介護を見据えて、高齢の親の健康をどうサポートする? 芸人・レギュラーの二人に聞いてみた

レギュラーのお二人

親が高齢になるにつれ増えていくのが、「最近、以前よりも親と話が噛み合わなかったりして、コミュニケーションが難しくなってきた」「この先、認知症になってしまったらどうしよう」といった悩み。近い将来介護が始まる可能性もふまえて、親のために今自分ができることは何か、あらかじめ対策できることはないか、考え始めている人も少なくないでしょう。

「あるある探検隊」のネタでおなじみのお笑いコンビ・レギュラーの松本康太さんと西川晃啓さんは、2014年にコンビで介護職員初任者研修*1の資格を取得。以来、施設でのレクリエーションなどを通じて介護業界を盛り上げる活動に取り組んでいるほか、前向きに介護に取り組むヒントや健康寿命*2を延ばすことの大切さなどを伝えるべく、メディアでの発信を続けています。

今回はそんなレギュラーのお二人に、介護施設での経験などをふまえ、将来の介護を見据えて高齢者とうまくコミュニケーションするコツや、できるだけ長く健康に過ごしてもらうために家族が心がけておきたいことについて、お話を伺いました。

フォーネスライフが提供する疾病リスク予測サービス「フォーネスビジュアス」では、20年・5年以内(※5年以内は65歳以上が対象)の認知症をはじめとした各種疾病の発症リスクを予測することができます。さらには結果に応じて、コンシェルジュ(保健師)が、ご自身に合った生活習慣改善方法をご提案します。

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レギュラー
レギュラー

松本康太さん、西川晃啓さん(ともに1979年生まれ)によるお笑いコンビ。1998年4月に結成し、2004年に「あるある探検隊」のネタでブレイク。2014年に一念発起して介護初任者資格を取得し、次いでレクリエーション介護士*3の資格も二人同時に取得。現在は介護関係の講演やイベントを通じて“介護芸人”としても活躍。介護について広く知ってもらうための活動を続けている。

利用者さんに怒られて気付いた、介護レクリエーションで大切なこと

──お二人が介護の世界に入られたきっかけは、先輩芸人さんの声かけで、施設を慰問するボランティア活動に参加したことだったそうですね。

松本康太さん(以下、松本):それもきっかけのひとつですね。あとは10年ほど前にテレビの企画で沖縄県の宮古島に1年間移住して、現地のおじいやおばあ(※沖縄の方言でおじいさん、おばあさんのこと)がたくさん話しかけてくれて、島で生活するための農業の知識など、いろんなことを教えてくれたんです。それで「自分たちは年配の人に親しみを持ってもらいやすいキャラクターなのかもしれない」と気付いて。

それで東京に戻ってきてからも、人生の大先輩たちにもっと親しんでもらったり喜んでもらったりできるように、もっと接し方について勉強しとかなあかんな、と漠然と思ってたんですよね。

西川晃啓さん(以下、西川):そもそも僕らは昔から、若い人よりファミリー層のお客さんが多かったんですよ。

松本:そうやな。僕らも昔は若い人にウケそうな、けっこう攻めたネタをやってたんですけど、ふたを開けてみたら劇場に来てくれたのはファミリー層で、めちゃくちゃスベった(笑)。だから、ちっちゃなお子さんからお年寄りの方みんなに分かってもらえるネタっていうのをコンセプトに、方向性を早めに変えたんです。

──その後は、お二人で一緒に「介護職員初任者研修」、続いて「レクリエーション介護士」の資格も取得し、本格的に介護現場に行かれるようになったと聞いています。介護施設でネタを披露したり利用者さんとお話ししたりするのは、劇場でお客さんを笑わせるのとはまた違った難しさがありそうですね。

松本:そうですね。最初のころは、西川くんが施設の利用者さんを怒らせてしまうハプニングもあったんです。僕らが利用者さんたちの前でネタを披露しているときに、ある男性の利用者さんが大きめの声でスタッフの人としゃべっていたので、西川くんがよかれと思ってその男性に近づいていって話しかけたんですよ。そしたらその方がいきなり立ち上がって、「誰に口きいとんじゃボケ!」って。もう、おでこがくっつくんちゃうかくらいの距離で。

西川:120%の大きい声でな。

松本:それで西川くん、腰抜かしてしまって。

西川:バターン! って尻もちついて。場が一気にシーンと。

レギュラーのお二人

松本:でも、あとあと勉強して分かったのは、その方は悪くないということ。視野狭窄(しやきょうさく)といって、年齢が上がってくるとどうしても視界が狭くなりやすいんです。だから本当なら正面に立って「ちょっといいですか」って話しかけた方がいいんですけど、西川くんが横から「すいません」って言っちゃったから、たぶん向こうはびっくりされたと思うんですよ。

西川:そうやな。視野狭窄もあるけど、いわゆるホスピタリティが足りなかったところもあると思う。介護の勉強をしたときに「サービス」と「ホスピタリティ」の違いについても学んだんですけど、サービスっていうのは万人に平等に同じものを提供することで、ホスピタリティっていうのはその人が望むようにすることなんです。だから例えば、僕らが施設でレクをしてるときも、そのレクに参加したくない人がいたら参加を強制させる必要はない。

認知症の症状が進んでいるなど、介護が必要な度合いが高い利用者さんが多かったりすると、なかなか笑ってもらえないこともあるんです。でも僕らもそれで焦らないようになったし、今日は手応えがなかったなと思うような日でも、帰るときに「面白かったよ」って声をかけてもらえることは多いんですよ。

松本:表情とか感情を表に出しにくい方でも、ちゃんと楽しんでいただいている、っていうのは徐々に感じるようになってきた。だからリアクションがなくても焦らず動じず、自分らなりの空気感でできるようになってきたと思います。

レギュラーのお二人

高齢者とのコミュニケーションは「リアクションを大きく」がポイント

──今お話しいただいたこと以外にも、高齢者の方とコミュニケーションを取ったりネタを見せたりする中で、お二人が大切にされていることはありますか?

西川:利用者さんたちが言ってくれたことに対して、何かちょっとでも面白くして返そうという意識はありますね。僕ら二人とも。

松本:やっぱり、相手の方の間違いとか失敗を笑いに変えることで、「失敗しても恥ずかしくないですよ」って空気を作るのが芸人ならではのアプローチやと思うんです。

例えば、レクの中で出したクイズに対して、「カレーライス」という間違った答えを何度も言ってしまう方がいたとしますよね。そういうときは「もうカレーライスはなしですよ、カレーライスなしですよ!」って振って、また「カレーライス」って言いはったら「だから~!」って笑いにする。もし違う答え方をされたら「いや言わんのかい!」って笑いに変えることもできます。もちろん相手の方のリアクションは見つつなんですけど、その方を悪者にはせずに、間違いを怖がらないで発言してもらえるように工夫してますね。

松本さん

──さすがです。まさに芸人さんならではですね。

松本:芸人でない方でも取り入れていただきやすいのは、リアクションをオーバーにすることですかね。それを心がけるだけでも、高齢の方はだいぶ喋ってくれますよ。例えば……西川くん、なんか最近あったエピソードを僕にしゃべってくれへん?

西川:いやこの前な、家帰ろうと車運転しててさ、信号で止まったんやけど、目の前の横断歩道におばあちゃんが歩いてきてな。

松本:うん。

西川:急にこけはったんよ。

松本:おばあちゃん?

西川:そう。そんときに、「アアッ」ってすごい声出しはって。ちょっと心配で、車置いて助けに行ったんや。

松本:へえ。……今くらいが、普通のリアクションです。

──たしかに、よくある感じですね。

松本:で、よりしゃべってもらいやすいリアクションはこうですね。

なあ西川くん、この前な、車を運転してたらさ、目の前におばあちゃんが歩いてきてな。

西川:ええっ!(大声)

松本:そのおばあちゃんが急に転びそうになってさ。

西川:あえっ、あっぶな!!(のけぞりながら)

松本:危ないやろ。で、俺も大丈夫かなと思って、気になって窓開けて。

西川:そら気になるなあ! 心配やなあ!

松本:そしたらそのおばあちゃんが「ンフフフ~フフ」ってすごい声出しはって。

西川:なんやそれ!

──全然印象が違います! 話す側も気持ちよくなって、ついいろいろしゃべってしまいそうですね。

松本:今みたいな感じで、なんでもないことでもリアクションを大きく取る。芸人でいうと明石家さんまさんが分かりやすいかもしれないですね。「うそっ!」とか「ええっ!」とかリアクションの一つひとつが大きい。

西川:あとは初めて行った地域の施設だったら、「このへんってどんなところですか?」「何が名産なんですか?」っていろいろ聞いてみたり。それが昔のことを思い出す「回想法」*4という脳トレにもつながってくるんです。

一方的に「これをやってください」って言うだけだと、こっちが先生みたいな立場になっちゃいますからね。こちらが生徒、利用者さんが先生になれるようなコミュニケーションを心がけると、早めに心を開いてもらえることが多い気がします。

──もしこの先、高齢になった家族とのコミュニケーションに難しさを感じたり、介護が必要な状況になったりしたときのためにも、今のような声かけのコツを覚えておきたいです。そのほかにも、例えば家族が認知症になったとき、向き合う上で大切だと感じることはありますか?

松本:介護現場で一度お話しさせていただいた方に、介護士をしながら劇団も運営されている方がいるんですけど、その方は「認知症の人がもし自分を息子だと思って接してきたら、息子役になります。その人の生きている世界観に合わせることが一番ストレスなく過ごしてもらえる方法だと思うので」って言ってました。それはお芝居をやってる人ならではのアプローチだと思うんですけど「まず否定から入らない」というのは大切かもしれません。

──理解を持って接するためには、その方のように、認知症の症状についてや予防策などを知っておくことも大切ですね。

西川:そうですね。認知症の症状によってはなかなか難しいときもあると思うんですけど、僕も自分の親にはそんなふうに接したいと考えてます。

高齢者に健康に過ごしてもらうためには「自発的に、楽しく取り組めること」を見つけるのが大切

──この先家族の介護が必要になったときに生かせる、高齢者との接し方のヒントを教えていただきました。一方で家族としては、できるだけ長く元気に過ごしてほしいものです。お二人は日頃から、健康寿命の大切さについても発信されています。介護の現場や親御さんとの関わりの中で、高齢者が健康な日常生活を送るために必要なことについて考える機会があったのでしょうか?

松本:僕の母親はちょっと足が悪いんですけど、あんまりなんでもかんでも家族がやってあげるのも当人のためにならないのかな、と思うようになりましたね。介護の勉強をする中で「介護はあくまで『自立支援』で、本人の健康のためにもできそうなことは極力やってもらった方がいい」というのを学んだこともあって。

オカン自身もそのことを分かっているみたいで、この前実家に帰って僕が布団を畳もうとしたら、「あとでやるから置いといて。畳むのもトレーニングになるから」って言ってましたね。足腰が弱っていることを自覚してから、自分でも対策方法を調べて取り組んでいるみたいです。

ちなみにオカンのこともあり「足腰が弱くなってくると衰えるスピードも速くなる」と知ってからは、そのことをもっと広めていきたいなと思って、西川くんと二人で健康ウォーキング指導士っていう資格も取ったんですよ。僕はもう10年ぐらい、1日に1万歩から2万歩は歩くようにしてますね。

──ウォーキングなどの適度な運動習慣は、足腰のためにはもちろん、認知症予防にも効果的といわれていますよね。しかし一方で歳を重ねると、病気やケガの影響などもあって、外に出ることや体を動かすこと自体が億劫(おっくう)になってしまう人もいるように思います。私の父がまさにそうで……。健康のためにももう少し動いてほしいのですが、そういう人に家族が声をかける上でのポイントなどはありますか?

松本:ほんまにそれは難しいですよね。言い過ぎたらアカンもんな……。でも、天岩戸伝説*5じゃないですけど、「外ではこんなに楽しそうなことをやってるで」っていうのを、いろいろ見せてあげるのがいいんじゃないですかね。「こんな番組やってるよ」とか、「近所にこんな面白そうなコミュニティーがあるよ」とか。うちのオカンなんか、足は弱っているけどコーラスグループ3つ入ってるし。

西川さん

西川:それは元気過ぎるな(笑)。うちの母は真逆なんですよね。趣味もないし。ほんまは動いた方がいいんですけど、歩き慣れてないから、親父が張り切って歩いてもらおうとしたときに転んで頭打っちゃったりもして。そういうこともありえますから、本人がやりたくないって言ってるなら、僕はあんまり無理にはおすすめしたくないですね。

必ずしも外に出てもらおうとしなくても、その人が好きな話とか、興味のある話をしてあげるのも一つのレクリエーションかなと僕は思います。「へえ、今度そこ連れてってや」とか「そこ行ってきたわ」って話なんかも、うれしいんやないかな。

松本:「人から聞いたけど、最近あそこもだいぶ変わったらしいよ」とかな。あくまでも自分から興味を持ってもらうのが大事ですよね。

──お二人は、先ほど伺った介護レクリエーションをはじめ、YouTubeでも紹介されている認知症予防体操など、認知症予防の取り組みについて発信されていますよね。その中で大切にされていることはありますか?

西川:先ほど相方も言ってましたけど、高齢の方が何か間違ったとしてもそれを笑いに変えていけるような空気を作れたら、楽しく参加してもらえて、予防にもつながるように思うんです。認知症や介護といった言葉の重いイメージを、少しでも変えられるようなお手伝いをしていきたいなと思っています。

レギュラーのお二人

──認知症予防という視点では、生活習慣改善が必要不可欠と言われています。フォーネスライフが提供している「フォーネスビジュアス」というサービスでは、早期発見よりさらに早く、発症する前の段階で将来認知症になるリスクを予測し、さらに生活習慣改善に向けたアドバイスを受けることができます。こういったサービスを受診することについては、どのように感じますか?

松本:病気のリスクが分かるというのは安心感もある反面、自分が怖がりなので、知るのが怖い気持ちもある、というのが正直なところですね。でも、そういったサービスがもっと世間的にスタンダードになってきたら、もっと受けやすくなるようにも思います。僕は怖がりやから、人間ドックのプランにそういうサービスが自動的に組み込まれてて、知らないうちに検査してもらえたら一番ありがたい(笑)。

西川:たしかに。でも、早いうちにそれを知っておいたら予防のための行動を始めることができますもんね。自分だけでなく親とか家族にすすめてみる、という使い方もありそうですね。


今回はレギュラーのお二人に、高齢の家族に対して、相手の意志を尊重しながら関わる大切さ、認知症予防にもつながるコミュニケーションのコツなどをお聞きしました。

記事でも触れている、フォーネスライフが提供する疾病リスク予測サービス「フォーネスビジュアス」では、20年・5年以内(※5年以内は65歳以上が対象)の認知症をはじめとした各種疾病のリスクを予測できます。さらには結果に応じて、コンシェルジュ(保健師)がご自身に合った生活習慣改善方法をご提案。コンシェルジュとの面談はオンラインで実施するため、遠方で暮らす親と一緒に相談をすることも可能です。

下記の記事では、フォーネスビジュアスのサービス内容について、フォーネスライフ社の社長が詳しく語っています。ぜひこちらもご覧ください。

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どんなアドバイスを受けられる?



取材・構成:生湯葉シホ
撮影:曽我美芽
編集:はてな編集部

レギュラーのお二人

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  • 価格:1,980円(税込)
  • 発売日:2023年11月30日
  • 出版社:アスク出版

*1:在宅・施設を問わず、介護職として働く上で基本となる知識・技術を習得する研修。参考:厚生労働省「今後の介護人材養成の在り方について(概要)」

*2:健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間。参考:平均寿命と健康寿命 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

*3:介護や高齢者に関する基礎知識を持ち、さらに自身の特技を生かした介護レクリエーションを企画・実施できる人材。2014年9月に民間資格制度がスタートした。参考:【公式】レクリエーション介護士|日本アクティブコミュニティ協会

*4:1960年代にアメリカの精神科医であるロバート・バトラー氏が提唱した、昔の経験や思い出を語り合う心理療法。認知症患者へのアプロ―チとして注目されている。参考:回想法 | 健康長寿ネット

*5:参考:岩戸伝説|戸隠の歴史|戸隠神社について|戸隠神社