認知症の4つの種類とは? それぞれの原因、症状の違いを解説

認知症の4つの種類とは? それぞれの原因、症状の違いを解説

認知症には複数の種類があり、中でも、発症割合の高い代表的なものとして、アルツハイマー型、脳血管性、レビー小体型、前頭側頭型の4種類が挙げられます。では、この4種にはどのような特徴や差異があるのでしょうか。本記事では、認知症についての正しい理解を得るために、これら4種の認知症の特徴や原因、症状を解説します。

(監修者)矢島隆二 先生

総合リハビリテーションセンター みどり病院 副院長、認知症疾患医療センター 副センター長
脳神経内科・認知症・総合内科等専門医。新潟大学医学部卒業後、高度急性期医療から地域の総合病院まで幅広く臨床経験を積み重ね、新潟大学附属脳研究所で認知症の研究を行い、医学博士号を取得。現在は認知症や神経難病を中心に、リハビリテーションにも重点を置いた神経内科の臨床現場で活動中。認知症や神経難病などの治験も行うかたわら、講演や執筆にも精力的に取り組む。

こんな人におすすめ

  • 自身や身近な人に認知症の不安や兆しを感じており、認知症についての理解を深めたい人
  • 認知症の原因について知りたい人
  • 認知症の種類による違いについて知りたい人

そもそも認知症とは?

認知症とは、脳の認知機能(記憶する・理解する・判断する・想像する・決断する・計算するなどの機能)に障害が生じ、日常生活に支障を来す病気の総称です。

認知症には、年齢を重ねるほど発症する可能性が高くなるという特徴があり、患者の多くは高齢者です。「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究(厚生労働科学特別研究事業発表)[PDF]」によると、2012年には65歳以上の認知症患者の割合は約7人に1人でしたが、2025年には約5人に1人に増加すると予測されています。

認知症は特別な病気ではなく、誰もが発症リスクを抱えています。それゆえ、社会全体で認知症への理解を深めることの重要性が指摘されています。

認知症の種類とは? 発症割合の多い4つを紹介

認知症の4つの種類とは? それぞれの原因、症状の違いを解説

認知症はいくつもの種類に分けられていますが、まずは認知症の分類の簡単な概要と、それぞれの発症割合を紹介します。

認知症には原因ごとにさまざまな種類がある

認知症といっても、その原因はさまざまで、脳の病気に起因することもあれば、脳の血管に生じた障害に起因することもあります。また、原因となる脳の病気も一つではなく、複数あります。こうした原因の違いによって、認知症はさまざまな種類に分類されています。

認知症の主な4つの種類と、種類別の発症割合は?

数ある認知症の中でも、特に発症の割合が多いのが、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症の4種類です。厚生労働省老健局の発表資料「認知症施策の総合的な推進について[PDF]」によると、最も多いアルツハイマー型認知症が67.6%、続く脳血管性認知症が19.5%、レビー小体型認知症が4.3%、前頭側頭型認知症が1.0%と、この4種だけで、認知症の9割以上を占めます。

認知症の4つの種類とは? それぞれの原因、症状の違いを解説

では、これら認知症の代表4種はどのような原因や症状があるのでしょうか。以降、詳述していきます。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症の原因

アルツハイマー型認知症は、アルツハイマー病によって脳の神経細胞が障害を受け、認知症を発症した段階を指します。主な症状として記憶、考え方、行動に問題を起こすことが多い、進行性の脳の病気です。

アルツハイマー病は現在、確実な治療法は確立していません。根本的な原因もまだ研究中ですが、アルツハイマー病患者さんの場合、脳の中の記憶に関係の深い部位を中心として、アミロイドβ、リン酸化タウといった異常たんぱくが蓄積することは解明されており、これらの異常たんぱくに関連して発症するという説が有力だと考えられています。これらの異常たんぱくは、10年以上の時間をかけてゆっくりと蓄積され、脳の組織を変化させます。そして、最終的には脳を萎縮させて認知機能の低下を引き起こすと考えられています。

アルツハイマー型認知症の主な症状

アルツハイマー型認知症の症状は、記憶障害(物忘れ)から始まることが多くなっています。それは、アルツハイマー病の脳萎縮は、記憶の中枢である海馬から始まることが多いためだと考えられます。

海馬は、脳の中で短期記憶をつかさどる領域です。日常的な出来事、勉強して覚えた情報などの新しい記憶は、海馬の中に整理され、その後、大脳皮質に蓄積されると考えられています。

アルツハイマー病になると、この海馬が萎縮してしまい、新しい記憶がうまく整理されず、物忘れをしやすくなるといった症状が現れます。そのほかには、失語(音声は聞こえていても、言語として理解しにくくなって話の内容が捉えにくくなる、物の名前が分からない、なめらかに話せず、ゆっくり苦労しながら話すなど)や、失認(視覚や聴覚、触覚などの能力そのものは問題ないのに、入力された情報を脳が認識しにくくなり、その対象がなんであるのか分からなくなる)、失行(手足の動きそのものは問題ないのに、今までできていた目的に沿った動作を行えなくなる)といった症状がみられることもあります。

脳血管性認知症

脳血管性認知症の原因

脳血管性認知症とは、脳血管障害を原因とした認知症を指します。

脳血管障害の中でも、高血圧の影響などで動脈硬化が進行し、やがて脳の血管が詰まることで生じる脳梗塞、脳内の血管が破れて生じる脳出血、脳周囲のくも膜下腔にある血管が破れて生じるくも膜下出血を総称して、脳卒中と呼んでいます。

これら脳卒中の影響で、一部の神経細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなり、認知機能の低下を生じることが脳血管性認知症の主な原因です。

脳血管性認知症の主な症状

脳血管性認知症の主な症状は、物忘れなどの記憶障害や失語、失認、失行、ものごとを計画立てて行う能力の障害など、ほかの種類の認知症と大きな違いはありません。

しかし、脳血管障害が生じた部位によって、症状の現れ方に違いが出やすいという特徴があります。例えば、突然症状が出現する、症状が沈静化しているかに見えても、突如悪化する、などです。また、多くのことが分からなくなっていても、特定の分野のことだけはしっかり認識も遂行もできる、「まだら認知症」と呼ばれる状態になることがあるのも、脳血管性認知症の特徴です。

これらの認知機能障害のほか、まひやしびれ感などの身体症状を伴うケースもあります。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症の原因

レビー小体型認知症を生じる原因にはまだ不明なところが多いですが、レビー小体という特殊な構造体が大脳皮質に広く出現するということが分かっています。レビー小体は、α-シヌクレインというたんぱくを主成分としており、加齢の影響も受けて徐々に脳に蓄積していき現れると考えられています。そして、レビー小体が脳に出現していくなかで、脳の神経細胞が徐々に減少し、認知機能に影響が生じます。ただし、レビー小体の出現と、レビー小体型認知症の因果関係はまだはっきり分かっていません。

レビー小体型認知症の主な症状

レビー小体型認知症では、「幻視(げんし)」という症状が出ることが特徴の一つです。視覚情報の中枢である後頭葉の機能が低下することで、「天井の模様が虫や人の顔に見える」といった錯視(さくし)や、「実際にはそこにないものがあるように見える」といった幻視を呈すると考えられています。

また、レビー小体型認知症では、手足が勝手にふるえたり、筋肉の緊張が不必要に高まって動かしにくくなったり、歩きにくくなって転びやすくなったりするといった、いわゆるパーキンソン症状(パーキンソン病に似た運動の障害)も現れやすいことが知られています。

そのほか、アルツハイマー型認知症のように記憶障害も目立つことがあり、実際にアルツハイマー型認知症を合併していることも珍しくありません。どの症状が先に出てくるかは個人差がありますが、夜中にうなされたり、寝言が目立ったりする「レム睡眠行動異常」が、認知機能障害に5年以上先行して現れることもあります。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症の原因

前頭側頭型認知症の原因も不明なところが多いのですが、主に、脳の前頭葉や側頭葉の神経細胞が徐々に減少し、委縮した結果として、認知症を発症します。

前頭側頭型認知症の主な症状

前頭側頭型認知症では、前頭葉や側頭葉の機能が低下するため、ほかの認知症には見られにくい、下記のような特徴的な症状を示します。

  • お店や人の家の物を勝手に持って行ってしまうといった行動を起こしたり、身だしなみに関心を払わなくなるなどの「社会性の欠如」
  • 自分に対して抑制が効かなくなり、相手に対して遠慮ができなくなったり、暴力をふるったりしてしまう「脱抑制」
  • いつも同じ道順を歩き続ける、同じような動作を取り続けるなどの「常同行動」をとる
  • 他人に共感できない、感覚が鈍くなるといった「共感性の鈍麻(どんま)」
  • 相手に言われたことをそのまま返す、同じ言葉を言い続けたりする「被影響性の亢進(こうしん)」

これらの症状が、発症後平均6~8年かけてゆっくり進行し、最終的に寝たきりの状態になることが多いといわれています。

認知症を予防するには?

認知症の4つの種類とは? それぞれの原因、症状の違いを解説

上記の4種以外にも、認知症を発症する原因にはさまざまなものがあり、全ての認知症を予防することは困難です。しかし、種類によっては発症リスクの軽減が期待できるものもあります。

例えば、脳血管性認知症のように原因となる病気が分かっている場合は、それら病気の予防や管理をしっかりすることで、認知症の予防につながると考えられます。この場合、高血圧や糖尿病などの脳血管障害につながりやすい生活習慣病の予防・改善・治療は、認知症の予防にもなるでしょう。

また、以下のようなポイントに気を付けると、認知症の発症や進行を遅らせる効果が期待できます。

  • 生活習慣病の予防・改善効果が期待できる栄養バランスのとれた食生活をする
  • 週2~3回以上の適度な運動習慣を維持する
  • 趣味を持つ・ボランティアに携わるなどして社会活動に参加する
  • 人との交流を持つ

年齢を重ねても健康的かつ活動的に過ごすことが、認知症予防につながると考えられているのです。

認知症の種類を正しく理解し、予防へとつなげよう

認知症にはさまざまな種類があり、種類に応じて原因、特徴も多様化します。種類ごとの認知症がどのようなものかを理解することで、リスクを理解でき、適切な対策を講じていけるでしょう。ご家族、そしてご自身のためにも、認知症に関心を向け、健康的な生活を心がけてください。

編集:はてな編集部
編集協力:株式会社エクスライト


フォーネスライフが提供する疾病リスク予測サービス「フォーネスビジュアス」では、20年・5年以内(※5年以内は65歳以上が対象)の認知症をはじめとした各種疾病のリスクを予測できます。さらに、結果に応じて、コンシェルジュ(保健師)から自身に合った生活習慣の改善方法の提案が受けられます。コンシェルジュとの面談はオンラインで実施するため、遠方で暮らす家族と一緒に相談をすることも可能です。認知症について理解を深めることや、将来のリスク予測に関心がある人は、ぜひお問い合わせを。

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