認知症とアルコールの関係は? リスクを高める飲酒量について解説

認知症とアルコールの関係は? リスクを高める飲酒量について解説

「飲酒をする人は認知症の発症リスクが高くなる」と聞いたことはありますか。自分や家族、知人などに飲酒習慣がある場合、認知症発症に関わりがあるのかどうか、気になりますよね。本記事では、アルコールと認知症の関係について、現在分かっていることを解説します。

(監修者)矢島隆二 先生

総合リハビリテーションセンター みどり病院 副院長 兼 認知症疾患医療センター 副センター長
脳神経内科・認知症・総合内科等専門医。新潟大学医学部卒業後、高度急性期医療から地域の総合病院まで幅広く臨床経験を積み重ね、新潟大学附属脳研究所で認知症の研究を行い、医学博士号を取得。現在は認知症や神経難病を中心に、リハビリテーションにも重点を置いた神経内科の臨床現場で活動中。認知症や神経難病などの治験も行うかたわら、講演や執筆にも精力的に取り組む。

こんな人におすすめ

  • アルコールと認知症の関連を知りたい人
  • 認知症対策のために、お酒をやめるべきか悩んでいる人
  • 家族の飲酒量と認知症発症リスクに不安を感じている人

アルコール摂取が認知症リスクを高める?

実は、アルコール依存症の人や大量に飲酒をする人には、高い割合で脳萎縮がみられることが分かっています。また、それらの人は認知症になる人が多いという疫学研究の結果から、アルコールを大量に摂取することが認知症の発症リスクを高めると考えられています*1

一方で断酒によって萎縮した脳が改善するという報告も*2。また、アルコールが加齢による記憶・学習低下を促進することが動物実験によって証明されている*3ほか、アルコールの大量摂取が原因と考えられる「アルコール性認知症」*4の可能性も挙げられており、お酒の飲み過ぎは認知症発症に関わる大きなリスクであるといえそうです。

認知症になるリスクを高める飲酒量の目安は?

では、どの程度の飲酒が認知症発症リスクを高めるのでしょうか。飲酒と認知症の関連を調べた調査では、350mlのビールに換算して週に7本以上飲む人の認知症発症リスクは、まったく飲酒しない人の約1.5倍、週に14本以上飲む人は約2.5倍になるとされています*5。この研究を参考にすれば、「350mlのビール換算なら週に6本以内」が一つの目安になりそうです。

適量の飲酒が認知機能低下を抑制するという研究結果も

認知症とアルコールの関係は? リスクを高める飲酒量について解説

大量飲酒が認知症の発症リスクを高める反面、少量の飲酒は認知機能の低下を抑制する可能性があることが指摘されています。前述した研究においては、少量の飲酒をする人は、まったく飲酒しない人よりも認知症を発症しにくいという結果が出ています*6

ただし、適度な飲酒量には個人差があり、こうした影響についてはまだ研究途上です。もともと飲酒習慣がない人が認知症対策を目的として飲酒をする必要はないでしょう*7

赤ワインは認知症対策に有効?

ぶどうやそのほかのフルーツ、野菜などから造られるワインを少量〜中程度摂取している人は認知症になりにくくなるという説があります*8。中でも赤ワインには、アントシアニンやレスベラトロールといったポリフェノールが豊富に含まれており、高い抗酸化作用*9が期待できます。実際に、1日250~500ml程度のワインは、認知症の発症を抑えるという報告もあります*10

ポリフェノールについては、下記の記事も参考にしてみてください。
👉ポリフェノールと認知症の関連は? 豊富に含む飲料や食材を紹介 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ

また、ワインとともに穀類、野菜、フルーツ、オリーブオイル、魚などを主に摂取する「地中海食」が認知症発症のリスクを低減すると考えられています*11

そのほか、認知症対策の効果が期待できる食べ物や飲み物について詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてみてください。
👉認知症予防に効果的な食べ物は? 最適な食事方法や食材を紹介 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ

認知症対策には生活習慣の改善が効果的

認知症とアルコールの関係は? リスクを高める飲酒量について解説

認知症対策には、アルコールの摂取量を含めた生活習慣の改善が重要だと考えられています。バランスのとれた食生活、適度な運動習慣、適切な睡眠習慣、過度な飲酒や喫煙を控えることなどで、認知機能低下を防げる可能性があります。

認知症対策につながる生活習慣の改善について詳しく知りたい方は、下記の記事などを参考にしてみてください。
👉認知症になりやすい人の特徴は? 注意したい生活習慣、予防策を紹介 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ
👉認知症対策は何をすればいい? 日常生活でできる予防法を紹介 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ

飲酒量を見直し、生活習慣を整えて認知症対策をしよう

日常的に大量の飲酒をしている人は、認知症の発症リスクが高くなります。飲酒量を見直して、認知症対策に努めましょう。また、認知機能の低下を防ぐには、生活習慣の改善も大切。自らの食生活や運動習慣、睡眠習慣を見つめ直し、認知症になりにくい生活を心がけてみてはいかがでしょうか。

編集:はてな編集部
編集協力:株式会社エクスライト


フォーネスライフが提供する疾病リスク予測サービス「フォーネスビジュアス」では、20年・5年以内(※5年以内は65歳以上が対象)の認知症をはじめとした各種疾病の将来の発症リスクを予測できます。

また、将来の疾病リスクだけでなく、現在体にアルコールの影響が出ているかなどもチェックすることができるので(※実際の飲酒量ではなく「平均して週7杯以上の飲酒をしている体の状態」に相当するかどうかを判定)、自分や家族の飲酒量が気になっている方にもおすすめ。さらに結果を元に、コンシェルジュ(保健師)が具体的な生活習慣改善方法をご提案します。ご自身の認知症発症リスクを知り、対策を始めましょう。

※フォーネスビジュアス検査は、医療機関の医師を通じて提供します。

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*1:参考:e-ヘルスネット「アルコールと認知症

*2:参考:e-ヘルスネット「アルコールと認知症

*3:参考:e-ヘルスネット「アルコールと認知症

*4:参考:e-ヘルスネット「アルコール性認知症

*5:参考:Mukamal KJ, Kuller LH, Fitzpatrick AL et al. Prospective study of alcohol consumption and risk of dementia in older adults. JAMA, 289:1405-1413, 2003.

*6:参考:Mukamal KJ, Kuller LH, Fitzpatrick AL et al. Prospective study of alcohol consumption and risk of dementia in older adults. JAMA, 289:1405-1413, 2003.

*7:参考:国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック[PDF]

*8:参考:国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック[PDF]

*9:参考:公益財団法人 長寿科学振興財団/健康長寿ネット「抗酸化による老化防止の効果

*10:参考:下方浩史「認知症の要因と予防」(2015)[PDF]

*11:参考:下方浩史「認知症の要因と予防」(2015)[PDF]