音楽グループ「バブルガム・ブラザーズ」として、いわゆるバブル期(1980年代後半から90年代初頭)にミリオンセラーのヒット曲をリリースするなど大成功したブラザートムさん。その後も俳優・タレントとして活躍されていますが、ヘビースモーカー・暴飲暴食・夜遊びという「めちゃくちゃな生活」を続けた結果、2006年に50歳で急性心筋梗塞を発症し、救急搬送されました。
それから20年近くがたち、60代後半となったトムさんは現在どのような生活を送り、再発のリスクにどのように向き合っているのでしょうか。心筋梗塞の前後で大きく変わった「病院」への印象などを伺いました。
フォーネスライフが提供する疾病リスク予測サービス「フォーネスビジュアス」では、4年以内の心筋梗塞・脳卒中など各種疾病の発症リスク・再発リスクを予測することができ、結果に応じてコンシェルジュ(保健師)が、ご自身に合った生活習慣の改善方法を提案します。
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バブル期、無茶ばかりしていた「ミスターエンゲル係数」
── トムさんは心筋梗塞を発症する前まで、かなり無茶な生活をされていたそうですね。周囲からは飲食にお金を使い過ぎるということで「ミスターエンゲル係数」と呼ばれていたとか。
ブラザートムさん(以下、トム) 30代の頃はもう、ひどい生活をしてましたよ。当時はまさにバブル時代だったから、みんな浮かれてましたしね。ライブが終わると毎日朝まで飲み歩いてました。飲み方もひどくて、寿司屋で飲んで、次に焼肉屋に行って、最後にもう一軒、焼肉屋に行ってやっと終わるみたいな……。
僕ひとりじゃなく、大勢でそうやって飲んでたんです。注文の量があまりに多いから、お店でお勘定を頼んでからレシートが出てくるまでにジョッキ1杯飲みきれちゃうくらい時間がかかってました。そのお金を誰が払ってたのかもさっぱり分からないっていう日々でしたね。
── まさにバブル、というエピソードですね。
トム めちゃくちゃな時代ですよね(笑)。そんな食生活だから当然、体にいいわけがない。ディスコで踊りまくってたから運動はしてたとも言えるんですが、その分飲んでましたから。体重が100kgくらいあったし、マネージャーも3カ月で10kgぐらい太ったって言ってました。当時は「死ぬときは全員引き連れて行くからな」なんて冗談を言ってたけど、まさか自分が病気になるなんて思ってないですからね。
── 当時はあまり、体調を崩されたりはしなかったのでしょうか?
トム 痛風ではあったんですけど、まあ一生付き合っていけばいいのかなと軽く考えてました。あの時代って、男の人は特に、無理してることが美徳みたいな価値観がありましたから。無茶して飲みに行こう、無茶して遊ぼうって考え方だったわけです。自分も含めて、100%タバコ吸ってましたし。
でもそんな生活だったからか、当時一緒に遊んでた仲間には早く亡くなっちゃった人も多いんです。最近は芸人でもミュージシャンでも70歳前後の人が急に倒れたり、それこそ心筋梗塞になったりしているようですけど、やっぱりバブル期に一番遊んだ世代だから、当時の食生活も無関係ではないだろうなと思いますよね。
── トムさんが心筋梗塞を発症して入院されたのは2006年、50歳の時でした。40代後半には短期大学にも通われてかなり忙しかったのではないかと思いますが、当時の生活はいかがでしたか?
トム 大学のクラスでも、勉強より飲んでましたね(笑)。僕が通っていたのは夜間課程だったので、同世代の人たちもたくさんいたんです。同じクラスで心筋梗塞になる人もいて、ここは「天国にいちばん近い教室」だなんて悪い冗談をよく言ってましたよ。僕自身が心筋梗塞になったのもその直後なんですけどね。
倒れた日、周りには「もう帰ってこないと思う」と伝えた
── 心筋梗塞の発症前、何か自覚症状はありましたか?
トム 倒れる1カ月くらい前から、とにかく肩こりと歯の痛みがひどかった。それでもステージに立たないといけないから、鎮痛剤ばっかり飲んでました。肩こりっていってもちょっと普通じゃない痛さで、大きなバッグが両肩からひとつずつぶら下がってるみたいな感じ。それまで肩こりってあまり経験したことがなかったから、世間で言う「肩がこってる」ってここまで痛いものなのか、みんな大変だなって驚きましたよ。
── トムさんが倒れたのは、ライブのリハーサルをしていた日だったそうですね。
トム そうです。リハの会場までは行ったんだけど、そこからもう体が動かなかった。楽器を弾くなんてとても無理だなと。それまで「病院に行った方がいいんじゃないか」とか言われてもずっと「何言ってんだ、大丈夫だよ」って返してたけど、もうそんなこと言ってる場合じゃない。痛いどころじゃなくて、体が悲鳴を上げていた。リハを切り上げて、周りに「もう帰ってこないと思うから、あとは頼む」と伝えて病院に向かいました。
そのくらい尋常じゃない痛みだったんです。最初に小さなクリニックで診てもらったら、すぐに「動かないで」と言われ、そのまま救急車で大きな病院に運ばれました。
── そのときはどんなお気持ちだったか、覚えていますか?
トム 不思議なことに、救急車に乗った途端に気持ちが楽になっちゃったんですね。ドップラー効果ってあるけど、救急車に乗ってる張本人にはサイレンってどう聞こえるんだろう、とずっと考えていたほどです(笑)。ストレッチャーに乗せられたまま大きな部屋に移動させられたときも、そのまま入院・手術が決まったときも、なんの実感も湧かなかった。エレベーターに乗せられたときに「紳士服売り場をお願いします」とふざけて言ったら、医師に「お願いだからちゃんとしてください」って返されて、親切な人たちだなと思ったくらいです。
これは大ごとだとやっと気づいたのは、退院する前日でした。病室に来てくれた息子たちに「大丈夫だから」と伝えたら、「大丈夫じゃねえよ!」と泣きながら言われて、よっぽどのことだったんだなと。実際、医師にも「昨日まで危なかったんですよ」と伝えられて、心筋梗塞ってそういうものなのかと初めて思いましたね。
── そこでようやく心筋梗塞の怖さに気づかれた、ということですね。
トム そうですね。心筋梗塞になった方の中には、僕みたいに危機感がなかなか湧かなかった人もいると思いますよ。でも当然、年を取るにつれて再発のリスクも高まるわけですし、今はやっぱり体には気をつけないと、と思って過ごしています。
再発はやはり怖いから、2カ月ごとにかかりつけの病院で検査
── 入院の前後で生活習慣に何か変化はありましたか?
トム 食事に関しては病院でいろいろ指導を受けたんですけど、正直、その食生活を完璧に守るのは難しいですよね。まあ、意識して食事制限をしたのも退院して2~3日だったと思います。でも、ファストフードを食べることはかなり減りましたし、運動の習慣もつきましたね。退院後しばらくは1日10kmくらい歩くようにしていたので、それがいいリハビリになったんじゃないかと思います。
── 飲酒や喫煙の習慣に関してはいかがでしょうか?
トム やっぱり年齢が上がるにつれてどんどん血管も細くなってくるので、お酒とタバコはだいぶ控えるようになりました。昔はビールと日本酒が好きだったんですが、最近は蒸留酒に変えて、芋焼酎とハイボールを少し飲むくらいです。周りのミュージシャンも今はタバコを吸わない人の方が多いくらいですね。コロナ禍で運動量が減ったこともあって、最近は1日1食にしてるんですが、調子はいいですよ。
── そのほかにも心筋梗塞の再発を防止するため、心がけていることや実践していることはありますか?
トム やっぱり再発は怖いので、病院には2カ月に1回は必ず行くようにしています。近所のクリニックに、話しやすくて丁寧な、いい医師がいるんですよ。ちょっと風邪気味だとか足が痛いとかの小さな異変でも、毎回すぐに相談するようにしています。
そこは大きな病院とも連携しているので、クリニックでできないような検査が必要なときには紹介してもらえるのもありがたいんですよね。おかげで心筋梗塞の後は大きな病気もまったくないです。
── なるほど。信頼できるかかりつけ医がいらっしゃるんですね。
トム ずっと苦手だった病院というものへの印象が変わったきっかけとしては、その医師との出会いと、心筋梗塞のときに親切にされた経験が大きかったと思います。心筋梗塞にならなかったら、病院ってこんなに温かいものだとは思わなかったですから。
その先生はすごくいいやつで……思わず「いいやつ」って言いたくなっちゃうような人なんですけど(笑)、緊張するような怖い顔とかしてないし、いつもラフな服装で診察してくれて、「トムさん、今日もちょっとだけ診てみよっか。数値は前回から変化ないね、OK!」みたいな感じなんです。やっぱり今は血栓ができやすくなっているので、それだけは注意して生活してほしいとその医師からは言われています。
絶対に会いたくなかった医者が「会いたい人」に変わった
── 心筋梗塞の経験を経て、今はどのようなスタンスでお仕事や音楽活動に取り組まれていますか?
トム それは病気になる前と後であまり変わっていないですね。僕は今までも好きなことしかやってこなかったし、好きな人にしか会ってこなかった。今後もそのスタンスは同じです。短い人生、嫌いな人に会う意味なんかないですから。
そういうことで一番変わったのは、これまで「会いたくない人」の筆頭だった医者が「会いたい人」になったことかな。それから定期的に検査を受けていると、血液検査で必ず針を刺されるじゃないですか。あれがうまい看護師さんに会えるとかなり気分が楽になりますよね。何度も刺されると、来なけりゃよかったって気になってきますから。だからみなさんも、針をうまく刺す人といい医者に出会えたら長生きできると思いますよ。
── ありがとうございます。この「lala a live」の運営元であるフォーネスライフでは、少量の血液を採取する「フォーネスビジュアス」という検査サービスを提供しています。血中のタンパク質を分析して「4年以内の心筋梗塞の発症・再発リスク」をはじめとした疾病リスクが予測でき、結果をもとに保健師の資格を持つコンシェルジュが生活習慣の改善を提案してくれるのですが、トムさんはそういったサービスが必要だと思うことはありますか?
トム 再発のリスクが分かるっていうのはいいですね、そういう検査は僕も受けてみたいです。まあちょっと怖い気持ちもありますけど、家族や周りの人たちのことを考えると、今後の病気のリスクを自覚しておくのは大事なことだと思いますよ。
ただ、僕はいちど心筋梗塞を経験していい先生にも出会えたから、リスクが分かる検査もぜひ受けてみたいと思うけど、大きな病気にかかったことのない人はたぶん嫌がるでしょうね。本当は、そういう人にこそ検査を受けてみてほしいけど。
周りを見てると、同世代の人たちも最近は意外とみんな、歩数が計れるアプリなんかをスマホに入れてるんですよね。みんな現役で仕事を続けている以上、健康のことは当然気になるから、そのアプリの延長線で病院と出合わせてくれる仕組みがあったらいいのになと思います。
── それで検査を受ける人が増えるといいですよね。本日はありがとうございました。
まさにバブル期の真っ只中に「WON'T BE LONG」の大ヒットを経験したブラザートムさん。「めちゃくちゃな時代」だったと語っているように、楽しくも体に負担をかける生活から心筋梗塞を発症してしまいました。
フォーネスビジュアスでは心筋梗塞について、発症だけでなく再発のリスクも予測できます。また検査の結果を踏まえて、たとえ「めちゃくちゃな生活」を送っていても、コンシェルジュ(保健師)がその方に寄り添って、できるところから生活習慣の改善を提案してくれます。
次のページでは、死因になりやすい病気でもある心筋梗塞発症を防ぐ対策や、そのために「フォーネスビジュアス」をどう利用すればよいかを紹介します。
心筋梗塞には再発のリスクもあります
取材・構成:生湯葉シホ
撮影:小野奈那子
編集:はてな編集部