の立場なら試合でお客さんに楽しんでもらう部分の責任がほとんどだと思いますが、社長になると他選手や社員、その家族を背負うという責任が大きくなるので、そういった部分も今後はチャレンジしていきますよ。

(写真提供:新日本プロレスリング株式会社)

健康不安はないけれど、ショートスリーパーという生活習慣の影響が気になる

──棚橋さんは風邪をほとんど引かないということですが、現在、健康に対する不安や課題はありますか?

棚橋:体調は悪くないですし、ヒザは慢性的に調子が良くないんですけど、長年の友なので問題ないです。ただ2000年代からプロモーション活動をして、移動して、試合というのが日々のルーティンになったので、ショートスリーパーになって、睡眠時間が1日3~4時間で過ごしてきたんですよね。今は少ない睡眠時間でも元気なんですけど、その辺が将来的にどう影響が出てくるのかなとは思っています。

──長年プロレスラー生活を送る中で、健康管理方法において印象に残っている選手はいますか?

棚橋:中西学さん*1は朝たくさん食べて、昼と夜は食べ過ぎないようにするという食事をしているんですけど、僕にとってもこれが最も体脂肪が残りにくい理想の食事法だったんです。SNSで「モンスターモーニング」と題して、ホテルの朝食バイキングで大量に食べていて、「こんなに食べて大丈夫?」と思う人はたくさんいたと思いますが、これが中西さんや僕にとって良くて。たくさん食べるなら朝です。これは僕も真似しています。

──中西さんは現役時代、まるで岩のように鍛えられた肉体の持ち主でしたよね。

棚橋:中西さんの肩幅、背中の広さは他の選手ではなかなか出せなくて、あれは天性のものですよ。骨格と筋肉は遺伝的な組織ですが、筋肉は大きくできます。ただ、日本人は西洋人と比べると骨格が大きくないので、スケール感を出しにくいんですよ。

──中西さんの食事方法もとても興味深かったです。ご自身の老後についてはどのようにお考えですか?

棚橋150歳まで生きて筋トレし続けようかなと思っています。その年齢になると孫もひ孫もいなくなってしまうかもしれませんけど、最後の死因は決めています。150歳まで働きすぎて過労死するんです。疲れたことがないと言っている男の死因が過労死なら痛快なのかなと。僕が死んだときに悲しんでほしくなくて、笑ってほしいんです。

──それは世界最高齢になりますよね! なぜ150歳まで生きたいのですか?

棚橋:文明の発展や人類の進化を見届けたいんです。そして、僕がこれまでのプロレスラー人生で出会ったプロレスラーたちのすごさを語り継いでいきたいんですね。語り部じいちゃんになります(笑)。

──素晴らしいです! 棚橋さんのお話を聞いて思い出すのは、明石家さんまさんです。さんまさんもショートスリーパーと言われていますね。

棚橋:さんまさんは自分が出演した番組を見て勉強して、反省して次に生かしているとお聞きしたこともありますが、素晴らしいルーティンだと思います。

──さんまさんは自分の番組だけじゃなくてスポーツ中継や若い人が出るような番組などもかなりチェックしていて、今のトレンドにも敏感な印象です。

棚橋:そうなんですね。プロレスラーはアウトプットの量が多くて、インプットの量を超えてしまうんです。だからインタビューで「頑張ります」「勝ちます」とかしかコメントが出てこなくなるんですけど、常に小説やビジネス書を読んだり、映画鑑賞したりして新しい情報をインプットして、プロレスファン以外の皆さんにも目にしてもらえるようなコメントが必要ですよね。例えば「負けて悔しい」という感情をぶつける言葉はいいと思いますけど、それだとプロレスというジャンルを飛び越えて波及しないんですよ。

──どういうことでしょうか? 詳しく教えてください。

棚橋:僕だったら仮面ライダーのセリフを引用したり、毎回記事の見出しになるような言葉を考えたりして、ジャンルを飛び越えるキーワードを挟むようにしますね。プロレスファンのパイは限られているので、プロレスを見ていない人を常に意識したコメントも必要だなと思います。

両親も大病を患わず、健康不安はない。でも将来の心配はある

──エースとしてファンを魅了し続けるためには、さまざまなインプットを絶えず行う必要があるんですね。棚橋さんは健康面に不安はないとのことですが、老後や今後の健康不安について、情報を集めたり誰かの意見を求めたりしたことはありますか?

棚橋:幸い、両親はこれまで大病を患っていないので、遺伝的な病気の心配はしていないですね。お酒もみんなでご飯を食べるときくらいしか飲みませんし、健康面の不安は今でもやっぱりありません。

──健康診断で重い病気の懸念がある状態が10だとすれば、今の不安度はどれくらいですか?

棚橋:それは0です。新日本プロレスでは一年に一回、人間ドックが義務付けられています。プロレスラーは日々のトレーニングによって筋繊維が壊れてしまい、血液検査ではクレアチンキナーゼという物質が異常値として出るんですよ。その影響でC判定になることがありますが、それ以外はまったく悪いところはないですよ。

──これまでに親しい方の健康不安や病気を見たことはありましたか?

棚橋:学生時代にプロレス同好会にいた同級生が若くしてガンで亡くなったのを見ています。なんていうんですかね……そういう予見できない大病というのは天が決めているのかなと。だから検査して病気が見つからなかったり、検査後に急に病魔に襲われることがあったりしても、ある程度は受け入れようと思っています。

──もし疾病のリスクを予見できるサービスがあれば受けてみたいですか? フォーネスライフが提供する疾病リスク予測サービス「フォーネスビジュアス」では、20年・5年以内(※5年以内は65歳以上が対象)の認知症をはじめとした各種疾病のリスクを予測できます。

棚橋:僕は受けてみたいですね。上の子が大学2年生、下の子が高校3年生で大学に進学するので、成人して社会人になるところは見届けたいですからね。

先ほど健康不安はないと言いましたが、ショートスリーパーのほかにも心配はあるんです。プロレスで受け身を取ると脳に強い衝撃が入るので、脳細胞は壊れていっていると思うんですよ。受け身をひとつ取るたびに何か忘れていっているような気がして。年を取ったときに後遺症として何か出るのかな……。

──現時点では健康不安はないものの、今後についての心配はあるんですね

棚橋:そうですね。ただアントニオ猪木さんがそうでしたけど、日々何か情報に敏感だったり、新しい物事に興味を示したりする知的好奇心を持ち続ければ、そういう部分の予防になるのかなという気がしています。だから若い人の文化やトレンドには常に敏感でありたいですね。僕は年をとってもオシャレなじいちゃんでいたいなと思います。常にチヤホヤされたいし、モテたいですから(笑)。

──年齢を重ねていて元気な方は「何かをする」という目的を持っている印象が強いです。

棚橋:精神が肉体を超えていくんでしょうね。僕はプロレスを引退したとしても常にプロレスラーとしての矜持を持って、生きていきたいです。



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下記の記事では、自らフォーネスビジュアスによって生活習慣を改善した経験について、フォーネスライフ社長が語っています。将来の病気のリスクや自分に合った生活習慣を知りたいと思った方は、ぜひこちらもご覧ください。

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取材・文:ジャスト日本
撮影:安井信介
編集:野村英之(プレスラボ)

*1:「野人」と呼ばれた怪物レスラー。2020年に引退