ジムもランニングも挫折した私が、50歳を前に模索している「自分に合った運動習慣」の話

ジムもランニングも挫折した私が、50歳を前に模索している「自分に合った運動習慣」の話

年齢を重ねるごとに、体力の衰えを実感する人は多いはず。しかし、いざ体力作りのために運動を始めようとしても、もともと運動の習慣があまりなかった人にとっては、なかなか継続するのが難しいものです。

現在48歳の俳優・河相我聞さんも、そんな悩みを抱える一人。コロナ禍でジム通いが難しくなったことですっかり運動から遠ざかってしまい、その後いろいろ手を出してみたものの長続きしなかったそう。しかしそんな中、ようやく最近になって「自分なりの運動習慣」が見つかりつつあるといいます。

運動がそれほど得意でない人でも、無理なく自分のペースで継続していくために大切なこととは? 河相さんの経験をもとにつづっていただきました。

48歳になった。


河相我聞さん

「いざ出陣じゃぁぁぁあ!」と元気よく行きたいところだが、体力は右肩下がりだ。(写真は4月に神奈川県・湯河原で開催された武者行列に参加した時のもの)

歳を取ると体力が落ちて大変だと上の世代の方から聞いてはいたものの、思った以上に私の頭を悩ませている。

俳優という職業柄、パフォーマンスを落とさないためにも運動の習慣は必要だと分かっているが、なかなか難しい。

運動を続けるのが難しいのは年を取ったからなのか、体力が落ちているからなのか、もしくはその両方なのかは分からない。しかし運動をせずに長い時間が経ってからいざ始め、そして続けようとするのはとても難易度が高いと思う。私の場合、若い時からあまり運動をしていなかったし。

もし、昔の自分に会えるのなら「つべこべ言わずに何でもいいから運動は続けておけ」と言ってやりたい。

ちなみに、同世代の俳優でも運動を習慣化している人は稀にいるのだけれど、大抵は若い時からやっているし、聞いても「歯磨きみたいなものですよ」とか「とにかくやるだけですよ」と軽く言うので、とても参考にならないと思っている。

というわけで、50代を目前とした私が現在、運動を継続しようともがいている話を書いていこうと思う。

ランニングもジムも、始めてみたものの続かなかった

2年半ぐらい前、コロナ禍の自粛で家にこもってインターネットに明け暮れる生活を続けていたら心身ともに弱ってきたので、息子(当時26歳)とランニングを始めた。

しかし、走るのが億劫(おっくう)な私を息子が連れ出して一緒に走ってくれるうちは良かったのだが、急に息子の仕事が忙しくなって私が1人で走るようになった途端、続かなくなってしまった。

しばらくして、このままではマズいと思い、今度はスポーツジムに入会した。

今までも何度かスポーツジムに入会したことはあったが、毎回何かと理由をつけて行かなくなった。なので、「通うのが大変」とか「仕事帰りだと営業時間が合わないから」などという軟弱な言い訳ができないようにしようと、家の近くの24時間営業のジムにした。

だが、このジムも続かなくなって辞めてしまった。

たまたまだが、このジムは“ゴリゴリマッチョ”な人が多かった。隣で自分の2倍以上の重さのダンベルを持ち上げている人を見て、細い自分はなんだか場違いな感じがした。自分の次にマッチョな人がマシンの順番を待っているとこの上ないプレッシャーを勝手に感じたりもして、なんとなく行かなくなってしまった。

その後も「よしっ! 家で運動しよう! 家ならいつでもできるし続けられるだろう」とダンベルなど筋トレグッズをそろえたのだが、これもまた続かなかった。

「筋トレグッズが目に入れば筋トレをやる気になるだろう」と思い常に床に並べておいたが、ある時にダンベルに足の小指をぶつけてしまいクローゼットに入れることとなった。多分それがいけなかったのだろう。

ダンベル

「私が運動を続けられないのは全てコロナ禍が原因だ! 悪いのはコロナ禍だ!」としておきたかったが、いざ自分の続かないところを書き並べてみると、そうではなかったように思えてくる。

頭では「運動しなきゃ」と思っているのに、なぜこんなに運動を続けるのは難しいのだろう。

気合と根性が足りないと言われればそれまでだが、こんな感じで運動を始めては止めてを繰り返すうちに四十肩も酷くなり、それからしばらく運動をしない時期が続いて、更に体力とやる気が落ちていった。

そんな時「やはり年齢は関係ない、運動しなければ!」とあらためて思うような出来事があった。

2022年にある舞台に出演した。この時に若い俳優さんと共演して彼らとの体力の違いに衝撃を受けたが、それより衝撃だったのが、私より年上で若者と変わらない体力、いやそれ以上の体力を持つ人がいたことだ。

刀を振り回すアクションを若者相手に何なくこなして熱量のあるセリフを言い回し、一日に2ステージあってもパフォーマンスは落ちることがなく、舞台の袖ではメイクさんとジョークを話せる余裕すらある人だった。口では「しんどいですよぉ」とは言っていたが、もし私だったらそんな言葉すら言えず倒れているだろう。舞台でアクションやダンスをコンスタントにやっている俳優さんは体力が違う。

その人を見ていて私は「歳を取ったから体力がなくなるのではなく、運動しないで歳を取ったから体力がないのだな」とあらためて痛感した。

舞台のオファーを受ける時に「なるべくアクションとダンスは無い方向でお願いします」とか言っている私は、俳優として心底恥ずかしいと思ったのを覚えている。

これがきっかけで、私は運動の再開を決意した。

「今の自分に合うジム」を探すべくいろいろ試してみた


いつもと同じようにスポーツジムに通い始めても結局また続かないのではないかと思い、しばらくは入会せず、体験でジムに行ってみようと考えた。

パーソナルトレーニングでプロに指導してもらうとか、高いお金を払って結果にコミットしようかとも考えたが、運動が続けられるかよりお金が続くか心配だったので、とりあえず除外した。(人気のパーソナルトレーニングは白目になるぐらい高いので)

まずはどんなジムを体験してみようかとあれこれ探していた時、面白いアプリのサービスを知った。

いろいろな人気のジムに、入会金や月会費なしで一回ごとに手頃な値段で通えるというもの。一回限りの利用でもいいし、気に入れば継続して利用すればいい。

アプリを見ていたら「暗い空間の中でボクシングのトレーニングができる」という面白そうなジムがあった。(都内で最近流行っているジムらしい)

ジムでは暗闇の中、爆音で音楽が流れており、筋トレを挟みながら45分間ほどひたすらサンドバッグに打ち込んでいくというスタイル。

この「暗闇」というのが他人を気にしないで集中できそうだし、疲れてヘロヘロになった不様な姿を誰かに見られる心配もなく、自分を解放して運動できそうに思った。

手ぶらで行けるように必要なものは全て用意されているとのことだったので、何はともあれ行ってみた。

グローブをはめてサンドバッグの前で待っていると爆音の音楽が流れ始め、インストラクターの掛け声とともにトレーニングが始まった。私は20代の頃にボクシングジムに通った経験もあり、初心者ではない。テンションマックスでサンドバッグに打ち込んだ。

暗闇と音楽が自分の気持ちを盛り上げてくれる。「運動が続かない自分を倒すんだ、年齢なんて関係ない」そんな意気込みだったと思う。しかし開始10分ほどで腕が上がらなくなり、打ち込みの間にやるスクワットで足はガクガクになり、半分も時間が経っていないぐらいで敵もいないのにダウンしていた。恐らく放送禁止レベルの顔になっていたので暗闇で本当に良かったと思う。

もう少し頑張れると思っていたが、自分の体力がどれほど落ちたか現実を受け入れることとなった。確か2日ほど動けなかった記憶があるが、面白かったので体力がついたらまたリベンジしに行きたいと思っている。私がアプリで利用したのはこのジムだけだが、運動に慣れてきたら、このアプリでいろんなジムを探して行くのも気分が変わって楽しそうだ。

その後、運動に慣れている人が通うような難易度の高いジムや自分をストイックに追い込むようなジムより、年齢層が少し高めで、運動に慣れている人やマッチョな人が少ないジムが今の私には良いのではないかと思い、近場でそういうジムがないか探してみた。

今までは筋トレのマシンがそろっていれば何でも良いと思っていたけれど、体力のない今の私には、気持ちが折れない心地の良い雰囲気のジムが合っていると思ったからだ。

探してみると、自宅から一駅の所に「ゆるく運動しましょう」みたいな今の私に良さそうなキャンペーンをやっているジムがあったので、一度体験で行ってみた。

設備があまり新しくなかったり、自分の好みのマシンがなかったりしたので、最初は少しもの足りなさを感じた。でもストレッチできる場所が広かったりサウナやお風呂もついていたりして、「もしかしたら今までのジムでのルーティンとは違う感じに運動ができるかもしれない」と思い、通ってみることにした。

通い続けてみると、私より年配の人や運動を始めたばかりの人が多いので気負わなくて良かったり、運動の後のサウナとお風呂が気持ちよかったりと、だんだん心地よさを感じて通う回数も増えていった。

偶然にも、自分に合うジムを見つけられたのではないかと思う。

今までのやり方を変え、ゆるやかにでも「続ける」ことを重視した

以前はジムに行ったらあまりストレッチをしないで運動をしていたけれど、四十肩もあったので長い時間かけてストレッチをするようにした。他にも、ランニングマシンは走るのではなく歩いたり、筋トレも全部の筋肉を1日でやらず部位を分けたり、重量も軽くしたりと、今までの自分のやり方とは変えていった。

理由は、体力がないのに無理をしてどこかを痛めてしまっては困るし、ハードルを上げ過ぎると風邪などで休んだ後に再開するのが億劫になると思ったから。早く結果を出すのは難しいかもしれないが、初めはゆるやかにでも続けていくことだけを考えた。無理に頑張ってリバウンドした人をたくさん見てきたので、負荷を上げるのは、運動が習慣として続くようになってからにしようと。

それでも、行くのが億劫になる時は何度かあった。

そんな時は「とりあえず運動しなくていいからコーヒーでも飲もう」と、近くの喫茶店に行くことにした。

これは、例えが合っているか分からないが「学校に行かない、行きたくない」と言う子供を無理に行かせるより、とりあえずなんでもいいから家にこもらせないで外に出るように促すのに近いかもしれない。

家にいて何もしないと「あぁ自分はダメだなぁ」と余計に気分が沈んでしまう一方で、メンタルが疲れていたり体力がなかったりする時に人がたくさんいるところに行くのはしんどい。そんな時はとりあえず、人とあまり関わらずに1人でゆっくりできる場所に行くようにした。私の場合「ここに行くと気持ちが落ち着くな」と感じる場所の一つが喫茶店だ。

とにかくハードルを下げて外出してみると「晴れてるし、帰りは少し歩いて帰ろうかなぁ」とか「風呂とサウナだけ入りにジムに行こうかな」とか自分の気持ちに変化があり、なんとなくウォーキングできたりジムに足が向いたりするので、そうなってから運動を再開していた。

そして自分の気分を鼓舞したいときは、音楽を聴く。

アメリカのシンガーソングライター・Rachel Platten(レイチェル・プラッテン)の「ファイトソング」という曲が本当に良い。

Rachel Platten - Fight Song (Japanese Subtitles) - YouTube

「これは私の戦いの歌、人生を取り戻す歌、準備はできている、強い自分になるんだ、この曲をかけてがんばるんだ!」

みたいな、今の私にピッタリなことを言っている力強い歌詞で、ジムに行く途中に聴くととても元気が出る。(運動する時にもぜひ聴いてもらいたい曲だ)

こんな感じで試行錯誤しながら、今のところ週に1、2回のペースで4カ月ほどスポーツジムに通っている。

運動を続けていると、体にも心にも変化が見えてきた


ある程度運動が続いているからか、もしくは自分に合う運動習慣になったからなのか、最近変化を感じることがいくつかあった。

一番は「ジムに行くのが億劫だな」と思うことがあまりなくなった。むしろ「あぁ、ジムに行きたいなぁ」と思うようになり、仕事の前に行ったり、行けない時は家で筋トレをするようになったりした。一度止まった後で動き始めるのは大変だけど、いったん動き始めるとこうなるのだろうか。自分でも不思議だ。

体調面では、以前は朝起きて「身体がだるいなぁ」とか「どこか痛いなぁ」というのが本当に多かったのだが、最近は快適に目覚められる日が少しずつだが増えてきた。

運動やストレッチをすることで深く眠れるようになったとか、身体を作るためにタンパク質を多く取る食事に切り替え始めたりしたのもあるかもしれない。運動しなくなって体力も気力も落ちていた時に比べると、明らかな体調の変化を感じている。

そして、見た目にも変化があるのか、薄着でいると「あれ?身体が大きくなった?」と言われることも増えてきた。自分ではあまり分からないのだが、昔の写真と比べるとそんな気もする。

こちらは運動をしていなかった2年半前


河相我聞さん

こちらは最近のもの


河相我聞さん

そこまで重いトレーニングをやっていないわりには、少し身体がしっかりしてきた感じはある。(ちなみにプロテインは苦手なのであまり飲んでいない)

人に言われると承認欲求も満たされるし「よし、もっと頑張ろう」と運動のモチベーショがさらに上がって良い感じだ。

これからどうなるかは分からないが、今回はこのまま運動を継続していける予感がしている。いや、継続させる。

自分に合ったペースで、これからも続けていきたい


まだ運動を続けて何年も経っているわけではないので、人に対して「こうした方が良い」と言えたものではない。でも、自分の中では「おそらく、こうすればうまくいく」というものが確実に積み上がってきたように思う。

現実と理想のギャップが開き過ぎると「今の自分に合ったレベル感」を見失いやすくなると思うので、そこは今後も気をつけていきたいところだ。

今後の目標としては、私は刑事ドラマの犯人役をやるとき、物理攻撃に弱い小物感が満載のキャラクターを演じることが多いので、大物感が漂う役や強い人の役ができるように身体作りをしていきたいと思う。現実的に考えて、このペースだとあと3年はかかりそうだが。

何はともあれ、これからも「とにかくやるだけ」しかないだろう。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

著者:河相我聞(かあいがもん)

河相我聞

俳優。2人の息子を持つ父親でもあり、独自の子育てをつづるブログが話題を呼び2017年に書籍化。

ブログ:かあいがもん「お父さんの日記」
Twitter:@gamon0524

編集/はてな編集部


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