高齢になった親族の顔つきが、なんとなく変わってきたように感じることはありませんか。そんなとき、「認知症になると表情が変わる」という話を見聞きして、不安を感じる方もいるでしょう。また、認知症になるとどういう表情になるのか、詳しく知らない……という方がほとんどかもしれません。
そこで、認知症になると顔つきがどう変化するのか、その特徴や要因について、詳しく解説します。
目次
こんな人におすすめ
- 家族や身の回りの人の表情に変化を感じており、認知症の兆しでは? と心配になっている人
- 認知症になったときにどのような顔つきになるのか知りたい人
認知症になると顔つきに変化が現れることもある
認知症を発症すると「顔つき」に変化が出る場合がある……これはあくまで“場合がある”という程度のものであり、この変化だけで認知症と診断されるわけではありませんし、特徴的な変化が見られない認知症の方も多くいます。それでも、「そういった傾向がある」と知っておくことで、身近な方の変化にいち早く気づけて、ひいては医療機関への早期受診を検討することもできます。まずはその「顔つき」について、特徴をまとめました。
- 目がうつろ、もしくは険しい
- 悲しげで暗い表情、もしくは表情の変化がない
ここで重要なのは、例えば目がうつろに「変化した」場合が疑わしいということ。もともとそういった顔つきであるケースもあるため、「変化した時が要注意」と覚えておきましょう。顔つきに変化を感じたら、早めに医療機関を受診しておいて損はありません。
変わってしまう要因は?
ここからは、表情に変化が出る要因について、その代表例を紹介します。
日常生活の変化
認知症になると、日常生活が単調になる場合があります。例えば、外出する機会が減ったり、交流の場に出かけなくなったりします。外部からの刺激が減ることで、表情が乏しくなることもあるのです。
また、認知症の症状や程度によっては、食事摂取や水分補給が十分にできなくなり、全身状態が悪化して意識障害をきたすこともあります。周囲の人は、併せて注意を払っておきましょう。
精神的な要因
認知症になると、無気力状態を指す「アパシー」や、うつの前段階である「抑うつ」状態になりやすく*1、意欲が低下する傾向があります。また、認知症の方は、うつ病を発症しやすいといわれています。認知症の種類ごとのうつ病発症率*2を示した報告は、以下の通りです。いずれも少なくない確率であることが示されています。
認知症の種類 | うつ病を発症する確率 |
---|---|
アルツハイマー型認知症 | 40~50% |
レビー小体型認知症 | 25~60% |
血管性認知症 | 60% |
前頭側頭型認知症 | 33% |
また、認知症によって物事の理解や判断が難しくなることで、間違いや失敗を繰り返すケースもあります。その結果、これまでできていたことができなくなり、自信を失ってしまうことが考えられます。さらに、家族や友人から失敗を指摘されて、怒りを覚えることも。こういった精神的要因が表情の変化を招く可能性があります。
疾患による要因
身体をうまく動かせなくなる「パーキンソン病」の患者さんは、長い経過とともに、認知症を併発するケースが多いといわれています*3。実際に2023年の報告では、パーキンソン病と診断された患者さんは、12年後に60%、20年後には80%に認知症を認めるとの内容もあります*4。
パーキンソン病やレビー小体型認知症の患者さんは、まぶたをうまく動かせなくなるため、まばたきが減ります。そのため、パーキンソン病やレビー小体型認知症の患者さんと接した周囲の人は、「表情の変化がない」と感じる可能性があります。
また、顔全体の表情の変化が乏しくなった様子を、専門用語で「仮面様顔貌」ともいいます。一見すると無表情に見え、喜怒哀楽が分かりにくくなるのです。
変化が現れた人に対して、どう接するべき?
これまで取り上げてきた顔つきの変化を、親族の方に対して感じ、不安に思う方もいるでしょう。顔つきに変化が出た人が「認知症だった」と仮定した場合、周囲の人ができることについて解説していきます。
患者さんに共感することで、安心感を持ってもらう
周囲の人は、認知症の患者さんに安心してもらえるような態度で接しましょう。具体的には、以下のような関わり方を心がけることが大切です。
- こまめな挨拶を意識し、声かけをする
- 話すスピードはゆっくりで、簡単な言葉を意識する
- しっかりと相づちを打ち、話に耳を傾ける
「自分も同じ立場なら……」「本人はつらく思っていないだろうか、困っていないだろうか」という思考で、コミュニケーションを取っていきましょう。
繰り返しになりますが、顔つきに変化が出るほど症状が現れているのであれば、病院の受診を検討しましょう。このとき「顔つきが変わったから認知症だよ」と決めつけるのではなく、「他の身体の病気かもしれないから、ひとまず受診してみよう」などと、認知症との関連をあえてぼかして受診を促すと、患者さんも受診に前向きになりやすいかもしれません。
認知症に対応して、豊かな表情を取り戻そう
最後に、顔つきが変化した認知症の患者さんに対して、周囲の人が取り組むべきことについて解説します。前述の通り、認知症の患者さんの表情が変化した要因や環境を踏まえ、周囲の人が改善を進めていくことが大切です。
日常生活の整え方
まずは、認知症の患者さん本人が生活の中で不安に感じていることや困っていることなどを、本人から聞き出しましょう。このとき、先述のように患者さんの要望を真摯な姿勢で聞いてください。あくまでも、患者さん本人の立場で考えることが大切です。
日常生活の困りごとを解決するために、介護サービスの利用を検討してもよいでしょう。介護サービスを上手に利用することにより、患者さんが一人で完結させられなくなった身の回りのことについてサポートできるためです。
精神的な要因の改善方法
精神的な要因によって顔つきが変化した場合でも、介護サービスを手配するのが効果的かもしれません。精神的な要因により、身の回りのことに取り組む気力が湧きにくくなったり、これまでできたことができなくなったりする認知症の患者さんは多いものです。
さらに、アパシー、抑うつなどによって表情が変化している場合は、意欲が出る薬や抗うつ薬など、服薬に頼ることも手段の1つです。周囲の人は、適切な診療科を受診できているか、チェックしておきましょう。
疾患へのアプローチ
認知症の種類によって、表情の変化が出る要因は異なります。この場合は医師の意見を仰ぎ、適切な診療を受けつつ、治療に取り組んでいきましょう。
通院のサポートや服薬管理など、周囲の人ができるサポートは、多くあります。
顔つきが変化したら、まずは要因を把握して早めの対策を
認知症になることで、顔つきが変化する……というのは、必ずしも誤りではありません。顔つきが変化する要因 の1つとして、認知症が挙げられます。医療機関を受診して、早めの対策を講じておくのがよいでしょう。
編集:はてな編集部
編集協力:株式会社エクスライト
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既に認知症とおぼしき症状が見られる場合は、医療機関を受診し、相談しましょう。
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