認知症の兆候は歩き方で分かる? 早期発見につながる歩行の特徴とその理由を解説

認知症の兆候は歩き方で分かる? 早期発見につながる歩行の特徴とその理由を解説

近頃、親の歩き方が変になっているような……と感じたことはありませんか? 加齢による変化なのか、それとも他の問題のサインなのか、気になるところですよね。

実は、歩き方の変化が認知症の初期症状として現れることがあります。今回は、認知症を発症している人の歩き方の特徴とその理由について解説します。歩き方から認知症の兆候を把握し、早期発見につなげましょう。

(監修者)大渕修一 先生

地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター研究所 高齢者健康増進事業支援室 研究部長。国立療養所東京病院附属リハビリテーション学院理学療法学科卒業。アメリカ・ジョージア州立大学大学院保健学研究科修了。北里大学医学系研究科にて医学博士号取得。介護予防の第一人者として、全国の自治体で講演や指導を行うほか、民間企業との共同研究にも積極的に取り組んでいる。著書に『認知症にならないための歩き方』など。

こんな人におすすめ

  • 自身や身近な人に認知症の不安や兆しを感じており、認知症かどうかを察知したいと考えている人
  • 認知症の兆候を把握し、早期発見につなげたいと考える人
  • 認知症になるのを避けたいと考え、自分で予防方法を調べている人

認知症は歩き方から早期発見できる?

認知症の初期症状にはさまざまなものがありますが、最初に現れる兆候として挙げられるのが「歩き方」です*1。日常生活において、自分自身や身近な人の歩き方の変化に気を配ることは、認知症の早期発見につながる可能性があります。

症状の進行に合わせて、次のような順番で歩き方に変化が見られます。

  1. 歩く速度が遅くなり歩行が不安定になる
  2. 足が高く上がり歩幅が小さくなる
  3. 地面を擦るように歩く(すり足)

これらの変化は、認知機能の変化に応じて徐々に進行します。具体的な変化のプロセスを順に見ていきましょう。

歩く速度が遅くなり歩行が不安定になる

歩行には、安定したリズムを作りだす脳の神経細胞のネットワークが必要です。このネットワークは、脳細胞の働きが複雑に絡み合って成り立っています。加齢や認知機能の低下により脳の働きが徐々に低下すると、初めに表れるのが「不安定な歩行リズム」です。

足が高く上がり歩幅が小さくなる

不安定な歩行が進行すると、足が不自然に高く上がり歩幅が小さくなる特徴が見られます。通常、人は歩く際にエネルギーを効率良く使用し、つまずきを避けるために足を適切な高さで自然に動かします。

しかし、認知機能の低下により歩行の安定性が損なわれると、つまずかないよう足を高く上げるようになります。さらに、認知機能が低下すると危険を感知する能力も衰え、足を不必要に高く上げて歩くようになるのです。これにより、足を上げる動作の基準が変わり、結果的に歩幅が狭くなる原因にもなります。

地面を擦るように歩く(すり足)

さらに次の段階として、地面を擦るように歩く「すり足」の状態に進行。この変化は、認知機能の低下に加えて、足を上げるために必要な筋力の衰えや、足を上げる動作への意欲の低下とも関係しています。

なぜ歩き方に変化が表れる?

認知症は脳の神経細胞やその結びつきに影響を与える疾患*2です。これらの神経細胞や結びつきは歩行動作のコントロールに深く関与しています。認知症が進行すると、歩行に関わる神経系の調整やバランスに影響が出ます。この影響により、歩行動作が退化しやすくなり、歩き方に変化が表れるのです。

積極的に歩くことが予防に

認知症の予防には、日常生活において積極的に歩くことが非常に有効です。積極的に歩くことは、脳内の神経細胞ネットワークを強化し、脳機能を向上させる重要な役割を果たします*3。ウォーキングに変化を取り入れることの重要性や、歩行の変化に気付くことが認知症の早期発見に役立つ理由を解説します。

ウォーキングに変化を取り入れることの重要性

普段とは異なる場所を歩くことで、脳にさまざまな刺激を与えられます。特に新しい場所やなじみのない場所は、未知の環境への適応が求められ、脳の活性化を促します。いつもと違う帰り道を選ぶだけでも良いかもしれません。

また、NPO法人 JTRC熟年体育大学リサーチセンターが推奨する「インターバル速歩*4」もおすすめです。これは、筋肉に負荷をかけるやや速い「さっさか歩き」と、筋肉への負荷が少ない「ゆっくり歩き」を3分ずつ交互に繰り返す方法。このように歩行のバリエーションを取り入れることで、日々のウォーキングに変化を加えることができます。これにより、身体だけでなく、脳にも新たな刺激を与えられ、認知症予防に有効な手段となるでしょう。

早期発見と予防のための歩行の観察・分析

認知症は徐々に進行するため、初期段階での発見が困難です。特に自分自身の変化に気付くことが難しいため、家族や友人の観察が重要になります。一緒に散歩をするなどして、日々の変化を注意深く観察することで、認知症の兆候を早期に察知することができます。

また、自分一人で観察するしかない場合には、歩行のデータを計測できるアプリやスマートウォッチなどのウェアラブルデバイスの利用が効果的です。これらのテクノロジーは、歩行パターンの変化を定量的に捉えることができ、認知症の早期発見に役立てることができるでしょう。認知症対策についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。

👉 認知症対策は何をすればいい? 日常生活でできる予防法を紹介 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ

歩き方が気になったら認知症の検査を

認知症の兆候は、日常の歩き方の変化として表れることがあります。ふらつきや歩幅の変化、地面を擦るような歩行などが見られる場合は、認知症の初期症状である可能性を念頭に置きましょう。すでにこれらの仕草が見られる場合は、早期に病院を受診することが重要です。

認知症は徐々に進行するため、自分自身では変化に気付きにくいです。家族や自身の認知症の兆候を把握し、専門家に相談することで認知症の進行を遅らせることが期待できます。

編集:はてな編集部
編集協力:株式会社エクスライト


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*1:参考:Motoric cognitive risk syndrome and the risk of dementia - PubMed

*2:参考:日本神経学会『認知症疾患診療ガイドライン2017』第1章「認知症全般:疫学,定義,用語」 [PDF]」より「CQ 1-8 認知症の病理学的背景にはどのようなものがあるか」(12ページ)

*3:参考:Aerobic exercise training increases brain volume in aging humans - PubMed

*4:参考:NPO法人 熟年体育大学リサーチセンター(JTRC)「インターバル速歩とは?