家族や親類に対して、「認知症になったらどうしよう」「もしかして認知症かも?」……こんな心配を持ったことがある方がいるかもしれません。また、家族だけでなく、自身が将来認知症になることへの不安もあるでしょう。認知症に関する正確な診断を受けるには医療機関への受診が必要ですが、気になる症状があったときに自宅で簡単にできるセルフチェックがあります。
この記事では、すぐに試せる簡単なテストとセルフチェック方法を紹介します。
こんな人におすすめ
- 家族や自分が認知症なのではと不安がある人
- 自宅で簡単にできる認知症のチェック方法を知りたい人
認知症診断のための検査とは
認知症とは、「生後いったん正常に発達した種々の精神機能が慢性的に減退・消失することで、日常生活・社会生活を営めない状態」のことを指します。記憶障害、見当識障害(時間や場所、周囲の人との関係を理解する「見当識」が保てなくなり、月日や今いる場所などが分からなくなったり、家族の名前を忘れてしまったりする状態)などの認知機能障害が生じ、これら障害を背景として、怒りっぽさや疑い深さなどの行動心理症状が出現します。*1
認知症の診断は、他の疾患と同じように医師によって行われます。通常、問診によって既往歴や服薬歴、教育歴、家族構成などを確認し、認知機能障害、行動心理症状を評価します。そのほか、血液検査や画像検査など、身体的な検査も行われ、それらの結果を総合して医師が診断することになります*2。
認知症の診断をする検査についてはこちらの記事を参考にしてください。
👉認知症の検査にはどんなものがある? 種類や流れについて解説 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ
自分で簡単にできるセルフテストとチェックリスト
前述のように、認知症であるかどうかは医師によって診断されますが、医師の診断を受ける前に、下記で紹介するような簡易チェックを自分や家族が行うことは可能です。
ただし、ここで紹介する方法はあくまでセルフチェックですので、ある程度の目安として利用しましょう。セルフチェックや日常の行動などから「おかしいな?」と思ったら、必ず医療機関に相談してください。また、こうしたセルフチェックの結果は、その日の体調や気分に左右されることがあるので、心身の調子のよいときに試してみるのがよいでしょう。
山口式キツネ・ハト模倣テスト
山口式キツネ・ハト模倣テストは、医療現場でも利用されている動作によるチェック方法です。以下の方法でチェックできます。
【検査方法】
1.チェックしたい本人と相対して座ります。
2.「私の手をよく見て同じ形を作ってください」と一度だけ言い、左手でキツネの形(以下の写真A)を作ります。よく理解できていないようなら同じ指示を繰り返しても問題ありません。

3.キツネの形を約10秒間見せて、真似(模倣)できているかを確認します。この10秒の間はチェック対象と言葉を交わさず、「キツネ」や「よく見て」などと言ってはいけません。
4.次に、両手で作ったハト(以下の写真B)を10秒間提示します(両手のひらが自分の方を向き、母指が組み合わさった形)。キツネと同じように、この間は言葉を交わさず、チェック対象者による模倣を評価します。

5.キツネ、ハトともに提示している10秒間の内に模倣ができれば○、できなければ×とします。×の場合は、エラーパターン(どのように間違えているか)を記録します。
注意点
・「私の手をよく見て同じ形を作ってください」という指示は、本人が模倣を始める前に伝えます。模倣を始めてからは何も言ってはいけません。また、模倣した形が間違っているという指摘や、やり直しを促す発言をしないようにしましょう。
・「キツネ」「ハト」のように言葉で指示をしてはいけません。本人から「キツネだね」などと言われても答えないようにしましょう。
・最初に簡単な片手のキツネを行ってから、両手を使ったハトを行うことが重要です。キツネができることで、指示を理解していること、視覚に問題がないことが分かります。
・本人の気持ちを傷つけないよう、間違えていても「よくできました」と言いましょう。「見え方をチェックする検査です」と伝えると、模倣の正否をあまり気にしなくなる傾向にあります。
主なチェック項目(評価)
1.10秒以内で模倣できるかどうかを確認します(10秒以内に間違えた形を修正するのは問題なし)。
2.キツネは左手で見本を作りますが、本人がどちらの手で作っても正解とします。また、ハトはどちらの手が上(外側)になっても正解とし、ハトの親指は交差している必要があります。
3.写真Bのハトと同じ形が作れないエラーパターン(以下の写真C、D、E、Fのような形)なっていないか、また写真Aのキツネの形になっていないかどうかを確認します。




ご自宅での判断
キツネは中等度の認知症までの方ならほぼ全員が模倣できるといわれています。キツネが真似できない場合はもちろん、ハトが真似できない場合は医療機関に相談する目安となります。ハトのエラーパターンによって認知症の程度や症状を判断できることがありますので、できるだけ記録を取って医療機関に相談しましょう。
出典:山口キツネ・ハト模倣テスト(YFPIT)プロトコル [PDF]を参考に再構成
認知症自己診断テスト/一般社団法人認知症予防協会
一般社団法人認知症予防協会が公開している「認知症自己診断テスト」は、複数の図版や数字を記憶した上で、「よく読んで数字で答えてください。今年は西暦何年ですか?」など、1〜10の質問に答えることで、認知症の心配がどの程度あるかをセルフチェックできます。3種類のコースがあるので、質問への慣れや答えを覚えてしまうことによる結果のブレを考慮せず、複数回のテストを試すことができます。
自分でできる認知症の気づきチェックリスト/東京都福祉局
東京都福祉局が公開している「自分でできる認知症の気づきチェックリスト」では、「バスや電車、自家用車などを使って一人で外出できますか」など、1〜10の質問に答えることで、認知症の可能性について、おおよその目安をチェックできます。このチェックリストは、家族が本人の代わりにチェックすることも可能です。ただし、日常生活の行動のしやすさなどを意識したリストなので、身体機能が低下している場合は点数が高くなることがあり、判断には注意が必要です。
認知症の発症リスクを正しく把握し、予防に努めよう
ご自身や家族が「もしかして認知症?」と感じることがあれば、ためらわずに医療機関の受診を考えましょう。医療機関に行く前に認知症の可能性を把握したい場合は、目安として簡単なチェックをしてみるのもおすすめです。ただし、簡易チェックの内容に一喜一憂し過ぎず、不安なことがあれば医師に相談してみてください。
編集:はてな編集部
編集協力:株式会社エクスライト
チェックの結果、今は認知症の疑いが低くても、いずれは認知症を発症するリスクも考えられます。自分や家族の認知症発症リスクを知り、対策を心がけてください。
フォーネスライフが提供する疾病リスク予測サービス「フォーネスビジュアス」では、20年・5年以内(※5年以内は65歳以上が対象)の認知症をはじめとした各種疾病のリスクを発症前に予測可能です。結果に応じて、コンシェルジュ(保健師)による、自身に合った生活習慣改善方法の提案が受けられるので、専門知識に基づく認知症になりにくい生活を実践できるでしょう。
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