映画サイト「破壊屋」管理人が選ぶ、「健康」について考えるきっかけになる映画作品5選

映画サイト「破壊屋」管理人が選ぶ、「健康」について考えるきっかけになる映画作品5選

20年以上にわたって映画サイト「破壊屋」を運営する管理人が、「健康」について考えるきっかけとなる映画作品を紹介します。

観るだけで元気がもらえる作品、病気との付き合い方について考えさせられる作品など、邦画・洋画を交えて5作品ピックアップしていただきました。

一度観たことがある作品も、「健康」という違った視点で観ることで、新たな発見があるかもしれません。

みなさん、こんにちわ。私は「破壊屋」という映画サイトの管理人です。物騒な名前ですが、私が中学生の時に映画館で観て影響を受けたシルヴェスター・スタローン主演の映画『デモリションマン(英語で「破壊屋」という意味)』から取っています。

私が映画に深くハマったきっかけの一つは「映画評論」です。

映画に興味を持ち始めた中学生の私にとって、映画館はめったに行けない特別な場所。レンタルビデオもハードルが高かったので、図書館に行って、『キネマ旬報』『スクリーン(近代映画社)』『ロードショー(集英社)』といった映画雑誌を夢中になって読み込んだものです。たとえ映画本編を観ていない作品でも、映画評論だけは読み漁るほどでした。

その後大学でIT技術を学んだこともあって、「自分で映画評論サイトを作りたい」と思うように。そうして2000年に「破壊屋」を開設しました。

映画は、本編を観ている間はもちろんのこと「観る前と観た後も楽しい」ところに魅力を感じます。知らない映画を紹介されるだけで「そんな映画あるんだ!」と面白がれる。ポスターやキャッチコピーや予告編で内容を想像するだけでも楽しい。

観て面白かったら映画評論を読んで深く考えたり、逆につまらなかったら、なぜつまらないと感じたかを分析するのも良いです。

私は「映画は誰でも楽しめるハードルが低い文化」だと考えています。

今回は、私がピックアップした「健康について考えさせられる映画作品」を通じて、皆さんに「知らない映画を知る楽しみ」「知っている作品を別の視点で観る楽しみ」をお伝えできればと思います。

※ 編集部注:以下には、作品内容に触れる情報が含まれています

“傷を癒やす”というテーマを見事に描いている「若おかみは小学生!」

『若おかみは小学生!』

『若おかみは小学生!』
¥4,180(税込)
発売・販売元:ギャガ
©令丈ヒロ子・亜沙美・講談社/若おかみは小学生!製作委員会

交通事故で両親を亡くした女子小学生が温泉旅館の若女将になるというストーリーの「若おかみは小学生!」(2018年)。原作は児童文学でアニメも子供をメインターゲットにしているのですが、大人からの大絶賛を浴びた作品でもあります。封切り後にはアニメファンの口コミ拡散で大ヒットにつながり、2019年の「第42回日本アカデミー賞 優秀アニメーション作品賞」を受賞しました。*1

大人の訪問者も多い私の映画サイト「破壊屋」では毎年「最高のアニメ邦画」を読者の皆さんの投票から決めているのですが、「2018年のアニメ邦画ベスト30」では投票者137人のうちの80%以上(114人)が「若おかみは小学生!」に投票しました。*2 これは、過去の同じ企画において、「シン・エヴァンゲリオン劇場版」や「THE FIRST SLAM DUNK」などの人気作品を含め、他のどのアニメよりも高い得票数です。それほど「大人も絶賛するアニメ映画」なのです。

子供向けアニメにもかかわらず大人から高い評価を受けている一番大きな要素は「脚本」であると、私は考えます。映画のオープニングで「傷を癒やす」という古代の温泉の役割が語られるのですが、この「癒やす」という要素を脚本にうまく取り入れています。

『若おかみは小学生!』

『若おかみは小学生!』
©令丈ヒロ子・亜沙美・講談社/若おかみは小学生!製作委員会

劇中では「レストランの語源はラテン語で『良好な状態にする、回復させる』という意味」「お客様に食事で健康になっていただく」といった内容の、健康に関するセリフがたびたび登場します。つまりこの映画は、心や体に傷を負った人々が回復する物語といえるでしょう。

本作のクライマックスは、ヒロインの若女将がお客さんに温泉旅館での療養を促すという、アニメ映画とは思えないほど一見地味な展開なのですが、実はそこに大きな感動が隠されています。

「癒やす」「回復させる」「健康になる」といった今までのキーワードが伏線になっており、そして他者を癒やしてきた若女将が、自身が抱える「両親に会えない」という耐え難い傷に向き合うのです。しかしそこは子供でも受け入れやすいよう重く描かれてはいないので、観ていても心の負担を受けません。

観終えた後はきっと、温泉旅館に心身ともに癒やされに行きたくなるはずです。

パワフルに自分を貫き通すヒロインの姿に元気をもらえる「キューティ・ブロンド」

キューティ・ブロンドのイメージ

(※イメージ写真)

アメリカには「Feel-Good Movies(良い気分になれる映画)」というジャンルがあります。ポジティブ・シンキング志向が強いアメリカでは、映画の力を使って気分をアゲているのです。泣ける映画が大好きな日本人とは逆の傾向があるといえそうですね。

「キューティ・ブロンド」(2001年)はそんなFeel-Good Moviesの「オススメ映画」として必ずと言っていいほど挙げられる映画です。観ればきっと元気になれる、ある意味で究極の健康映画と言えます。

この映画の背景には2000年ごろのアメリカで流行した強烈な「ギャル文化」の影響があり、オープニングではそれを徹底して描いています。ヒロインの女性の持ち物はピンクとキラキラで飾られ、美容とブランド品を身に着けることに心血を注いでいる。そんな彼女が恋人のエリート男性から「頭の悪そうなブロンド娘とは結婚できない」と捨てられるところから、物語は始まります。

そこで彼女は一念発起して弁護士になるために猛勉強し、ハーバード大学への入学を果たしますが、そこはピンクもキラキラも無く、誰も美容に興味を持たないおカタい世界。

アメリカ映画はこのように「学のない若者が責任感ある大人に成長する」という話が多く、成長の過程では当然のように、それまでの振る舞いを捨てる必要があります。ところが「キューティ・ブロンド」が他の作品と違うのは、ヒロインがピンクもキラキラも一切捨てずに、自分を貫き通すことで成長するという点です。

この映画は、私がおすすめしなくても鑑賞済みの人が多いかもしれません。特に女性からの人気が高く、私が新入社員だったゼロ年代、周囲の女性社員たちはみんなこの映画を話題にしていました。30代の妻は「学生時代に流行っていたのはアヴリル・ラヴィーンと映画『キューティ・ブロンド』」だと言ってます。

しかし私は女性だけでなく、男性にもおすすめの作品だと感じています。私のようなオタク気質の男性は「オタクに優しいギャル」という存在に憧れを持つ人が少なくありません。最近の日本のマンガやアニメでは「(地味な)オタク男性と(見た目の派手さに反して)優しいギャルの女性」を描いたラブコメ作品などが一定の人気を誇っています。

「キューティ・ブロンド」もまさにそんな映画! パワフルなギャルが周囲の人々(オタク含む)を助けていく姿に、男女問わず元気をもらえるでしょう。

恋愛映画の名手が手掛ける「余命1ヶ月の花嫁」

映画『余命1ヶ月の花嫁』 発売元:TBS 販売元:ハピネット ©"April Bride" Project

映画『余命1ヶ月の花嫁』
発売元:TBS 販売元:ハピネット
©"April Bride" Project

「健康」とは真逆の言葉ですが、日本の映画やドラマでは昔から「難病」をテーマにした作品が人気です。特に、この「余命1ヶ月の花嫁」(2009年)が話題になったのをきっかけに、2010年代の日本映画は難病モノが大流行しました。

難病のコンテンツ化を象徴する側面もあるため、「余命1ヶ月の花嫁」は批判されることも多い作品です。私も公開当時には批判的な気持ちで映画館に向かいましたが、出来が良くてビックリした覚えがあります。

そう、この映画は「きいろいゾウ」「ヴァイブレータ」などを手掛けた恋愛映画の名手である廣木隆一監督が、その手腕を存分に発揮して作った良作です。大がかりな演出はクライマックスの結婚式まで抑え、あくまでも「普通の夫婦の物語」を描く演出だけで観客を引っ張り続けます。

廣木隆一監督はロケ撮影が得意なのですが、主役の榮倉奈々と瑛太が街を自転車で疾走するシーンは、恋愛映画史上屈指の名シーンだと思います。二人が自転車で歩道を猛スピードで走るのですが(※編集部注:撮影当時は自転車による歩道の走行が可能だった)、実際に人にぶつかりそうになり、二人が「ごめんなさい!」と声をかけるシーンがあります。

廣木監督は以前から仕込み一切無しでロケ撮影を行うと語っており、これはおそらく本当に起きた出来事だと考えられます。ぶつかられそうになった人、突然現れた榮倉奈々と瑛太に謝られて驚いたのではないでしょうか?

また、この映画に限らず、日本映画には「検診の普及」という意図を含んだ映画がいくつか存在します(本作の公開時には、20代から30代までの女性が1,000円で乳がん検診を受けられるキャンペーンが全国で開催されました)。

映画を使って検診を普及させるというのは、医療制度が比較的充実している日本ならではの現象だと思います。どうしても腰が重くなる検診ですが、作品を通して日頃から健診を受けておくことの重要性をあらためて知るきっかけとなります。

「健康」への価値観の違いが垣間見える「キンダガートン・コップ2」

『キンダガートン・コップ 2』

『キンダガートン・コップ 2』
DVD: 1,572 円 (税込)
発売元: NBCユニバーサル・エンターテイメント
(C) 2015 Universal Studios. All Rights Reserved.
*2023 年 5 月の情報です。

「キンダガートン・コップ2」(2016年)は、1990年に公開されたシュワちゃん(アーノルド・シュワルツェネッガー)演じる刑事が幼稚園に潜入捜査する大ヒットコメディー映画の、26年ぶりの続編です。本作で主人公を演じるのは、“強面筋肉俳優”のドルフ・ラングレン。

『キンダガートン・コップ 2』

『キンダガートン・コップ 2』
(C) 2015 Universal Studios. All Rights Reserved.

この映画の面白いポイントは、リベラル嫌いで銃が好きな保守派の主人公が、超リベラルで健康志向の幼稚園に潜入するということ!

「キンダガートン・コップ2」が健康問題について描いたシーンは、本作で一番の爆笑ポイントといえます。ステーキやチキンサンドが大好きな主人公に対して、幼稚園児たちは豆腐を食べて、ブロッコリーをかじり、お弁当の中身は緑黄色野菜だけ。幼稚園児に健康食の不備を指摘されまくる主人公が「俺は有酸素運動を毎朝やっている!」とムキになって反論します。爆笑シーンとはいえ、健康に対する認識の違いが文化の分断になっており、アメリカの現状も読み取れます。

「キンダガートン・コップ2」はカルチャーギャップメディーで、三重構造のカルチャーギャップを描いています。一つ目は強面刑事と幼稚園のカルチャーギャップ、二つ目は保守派とリベラルのカルチャーギャップ、そして三つ目は、26年前と現代のカルチャーギャップです。

『キンダガートン・コップ 2』
(C) 2015 Universal Studios. All Rights Reserved.

第一作からの社会の進歩も描かれており、26年前と「良いこと悪いこと」の基準が変わっているのです。例えば第一作では「虐待している親を主人公が殴る」シーンが最高に痛快な名シーンでした。ところが続編である本作は「虐待している親に主人公が寄り添って理解する」という内容に変えられています。確かに第一作だと問題は何も解決していませんね。

また第一作では主人公が幼稚園に命令式の教育を取り入れて成功し、続編である「キンダガートン・コップ2」でも主人公が同じことをしようとします。ところが劇中では「それは不適切」だとハッキリと否定されます。第一作とは逆で、保守派の主人公がリベラルな教育方式を学んでいく物語なのです。

一方で、行き過ぎたリベラルが窮屈さを生み出し保守派の方が自由に生きている側面も描かれており、意外とバランスが取れています。双方の立場から、健康をはじめさまざまな価値観のあり方について考えさせられる作品です。

高齢者が病気と付き合いながら楽しむ姿を描く「チア・アップ!」

『チア・アップ!』

©2019 POMS PICTURES LLC All Rights Reserved

「若おかみは小学生!」や「キューティ・ブロンド」は誰が観ても面白い鉄板映画だと思います。しかしあくまで私個人の意見ですが、「鉄板映画」よりもすごい「どの映画も面白い鉄板ジャンル」というものがあります。それが女性のスポーツ映画です。

女性のスポーツ映画で特徴的なのは「勝利」を描かない作品が多いこと。「勝利」が目的になることが多い男性のスポーツ映画とは大きく違うのです。「勝利」による分かりやすい快感よりも人間ドラマを丁寧に描き、ラストは爽やかさを重視した余韻ある作品が多いです。

「チア・アップ!」(2019年)もその系統の女性のスポーツ映画です。シニアタウン(高齢者の暮らしやすさを重視した街。アメリカには多く存在し、日本でも近年注目されている)にやってきたヒロインが、平均年齢70歳超えのチアリーディングチームを作るというもの。

『チア・アップ!』

©2019 POMS PICTURES LLC All Rights Reserved

そんな彼女たちの敵は「自身の健康問題」です。腕が上がらない、車いす生活、がんといった問題を抱えながらも、前向きに楽しんでいます。老人たちがスポーツを楽しむ様子を通じて、年齢を重ねてもスポーツを楽しめる、新しいチャレンジができるんだという気持ちが湧いてきます。

アメリカ映画が病気を扱う場合は、このように「病気と付き合う」という展開が多い印象です。「例え病気でもそれは与えられた試練」という宗教的な考え方が関係しているのかもしれません。この前向きさは、病気を“お涙頂戴”的に描くことの多い日本映画にとって、学べるところがあると思います。

国によって違う、映画での「健康」や「病気」の描き方

健康について描いたアメリカ映画と日本映画を紹介しました。余談ですが、アメリカは医療保険制度が弱いために医療費が高額で、「健康」が富裕層の権利のようになっている側面があります。*3

これはアメリカ映画でもたびたび強調して描かれる部分です。例えば富裕層と貧困層で寿命が全く違う社会を描いた『TIME/タイム(2011)』、富裕層はあっという間にけがも病気も治る社会を貧困層の視点で描いた『エリジウム(2013)』といったSF娯楽大作映画が作られています。

日本映画が難病をコンテンツのように描くことの良し悪しは何度も議論されていることですが、医療保険制度が充実していて病院が身近なために、病気の扱いについて皆の意識が向きやすい日本だからこその現象ともいえます。国や制度は違えど「病気と健康」は人間の共通テーマなので、多面的に見ていきたいものです。

***

最後に、私自身の健康の話をします。私が健康を考えるきっかけになったのはアラフォーで発症した痛風*4 です。痛風発作が起きるたびに杖を使って生活していました。

さらに私は以前、髪を赤茶に染めていたのですが、ある時から染めるのを止めたら、いつの間にか白髪頭になっていました。白髪頭の私が杖を使っていると、周囲からは「おじいちゃん」と揶揄(やゆ)されるように。アラフォーなのに、おじさんを通り越しておじいちゃんです。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で例えると、自分がマーティ・マクフライだと思っていたのに、いきなりドクになっていたのです。

これでは良くないと思い、お医者さんの指示に従ってお酒の量を大幅に減らし、健康的な生活を心がけたところ、痛風は起きなくなりました。

加齢は止めることはできません。20年前の「破壊屋」の記事を観ていると、当時大学生で元気一杯だった自分の画像がたくさん出てくるので、現在とのギャップにそれは驚きます。

「破壊屋」管理人の過去と現在
左が破壊屋を開設した当時の大学生だった私の写真。右は2023年の私です。
加齢の速度に自分でもビックリです。健康を真剣に考えなければ……

しかし私が痛風を改善したように、できるだけ長く健康でいるために工夫できることはあるでしょう。今回ご紹介した映画作品などをきっかけに、皆さんも自身の健康についてあらためて考えてみてはいかがでしょうか?

著者:「破壊屋」管理人

「破壊屋」管理人

2000年から映画サイト「破壊屋」を続けています。今は「破壊屋ブログ」がメインです。スパイダーマンスーツとスパイダーマンパーカーを10着以上持っていて、土日はプロフ画像みたいな格好でうろついています。

ブログ:破壊屋ブログ
Twitter:@hakaiya

編集/はてな編集部


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