腎臓病の血液検査で重要なのは「血清クレアチニン値」です。本記事では、クレアチニンとは何か、数値が高い場合・低い場合はそれぞれどのような病気が考えられるのかについて解説します。数値が高い場合の原因や対処法も紹介するので、腎臓の状態が気になる方はぜひ読んでみてください。
こんな人におすすめ
- 腎臓病や腎機能低下が気になっている人
- 腎臓病の検査を考えている人
クレアチニンとは
クレアチニン(Cr)とは、血液中の老廃物の一つです。血清クレアチニンとも呼ばれます。
筋肉を動かすには、クレアチンリン酸(CrP)と呼ばれるエネルギー源物質が必要です。筋肉のエネルギーとしてクレアチンリン酸が代謝されると、代わりに老廃物であるクレアチニンが生成されます*1。クレアチニンは腎臓でろ過され、尿として体外に排出されますが、腎機能が低下しているとクレアチニンが適切に排出されず、血液中のクレアチニン濃度が上昇します。
血清クレアチニンの数値は健康診断の血液検査で分かります。留意すべき点は、血清クレアチニンの数値は筋肉量に比例するということです。運動や筋力トレーニング、高タンパク食を摂取していて筋肉量が著しく多い方は、血清クレアチニンの数値も高くなることがあるでしょう。反対に筋肉量が少なく痩せている方は、血清クレアチニンの数値が低くなることもあります。
血液検査のクレアチニン基準値
クレアチニンの基準値は、以下の表の通りです。
基準値 | |
男性 | 0.61〜1.04mg/dL |
女性 | 0.47〜0.79mg/dL |
男性1.0未満・女性0.7未満の場合は異常なし、男性1.10~1.29mg/dL・女性0.80~0.99mg/dLの場合は再検査・生活改善、男性1.30mg/dL以上・女性1.00mg/dL以上の場合は精密検査・治療が必要です*2。
血液検査でクレアチニンが異常値になる疾患
血液検査でクレアチニンが異常値を示した場合、腎機能が低下している可能性があります*3。
ここでは、血清クレアチニンの数値が異常値の場合に考えられる疾患について紹介します。
血清クレアチニンの数値が高い場合
血清クレアチニンの数値が高い場合は、慢性腎臓病が疑われます。その原因として、以下のような腎臓病があります。- 慢性糸球体腎炎
- 糖尿病性腎症
- 腎硬化症
慢性糸球体腎炎は、腎臓の中にある糸球体に炎症を起こす疾患の総称です。感染症や遺伝性疾患、自己免疫疾患などの病気が原因といわれています。
糖尿病性腎症は糖尿病の合併症です。高血糖が原因で腎臓血管が傷つき、腎臓の働きが弱くなるものです。
また腎硬化症は、高血圧が原因で腎臓血管が動脈硬化を起こし、腎臓に障害をもたらす病気です。
腎臓の働きを示すeGFR(腎臓の糸球体ろ過量)が60%以下に低下する(GFRが60.0mL/min/1.73㎡未満)、もしくは、尿タンパクが出るなどの腎臓の異常が続いた場合、慢性腎臓病と診断されます。
慢性腎臓病が重篤な状態になることを腎不全といいます。腎不全になると、尿毒症(食欲低下・吐き気・頭痛・だるさ・むくみなど)の症状が現れたり、水分・電解質異常により不整脈や心不全、肺水腫などが引き起こされたりします*4。
クレアチニンの数値が低い場合
クレアチニンの数値は筋肉量に比例するため、女性や高齢者等では低くなりやすい傾向があります。ほかには、以下のケースが考えられます。- 小柄体型
- 痩せ
- 麻痺(脳卒中後後遺症含む)
- 栄養失調
- 筋ジストロフィー
栄養失調でタンパク質が取れず筋肉量が少なくなると、血清クレアチニンの数値が低くなります。
異常値だった場合の精密検査項目
血液検査で測定できるクレアチニンの数値は、筋肉量や男女差によって不正確な結果となる場合があります。そのため腎臓疾患が疑われたら、精密検査が推奨されます。
eGFR
eGFRとは、「estimated Glomerular Filtration Rate」の略称で、推算糸球体ろ過値(腎臓の機能を表す値)のことです。eGFRは、血清クレアチニン値(または血清シスタチンC値)・年齢・性別を用いて計算します。腎臓には、血液中の有害な老廃物を糸球体という部分でろ過し、尿として排出する機能があります。糸球体でろ過される量がGFR(糸球体ろ過量)で、腎臓の働き具合を示します。腎機能が低下すると、GFRが低くなるのです。
このGFRを推算したものがeGFRで、多くの医療施設で使用されています*5。
eGFRの基準値
eGFRの基準値は、以下の表の通りです*6。GFR区分(60.0mL/min/1.73㎡) | G1 | 正常または高値 | 90.0以上 |
G2 | 正常または軽度低下 | 60.0~89.9 |
eGFRが60.0mL/min/1.73㎡以上の場合は、おおむね正常範囲内だといえるでしょう。
60mL/min/1.73㎡未満になると慢性腎臓病が疑われるため、医療機関で相談するのがおすすめです。10mL/min/1.73㎡以下になると人工透析を行う必要があります。
尿タンパク
血液検査だけではなく、尿検査でも腎臓の障害を調べることが可能です。尿検査では、尿タンパクの有無(尿中に一定以上のタンパク質が排出されていないか)を調べます。腎臓では、糸球体という毛細血管の塊がフィルターのような構造になっており、不要な老廃物をろ過しています。しかしタンパク質は私たちの体に必要なため、過剰に外に排出されることはありません。
尿中にタンパク質が混じっているということは、糸球体のろ過機能が正常に働いておらず、腎臓に何らかの異常があることが示唆されます*7。
血液検査でクレアチニンが高くなる原因
クレアチニンが高くなる病的原因は、主に以下の2つです。
- 慢性腎臓病
- 急性腎障害
慢性腎臓病と急性腎障害のどちらも、腎機能が低下し老廃物として尿から排出されるべきクレアチニンが排出されなくなります。そのため、クレアチニンが高くなるのです。
一方で病気ではなくても以下の状態や体型の方は、クレアチニンの数値が高くなることがあります。
- 筋肉量が多い方
- 運動の直後
- 体内の水分量が少ない状態
上記の場合は、腎臓に異常はなく病気が原因ではないため問題ありません。血液検査でクレアチニンの数値が高い場合は、再検査や精密検査などを実施し原因を把握することが大切です*8。
高い場合の対処法
腎機能が不安な方は、まずは健康診断や人間ドックで検査を受け、自分自身の腎臓の状態を把握する必要があります。クレアチニンが高い場合には腎臓内科や内科で受診することが大切です。
ここでは、一般的な対処法について紹介します。
食生活や生活習慣の改善
腎臓は動脈硬化や生活習慣病と非常に密接な関係があるため、食事は特に気を付けた方がよいポイントです。具体的には、減塩する(1日6g未満を目安)、飲酒を控える(日本酒で1日約2合以下を目安)といった方法が挙げられます*9。食生活の改善に関しては、下記の記事でも詳しく解説しています。
👉腎臓に良い食事・悪い食事とは? 食生活で気をつけるポイントを解説 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ
高血圧の人や糖尿病にかかっている人だけでなく、コレステロールや中性脂肪が高い人、肥満やメタボリックシンドローム、喫煙の習慣がある方も生活習慣の改善が必要です。禁煙や適度な運動、ストレスをためない生活を心がけましょう。
運動も腎機能の低下を予防する作用がある
運動は心肺機能を高め、血流を改善し、最大酸素摂取量を増加させるため、腎機能低下の対策に効果的です*10。有用な運動は、有酸素運動(速足でのウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳など)と筋肉に抵抗をかけるレジスタンス運動(ダンベル体操、スクワット、腕立て伏せ、腹筋などの筋力トレーニング)*11です。
どちらかの運動、もしくはそれぞれを組み合わせた運動を半年以上続けて行うことで、糸球体ろ過の改善と腎機能低下の防止が期待できるでしょう。
原因となる疾患の根本治療
クレアチニンが高い原因が、糖尿病や高血圧などの疾患なら、まず大切なのは、その病気の現状把握と管理目標を見直すことです。原因となる疾患をしっかり管理することで、腎機能の低下速度を穏やかにすることが期待できます。薬物療法
腎機能を回復させることはなかなか難しいですが、腎臓の負担を減らすことで腎臓を長持ちさせることが期待できる薬があります。腎機能低下に伴う合併症を予防するのにも、薬物は有効です。主な薬物の種類は、以下の表の通りです。
薬物の種類 | 薬物の概要 |
RAS系阻害薬(ACE/ARB) | 血圧を下げる薬 腎臓を保護 |
SGLT-2阻害薬 | 糖尿病の治療薬 心臓と腎臓を保護 |
ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬 | 血圧を下げる薬 腎臓を保護 |
5-4.透析治療
クレアチニン値が高く腎臓の働きが著しく低下すると、透析が必要になる場合があります。透析とは、腎臓の代わりに人工的に血中の老廃物や余分な水分を取り除き、血液を浄化する方法です。透析治療には「血液透析(HD)」と「腹膜透析(PD)」の2種類があります。透析治療については、下記の記事で詳しく解説しています。
👉腎機能が低下する原因は? 進行による病気のリスクや対策を紹介 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ
クレアチニンが高い場合は放置せずに医療機関へ
腎臓の働きが悪くなると、血液中の老廃物であるクレアチニンが適切に排出されず、血液中のクレアチニン濃度が上がります。
クレアチニンは筋肉量が多いと高くなる傾向がありますが、腎臓疾患の可能性も否定できません。自己判断せずに、医療機関で受診しましょう。
編集:はてな編集部
編集協力:株式会社イングクラウド
フォーネスライフが提供する疾病リスク予測サービス「フォーネスビジュアス」は、4年以内の慢性腎不全をはじめとした各種疾病の将来の発症リスクを予測することができます。
加えて、保健師の資格を持つコンシェルジュから予測の結果と体の状態を踏まえた生活習慣改善のアドバイスを受けることも可能です。その提案を実践し生活習慣が改善されれば、腎臓病などの各種疾病リスクへの対策にもつながるでしょう。
※フォーネスビジュアス検査は、医療機関の医師を通じて提供します。
慢性腎不全のリスク、調べてみませんか?