空腹時の有酸素運動で脂肪が燃える?効果やタイミングを徹底解説

空腹時の有酸素運動で脂肪が燃える?効果やタイミングを徹底解説

「空腹時に有酸素運動(ウォーキングやランニングなど)をすると脂肪が燃えやすい」という話を聞いたことはありませんか?

一方で、空腹時には筋肉の分解作用が高まり「低血糖状態に陥り危険」といったリスクを指摘する声もあります。正しい知識を持たずに取り組むと、せっかくの努力が逆効果になってしまうかもしれません。

本記事では、効果やダイエットなど目的別の実践法から食事の摂り方まで解説します。年代や性別に合わせた運動プランもまとめているので、ぜひ参考にしてください。

(執筆者)中島正雄

合同会社ユイロード 代表社員
2020年10月より、大阪府茨木市にてパーソナルトレーニングジムを運営。2025年6月まで、延べ100名以上の利用者に筋トレやダイエットを指導。2023年には健康経営アドバイザー資格を取得。自身のダイエット経験や、コーチングやNLPを学んだ経験を活かした「クライアントに寄り添った」指導が特徴。

効果は? どんな影響がある?

空腹時の有酸素運動は、これは「ファステッド・カーディオ」とも呼ばれ、海外のフィットネス業界でも注目を集めています。

朝食前などの「胃の中が空っぽな状態」で行います。ウォーキングやジョギングが代表例ですが、身体にはどのような影響があるのでしょうか。

以下ではメリットとデメリットの両面から、空腹時に有酸素運動をする効果を解説します。

メリット

空腹時の有酸素運動には、脂肪燃焼効果を高めるメリットがあります。

例えば、睡眠中は長時間の絶食状態になるため、起床直後は体内の糖質エネルギーが不足しがちです。この状態で運動を始めると、蓄積された体脂肪がエネルギー源として分解されます*1

また、午前中から代謝が活性化することも、起床直後の空腹時に運動するメリットです。運動を始めると身体が活動モードに切り替わり、心拍数や血圧を上げる交感神経が優位になります。結果として、身体をスムーズに覚醒させることができ、午前中から活動的な状態を作り出せます*2

身体のスイッチを入れた効果は、日中の活動時まで持続するといわれています。長期的に続けることで、痩せやすく太りにくい身体作りにつながるでしょう。

デメリット

空腹時の有酸素運動には、筋肉の分解(カタボリック)を促すリスクがあります。

糖質エネルギーが枯渇した状態で運動すると、前述の脂肪に加えて、筋肉を構成するタンパク質の分解も促されます。脂肪を燃やすと同時に筋肉も削られるため、人によっては理想の身体作りが難しくなるかもしれません*3

また、「低血糖」のリスクにも注意する必要があります。起床直後の空腹時は、1日の中でも血糖値が最も低いタイミングです。その状態で筋肉が糖分を消費してしまうと、血糖値がさらに低下してしまいます。

低血糖になると脳へのエネルギー供給が不足し、めまいやふらつき、冷や汗、強い倦怠感、吐き気などの症状を引き起こします。

どんな運動がいい? 目的別のアプローチ

どんな運動がいい? 目的別のアプローチ

空腹時の運動効果を高めるには、目的に合ったメニューを取り入れることが重要です。ここでは「ダイエット」「筋肉維持」「健康維持」の3つに分けて、効果的な有酸素運動の取り入れ方を解説します。

ダイエット目的の場合

ダイエット目的の有酸素運動では「脂肪燃焼効率の最大化」と「筋肉の分解を防ぐこと」がポイントになります。以下を参考にしながら、ご自身のレベルに合ったメニューを考えましょう。

  • 運動メニュー
    • 朝食前のウォーキングや、軽いジョギングがおすすめです
    • 脂肪燃焼に最適な心拍数を維持しやすく、筋肉への過度な負担も抑えられます
  • 運動時間と強度
    • トレーニングの時間は、20~40分程度に設定しましょう
    • 運動強度については、心拍数120回/分が目安になります
    • 無理をせず「少し息が弾むものの、きついとは感じない」程度に留めてください
  • 運動の頻度
    • 疲労の蓄積や筋肉の分解を防ぐために、週3〜4回を目安にしましょう
    • 適度に休養日を入れて、身体のダメージを和らげることも大切です

筋肉維持・パフォーマンス向上を目指す場合

原則として、空腹時の有酸素運動は身体能力のアップには不向きなトレーニングです。糖質エネルギーが不足した状態では、筋トレの効果が相殺されてしまうかもしれません。

そのため、運動の15~30分前にはアミノ酸やプロテインを補給しましょう。BCAA(分岐鎖アミノ酸)やEAA(必須アミノ酸)、吸収が速いホエイプロテインなどを摂取すると、筋肉の分解を防ぎやすくなります。血中のアミノ酸濃度を高めるとともに、筋肉のもとになるタンパク質の摂取も意識してください。

運動のタイミングは、エネルギーが満タンの状態になる「食後2~3時間」がベストです。食後からやや時間を空けることで消化が落ち着き、筋肉に十分なエネルギーが補給された状態でトレーニングに臨めます。

筋トレ時の食事法については、下記の記事もチェックしてみてください。

筋トレは食事が命?タイミングや目的別の食事メニューを徹底解説 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ

健康維持・血糖値のコントロールが目的の場合

軽い運動はインスリンの働きを高めて、血糖値を安定させる効果が期待できます。

安全に健康維持をするためにも、最初は朝の散歩から始めましょう。決まった時間にウォーキングをすることで体内時計をリセットしたり、自律神経を整える効果が期待できます。

ただし、低血糖のリスクを抑えるために過度な空腹は避けることが大切です。起床後にはコップ1杯の水を飲み、できればバナナや無糖ヨーグルトを摂取しましょう。健康維持を目的にする場合は、脂肪燃焼効果を無理に追求しないことをおすすめします。

空腹時でも安全に脂肪燃焼させる方法

脂肪燃焼効果を高めるには、適度に栄養補給をする必要があります。ここでは食事面・栄養面を中心に、空腹時でも安全に脂肪燃焼させるポイントを解説します。

空腹時におすすめの軽食例

空腹時の有酸素運動では、完全に胃を空っぽにする必要はありません。トレーニングの質を落とさないためには、脂肪燃焼を邪魔しない程度に「運動前の食事(プレワークアウトミール)」を摂取することがポイントです。

どのような食品を選ぶとよいのか、以下ではおすすめの軽食をまとめました。

  • バナナ半分〜1本
    • 消化がよく、速やかにエネルギーに変わる糖質を摂取できます
    • エネルギーの代謝を助けるビタミンB群も豊富に含んでいます
  • 無糖ヨーグルト
    • 少量の糖質とタンパク質を、バランスよく補給できます
  • アミノ酸(BCAA・EAA)ドリンク
    • 血中のアミノ酸濃度を高めて、運動中の筋肉の分解を防いでくれます
  • ブラックコーヒー
    • コーヒーに含まれるカフェインが脂肪の分解と燃焼を促します

朝食を作る時間がない方は、コンビニで購入できるものを選びましょう。おにぎり(半分)や豆乳、ゆで卵なども、トレーニング前の摂取がおすすめの食品です。

運動後にも栄養補給をする

運動後の身体はエネルギーを使い果たし、筋肉もダメージを負っている状態です。このタイミングで適切な栄養補給をすることが、スムーズな回復と成長につながります。

運動後の栄養補給では、タンパク質と糖質の摂取を心がけましょう。タンパク質は筋肉の修復・成長を促すため、強い身体作りに欠かせません。一方で、糖質*4は枯渇したエネルギー(グリコーゲン)を補充し、インスリンの分泌を促して栄養素を筋肉細胞へと効率的に送り届けます。

おすすめの組み合わせは、ホエイプロテインシェイクとバナナです。朝食の場合は焼き魚定食(魚のタンパク質+ご飯の糖質)や、卵と全粒粉パンなども選択肢になります。

水分・電解質の補給もおすすめ

空腹時の有酸素運動は、脱水状態に陥りやすいリスクもあります。特に起床直後は、睡眠中に汗などで身体の水分が失われた状態です。そのため、運動中にはこまめな水分補給を意識し、脱水症のリスクを抑えましょう。

また、夏場の暑い時期には、汗とともにナトリウムなどの電解質も失われます。汗をかく運動を長く続ける場合は、少量の塩分やミネラルを含むスポーツドリンクがおすすめです。

年代・性別・ライフスタイル別の最適プラン

空腹時の有酸素運動は、体質やライフスタイルによって効果が変わります。ここでは、年代・性別・ライフスタイル別に、最適なメニューの考え方をまとめました。プランの例も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

運動習慣がある20〜30代

20~30代は体力や回復力がある年代なので、強度を高めたメニューにも挑戦しましょう。前後の栄養補給も意識することで、筋肉の分解のリスクを抑えながらトレーニングの効果を高められます。

  • 【プランの例】
    • 起床後:BCAAドリンクを摂取する
    • メニュー①:5分間のHIIT(高強度インターバルトレーニング)
    • メニュー②:15分間のジョギング
    • 運動後:プロテインと糖質を補給する

脂肪燃焼をさらに加速させたい場合は、朝食前に軽いランニングを取り入れてみてください。

代謝が低下しやすい40〜50代

40~50代は基礎代謝が低下し始め、関節への負担も気になる年代です。けがにつながるような無理は避けて、低〜中強度の安全なメニューを選びましょう。

  • 【プランの例】
    • 起床後:ブラックコーヒーを1杯飲む。
    • メニュー①:20~30分間のウォーキング(早歩き)
    • メニュー②:5分間のストレッチ

上記のほか、膝や腰への負担が少ないエアロバイク(フィットネスバイク)もおすすめです。強度よりもフォームを意識し、リズミカルに身体を動かすことを意識してみてください。楽しみながら継続することが、健康作りの近道になります。

生理周期・低血糖で悩みやすい女性

女性でホルモンバランスが崩れやすい状態の方は、無理をしないことを意識しましょう。

特に黄体期(生理前)は身体に水分が溜まりやすく*5、精神的にも不安定になりがち*6です。身体への負担を抑えるために、強度や時間を減らしたメニューを選んでみてください。

また、女性は男性に比べると貧血や低血糖のリスクが高いため、運動前には軽食を摂りましょう。バナナやヨーグルトと併せて、鉄分を補給できる食品を摂取すると、長期的な健康維持につながります。

忙しいビジネスパーソン

まとまった時間の確保が難しい方には、以下のような時短メニューがおすすめです。

  • 一駅手前で電車を降りて、20分間の通勤ウォーキングをする
  • 始業前に、オフィスの周りで10分間の早歩きをする
  • 週末に時間が取れる場合は、少し長めのウォーキングをする

上記のような有酸素運動でも、長く続けることで効果が期待できます。平日と休日でメリハリをつけて、忙しくても継続できるプランを考えましょう。

空腹時の有酸素運動のリスクを回避するには?

空腹時の有酸素運動のリスクを回避するには?

筋肉の分解などのリスクを抑えるには、実際の失敗例から学び、時間帯や頻度などの細かいポイントを押さえることも重要です。ここからは、空腹時の有酸素運動でよくある失敗や対策、よくある質問をまとめました。

よくある失敗と対策

空腹時の有酸素運動を安全に続けるには、体調悪化のサインを敏感に察知することが大切です。以下の失敗例と対策を参考にして、安全なトレーニング環境を整えましょう。

【失敗例1】運動中にふらつき、気分が悪くなる
典型的な低血糖のサインです。具体的には、体内のエネルギーが完全に枯渇し、脳へのエネルギー供給が追いついていない状態になります。

ただちに運動を中止し、安全な場所で休みましょう。運動前にバナナやスポーツ飴などを摂取すると、低血糖の予防策になります。

【失敗例2】身体が常にだるく、疲れが溜まりやすい
身体の回復が追いつかず、オーバートレーニングに陥っている状態です。毎日の運動は避けて、週2~4回程度に留めましょう。

トレーニング日と休養日を分けて、計画的に身体を回復させる方法がおすすめです。

よくある質問(FAQ)

ここからは、空腹時の有酸素運動でよくある質問と回答をまとめました。

  • Q1. 空腹時に毎日取り組んでも大丈夫?
    • オーバートレーニングのリスクが高まるので、おすすめはできません
    • 筋肉の回復と成長のために、休養日をはさんで週2〜4回を目安にしましょう
  • Q2. 空腹時の筋トレはOK?
    • 基本的にはNGです
    • 筋トレには多くのエネルギーを使うため、空腹時に行うとパフォーマンスが著しく低下し、筋肉の分解のリスクが高まります
    • 筋トレの前にはプロテインや軽食を摂り、できれば「食後2〜3時間」を目安に取り組みましょう
  • Q3. サプリメントは必須?
    • 必須ではありませんが、筋肉の分解を防ぐ手段としてBCAAやEAAの摂取は有効です
    • 特に「筋肉量を維持しながら体脂肪を減らしたい」と考える方にとって、サプリメントは取り入れる価値がある食品です
  • Q4. 空腹時の場合、朝と夕方はどっちを選べばいい?
    • 一般的には、睡眠中の絶食状態を経た朝が効果的とされています
    • 朝の有酸素運動は、1日の代謝をアップする効果も期待できます
    • 夕食前は日中の活動で疲労しているため、パフォーマンスが低下しやすい傾向にあります。

「無理なく・賢く・安全に」取り組もう

空腹時の有酸素運動は、脂肪燃焼効率や1日の代謝をアップさせる効果が期待できます。しかし、筋肉の分解や低血糖のリスクも軽視できないため、正しい知識をつけて計画を立てることが大切です。

まずはゴールを設定した上で、自身の年齢や体調に合ったプランを考えましょう。運動の強度や時間、栄養補給の方法にもこだわることで、安全なトレーニング環境を整えられます。

「無理なく・賢く・安全に」の原則を守り、空腹時の有酸素運動を日常に取り入れてみてください。

編集:はてな編集部
編集協力:株式会社YOSCA


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*1:参考:独立行政法人 農畜産業振興機構「スポーツと糖質~アスリートの基本の食事~

*2:参考:国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所「食事とエネルギー消費[PDF]」

*3:参考:国立病院機構西別府病院 スポーツ医学センター「わたしは何を食べたらいいの?

*4:参考:独立行政法人 農畜産業振興機構「砂糖とスポーツ

*5:参考:「成人女性における下肢のむくみと月経周期の関連[PDF]」

*6:参考:「PMS/PMDD 研究の動向を探る[PDF]」