親が認知症になって分かった向き合い方と備え方。『認知症ポジティブおばあちゃん』の家族に聞いた

「親が認知症になったらどう接すればいいのか」「家族の認知症にどうやって備えておけばよいのだろう」──。そんな不安を抱えながら、日々を過ごしている人も少なくないはず。

今回登場していただくのは、認知症の母を在宅介護されているだんだん・えむさん夫妻。だんだん・えむさんが開設したYouTubeチャンネル『認知症ポジティブおばあちゃん』は、認知症でありながらも、明るく元気に過ごす91歳のおばあちゃんの日常を、同居家族ならではの視点で紹介し、大きな注目を浴びています。

認知症になる前のおばあちゃんの様子、認知症の予兆だったと思える出来事、認知症と診断されたあとの家庭の雰囲気……実際の体験と、家族の認知症との向き合い方・備え方のヒントを伺いました。

フォーネスライフが提供する疾病リスク予測サービス「フォーネスビジュアス」では、20年・5年以内(※5年以内は65歳以上が対象)の認知症をはじめとした各種疾病の発症リスクを予測することができます。さらには結果に応じて、コンシェルジュ(保健師)が、ご自身に合った生活習慣改善方法をご提案します。

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​​だんだん・えむさん
​​だんだん・えむさん

2021年、YouTubeチャンネル『認知症ポジティブおばあちゃん』を開設。同居家族ならではの視点で、笑顔あふれる日常と認知症のリアルな症状について発信し、介護従事者や在宅介護に悩む人々から「元気になれるYouTube動画」として注目を集める。総再生回数は4400万回以上、チャンネル登録者数9万人に(2024年1月現在)。2022年には介護と情報発信の記録を書籍にまとめた『認知症ポジティブおばあちゃん 〜在宅介護の幸せナビ〜』(フォレスト出版)を出版。

頭の回転が速く、仕事好きなおばあちゃんだった

「認知症ポジティブおばあちゃん」こと、だんだん・えむさんの義理のお母さん

──だんだん・えむさんとおばあちゃんの関係から伺ってもよろしいでしょうか?

だんだん・えむさん(以下、だんだん・えむ):夫がおばあちゃんの実の息子で、私にとっておばあちゃんは姑、つまり義理のお母さんにあたります。結婚後、2000年に子どもが生まれたのと同時におばあちゃんとの同居が始まりました。

──おばあちゃんが認知症になる前から同居されていたんですね。発症前はどんな人柄だったのでしょう。

だんだん・えむ:誰とでもすぐ仲良くなれる明るい性格で、頭の回転が速かったんです。若い頃からずっと女性用下着の訪問販売の仕事をしていて、営業成績も抜群でした。おばあちゃんの夫は40代で亡くなっていて、子ども3人を女手一つで育ててきただけあって、本当にバイタリティーの塊のような女性だったと思います。

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──YouTubeチャンネルを拝見しても、若い頃のご様子は十分想像できますね。ちなみにその頃は、家族の間で認知症というものをどう捉えていたのでしょうか?

だんだん・えむ:当時は、おばあちゃんに「もしボケたら……」なんて言おうものなら怒鳴り散らされましたし、私たち家族も「元気に仕事をしているから、認知症なんてかからないだろう」と思い込んでいた節もあったと思います。

──頭も体もそこまで達者なら、なかなか認知症になるとは想像できないですよね。

だんだん・えむ:そうですね。ただ、私自身は実の祖母が認知症で、末期になると排泄ができなかったり、徘徊したり。嫁姑関係にも明らかに亀裂が入るのを目の当たりにしていて、ある種のトラウマがあるんです。そのこともあって、認知症に対してはとにかくネガティブなイメージしかなかったので、万が一を考えると不安でした。

認知症と診断され、家の中は殺伐とした空気に

──おばあちゃんは仕事をバリバリこなしていたとのことですが、振り返ってみて「認知症の予兆だったのかも」と思う出来事はありますか?

だんだん・えむさんの夫(以下、夫):83歳になった2015年ごろからでしょうか、少しずつ物忘れがひどくなっていきました。仕事で一度受注した内容をお客さんに何度もしつこく確認して、常連さんがどんどん離れていったり、自宅に必要以上の在庫を抱えてしまったり。

美容室に何回も電話して予約を取ったのに、当日すっぽかしたこともあります。おばあちゃんが30年近く通っていた美容室だったんですが、「ちょっとおかしいんじゃないか」「うちではもう予約を受けられない」と言われてしまいました。

ほかにも、故障していないのに「エアコンがつかない」と言って電器店に何回も電話したり、買い物からの帰宅後、なぜかお財布がすっからかんになっていて、自分で警察に電話したり。挙げ出すとキリがないくらい、毎日がトラブルの繰り返しでした。人によって症状の出方はいろいろだと思いますが、おばあちゃんの場合はとにかく電話をかけまくるので、電話代が何十万になったこともありましたね。

──さすがにそこまでくると、様子がおかしいことに気付きますよね……。そして2017年、おばあちゃんは85歳で認知症と診断されます。そのときのお二人はどんな心境だったのでしょうか?

だんだん・えむ:当時は認知症の知識がなく、おばあちゃんの行動は高齢によるものだと思っていて、診断までに時間がかかってしまいました。

認知症と診断されてからは、「症状がこれからどんどん悪くなって、私たち家族の顔すら分からなくなるんじゃないか」とか「長生きできないんじゃないか」とか、いろんな不安がよぎりました。

あとは現実的なお金の問題ですね。「今すぐ施設のお世話になるといくらかかるんだろう」とか。社会保険制度の知識もまだ身に付いていなかったので、不安しかありませんでした。

:私自身は、悲しさと後悔でいっぱいでした。「なぜもっと早く気付いてやれなかったんだろう」「早期に発症が分かっていれば、何か対処ができたんじゃないか」と。

だんだん・えむ:認知症と診断されてからも、おばあちゃんの症状はひどくなる一方で、もう毎日が戦争というか、おばあちゃんに対して常にファイティングポーズを取っていました。結局お互いが疲れ果ててしまい、家の中もかつてないほど殺伐としていましたね。

親の認知症との向き合い方。知識があれば不安は減る

──おばあちゃんと向き合いながら、認知症についてどのように理解を深め、普段のコミュニケーションに生かしていったのでしょう。

:私の場合は専門医のお話を聞いたり、関連書籍を読みあさったり、しまいには論文や文献にも目を通すようになりました。

勉強してから知ったのですが、例えば「感情残像の法則*1」という、自分が体験した出来事自体は忘れてしまっても、そのときに感じた感情だけは脳に残っているという、認知症の特性があるんです。特に、怒ったり怒られたりといった感情は残りやすいらしくて、うちのおばあちゃんも「息子はいつも怒っている」と周囲に言いふらしているようなんですね。

こうした認知症の症状や特徴を知らないと、「ひどいなぁ、そんなことないのに」と困惑するのかもしれませんが、知識として知っておくことで相応の対処ができるわけです。

──当時を振り返ってみて「ああしておけば良かったな」「あれは良くなかったな」と思うことがあれば教えてください。

:これもあとから知ったのですが、認知症って、記憶力とか判断力、言語能力などが低下する「中核症状(認知機能障害)」自体は治らないんですが、徘徊や妄想などの「周辺症状(行動心理症状)」は早期発見して対処すれば改善できるケースがある*2。もう少し早い段階で検査を促すなどして認知症に備えられれば良かったと思いますね。

だんだん・えむ:基本的な知識が足りていなかったときは、おばあちゃんに怒ったり、行動を制限するよう説得したり……。私たちの子どもを入れたら3対1で責めていたわけで、今から思うと申し訳ない気持ちでいっぱいですね。

:例えば5分前の記憶をなくしてしまう。だから、何度も何度も同じことを聞いてくるんです。その言動を私たちは理解できず怒ってしまったんです。

認知症の症状について「自分の身に起きた出来事そのものを忘れてしまうことがある」といったきちんとした知識があれば、あんなに口げんかすることもなく、もっと違った対応の仕方ができたのになと、今になって思いますね。

だんだん・えむ:今、私が大切だと思っているのは、「頭ごなしに否定しない」とか「いつも笑顔で」といった普段のコミュニケーションに気を付けることと、行動パターンをよく把握しておいて、心配や不安をなるべく取り除いてあげることです。

最近はおばあちゃんをあえて外に連れ出すことが多くなりました。おばあちゃんのように一つのことに執着を見せるタイプは、環境を変えてリセットするのがいいらしいんですね。

──なるほど。ただ、こういったコミュニケーションのポイントは各家庭によって異なるでしょうから、試行錯誤していくしかないのでしょうね。

だんだん・えむ:そうかもしれません。うちの場合は、私たち夫婦よりも孫の言うことなら聞いてくれることが多いので、おばあちゃんにお願いがあるときは、ときどき子どもに頼っています。

──受診を促す効果的なコミュニケーションはありますか?

だんだん・えむ:うちのおばあちゃんの場合、本人は認知症だと思っていないんですよね。認知症の検査だと分かると怒ってしまうこともありました。だから正直に言うのが難しい場合は、「定期検診だよ」「いつもの検査だよ」と伝えて、一緒に行くのがいいかもしれませんね。

認知症のおばあちゃんの様子を動画で発信する意味

──認知症がだんだん進行していく中で、YouTubeでおばあちゃんの様子を発信し始めたのは何がきっかけだったのでしょう。

だんだん・えむ:最初は離れて暮らしている親族たちに向けて、ビデオレターのような感覚でおばあちゃんの元気な様子を伝えられたらと考えたんです。写真とか電話よりも、動画で見せた方が圧倒的に伝わりやすいし、実際にYouTubeを見た親戚たちも泣いて喜んでくれました。

そのうち、周囲から「介護で苦労している人たちに向けて、もっとオープンに発信したらいいんじゃないか」と言われ始めて。

──それが今の『認知症ポジティブおばあちゃん』につながっていくわけですね。YouTubeを始めたことで、何か変化はありましたか?

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だんだん・えむ:「おばあちゃんの元気な様子をもっと動画に収めよう」という目的意識が共有されることで、家族に一体感が生まれてきました。動画の本数が増えるごとに、私たちにも笑顔が戻ってきたように思いますね。

:カメラを通すことで第三者の目線が生まれて、自分たち自身に対して客観的になれた点も大きかったように思います。「このときの自分、ムカついてるな」とか声のトーンだけで分かってしまうんですよね。

「もっと優しく接した方がおばあちゃんも笑顔になるぞ」というふうに、動画を通しておばあちゃんへの対応を変えていくことで、当初の殺伐とした雰囲気はなくなっていきましたね。

──ディレクター目線になることで自分たちを省みることができるわけですね。動画を拝見していると、おばあちゃん自身も動画に撮られることに抵抗感がなさそうですし、それどころかむしろ楽しんでいるようにすら感じます。

だんだん・えむ:私たちの場合、その点はラッキーだったかもしれません。おばあちゃんは、昔から宴会で芸を披露するタイプで、人前で歌ったり踊ったりするのが好きな目立ちたがり屋さんでしたから。もちろん、認知症患者の中には撮られることを嫌がる方もいらっしゃると思うので、誰でも動画がベストとは思いません。

──YouTubeチャンネルでは動画に対するコメントも非常に多いですよね。どんな方が書き込んでいるのでしょうか?

:家族を介護されている方のコメントが多いですね。「うちのおじいちゃんは違う」「うちのおばあちゃんはこうだ」とそれぞれのケースを書き込んでくださるんです。

ほかには、「日々の仕事に忙殺されていたけど、原点に立ち返れた」という介護関係者のコメント、「なぜあのときこんなふうに動画で残してあげなかったんだ」と、ご家族を亡くした方の悔やむようなコメントもあります。

だんだん・えむ:うれしかったのは「動画の口調をマネしてみたら、親の表情も柔らかくなった」といった感想ですね。「動画には映らない、大変なことがたくさんあると思いますが、自分を大事にしてたまには心身を休めてくださいね」という励ましの言葉もよくいただきます。

疾病リスク予測なら認知症を自分事として捉えられる

──お二人のご経験を踏まえて、家族に異変が現れたときに「認知症かも?」と早く気付くためのポイントや、認知症予防の上で大事だと思われることを教えてください。

:精神面から言うと、忙しい日々を送る中で親の「老い」とどれだけ向き合うことができるか、でしょうね。かつての元気だった親のイメージにしがみついたまま、現実から目を背けていればお互いが不幸になってしまいます。

そのためにはやはり、本でもネットでもいいから、認知症に関する正しい知識を得ておくこと。何の知識もないまま漠然とした不安を抱えるよりも、ある程度は知識があった方が心の準備もできるし、予防のための行動もとれるんじゃないでしょうか。

だんだん・えむ:実践面では、兆候を感じたら早めに検査を受けることでしょうね。脳内の血流を調べるだけでもどれだけ進行しているのかが把握できるので。

──本メディアの運営元であるフォーネスライフでは「フォーネスビジュアス」という疾病リスクの予測サービスを提供しており、将来、認知症や心筋梗塞、脳卒中、慢性腎不全、肺がんといった病気になるリスクを、病気になる前に予測したり、予測結果に基づいて、対策のための生活習慣のアドバイスを受けることができます。こういったサービスを使って認知症に備えることについて、どのように感じますか?

だんだん・えむ:認知症を含めた疾病リスクが予測できること自体はすごくいいことですし、世の中にもっと広く認知されてもいいのでは、と感じます。

認知症の話題となると、どうしても介護する側の目線になってしまいがちですが、こちらの疾病リスクの予測サービスは「当人が自分自身の問題として認知症を捉えること」に大きな意味があると思います。私自身も、子どものためにも自分が認知症になるリスクは知っておきたいなと思いますね。

:私たちと同じように認知症を身近に感じている方なら、生活習慣のアドバイスなどにも前のめりになって耳を傾けられるような気がします。やっぱり普段の生活習慣ってすごく影響すると思いますし。

──「できる限り、周りに迷惑をかけないで老後を送りたい」というのは、確かに誰しも一度は考えることですよね。では最後に、ご自分の家族について「もしかして認知症かも?」と心配されている方にアドバイスをお願いします。

だんだん・えむ:いろんなご家庭があって、それぞれの事情があるかと思います。親が遠距離に住んでいる方も多いですよね。親の様子を知りたいと思っていても、お正月やお盆など、特別な日に帰省すると、「久々の一家だんらんだから」と親もしゃんとしていて、普段の様子が分からないといったこともあると思います。

そういうときは、試しに動画を撮ってみるのもいいんじゃないかなと思いますね。動画を通じて親を客観視してみると、「こんなにろれつが回っていなかったのか」とか「こんな暗い表情見たことなかったな」とか、結構気付かされることが多いんですよ。

:実際、私たちの周りでも動画を撮る方が増えています。もちろん、動画じゃなくたっていい。一番大切なのは、親の変化に家族がいち早く気付いてあげること。「認知症になったかもしれない」と自覚を持つ方もいますが、うちのおばあちゃんのように自分では受け入れられないタイプの方もいます。

認知症の症状の進行を抑えるためにも、家族が笑顔で過ごすためにも、目の前にある不安と向き合うことが重要かなと思います。



今回はだんだん・えむさん夫妻に「親が認知症になるかもしれない」という不安への向き合い方と備え方のヒントについてお聞きしました。

記事でも触れている、フォーネスライフが提供する疾病リスク予測サービス「フォーネスビジュアス」では、20年・5年以内(※5年以内は65歳以上が対象)の認知症をはじめとした各種疾病のリスクを予測できます。さらには結果に応じて、コンシェルジュ(保健師)がご自身に合った生活習慣改善方法をご提案。コンシェルジュとの面談はオンラインで実施するため、遠方で暮らす親と一緒に相談をすることも可能です。

下記の記事では、フォーネスビジュアスのサービス内容について、フォーネスライフ社の社長が詳しく語っています。ぜひこちらもご覧ください。

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取材・構成:宗像幸彦
編集:はてな編集部
編集協力:株式会社エクスライト