腎臓の状態が気がかりで「この先慢性腎不全になるのでは?」と不安に感じている方もいるでしょう。腎臓は、沈黙の臓器といわれています。腎臓の働きが低下すると、さまざまな病気の原因となるので注意が必要です。
本記事では、慢性腎不全とはどのような病気か、原因や症状、診断方法・治療方法について解説します。
こんな人におすすめ
- 腎臓の状態が気がかりで、この先慢性腎不全になるのではと不安に感じている人
- 慢性腎不全とはどのような病気か知りたい人
腎不全とは
腎不全とは、腎臓がうまく働かなくなった状態を指します。腎不全は、慢性腎不全と、急性腎不全の2つに分けられます。
本章では、それぞれの特徴を解説します。
慢性腎不全とは
慢性腎不全とは、数カ月から数年以上にわたってゆっくりと腎臓の機能が低下していき、血液をきれいにする「ろ過能力」が30%以下になる状態を指します。慢性腎不全の場合、治療による改善は現代の医学では難しいのが現状です*1。
慢性腎臓病は腎臓の機能が3カ月にわたって低下している状態のことです。慢性腎不全では、慢性腎臓病と同様に腎機能の低下の程度が軽い初期段階では、ほとんど症状はありません。しかし、慢性腎臓病が悪化し腎機能の低下が深刻化してくると、夜間の尿の量が増えるほか、むくみ、疲労感、食欲不振、息切れ、かゆみ、といった症状が現れます*2。
急性腎不全とは
急性腎不全とは、数日から数週間で腎臓の機能が急激に悪化する状態を指し、尿の出が悪くなる(乏尿)、尿が全く出なくなる(無尿)といった症状が現れます。
急性腎不全の疑いがある場合は、早急に原因を究明し、適切な治療を受けることが大切です。慢性腎不全と異なり治療により腎機能が回復する可能性があるため、迅速な対応が求められます*3。
慢性腎不全の原因
慢性腎不全の原因には、糖尿病、腎硬化症、慢性糸球体腎炎などの病気があります。それぞれの原因について詳しく見ていきましょう。
糖尿病
慢性腎不全の原因の一つに、糖尿病が挙げられます。糖尿病になると、血液中の糖分が増えます。長期間高血糖状態が続くと、腎臓の中の毛細血管(特に糸球体)がダメージを受け、腎機能が低下するのです。この状態を、糖尿病性腎症といいます。糖尿病性腎症は、慢性腎不全の原因として最多です*4。
糖尿病性腎症の初期は、あまり自覚症状がありません。病気が進行すると、むくみや貧血、高血圧、心不全といった症状が現れ、最終的には人工透析が必要になることがあります*5。
腎硬化症
腎硬化症は、腎臓の血管が徐々に傷つけられ腎機能が低下していく疾患で、加齢や高血圧によって引き起こされることが多いです。
高血圧になると、腎臓の糸球体へ血液を送る細動脈に圧力がかかります。細動脈に圧力がかかると、血管内の細胞が増え、血管の内側の空間が狭くなります。
糸球体には十分な血流が必要です。血液の流れが悪くなると、徐々に糸球体が硬くなり、腎機能が低下します。腎機能が低下すると、老廃物のろ過ができなくなるため、慢性腎不全につながるのです。
腎硬化症の自覚症状は、ほとんどありません。定期的に血液検査を受け、腎機能を確認しておくとよいでしょう*6。
慢性糸球体腎炎
慢性糸球体腎炎は、腎臓の中にある糸球体が長期間にわたって炎症を起こす病気です。糸球体は腎臓内にある毛細血管の塊で、血液をろ過して尿を作る役割があります。そのため、糸球体が炎症を起こすと、腎機能も低下しやすくなります。
IgA腎症や膜性腎症なども、慢性糸球体腎炎の一種です。これらの病気になると、血尿やタンパク尿が続き、腎機能が徐々に低下していきます。特に尿タンパクが多い場合、腎不全に進行しやすいことが知られています*7。
病気が進行し過ぎると、治療による腎機能の改善は期待が難しくなるため、早めの診断と治療が大切です。
慢性腎不全の原因は以下の記事でも詳しく紹介しています。
👉慢性腎不全の原因は? 診断方法・対策方法についても紹介 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ
慢性腎不全の症状
一般的に、慢性腎不全の症状はゆっくりと現れます。本章では、慢性腎不全の初期症状、進行期の症状、末期症状について、それぞれ解説します。
初期症状
腎臓病の初期症状はほとんどありません。腎機能の低下が軽度から中等度になると、夜間に何度も尿意をもよおす、夜間頻尿が起こります。通常、健康な腎臓は夜間に尿から水分を再吸収し、尿の量を減らして濃縮しています。しかし腎機能が低下すると、濃縮機能が十分に働かず、頻尿になるのです。
進行期の症状
腎機能が低下し、血液中の老廃物の蓄積が進む進行期には、次のような症状が現れることがあります。- 疲労感や脱力感
- 注意力の低下
- 食欲不振
- 息切れ
- 貧血
これらの症状は腎機能が低下するにつれて進行し、日常生活に大きな影響を与えるでしょう。
さらに、体内に尿毒素や余分な水分が蓄積されると、尿毒症の症状が現れます。
尿毒症の症状があっても、まだ透析が必要でない状態のことを「腎不全保存期」と呼びます。腎不全保存期には腎機能の低下を遅らせるために、以下のような治療を行います*8。
- 降圧薬による血圧管理
- 塩分と水分を制限し、余分な水分の蓄積を防ぐ
- タンパク質、リン、カリウムの摂取を制限しながらも、十分なエネルギーを摂取する食事療法
- 症状に応じた薬剤の投与
これらの治療によって、腎不全の進行を遅らせることが期待できます。
尿毒症とは
腎機能が低下し、体内の老廃物を尿中に排泄できなくなると、血液中に有害な老廃物が増えます。この状態が尿毒症です。尿毒症になると水分や電解質のバランスが崩れるため、むくみが出現して、血圧も高くなります。赤血球の産生を促進するエリスロポエチンというホルモンの不足により、貧血になることもあるでしょう。
他にも、倦怠感、吐き気、食欲不振、頭痛、呼吸困難、出血といった症状が現れるケースもあります*9。
末期症状
末期になると、腎機能がさらに低下し、血液中の老廃物がより多く蓄積します。それに伴い筋肉がひきつったり、筋力が低下したりするでしょう。けいれんや痛みなどを感じる場合があります。他には、以下のような症状が現れます。
診断方法
ここからは、慢性腎不全の診断方法を紹介します。検査方法は腎臓病の種類によって異なります。一般的な健康診断で実施される検査も、病気の早期発見に役立ちますので、積極的に受けるようにしましょう*12。
尿検査
早期発見に有効な検査は、尿検査です。尿検査では、尿にタンパク質や血液が混ざっていないかを調べます。腎臓に異常がなくても、発熱や激しい運動などが原因で、タンパク質や血液が認められるケースもあります。万が一検出されたら、必ず複数回検査し、異常の有無を確認しましょう。病院で検査する場合、検出用テープや試薬を使う、尿を遠心分離器にかけて顕微鏡で調べる(尿沈渣)、といった方法をとります。尿検査では以下のような異常を調べています。
- 出血している場所(血尿のある人)
- タンパク質の有無
- 糖や潜血の有無
- 比重
- pH
- 白血球、細菌、腫瘍の有無
血液検査
血液検査では、腎不全の進行度合いなどが確認できます。定期健診などで一般的に行われる検査です。主に見られる数値は血中尿素窒素(BUN)、血清クレアチニン(Cr)です。
血中尿素窒素(BUN) | ・血液中に含まれる窒素量を計測する検査 ・腎機能が低下すると、血液中の尿素窒素の値が高くなる ・正常値:20mg/dl以下 |
血清クレアチニン(Cr) | ・筋肉に含まれるタンパク質の老廃物を計測する検査 ・腎臓機能が低下すると、血清クレアチニンの値が高まる ・正常値:男性1.2mg/dl以下、女性1.0mg/dl以下 |
超音波検査
超音波検査では、尿路閉塞の有無や腎臓の大きさが確認できます。腎臓に瘢痕(傷跡のようなもの)があり萎縮していれば、腎機能の低下が慢性化している可能性があります。慢性腎臓病が進行すると、原因の特定が難しくなるといわれています。治療方法
慢性腎不全は腎機能の状態によって、ステージ1~5の5段階に分けられ、診療計画が立てられます。一般的に、ステージ1~3までは生活習慣の改善や薬物治療が中心です。腎機能の回復は難しいといわれていますが、更なる腎機能の低下や腎不全の合併症を防ぐために、治療を行います*13。
具体的に、どのような治療方法があるのか、見ていきましょう。
食事療法
生活習慣を見直し、進行の予防を意識することが大切です。例えば、肥満気味の場合は減量、喫煙者なら禁煙、高血圧の場合は血圧コントロールをしましょう。特に、塩分や脂質の取り過ぎには注意が必要です。高血圧や動脈硬化を引き起こし、腎機能を低下させる可能性があります。
腎臓の健康を維持するために推奨される食事、避けるべき食事については、下記の記事で詳しく解説しています。
👉腎臓に良い食事・悪い食事とは? 食生活で気をつけるポイントを解説 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ
薬物療法
腎臓機能の低下が中程度まで進行したら、薬物療法を行います。ただし、慢性腎不全を直接治す薬はありません。腎機能の低下の程度や原因となる病気、合併症などに応じて、降圧薬や利尿薬、免疫抑制剤、漢方薬などを使用するのが一般的です。必要に応じて、心不全や貧血にに対する治療薬も使用します。腎不全の進行スピードを抑え、できるだけ透析療法への移行を遅らせることが、薬物療法の目的です。
血液透析
血液透析は、腎臓の機能が高度に低下した患者に対して行われる治療です。腎臓の機能を人工的に代替し、血液中の老廃物や余分な水分を除去する目的で行われます。体外から血液を取り出し、ダイアライザー(人工腎臓)を通して血液を浄化した上で、体内に戻す仕組みです。ダイアライザーの中で、血液と透析液が半透膜を介して接し、体内に蓄積した尿毒素を排出します。また、不足している物質の補填が行われます。
治療頻度は一般的に週3回、1回につき4時間程度です。
腹膜透析(CAPD)
腹膜透析は、血液透析と並ぶ主要な透析療法の一つです。腹膜の中に、カテーテルと呼ばれる細い管を入れ、透析液を出し入れし、血液中の老廃物や余分な水分を除去します。自宅や職場で実施可能で、日常生活への制約が少ないことがメリットです。バッグ交換時間以外は自由に動けるので、生活行動範囲も広がるでしょう。また、24時間連続で、ゆっくり時間をかけて透析が行われることで、不快な疲労感が軽減され、体調が安定しやすくなります。
腎移植
腎移植は、末期腎不全患者に対する治療法の一つで、健康な腎臓を患者の体内に移植する手術です。親族や配偶者などの生きている方か、脳死や心停止後の方から、腎臓の提供を受けます。腎移植が成功すれば、透析に依存する必要がなくなるので、生活の質が向上します。しかし、免疫抑制剤の長期服用が必要になる、感染症や悪性腫瘍のリスクが高まる、といったデメリットもあります。
身体の状態や希望に応じて、透析療法と比較しながら慎重に検討する必要があるでしょう。
早期発見・対策を意識しよう
腎不全には、慢性腎不全と急性腎不全の2種類があります。慢性腎不全の初期段階では症状がほとんどありませんが、病気が進行すると尿毒症の症状が現れます。
診断方法には尿検査や血液検査があるため、定期的に健康診断を受けましょう。慢性腎不全と診断された際には、食事療法や腎移植などいくつかの治療方法の中から、状態に合わせた検討が必要です。
編集:はてな編集部
編集協力:株式会社イングクラウド
この先慢性腎不全にかかるかもしれない、と不安な方には、フォーネスライフが提供する「フォーネスビジュアス」を紹介します。フォーネスビジュアスは、慢性腎不全を4年以内に発症するリスクをはじめ、認知症や各種疾病の将来の発症リスクを予測することができます。
さらに、保健師の資格を持つコンシェルジュから予測の結果や体の状態を踏まえた生活習慣改善のアドバイスを受けることも可能です。その提案を実践し生活習慣が改善されれば、腎臓病などの各種疾病リスクへの対策にもつながるでしょう。自分に合った対策方法が分からない場合は、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
※フォーネスビジュアス検査は、医療機関の医師を通じて提供します。
慢性腎不全のリスク、調べてみませんか?
*1:参考:公益財団法人長寿科学振興財団「腎不全とCKDについて」
*6:参考:東京女子医科大学病院 腎臓病総合医療センター 腎臓内科「腎硬化症」
*7:参考:東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科「慢性糸球体腎炎(IgA腎症など)」
*10:参考:e-ヘルスネット(厚生労働省)「レストレスレッグス症候群 / むずむず脚症候群」
*11:参考:日本泌尿器科学会「末期腎不全と言われた」
*12:参考:一般社団法人 全国腎臓病協議会「検査方法について」
*13:参考:公益財団法人 日本腎臓財団「腎臓の機能をチェックしてみましょう」