こんにちは、ライターの梅津有希子です。日頃から仕事が忙しい中でも短時間で作れる手軽な料理について研究しており、夜遅く帰った日でも作れるレシピを集めた『終電ごはん』(幻冬舎/高谷亜由との共著)などのレシピ本を出しています。
私のライフワークといえるのが「少しでも料理がラクになる工夫をする」こと。小さなストレスを排除することが、「毎日無理なく自炊できるコツ」と考えているからです。
例えば、まな板を洗うのって面倒な作業ですよね。でも、包丁を使わずに済むようにキッチンばさみを駆使したり、キャベツやほうれん草など手でちぎれるものはちぎったり、トマトならミニトマトを選ぶなど、「切らずに済む食材」を多用したりすることで、まな板の使用を最小限に抑えられます。洗う回数も減らせますし、結果として時短につながります。
働くビジネスパーソンの皆さんは「健康に気を付けなきゃ」と思いながらも、忙しさや疲れからつい日々の食事をおろそかにしてしまうこともあるでしょう。特に一人暮らしだと、自炊をしようとしても一人分作るのが面倒でなかなか重い腰が上がらないものですよね。私も一人暮らしの頃は、まさにそんな感じでした。
しかし40代になってあらためて思うのは、「自分の体は、自分で選んだ食べ物でできている」ということ。実は昨年、病気で入院していたことがあり、初めて体験した栄養士さんの食事指導がとても興味深いものだったのです。普段、そこまで意識していなかった身体作りにおけるタンパク質やビタミンの役割などが、急に身近な“自分ごと”となりました。食事は毎日のことだからこそ、20代、30代のうちから、少しでもいいので、栄養バランスを意識して食事を取ることが大切だと感じています。
栄養バランスの良い食事とは、体に必要な栄養素を偏ることなく摂取できる食事のことです。私もつくづく実感していますが、栄養は意識しないと摂れません。心の赴くままに好きなものだけを食べていては、何かしらの栄養素が慢性的に不足してしまいがちです。
そこで今回は、体に必要な栄養素をバランスよく摂取できて、しかも包丁・まな板を使わずに作れる3つのレシピを紹介します。「作る手間がかかって面倒」「準備や後片付けも含めてあまり時間をかけたくない」といった自炊によくある悩みを解消できる簡単なレシピばかり。また、「材料を買っても一人だと使い切れない」という一人暮らしの方にもおすすめできます。ちょっと特別感のある“ご褒美レシピ”もあるので、ぜひ作ってみてください!
体に必要な5つの栄養素を知ろう
まずは「栄養バランスの良い食事」とは何かを知るために、基本的な栄養素について見ていきましょう。体に必要な栄養素は大きく分けて5つあります。
- 炭水化物:エネルギーになるもの。ご飯・パン・麺類などに豊富
- 脂質 :エネルギーになるもの。オイル・肉類などに豊富
- タンパク質:体を作るもの。肉類・乳製品・大豆などに豊富
- ビタミン:体の調子を整えるもの。野菜・果物やレバーなどに豊富
- ミネラル:体の調子を整えるもの。魚介類・野菜類などに豊富
栄養に関する基礎知識|栄養・食事について|循環器病について知る|患者の皆様へ
このように、栄養素には「エネルギーになるもの(炭水化物、脂質)」「体を作るもの(タンパク質)」「体の調子を整えるもの(ビタミン・ミネラル)」の大きく3つの働きがあります。健康を保つには、これらをバランスよく摂ることが必要です。
1日当たりどれくらい食べると「バランスが良い」のか
炭水化物や脂質は摂り過ぎになりやすい一方で、特に積極的に摂ることを意識したいのが、タンパク質を多く含む肉・魚・卵・大豆製品や、ビタミン・ミネラルを多く含む野菜類などです。では、どのぐらい摂取すれば良いのでしょうか? 厚生労働省が提示している目標量は下記の通りです。- タンパク質
- 男性:75〜115g/女性:57〜88g
- 身体活動レベルが低い(生活の大部分が座位で、静的な活動が中心)30〜49歳の男女の場合を想定
- 男性:75〜115g/女性:57〜88g
- 野菜類
- 男女ともに約350g
では、タンパク質の必要量を摂取するには、何をどのくらい食べればいいのでしょうか。タンパク質を多く含む代表的な食べ物の含有量を見てみます。
- 卵1個(約50g):約6.1g
- 納豆1パック(約45g):約7.4g
- 牛もも肉・脂身付き(100g):約19.2g
- 豚ロース肉・脂身付き(100g):約19.3g
- 鶏むね肉・皮付き(100g):約19.5g
これを見ると、1日に必要な量のタンパク質(男性:75〜115g、女性:57〜88g)を摂取するには、複数の食材を組み合わせる必要があることが分かりますね。
また、野菜の目標摂取量は1日あたり約350gでしたが、厚生労働省の令和元年の調査によると、成人の1日あたりの平均野菜摂取量は、男性で約290g、女性で約270g。男女ともにプラス70gの摂取が必要です。この結果を聞いてドキッとした人も少なくないのではないでしょうか?
今日の食事を振り返ってみてください。例えば「朝はコーヒーのみ。昼は牛丼、わかめと豆腐のみそ汁。夜はラーメンと炒飯」といった食生活だと、野菜の摂取量は200gにも満たないでしょう。
不足しがちなタンパク質と野菜が手軽に摂れる、簡単レシピ3つ
そこで今回は、理想的な栄養バランスを手助けする、包丁いらずの簡単レシピを3つ紹介します。自炊初心者でも難なく作れますので、ぜひチャレンジしてみてくださいね。タンパク質も野菜もたっぷり! カット済み食材を煮るだけの「具だくさん鶏汁」
大根、里芋、玉ねぎ、にんじん、ごぼうなどたっぷりの野菜と鶏もも肉で作る、豚汁ならぬ鶏汁です。カット済みの冷凍野菜と、同じくカット済みの唐揚げ用鶏もも肉を使うので、包丁いらず!
蒸し大豆をプラスすることで、「タンパク質をしっかり摂っている!」という実感が得られます。
<材料(約4人分 ※作りやすい分量)>
- 鶏もも肉(唐揚げ用):1パック(約300g)
- 冷凍野菜和風ミックス(さといも、れんこん、にんじん、しいたけ、たけのこ、いんげん、ごぼう):1袋
- 蒸し大豆:1袋
- みそ:大さじ3
- だし汁(顆粒だし、だしパックなどを使用):800ml
- (豆腐・厚揚げ:適量。ボリュームを加えたい、もっとタンパク質を摂取したいときに)
<作り方>
- 1.鍋にだし汁を入れて火にかける
- 2.沸騰したら冷凍野菜を入れて煮立たせる
- 3.鶏もも肉を入れ、肉にしっかり火が通ったら蒸し大豆を加える。みそを溶き入れれば出来上がり。お好みで豆腐や厚揚げを加える「追いタンパク質」も、食べごたえが増しておすすめです
<ポイント>
カット済みの便利食材をフル活用
切らずに済む便利食材を積極的に活用することで、時短になり、自炊のハードルがグッと下がります。今回使ったような冷凍野菜は「和風ミックス」といった名称で、筑前煮などの煮物用として売られていることが多いです。必要な分だけ料理に使用し、残りは冷凍保存できるのも、一人暮らしにぴったり。
ひと口大にカット済みの「唐揚げ用」鶏もも肉は、大抵のスーパーに置いてあります。唐揚げ用と書いてありますが、もちろんどんな料理に使ってもOK。そのまま焼いて塩・こしょうや柚子胡椒で食べるのもよし、煮物や鍋に使ってもよし。1枚売りの鶏もも肉よりも若干高いですが、その分は「切る手間賃」と考えてみては? まな板も包丁も汚れず、メリットの方が上回るはずですよ。
「蒸し大豆」でタンパク質をちょい足し
蒸し大豆は、スーパーの納豆売り場の近くや、昆布の佃煮、金時豆の煮物などがある売り場並んでいることが多いです。ほっくりとした栗のような食感が特徴。煮込み料理やスープなど、さまざまな料理にちょい足ししてタンパク質をプラスできるのでおすすめです。
2日くらいで食べ切れる量を作ろう
1人分の汁物は、手間を考えると案外作りにくいもの。一度に4人分くらい、翌日中に食べ切れるくらいの分量を作るのが効率的です。残ったら保存容器に移すか、鍋が冷めたらそのまま冷蔵庫へ入れて保存するといいでしょう。この具だくさんの鶏汁に納豆ごはんを添えれば、2品で栄養バランスもばっちりです。栄養たっぷりの高成分野菜をトッピング! 食欲をそそる 「しらすときのこのバター醤油焼きそば」
カルシウムたっぷりのしらすとカット済みのしめじを使った、食欲をそそるバター醤油味の焼きそばです。
ビタミンCやβ-カロテン、カルシウムなどを豊富に含み、抗酸化作用も期待できる「ブロッコリースプラウト」をトッピングすれば、栄養価もさらにアップ!
<材料(1人分)>
- 釜揚げしらす:好きなだけ
- カット済みぶなしめじ:ひとつかみ
- ブロッコリースプラウト:好きなだけ
- 焼きそば麺:1袋
- 白ごま:適量
- 鶏ガラスープの素:小さじ1(水50mlで溶く)
- バター:1かけ(約8〜10g)
- 醤油:適量
<作り方>
- 1.フライパンにサラダ油を熱し、しめじを炒める
- 2.焼きそば麺と鶏ガラスープを入れ、ほぐしながら炒める
- 3.醤油で調味し、火を止めてバターを絡める
- 4.お皿に移し、ほぐしたブロッコリースプラウトとしらすをあえて上にのせ、仕上げにごまをふって出来上がり
<ポイント>
さまざまな料理に使える「カット済みしめじ」
石づき(根本部分)がカットされた状態のしめじは、近年多くのスーパーで取り扱いがあります。炒め物やみそ汁のほか、レンジでチンしてサラダにあえたりと、さまざまな料理に使えます。袋を開けて使いたい分だけ使えるのもとても便利です。
魚介類を手軽に摂れる「釜揚げしらす」
健康のために魚介類を食べたくても、切ることや調理の手間を考えるとハードルが上がりがち。そんな時に便利なのが、切らずに使える釜揚げしらすです。火も通さなくてOKなので、あえるだけで使えるのもうれしいポイント。
栄養素を豊富に含む高成分野菜「ブロッコリースプラウト」
ブロッコリースプラウトは簡単にいうとブロッコリーの新芽。本来野菜にごく微量、もしくはまったく含まれない有用成分を技術によって高い含有量にした「高成分野菜」として商品化されています。強い抗酸化作用が期待できる「スルフォラファン」という成分のほか、ビタミンCやβ-カロテン、カルシウムなどを豊富に含んでいるのが特徴です。パックに入った状態でスーパーの野菜売り場に並んでおり、1年中手に入るのも便利です。クセがないので、さまざまな料理に使えます。
約1/2日分のタンパク質が摂れるご褒美ごはん「アボカド納豆海鮮丼・温玉添え」
お刺身をめんつゆとごま油で簡単な「漬け」にして、アボカド、納豆、温玉を添えた丼です。タンパク質たっぷりで、栄養面もばっちり。
居酒屋で頼むと2,000〜3,000円くらいするお刺身の盛り合わせ。スーパーやデパ地下だと、半値ほどで購入できる上、たっぷりと贅沢に食べられます。閉店間近には値下げされていることも多く、さらにお得!
特別な日や、一週間働いた自分へのご褒美として、休日などにプチ贅沢をしちゃいましょう!
<材料(1人分)>
- お刺身:10切れ程度を目安にしていますが、好きなだけのせてOK(切り落としで十分ですが、ご褒美なので贅沢にお好きなお刺身で)
- 冷凍アボカド:適量
- 納豆:1パック(添付のたれを混ぜておく)
- 温泉卵:1個
- ごはん:1膳
- 刻み海苔:適量
- めんつゆ(2倍濃縮):適量
- ごま油:適量
- ごま:適量
<作り方>
- 1.お刺身を器に入れ、めんつゆを薄めずにそのまま注ぐ。お刺身がひたひたになるくらいが目安
- 2.ごま油をひとたらしし、ラップをかけて冷蔵庫に入れる
- 3.15分くらいでしっかり漬かり味が染みるが、ひと晩置くとねっとり感が出てさらに美味
- 4.丼にごはんをよそって刻み海苔をのせ、納豆であえたアボカドをのせる
- 5.温玉をトッピングし、ごまをふって出来上がり。お好みで、わさびや柚子胡椒を添えてもOK
<ポイント>
1品でタンパク質たっぷり
お刺身約10切れ、温泉卵1個、納豆1パック、アボカド1玉分を使った場合、1日に必要な量の約1/2分のタンパク質(50g前後)が摂れます。温泉卵はスーパー、コンビニで入手
作ると意外と大変な温泉卵。スーパーやコンビニに売っているので、上手に活用しましょう。アボカドは冷凍が便利
アボカドを1個丸ごと買うと、「熟れていなくてすぐ食べられない」「いざ包丁で切ったら、黒い筋があって大失敗……」ということも多々ありますが、冷凍だと状態がいいアボカドが使われているので失敗知らず。スライスやダイス状にカットされているので、必要な分だけ使えるのもいいところ。生のアボカドのように「残りをラップして冷蔵保存したら、翌日には真っ黒に」といった悲劇も防げます。
体を作るタンパク質を積極的に取り入れよう
冒頭でもお話ししたとおり、私は2022年に手術をし、入院していた時期がありました。病院では、栄養士さんによる栄養指導を受けたのですが、
「傷を早く治すためにも、とにかくタンパク質を摂るように」
「今は体力も落ちて食べる量が減っているので、体力を回復させる上でも、野菜よりもまずはタンパク質優先で」
としょっちゅう言われていたこともあり、「タンパク質タンパク質……」と、頭の中がタンパク質でいっぱいの日々を過ごしていたのです。
入院する前も日常的に肉や魚、納豆、豆腐などをよく食べていたので、タンパク質は十分足りていると思っていました。ところが、意識してタンパク質を摂取してみると、以前の量では全然足りていなかったことに気づきました。
栄養士さんからも、「ハンバーグを食べる時は、チーズや目玉焼きをトッピングするなどして、意識的にタンパク質をプラスしましょう」とアドバイスを受けたのが心に響き、ハンバーグを注文すると、必ず何かしらトッピングするようになりました。
とりあえず、「タンパク質は1日3食で、ちょこちょこと摂取する」ことが大切だと分かったので、肉や魚などのメイン食材以外にも、卵、ヨーグルト、牛乳、チーズ、豆腐、おからなどを、さらに積極的に食べるように強く意識しています。
そのおかげか、この冬はいつもできるささくれがまったくできませんでした。これも、体を作るタンパク質を意識して摂っていたからかもしれません。
皆さんも、今回のレシピを含めて、たっぷりとタンパク質を摂ることを意識してみてはどうでしょうか。
また、病気のリスクを下げるために大切なこととしてよく言われるのが「塩分を控えること」。実はだしをきかせることで、だしのうま味が塩分の味わいを補ってくれるため、塩や醤油はほんの少しで済み、減塩につながります。
日頃からスープやみそ汁、鍋や煮込みなど、さまざまな料理にかつおだしや昆布だし、煮干しだしをフル活用することで、無理なく塩分摂取量を減らすことができるのです。身体に良くておいしい「だし生活」も、とてもおすすめですよ。
料理が苦手な人も大丈夫。今回紹介した冷凍野菜やカット済みのしめじなど、「切ってある食材」「洗わずそのまま使える食材」が、スーパーやコンビニをじっくり見て回ると意外とたくさんあるんです。「食事面でもっと健康に気を使いたいな」と思っている忙しい人こそ、ぜひ活用してみてくださいね。
※2023年5月31日10:20ごろ、レシピ手順の一部を修正しました。ご指摘ありがとうございました。
著者:梅津有希子
編集/はてな編集部
フォーネスビジュアス
健康を、予報する。
フォーネスビジュアスは、将来の疾病リスクを可視化し、
生活習慣の改善までトータルサポートする新時代のヘルスケアサービスです。
フォーネスビジュアス検査では少量の採血だけで以下のことが分かります。
・20年以内の認知症発症リスク
・4年以内の心筋梗塞・脳卒中の発症リスク
・5年以内の肺がんの発症リスク
・耐糖能や肝臓脂肪など体の状態