「知識」のおかげで停滞期も乗り越えられた。48㎏痩せた古川洋平さんに聞く、ダイエットを継続するコツ

古川洋平さん

「コロナ禍で運動の習慣がなくなって太ってしまった」「年齢とともに、気付いたら体重が増え続けている」そんな悩みを抱える人は少なくないでしょう。

しかしいざダイエットに取り組もうとしても、難しいのは「継続」すること。運動や食事に気を付けているつもりなのに、思うような結果が得られず諦めてしまったり、一度痩せても、しばらくしてリバウンドしてしまったりすることはよくあります。

学生時代にさまざまな大会で優勝し、現在はクイズ法人カプリティオの代表としてクイズ制作やYouTube配信などを手掛ける古川洋平さんは、40代を目前に30年以上太っていた生活に別れを告げ、10カ月間で48㎏ものダイエットに成功しました。ダイエットから2年ほど経った今もリバウンドすることなく、理想の体型をキープしているといいます。

過去に何度もダイエットに挫折してきたという古川さんは、なぜ今回結果が出せたのでしょうか? 自分に合った仕組み作りのコツや、健康的な体を手に入れたことでの気付きなどを伺いました。

古川洋平さん

古川洋平さん

1983年宮城県生まれ。クイズ作家。仙台一高クイズ研究部時代に「パネルクイズアタック25」「タイムショック21」の高校生大会で優勝。その後、立命館大学クイズ研究会に所属。学生日本一決定戦「abc」3連覇、社会人日本一決定戦「ABC」2度優勝などの成績を収める。2014年より「クイズ法人カプリティオ」代表。
Twitter:@Piu_P  Web:クイズ法人カプリティオ

挫折しなかったのは「やる気」と「知識」があったから

──古川さんは2020年から2021年にかけて、112kg→64kgに落とすという48㎏もの減量に成功し、『-48kgでもリバウンドなし。別人に生まれ変わる クイズ王式ダイエット』(幻冬舎)という著書を出版されています。しかし、この成功にたどり着くまで、たびたびダイエットに臨んでは失敗していたとか。

古川洋平さん(以下、古川):僕は小学生から太っていたので、ダイエットに挑戦して挫折した回数が、おそらく人よりすごく多いんです。僕と同じように不健康な生活から太ってしまった人は、朝起きてから寝るまでそこらじゅうに「痩せたい」と思う“動機”が転がっていると思います。例えば、入る服がなくてオシャレができないとか。僕もその動機をつかむたびにいろいろ試みてはみるんだけど、うまくいかなくて続かない……そんな繰り返しでした。



──今回のダイエットでつかんだ「動機」は、何だったのですか?

古川:僕が112kgだったとき、それより数年前に105㎏だったときの写真を見たフォロワーさんが「今より痩せててかっこいい」と言ってくれたことです。たしかに比べれば痩せているかもしれませんが、絶対的には痩せていませんよね。そこでふいに「このまま年を取って体重も増え、一生『前の方がよかった』と言われ続ける人生は嫌だな」と感じ、一念発起しました。

──とはいえ、挑戦も挫折も日常茶飯事だったところから、どうして成功できたのでしょうか。

古川:要因はおそらく2つあって、一つ目はまず、やる気が違ったこと。僕は常に目標を追いかけるタイプの人間で、「絶対にやる」と決めたことはちゃんと達成できるんです。でも、今まではダイエットに本気になったことがなかったので続かなかった。「クイズで日本一になりたい」「オンラインのボードゲームで世界一になりたい」みたいなメインの目標を掲げつつ、サブクエストとして「ダイエットもやろう」という感じだったんですね。それでは、メインのアクションが忙しい時期は、食事や運動なんかに気を付けていられません。

ところが、その一念発起した時期はちょうどコロナ禍。仕事もクイズ大会もなくなったため、初めてダイエットをメインの目標に据えることができたんです。ただ、ダイエットに集中して取り組んだことでほかのことは当然おろそかになり……当時クイズはちょっと弱くなっていた気がします(笑)。

──自分の中で優先度の高いことには、もともとしっかり取り組めるタイプだったんですね。二つ目の要因は何ですか?

古川正しい知識を持って取り組めたことです。それまでのダイエットは「走れば痩せそう」「食べる量をこれくらい減らせばいいだろう」などと、なんとなく思いついたことをやっているだけでした。それも多少の効果はあるんだけど、いかんせん根拠がないから、しんどいときに続かないんですね。でも、知識があれば「これをやっていれば大丈夫」という自信が持てるから、継続の強い味方になりました。

古川洋平さん

たくさん学んでたどり着いた、ダイエットの「真理」

──それまでがむしゃらなダイエットをしていたのに、どうして今回は正しい知識を身に付けようと思ったのでしょうか。

古川:一念発起してからすぐ、知識の必要性を痛感する出来事があったんです。

ダイエットを始めるにあたって、部屋の隅でほこりをかぶっていたNintendo Switchの『リングフィット アドベンチャー』を取り出しました。専用のコントローラーを付けて自分の体を動かすことで、キャラクターが冒険を進めていくゲームです。

コロナ禍で暇だからちょっとやってみようと思ったら、プレイした初日も、2日目も、簡単に体重が落ちました。でも、2日目に調子に乗って焼肉を食べに行ったら、プレイした初日よりも太ってしまって! 「好きじゃない運動を2日間も頑張ったのに、焼肉を1回食べただけでマイナスになるなんて、食と運動の相関関係をきちんと知らなきゃダメだ」と痛感しました。それがきっかけで、ダイエットにまつわるいろんな情報を学ぶようになったんです。よく考えたら、勉強もせずクイズ大会に出たって、勝てなくて当然ですよね。穴の開いたバケツで水をくむようなものです。

──でも、世の中には本当にたくさんのダイエット情報があふれていますよね。その中から正しい知識をしっかりピックアップするのが難しそうです。

古川情報にアクセスしたあとの取捨選択が大事だと思います。僕の場合は、反対の意見を見比べて、共通点を探すようにしていました。例えば「しょうゆラーメンが最高」という意見と「みそラーメンが一番」という意見があった場合、味は違えど「ラーメンはおいしい」「大豆からできる調味料はおいしい」という主張は一致していますよね。ダイエットに関してもそうやって情報を整理していくと、一見違う主張に感じられても、それぞれの理論に共通するポイントが見えてくるんです。

古川洋平さん

──古川さんが見つけた「異なる理論でも共通しているダイエットのポイント」とは何ですか?

古川:ものすごく普通のことですが「摂取カロリーより消費カロリーが大きいと痩せる」です! 多くの人が知りたいのは「りんごだけ食べていれば痩せる」みたいに楽なテクニックで、そういう方が自分に合っているような気がしちゃうんですよね。でも、結局は「『摂取カロリー<消費カロリー』にする」「バランスよく栄養を摂る」という当たり前のことが一番大事で、万人に当てはまる真実だと思いました。

逆に、その基本さえ押さえてしまえば、あとは自分の好きなようにカスタマイズすればいい。僕はゲームが好きなので、消費カロリーを増やすためにリングフィット アドベンチャーを取り入れたし、カロリーや栄養素のバランスチェックもゲーム感覚で楽しみました。自分の育成ゲームだと思えば、成長していく過程を見守る楽しみがあったんです。

継続のコツは「知識」と「習慣化」。リバウンド防止にもなる

──正しい理論とやる気を持って臨んでも、モチベーションが保てなくなることはよくあるかと思います。古川さんにも、やる気が出ないときはありましたか?

古川:もちろんありました。ダイエットにはしばしば「停滞期*1」というものがあり、その時期に入ると体重が全然変わらないんです。そりゃあ「こんなに頑張ってるのになんだよ!」って思いますよね。それでも僕が継続できた理由は「知識」と「習慣化」です。

──ふたたび「知識」が出てきました。

古川:そう、今回の僕は「ダイエット中は停滞期がくることもある」という知識を持っていたわけです。だからいきなり結果が出なくなっても「今はそういう時期だから」と納得できた。夏は暑くて嫌だけど、僕らは年に1回この季節が来ることを知っているから、冷房をかけたりして対処できるじゃないですか。それと同じで、停滞期は嫌だけど仕方ないことだと分かっていたので、淡々と乗り切れました。

もう一つは「習慣化」。人間は3週間同じ行動を繰り返したらそれを「習慣」だと認識する、という説があります。僕はモチベーションが下がる時期までに食生活管理や運動を習慣化できたので、あとはそのまま「習慣だからやらなくちゃ」と続けられました。反対にいえば、本当に痩せたいなら3週間はなんとか続けてほしいと思います。

──聞けば聞くほど、ダイエットの成功に近道はなくて、地道にやるしかないんだなと思えてきます……。

古川:面白いことだったら夢中でできるけど、ダイエットって好きな食べ物を我慢しないといけなかったり、運動しないといけなかったり、楽しくないんですよね。だから、いろんなメディアでも「〇〇だけダイエット」「〇〇で楽しく痩せる!」みたいな手軽な情報ばかりがフィーチャーされますが、それを鵜呑みにするだけでは成果は出ない。

僕がダイエット関連でいろいろな取材をしていただいたときも、地道な積み重ねの上で工夫していたことの一つである「ヘパリーゼを飲む」 だけが注目され、あたかも「ヘパリーゼダイエットで古川は痩せた」というような記事がたくさん出ました。*2

でも、今回のこの記事を読んでくれている人は「ダイエットのポイントは当たり前のことばかり」「知識を味方にすべし」「習慣化するまで継続するしかない」という大事なポイントを受け取ってくれるはずだから、きっと地道に続けられると思います。

──その地道なやり方で48㎏の減量に成功し、2年が経った今も体型を維持されています。「大幅なダイエットはリバウンドを招きやすい」というイメージもある中、すごいことですよね。

古川:例えば痩せるために「夕飯はサラダだけ」のような極端な食事をしていた人は、その食事をやめたらやっぱりすぐにリバウンドしちゃうと思います。だから「痩せるためだけの食事」じゃなくて「一生食べ続けられる健康な食事」を見つけることが、そもそものリバウンドを防ぐコツだと思うんです。

それから僕の場合は「175㎝/64㎏まで落として、標準よりスリムになる」という目標をクリアしたあとで、新しい目標を設定したのがよかったと思います。

──当初の数値をクリアして、次は何を目指したんですか?

古川:筋肉を増やすことです。太っている人がただ痩せると筋肉も落ちてしまうので、健康的かつ見た目もよくスリムになるためには、もっと筋肉が必要でした。そこで、64㎏に落としたあとからトレーニングに力を入れ、ボディビルダーのような食生活に切り替えて、筋肉を10㎏増やしたんです。僕のベスト体型は、いまの175㎝/75㎏/体脂肪率15%ですね。

ハイカロリーな食べ物は「ダイエットにマイナス」でも「人生にプラス」

──ダイエット期を終えたあとのトレーニング期でも、引き続き、ご自分を律していらっしゃるんですね。

古川:律しているんだけど、律しているという感覚はありません。1年近くヘルシーな食生活と運動を心がけていたから、すっかり習慣化されたんだと思います。今でも家での主食は糖質カットのこんにゃくごはんだし、鶏肉の皮ははがすし、野菜のおかずばかり作っているけれど、それで十分おいしい。

昔は「健康的な生活=おいしいものを食べられる機会が減る」と思い込んでいたけれど、実はそんなことないんだと気付きました。確かにいろいろ制限してはいるけれど、カロリーが高くなくてもおいしい食事を知っているので、それで基本的には満足できます。

だから、今はむしろ「うまく許しを与えるターン」。ダイエット期やトレーニング期ほど自分を追い込まず、週1回くらいは焼き肉や唐揚げなんかも楽しんでいるんです。

古川洋平さん

──健康的な食生活がなじんだ今、そういうハイカロリーなものを食べると、罪悪感を覚えてしまったりはしないんでしょうか。

古川:罪悪感は持たないように気を付けています。だって、そういう食べ物はダイエットにはマイナスでも、僕の人生にとってはプラスだから。「体脂肪は増えるだろうけど、おいしいから食べよう!」「おいしく食べて、あとでまた体型を戻そう!」って考えればOKです。

今回のダイエットをしたことで、「古川さんは健康寿命が20年くらい延びた」とお医者さんに言っていただいたんです。太ったまま毎日ハイカロリーなものを食べていたら長く生きられなかったかもしれないけれど、今みたいに週1回ハイカロリーな食事を楽しみながらプラス20年間生きていけたら、おいしいものを食べるトータルの回数は増えるはず。そっちのほうがハッピーだなと今は思います。

痩せることではなく、健康な体を作ることが「ダイエット」

──自身にとってベストの体型にたどり着いて、ダイエットや健康そのものへの意識は変わりましたか?

古川:今までは「自分は太っていて不健康だ」というコンプレックスを感じながら生きていたのですが、自分なりのやり方でベストな体型を作れたことで、そういう負い目が一切なくなりました。

太っていたときは周りの目が気になって、髪を染めたりオシャレをしたりできませんでした。でも目標体重を初めて達成した日に、髪をオレンジに染めて、長年していた眼鏡をコンタクトに変えたんです。「オシャレをしてはいけない」と勝手に思い込んでいたのは自分自身であって、実際そんなことは全くないはずなんですが……とにかく世界がぐっと広がったように感じています。

──「世界が広がる」というのは、とてもすばらしい感覚ですね。

古川:「健全な精神は健全な肉体に宿る」という言葉にもあるように、やっぱり健康的な体って、人生の選択肢を広げていくのにとても効果的だと感じます。もちろん病気などさまざまな理由で太ってしまう場合もありますが、僕の場合は不健康な生活のせいで太っていました。だからダイエットによって心身ともに健全になれたと強く感じます。

ダイエットというと体重を落とすイメージばかりが先行するけれど、「ただ痩せること」じゃなくて「健康な体を作ること」がダイエットだと思っているんです。だから、今回こうして健康な体作りのための知識を得られたことは、本当に財産だなと。

ただ「ダイエットを達成してえらい」と言っていただくのは、くすぐったい気持ちもありますね。僕の場合は不健康な生活で太っていたので、ずっと健康的に暮らしている人にやっと追いついたなぁという感覚です。昔は「痩せている人は苦労なんてしていない」と思っていたけれど、実はどこかで頑張っているんだろうなぁとようやく気付きました(笑)。

──体重を落とすことばかりが正解ではないけれど、自分のために健康な体を作りたいと感じたとき、行動を継続できるようになれたらいいなと思います。

古川:僕は痩せることが必ずしも正解ではないと思っているし、ダイエットが絶対的に必要なことだとは思いません。おいしいものをたくさん食べて生きたい、体重は気にしない、というのもその方の人生です。

でも「自分の身体を変えたい」と思うときがもし来たなら、腹をくくって知識を身に付け、まず3週間は実践してみてほしいなと。努力は必要ですが、習慣化することで、きっと前に進めると思います。

古川洋平さん

※食事を抜くなどの極端なダイエットは健康を損なう恐れがあります。ダイエットに取り組む場合は、バランスの取れた食事と規則正しい生活習慣を軸に、無理なく行ってください。

取材・構成:菅原さくら
撮影:関口佳代
編集:はてな編集部


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*1:ダイエットを始めてしばらくは順調に減量していても、ある時期から体重が減りにくくなる現象。人間が生きるために重要な体温や血糖値の調節などを外部環境が変わっても常に正常に保つための「ホメオスタシス機能」によって、体重減少を防ぐ力が働くことなどで起こると言われている。参考「減量作戦・効果的な運動とリバウンドを知る|吉田医院(横浜市港南台)

*2:ゼリア新薬が販売する栄養剤「ヘパリーゼ」の肝臓に働きかける作用に着目した古川さんは、代謝を上げる目的でヘパリーゼを服用していた