認知症かも?と気になったときの診断方法とは。セルフチェックと病院での検査内容について解説

認知症かも?と気になったときの診断方法とは。セルフチェックと病院での検査内容について解説

自分自身や家族に対して、「最近、物忘れが多くなった気がする」「今までと少し様子が違う」など、もしかしたら「認知症かもしれない」と感じたことはありませんか。少しでも気になる場合は、本記事の前半で紹介するセルフチェックを試してみましょう。

セルフチェックの結果、認知症の可能性が高い場合は、迷わず医療機関の受診をおすすめします。不安なく受診できるように、認知症が疑われた際の検査内容や、認知症と診断された場合の対処法についても本記事の後半で解説しているので、ぜひ参考にしてください。

(監修者)矢島隆二 先生

総合リハビリテーションセンター みどり病院 副院長 兼 認知症疾患医療センター副センター長

脳神経内科・認知症・総合内科等専門医。新潟大学医学部卒業後、高度急性期医療から地域の総合病院まで幅広く臨床経験を積み重ね、新潟大学附属脳研究所で認知症の研究を行い、医学博士を取得。現在は認知症や神経難病を中心に、リハビリテーションにも重点を置いた神経内科の臨床現場で活動中。認知症や神経難病などの治験も行うかたわら、講演や執筆にも精力的に取り組む。

こんな人におすすめ

  • 自分や家族に認知症の疑いがあり、まずは自宅でチェックをしたい人
  • 認知症の病院での検査や診断方法を知りたい人

認知症かも?と思ったとき、自宅で簡単にできるセルフチェック方法

認知症かも?と気になったときの診断方法とは。セルフチェックと病院での検査内容について解説

認知症の初期症状は、加齢による物忘れと混同されやすく見過ごされがちです。しかし、自宅で手軽に行えるセルフチェックで、認知症の可能性を早期に発見できる場合があります。

まずは、代表的なセルフチェック方法を3つ紹介します。

認知症自己診断テスト/一般社団法人認知症予防協会

認知症自己診断テスト」は、一般社団法人認知症予防協会が公開しているテストです。複数の図版や数字を記憶した上で、「よく読んで数字で答えてください。今年は西暦何年ですか?」など、1〜10の質問に答えることで、認知症の心配がどの程度あるかをセルフチェックできます。

3種類のコースがあるので、質問への慣れや答えを覚えてしまうことによる結果のブレを考慮せず、複数回のテストを試すことができます。

自分でできる認知症の気づきチェックリスト/東京都福祉局

自分でできる認知症の気づきチェックリスト」は、東京都福祉局が公開しているテストです。「バスや電車、自家用車などを使って一人で外出できますか」など、1〜10の質問に答えることで、認知症の可能性について、おおよその目安をチェックできます。

このチェックリストは、家族が本人の代わりにチェックすることも可能です。ただし、日常生活の行動のしやすさなどを意識したリストなので、身体機能が低下している場合は点数が高くなることがあり、判断には注意が必要です。

山口式キツネ・ハト模倣テスト

山口式キツネ・ハト模倣テスト」は、医療現場でも利用されている動作によるチェック方法です。手の形を使った簡単な動作を模倣する能力を評価するテストで、片手でできる「キツネ」と、両手を使用する「ハト」で難易度が変わります。

キツネは中等度の認知症までの方ならほぼ全員が模倣できるといわれており、ハトが真似できない場合は、医療機関に相談する目安となります。また、ハトのエラーパターンによって認知症の程度や症状の判断にも利用できるテストです。

※このテストは家族が心配なときに自宅で実施できます

山口式キツネ・ハト模倣テストの具体的なやり方は、こちらの記事で詳しく解説しています。

👉簡単にできる認知症のセルフテスト&チェックリストを紹介 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ

病院で認知症を診断するための検査一覧

認知症かも?と気になったときの診断方法とは。セルフチェックと病院での検査内容について解説

セルフチェックで認知症の可能性が高いと判断された場合は、早めに医療機関で受診し、専門医の診察を受けることが大切です。まずは、かかりつけ医に相談してください。かかりつけ医から必要に応じて、病歴や現在の症状などを専門医に連携してくれる場合があります。もし、かかりつけ医がいない場合は、脳神経外科、脳神経内科、精神科、心療内科などを受診しましょう。

認知症を診断するために行われる主な検査は下記のとおりです。

診察

医師が患者さんやそのご家族から、これまでの経過や現在の症状などを詳しく聞き取ります。認知症の診断には、患者さんの日常生活の変化や困りごとを知ることが重要です。

具体的には、下記のような点について確認します。

・いつ頃から症状が現れたか
・症状の進行速度
・日常生活での支障の有無
・家族歴や既往歴
・服用中の薬剤
・アルコール摂取歴
・喫煙歴
・頭部外傷の有無

また、医師は患者さんの表情や言動、会話の様子なども観察し、認知機能の低下を評価します。

身体検査

認知症の原因となる他の病気を見落とさないために、さまざまな身体検査が行われます。なお、これらの検査は必ずしもすべてなされるものではなく、個々の患者さんで、より疑われる疾患を想定して組み合わされることが一般的です。

血液検査

一般的な血液検査に加え、ビタミンB1やビタミン B12の欠乏の有無、甲状腺機能の異常、梅毒感染の有無などを調べます。

心電図

認知症に関連しうる不整脈の有無を評価や、認知症患者さんに処方される薬剤での副作用の評価などのために行われることがあります。

胸部レントゲン検査

認知症に関連しうる心不全や肺疾患などの有無を確認します。

神経心理学検査

神経心理学検査は、認知症か否かを判断するために、患者さんに質問に答えてもらったり、患者さんに特定の作業を行ってもらったりする検査です。代表的な検査としては、ミニメンタルステート検査(MMSE)や、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)などがあります。これらの検査で、記憶力、見当識、言語機能などを評価します。

より詳しい神経心理学検査の内容については、こちらの記事で解説しています。

👉認知症の検査にはどんなものがある? 種類や流れについて解説 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ

頭部画像検査

頭部画像検査は、脳の萎縮具合などの形態を見る目的と、脳の機能や活動を見る目的に分かれています。さらに近年では、脳に蓄積した特定のタンパク質を描出する検査なども実用化されてきています。

これらの検査を総合的に判断して、認知症の診断が下されます。早期発見・早期治療が重要なので、少しでも認知症が疑われる場合は躊躇せずに医療機関で受診しましょう。

脳MRI検査

脳の構造を詳細に描出し、脳萎縮や脳血管障害、脳腫瘍などを検出する検査です。また「VSRAD(ブイエスラド)」というソフトウェアを用いて、MRI画像から得られた情報をコンピュータ処理することで、より客観的に脳萎縮の程度を評価することも行われています。なお、なんらかの事情でMRI検査が行えない場合は、CT検査で代用されることもあります。

脳血流SPECT検査

脳血流SPECT(single photon emission CT)検査は、放射性医薬品を用いて脳血流を測定し、画像化する検査です。MRIとは異なる観点から脳の血流の状態を評価し、脳の働きを評価できます。脳血流が低下している部位の分布状態から、認知症の早期発見および原因疾患の検討が可能になります*1

PET検査

認知症の分野におけるPET(Positron Emission Tomography)検査はいくつかありますが、これまでいずれも保険適用外でした。ただし、その中でも2023年に「アミロイドPET」が、特定の患者さんにおいて保険適用となりました。そのほか、「FDG-PET」も実施可能な医療機関はありますが、まだ保険適用外の検査です。

アミロイドPET検査

アミロイドPET検査は、脳に沈着したアミロイドβ(アルツハイマー型認知症を発症するより前から蓄積する、異常なタンパク質)を検出し、画像化する検査です。2023年に日本でもアミロイドβに対する疾患修飾薬が保険適用となったことに伴い、一定の条件に適合する患者さんには、保険適用で検査が可能になりました*2

※アミロイドPET検査は、2023年12月より、保険診療が可能になりました。ただし、下記の場合は保険適用になりません。

  • 無症状の方や、一定程度以上に進行した重度の認知症の方。また、自覚的な物忘れ等を訴えるが客観的には認知機能障害を認めない場合。
  • 症状・経過が典型的であり、アルツハイマー病の臨床的診断が明らかであるが、疾患修飾薬治療の対象であるかどうかの判定目的ではなく、診断の確認のみを目的とする場合。
  • 認知症の家族歴を有していたり、アポリポ蛋白E遺伝子(APOE)という遺伝子検査で、ε4アリルの保有者であったりするというだけの理由。
  • 医療以外の目的(雇用時健康診断や保険契約目的など)。
  • 検査結果のもたらす心理的・社会的影響について配慮ができない場合。
FDG-PET検査

FDG-PETは、放射線を出す特殊なブドウ糖(FDG)を注射し、脳の神経細胞がブドウ糖を取り込む様子を画像化する検査です。アルツハイマー型認知症では特定の部位の糖代謝が低下する性質を利用して、脳の活動状態を可視化することで、アルツハイマー型認知症を診断する際の一助となります*3

認知症と診断されたらどうすればいい?

認知症かも?と気になったときの診断方法とは。セルフチェックと病院での検査内容について解説

認知症と診断されると、患者さんとそのご家族は大きな不安を感じるかもしれません。しかし、早期に適切な対応を取ることで、より良い生活を送ることができます。ここでは、認知症と診断されたあとの対応について簡単に解説します。

家族や身近な人に報告する

認知症と診断されたら、まずは家族や親しい友人など、日常的に接する機会の多い人に報告しましょう。周囲の理解と協力を得ることで、患者さんを支えるサポート体制を整えることができます。また、認知症についてオープンに話し合うことで、ご家族の心理的な負担も軽減されます。

正しい知識を身に付ける

認知症に関する正しい知識を身に付けることは、患者さんとご家族にとってとても重要です。診断された医師から提供される冊子や、「地域の認知症疾患医療センター」「認知症サポート医」などの信頼できる機関が発行する資料から、認知症の症状、進行、治療法、ケアの方法などについて学びましょう。正しい知識を持つことで、不安を和らげ、適切な対応ができます。

近くの地域包括支援センターに相談する

地域包括支援センターは、高齢者の生活を総合的にサポートする機関で、「高齢者相談センター」や「高齢者あんしんセンター」と呼ばれることもあります。認知症と診断されたあとは近くの地域包括支援センターへの相談がおすすめです。

センターでは、認知症の専門職員が患者さんやご家族からの相談に応じ、必要な情報提供やサービス調整を行います。また、国や自治体が提供する認知症をサポートするためのサービスについても情報を得られます。

認知症と診断されたあとは、周囲の支えを得ながら、正しい知識を身に付け、適切な対応を取ることが大切です。医療機関や地域包括支援センターなどの専門機関を上手に活用し、患者さんとご家族がより良い生活を送れるよう努めましょう。

薬物治療

認知症の診療は、診断後も定期的な診察やフォローアップが必要になります。まずはかかりつけ医から、認知症疾患医療センターや認知症サポート医などの認知症に詳しい医療機関を紹介してもらう必要がありそうかを相談してみると良いでしょう。

認知症の診断とともに、初期の治療方針が定まった場合は、専門医療機関とかかりつけ医に連携してもらい、長期的な治療体制を整えましょう。かかりつけ医は患者さんの全身状態を把握し、適宜専門医療機関とも連携しながら、適切な薬物療法を提案してくれます。

また、認知症の発症や進行には、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病が関与していることがあります。これらの疾患の適切な管理は、認知症の予防や進行抑制に役立ちます。かかりつけ医の指導の下、生活習慣病の治療にも取り組むことが大切です。薬物療法に加え、食事療法や運動療法などの生活習慣の改善も積極的に行うと良いでしょう。

早めのチェックが対策につながる

認知症かもしれないと感じたら、ためらわずにセルフチェックや医療機関での検査を受けることが大切です。早期発見・早期治療が認知症の進行を遅らせ、患者さんとご家族のQOL(生活の質)の維持につながります。

検査の結果、認知症の診断に至らなかったとしても、検査の過程で別の病気が見つかることもあります。

また、認知症の前段階であるMCI(軽度認知障害)のうちに発見できれば、認知症への移行を防げる可能性があります。ある研究によると、MCIと診断された人の約16〜41%が1年以内に健常な状態に戻ったという報告*4もあります。MCIの段階で適切に対処することで、認知機能の維持が期待できるかもしれません。

認知症には、早めのチェックが何より大切です。セルフチェックを試してみるなどして、少しでも認知症が疑われる場合は、自己判断せずに専門医に相談しましょう。

編集:はてな編集部
編集協力:株式会社エクスライト


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*1:参考:一般社団法人日本神経学会「認知症診療ガイドライン2017」「症候,評価尺度,診断,検査」[PDF]「認知症の画像検査はどのように進めるか」

*2:参考:厚生労働省「医療機器及び臨床検査の保険適用について」[PDF]

*3:参考:国立がん研究センター がん情報サービス「PET検査とは

*4:参考:国立研究開発法人国立長寿医療研究センター「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック」[PDF]