認知症の初期症状とは? 兆候を見極めるポイントを紹介

認知症の初期症状とは? 兆候を見極めるポイントを紹介

親が年齢を重ね、認知症のリスクが気になる時期になってきたものの、具体的な症状はよく分からない……という方も多いのではないでしょうか。早めに対策を打てるように、認知症の兆候について知っておくのも1つの手段です。

この記事では、初期症状や進行の仕方について詳しく見ていきます。認知症の初期症状の中に、自分に当てはまるものがなくても、認知症を予防するために生活習慣を見直すとより安心へとつなげられるでしょう。

矢島隆二 先生

総合リハビリテーションセンター みどり病院 副院長 兼 認知症疾患医療センター副センター長
脳神経内科・認知症・総合内科等専門医。新潟大学医学部卒業後、高度急性期医療から地域の総合病院まで幅広く臨床経験を積み重ね、新潟大学附属脳研究所で認知症の研究を行い、医学博士を取得。現在は認知症や神経難病を中心に、リハビリテーションにも重点を置いた神経内科の臨床現場で活動中。認知症や神経難病などの治験も行うかたわら、講演や執筆にも精力的に取り組む。

こんな人におすすめ

  • 身近な人に認知症の不安や兆しを感じており、認知症かどうかを判断したいと考えている人
  • 身近な人が認知症ではないかと気になり始め、調べたいと考えている人

そもそも認知症とは?

認知症とは「脳の病気や障害などさまざまな原因により認知機能が低下し、生活に支障をきたしている状態」のことです。認知症は、原因により主に以下の4つに分けられます*1

  • アルツハイマー型認知症
  • 血管性認知症
  • レビー小体型認知症
  • 前頭側頭型認知症

超高齢社会である日本では、認知症の患者さんも増加しています。内閣府の『平成28年度版高齢社会白書』によると、2012年に462万人であったのが、2025年には約700万人になると推計されています。65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症になる可能性があるのです。

一方で、認知症を確実に対策できる方法は、まだ存在しないのが現状です。ただし、認知症の初期症状段階や、少し症状が進んだ状態である軽度認知障害*2のうちに早期発見できれば、進行を遅くしたり、改善できたりする可能性があります*3。実際、軽度認知障害の方の16~41%は、早期発見によって適切な治療方法を講じることで回復するともいわれています。このため、認知症を早期発見することは重要なのです。

初期症状の特徴は?

認知症の初期症状とは? 兆候を見極めるポイントを紹介

ここでは、認知症の主な初期症状を4つまとめました。それぞれの特徴をチェックしていきましょう。

物忘れ

認知症の初期症状のひとつに「物忘れ」があります。物忘れは誰にでも起こりうるものですが、認知症による物忘れと加齢に伴う物忘れには違いがあります。主な例としては以下のようなものが挙げられます。

  • 同じ話を繰り返す
  • 人や物の名前を忘れる
  • 物をどこにしまったか思い出せない

認知症の物忘れについてさらに知りたい方や、気になる症状がある方は、こちらの記事も参考にしてみましょう。
👉認知症と物忘れの違いは? 症状の比較と対処法を解説 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ

時間や場所の感覚が分からなくなる

「時間や場所の感覚が分からなくなる」こともまた、認知症の初期症状の1つ。これによって、以下の症状が現れることが多くあります。

  • 日付が言えなくなる
  • 近所でも道に迷ってしまう
  • 昔の出来事を最近のことと認識してしまう

集中力・判断力の低下

集中力・判断力の低下も、認知症の初期に見られる症状です。以下のような症状によって、これまで営んできた生活が難しくなることがあります。

  • 買い物の計算ができなくなる
  • お金の管理ができなくなる
  • 料理の作業工程が分からなくなる

気分の落ち込み

認知機能が低下すると、精神的に落ち込み、以下のような症状が発生するケースがあります。

  • 人付き合いを避けるようになる
  • 趣味をやめてしまう
  • 怒りっぽくなる

ここまで取り上げてきた症状が現れている場合は、認知症の初期症状があるといえます。まずは一度、病院を受診してみましょう。

認知症の前段階の症状とは?

認知症の初期症状とは? 兆候を見極めるポイントを紹介

初期症状が進行し、認知症に「なりかけ」になってしまった場合、具体的にどのような症状が現れるのかを解説します。症状を理解して、早期発見のきっかけとしましょう。

軽度認知障害

軽度認知障害とは、認知症と健常な状態の「中間のような状態」のこと*4です。自覚症状だけでなく、他者からみても変化を感じられる状態ともいわれていますが*5、厚生労働省による定義は以下の通りです。

  • 年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害が存在する。
  • 本人または家族による物忘れの訴えがある。
  • 全般的な認知機能は正常範囲である。
  • 日常生活動作は自立している。
  • 認知症ではない。

厚生労働省e-ヘルスネット「軽度認知障害」より抜粋して再編集)

他にも、記憶ではなくその他の能力が先行して低下する軽度認知障害も存在します。例えば、注意力や集中力、問題解決能力をはじめ、思考力や言語理解、視空間認知機能(目から入った情報をもとに全体像を把握する機能)などが低下するケース*6です。特に視空間認知機能は、聞き慣れない専門用語ではありますが、この機能が低下すると、熟知しているはずの場所で道に迷ったり、一度に見渡せないほどの広い空間内で2地点間の位置関係(方向)が分からなくなったりします。

認知症が進行すると、どんな症状が現れる?

認知症の初期症状とは? 兆候を見極めるポイントを紹介

軽度認知障害がさらに進行し、日常生活に支障をきたしてしまうようになったら、「認知症になった」状態だとされます*7。認知症の症状がさらに進行したときに現れる「認知機能障害」と「行動心理症状」についても、詳しく解説します。

認知機能障害の例

認知症が進行すると、「記憶障害」や「見当識障害」などの症状がみられます。それぞれの特徴について見ていきましょう。

記憶障害

記憶障害は、認知症の患者さんによくみられる症状の1つです。特に短期記憶が失われやすい一方、長期記憶は維持されやすいという傾向があります。また、体験を丸ごと忘れるのも特徴です。さらに症状が進むと、長期記憶も思い出せなくなる可能性があります。

見当識障害

見当識障害は、記憶障害に次いで認知症の患者さんによくみられる症状です。

時間や場所、周囲の人と自分の関係を理解することを「見当識」と呼びます。見当識障害が現れると、この見当識を保てなくなります。例えば、何月か分からなくなったり、家族の名前を忘れたりといったケースが見受けられます。

認知機能障害が起きたら、行動心理症状にも注意を

認知機能障害は、心理状態の悪化を招く恐れがあります。そこに、患者さん本人の生来の性格や、周囲の対応などが組み合わさり、「認知機能障害に適応しなくては」と本人が意識すると、「行動心理症状」が発生します。

行動心理症状への対応には、ご家族の方にも大きな影響を及ぼすケースが少なくありません。ここからは、よくみられる症状である「暴力や暴言」「ひとり歩き(徘徊)」の2つについて解説します。

行動心理症状(1):暴力、暴言

認知症の患者さんは、暴力や暴言に訴えるケースが少なくありません。これは患者さんご自身が、認知機能障害が発端で興奮状態に陥ることで発生する場合が多いといわれています。

興奮状態につながるきっかけはさまざまです。自身の症状の先行きが分からない不安が高まったときのほか、家族の対応によって自尊心が傷つけられたりしたときなどが挙げられます。

行動心理症状(2):ひとり歩き(徘徊)

見当識障害により、自宅の慣れ親しんだ景色さえも「初めての場所」に感じられることもあります。自分のいる場所はどこなのか確かめたいという思いから、ひとり歩きが発生します。

初期症状かも、と不安を感じたときの適切な対処法は?

認知症の初期症状とは? 兆候を見極めるポイントを紹介

「認知症の初期症状かもしれない」と感じた方は、脳神経外科・内科、精神科、心療内科といった病院を受診しましょう。先ほど触れた通り、認知症を早期発見できると、症状を遅らせられる可能性があるためです。軽度認知障害の段階までであれば、生活習慣を見直すことなどによって、場合によっては改善できる可能性もあります。

さらに、日常生活に気をつけることで症状が軽快する場合もあります。具体的には、アルツハイマー型認知症の場合は、生活習慣の改善で症状が良くなる可能性があります。バランスの良い食生活や定期的な運動を取り入れましょう。認知症と生活習慣改善の関連については、こちらの記事でも解説しています。
👉認知症対策は何をすればいい? 日常生活でできる予防法を紹介 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ

また、初期症状に当てはまっていない方でも、認知症への不安はなかなか拭えないかもしれません。認知症の予防法についての記事も参考にしてください。
👉認知症はトレーニングで予防。今日から始める運動習慣で認知症のリスクを軽減しよう - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ
👉認知症予防に脳トレを取り入れよう。期待できるメリットとおすすめのトレーニング方法 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ

認知症の進行レベルを把握して、適切な対処法を考えよう

認知症は、段階的に進行していく疾患です。早い段階、例えば軽度認知障害のタイミングまでに認識できれば、進行を遅らせたり、あるいは症状を改善したりすることも可能かもしれません。

ここまで取り上げてきた症状の特徴に、少しでも当てはまるようなら、早めに医療機関を受診しましょう。

編集:はてな編集部
編集協力:株式会社エクスライト


先々の認知症の疾病リスクを予測し、さらに早い段階で対策を講じたいなら「フォーネスビジュアス」を利用してみてもいいかもしれません。

「認知症になるかもしれない」という不安がある方は、症状が現れる前から将来的なリスクを予測しておくと、生活改善などの対策を立てられます。

認知症のリスク、調べてみませんか?

認知症になる可能性は、
発症前に予測できる時代に

*1:知っておきたい認知症の基本|政府広報オンライン

*2:『軽度認知障害の長期予後』『二つの「軽度認知障害」と認知症前状態を表す概念の推移』臨床心理医学(2014)

*3:あたまとからだを元気にするMCIハンドブック[PDF]

*4:あたまとからだを元気にするMCIハンドブック[PDF]

*5:『軽度認知障害の長期予後』『二つの「軽度認知障害」と認知症前状態を表す概念の推移』臨床心理医学(2014)

*6:認知症の定義、概要、経過、疫学 [PDF]

*7:『軽度認知障害の長期予後』『二つの「軽度認知障害」と認知症前状態を表す概念の推移』臨床心理医学(2014)