アルコールは腎臓によくない? 腎機能への影響と種類ごとの適正量を解説


特に暑い季節になると、ついつい手が伸びがちになるアルコール。家族から「お酒、飲み過ぎてるんじゃない?」と指摘され、自分のアルコール摂取量について気になり始めた方は多いのではないでしょうか。本記事では、果たしてアルコールと腎臓が関連しているのか、そして腎機能が低下することによる身体への影響について、それぞれ解説します。

(監修者)臼井亮介 先生

株式会社レノプロテクト 代表取締役

医師、医学博士。日本内科学会や日本腎臓学会の専門医・指導医などの資格を持つ。糖尿病医として経験を積んだのち、医師7年目より腎臓専門医としてのキャリアをスタート。腎臓専門医として基幹病院で外来診療・入院診療・研究に取り組む過程で、「腎臓外来にたどり着かないようにする・たどり着くまでの時間を延ばすためのサポート」への思いが募り、医師20年目の2022年に株式会社レノプロテクトを設立、代表取締役に就任する。日本内科学会・日本腎臓学会・日本透析医学会・日本糖尿病学会に所属。

こんな人におすすめ

  • アルコールは腎臓によくないのでは? と不安を感じている人
  • 腎臓が悪くなると何が起こるのか知りたい人
  • 適切なアルコール摂取量を把握しておきたい人

アルコールを飲み過ぎると、腎臓の機能が低下する?

実のところ、アルコールと腎臓の関連についてはまだ判然としないことが多い、というのが現状です。ただ1つ言えるのは、「最近の研究で、大量のアルコール摂取が慢性腎臓病の症状の1つである『タンパク尿』を引き起こす可能性があることが分かってきた」ということ*1。「大量のアルコール」とは「純アルコール換算で60g」のことを指しており、具体的な目安量としては以下の通りです。

  • 日本酒3合 *2
  • ビールロング缶3本
  • ウィスキー7杯弱
  • ワイン6杯弱 *3

今のところ、アルコールの摂り過ぎが腎臓に影響する、と決めるには時期尚早といえます。
 
さらに、適度な飲酒習慣がある人はむしろ腎機能低下リスクを下げる、という研究結果も報告されています*4。よって現段階では、腎臓にとってアルコールは悪と判断するのではなく、まずは大量のアルコール摂取をしているなら見直してみる、というスタンスでいるのが良いでしょう。
 
また、女性は男性と比べ、アルコールの代謝能が低いとされる言説もありますが、男性でもアルコール代謝が不得手な人はいますし、女性で代謝能が高い方もいます。簡単にいえば「人それぞれ」ということです。よって現状は、「純アルコール換算で60g」がボーダーラインであることを認識しつつ、お酒と付き合っていくのがおすすめです。

腎臓の機能が低下する要因については、下記の記事もあわせてお読みください。
👉腎機能が低下する原因は? 進行による病気のリスクや対策を紹介 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ

腎臓の機能が低下すると、体にどんな変化が起こる?

ここまで見てきた通り、アルコールと腎機能の関連については分かっていることが多くない、というのが実情です。では、アルコールが関連しているかどうかはさておき、腎機能が低下すると私たちの健康にどのような影響があるのでしょうか。詳しく解説していきます。
 
腎臓は、老廃物や有害物質などを尿として排泄(はいせつ)するという役割を持っています。この機能が低下している場合、「腎臓病」と診断されるケースが多くあります。さらに、腎機能の低下やタンパク尿などが3カ月以上確認されると「慢性腎臓病」と診断され、心疾患や脳血管疾患のリスクが高まるとされています*5
 
腎臓病による疾患の代表例としては、下記のようなものが挙げられます。

腎硬化症

腎硬化症は、高血圧が原因で血管が細く、硬くなり、腎機能が低下する疾患です。血管の直径が狭くなると腎臓への血流が悪化し、やがて腎機能が通常の3割まで低下した「腎不全」という状態に陥ってしまうことがあります*6
 
この疾患の恐ろしいところは、症状が進行するまで自覚しにくいこと。健康診断や他の病気で受診した際の採血で発見されることが多いようです。塩分制限、肥満解消、ストレス解消などを通じて血圧のコントロールを行うことで、腎機能の悪化速度を緩やかにできる可能性があります。

糖尿病性腎症

糖尿病性腎症は、糖尿病による合併症として起こる腎障害です。
 
初期段階では無症状ですが、糖尿病による高血糖状態を放置していると、少しずつ腎機能が衰え、余分な水分や老廃物などを排出する機能が弱まり、身体がむくんだり、気分が悪くなったりすることも。治療のためには、血糖値コントロールや食事・運動療法などといった生活習慣の見直しが必要になります。

糖尿病については、下記の記事もあわせてお読みください。
👉糖尿病が腎臓に与える影響とは? 詳しい症状、対策法について解説 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ

アルコールの適度な飲み方は?

最後に、アルコールの摂り過ぎに不安を感じている方に向けて、適切な摂取量を解説します。
 
「適度な飲酒」を心がけるためには、アルコールの適正量を知っておきましょう。アルコールの適正量とは「1日平均純アルコールで約20g程度」が目安です*7

種類
ビール 500ml(中びん1本)
ウイスキー 60ml(ダブル1杯)
ワイン 200ml(2杯程度)
酎ハイ 350ml
日本酒 180ml
焼酎 100ml

アルコールの飲み過ぎは、身体機能を低下させる。適正量を覚えて、適度に飲もう

アルコールの飲み過ぎが、さまざまな点から身体の負担になることは事実。とはいえ、いきなりアルコールを断つのは難しいかもしれません。まずはアルコールの適正量を知り、「お酒を適度に楽しむ」という考え方にシフトしていくのがよいでしょう。
 

編集:はてな編集部
編集協力:株式会社エクスライト


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