腎臓病の検査方法とは? 基準値・検査結果から分かることや診断後にすべきことを解説

腎臓病の検査方法とは? 基準値・検査結果から分かることや診断後にすべきことを解説

腎臓病の検査にはさまざまな種類があります。本記事では、腎臓の健康状態を評価するための一般的な4つの検査方法について解説します。さらに、それぞれの検査がどのように行われ、どのような基準値で評価されるのか、また検査結果から何が分かるのかについても詳しく紹介します。

(監修者)臼井亮介 先生

株式会社レノプロテクト 代表取締役

医師、医学博士。日本内科学会や日本腎臓学会の専門医・指導医などの資格を持つ。糖尿病医として経験を積んだのち、医師7年目より腎臓専門医としてのキャリアをスタート。腎臓専門医として基幹病院で外来診療・入院診療・研究に取り組む過程で、「腎臓外来にたどり着かないようにする・たどり着くまでの時間を延ばすためのサポート」への思いが募り、医師20年目の2022年に株式会社レノプロテクトを設立、代表取締役に就任する。日本内科学会・日本腎臓学会・日本透析医学会・日本糖尿病学会に所属。

こんな人におすすめ

  • 腎臓病や腎機能低下について気になっている人
  • 腎臓病の検査方法や腎臓の状態を確認するための基準値を知りたい人

腎臓病とは

1.腎臓病とは

腎臓病とは、腎臓内の糸球体や尿細管の働きが悪くなり、体内の毒素を効果的に排出できなくなる病気です。腎臓は血液をろ過し、老廃物を尿として排出する重要な役割を果たしているため、その機能が低下すると全身に影響を及ぼします*1

腎臓病の定義

腎臓病は、腎臓が本来果たすべき機能が低下し、体内の老廃物や余分な水分の排出が困難になる病気を指し、病気の発生と進展の速さによって急性と慢性に分けられます。

急性の場合、多くは治療によって改善し、回復しますが、慢性の腎臓病では根本的な治療法がなく、多くの場合は腎臓の機能が果たせなくなる腎不全へと進んでしまいます。

慢性腎臓病はCKDとも呼ばれ、以下いずれか、もしくは両方が3カ月以上続いている状態を指します。

  • 尿検査、画像診断、血液検査、病理などで腎障害の存在が明らかで、特に0.15g/gCr以上のタンパク尿(30mg/gCr以上のアルブミン尿)がある
  • 糸球体*2ろ過量(GFR)が60(ml/min/1.73m²)未満に低下している

代表的なものには糖尿病や高血圧などの生活習慣病、慢性腎炎などがあり、メタボリックシンドロームとの関連も深いとされています。現在、日本の約1330万人(20歳以上の8人に1人)がCKDに罹患し、新たな国民病といわれています。

腎臓病の症状

腎臓病の主な症状には、以下のようなものがあります*3

症状 概要
むくみやすくなる 腎臓から水分と塩分を十分に排泄できなくなることで生じる
血尿が出る 腎臓の糸球体が何らかの損傷を受けていることを示すサインで、尿に血液が混じる状態
乏尿や無尿 腎臓が尿を生成する能力が低下するため、尿の排出量が極端に少なくなる・微量しか出なくなる状態
頻尿 腎機能が低下すると、尿の濃縮能力が下がることで尿量が増え、尿の回数が8回以上に増える状態。また、日中に排泄されるべきナトリウムが排泄されず、逆に寝ている間に排泄されることで尿意が催され、夜間頻尿につながることもある
貧血 腎臓がもつエリスロポエチンというホルモンを生成する能力が低下し、赤血球の生成が不十分になるため、貧血(腎性貧血)が生じる状態
体のだるさ 腎不全の末期に認められる症状の一つで、腎不全により尿毒症物質が蓄積されることにより、疲労感やだるさを感じやすくなる状態

腎臓病のステージ

腎臓病にはステージがあり、1から5までの5段階に分類されます*4。ステージが進むほど病気の重症度が増します。

ステージ 重症度 GFR区分(ml/min/1.73㎡)
ステージ1 GFRが正常または高値な状態 ≧90
ステージ2 GFRに軽度の低下が見られる状態。腎臓に軽い障害があるが自覚症状はない場合が多い 60-89
ステージ3 GFRに中程度の低下が見られる状態。夜間頻尿や血圧上昇などの症状が見られる場合がある 30-59
ステージ4 GFRが高度に低下している腎不全の状態。全身にむくみなどの症状が現れる 15-29
ステージ5 深刻な腎不全 <15

日本腎臓学会が編集した「CKD診療ガイドライン2023」によると、ステージ1は「腎障害はあるが腎臓の働きは正常の状態」と比較的軽微な状態です。しかし、ステージ3では「腎臓の機能が半分近く低下している状態」と腎臓病に関する自覚症状が現れ始めます。

そして、ステージ5では「腎臓がほとんど機能していない末期腎不全の状態」となり、人工透析や腎移植が必要となる場合があることが示されています。

これらのステージは、腎機能の状態を示す指標とされており、そのステージに応じて診療計画が立てられ、治療方法や生活習慣の改善指導の基準となっています*5

腎臓病の4つの検査方法と結果から分かること

2.腎臓病の4つの検査方法と結果から分かること

腎臓の一般的な検査方法には尿検査・血液検査・画像診断・腎生検の4つがあります*6。本章では、それぞれの検査方法について順番に解説します。

尿検査

尿検査は、定期健康診断などで行われることが多い簡易的な検査方法で、尿タンパクや尿潜血の有無を検査します。

尿タンパクと尿潜血は、腎臓の異常を検出する検査です。検査には試験紙が使用され、わずか数分で結果が分かります。さらに、糖や比重・pH・白血球・細菌も調べられます。

それ以外にも、尿を遠心分離器にかけて顕微鏡で調べる「尿沈渣(にょうちんさ)検査」や、1日の尿を全て集めて成分を測定する「蓄尿検査」があります。

尿タンパク
尿タンパクとは、尿中に含まれるタンパク質のことを指します。この項目から、腎臓が正常な働きをしているかを検査できます。

一般的に、検査結果は「-、±、1+、2+、3+」で判定され、(-)(マイナス)か、(±)(プラスマイナス)が正常です。(1+)以上の場合、病気の可能性があるため更に細かい検査を受けることが推奨されています。

尿潜血
尿潜血とは、尿に血が混じることで、いわゆる血尿のことを指します。尿を作る腎臓や尿の通り道の重要な病気のサインといわれています。

目で見て判断できる「肉眼的血尿」が重要な病気のサインであることはもちろん、尿の色の変化は目で見ても分からないけれど検査で血が混ざっている状態が判明した場合の「顕微鏡的血尿」も注意が必要。腎臓で血液から尿をろ過する糸球体に何らかの原因が隠れていることがあります。

検査結果は「-、±、+(2+~)」で示され、陽性を示す(+)(プラス)以上は再検査が推奨されています。

血液検査

血液検査も、定期健康診断などで一般的に行われる検査です。筋肉に含まれているタンパク質の老廃物の「血清クレアチニン」や、タンパク質が体内で代謝された後にできる老廃物の「血中尿素窒素(BUN)」などの数値を測定し、腎臓の状態を客観的に把握することができます。これにより、無症状の段階でも腎臓病の早期診断が可能です。

定期健康診断の結果などで腎臓病が疑われ、さらに詳しい検査をする際は、腎臓のろ過機能を評価する「糸球体ろ過量(eGFR)」、糸球体でろ過される血液の量を調べる「クレアチニン・クリアランス(CCr)」などの数値を測定します。

血中尿素窒素(BUN)
血中尿素窒素(BUN)は、タンパク質が代謝された後にできる老廃物のことをいいます。

本来、腎臓の糸球体でろ過され尿中に排泄されますが、腎機能が低下すると、ろ過しきれずに血液中に溜まるため、血液中の尿素窒素の値が高くなります。

血中尿素窒素の正常値は20mg/dl以下とされており、超える場合は腎機能障害の可能性が疑われます。

血清クレアチニン(Cr)
血清クレアチニン(Cr)は、筋肉を動かすエネルギーとなる「クレアチンリン酸」を代謝したときにできる老廃物のことをいいます。

本来は、尿素窒素と同様で、腎臓の糸球体でろ過され尿中に排泄されます。しかし、腎臓の機能が低下すると尿中に排泄しきれず血液中にクレアチニンが溜まりやすくなるため、血清クレアチニンの値は高くなるとされています。

血清クレアチニンの正常値は、男性1.2mg/dl以下、女性1.0mg/dl以下です。

クレアチニンについては以下の記事でも詳しく解説しています。
👉腎臓病の血液検査でクレアチニンが高いとどうなる? 疾患と原因・対処法を解説 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ

糸球体ろ過量(eGFR)
糸球体ろ過量(eGFR)は、腎臓のろ過機能を評価するための重要な数値で、健康診断での血液検査や尿検査の結果から腎臓病が疑われる場合の精密検査で調べられます。

基準値は60.0mL/min以上で、この値を下回る場合、腎機能の低下が疑われます*7

クレアチニン・クリアランス(CCr)
クレアチニン・クリアランス(CCr)は、24時間尿を貯めて、1日で排泄されるクレアチニン量を調べることで腎機能の実測値を測定する検査です。

CCrが低い場合、腎機能の低下が疑われます。正常値はおおよそ100~120ml/minで、この範囲内に収まっていれば腎機能が正常であるといえます。

画像診断

画像診断とは、機械を使って体内の画像を映し出すもので、腎臓の形や大きさに異常がないか、腫瘍や結石がないかなどを調べます。

主に超音波画像診断装置(腹部エコー検査)やCT検査の結果に基づいて診断を行います。状況に応じて、造影検査などを実施する場合もあります。

腎生検

腎生検とは、はっきりとした診断や適切な治療法を決定するために腎臓の組織の一部を切り取り、顕微鏡で検査する方法です。

一般的には、局所麻酔などを行った後、鉛筆の芯程度の太さの針を刺して組織を一部採取して検査します。必ず5〜7日の入院が必要です。

腎臓病と診断されたらするべきこと

3.腎臓病と診断されたらするべきこと

腎臓病は適切な対処をすることで進行を抑え、生活の質を維持できる可能性があります。この章では、腎臓病と診断された場合に取るべき具体的なステップについて解説します。

再検査をする

健康診断などで異常が見つかった場合、一時的な検査異常があるため、再検査を行いましょう。

一定期間を空けて血液検査と尿検査を再度実施し、3カ月間にわたり異常値が継続している場合は腎臓病の可能性が高まります。一方で、数値が正常に戻る場合は一過性の変動だった可能性があります。

健康診断で分かる腎臓の異常やその原因については、以下の記事で詳しく解説しています。
👉健康診断で腎臓がひっかかる原因とは? 疑われる結果と対応について解説 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ

腎臓病のステージを知る

現在のステージを把握して、適切な治療方法を検討しましょう。

「腎臓病のステージ」でも紹介しましたが、慢性腎臓病(CKD)は血液検査のクレアチニン値と性別、年齢から推算するeGFR(推算糸球体ろ過量)をもとに5つのステージに分かれています。これを基に現在のステージを知ることで、生活習慣の改善だけで十分なのか、投薬治療や透析が必要なのかを判断し、適切な治療を選べるでしょう*8

腎機能が低下した原因を調べる

腎臓病は、原因が1つだけではなく、複数絡み合っているケースがあります。

そのため、腎機能が低下した原因が腎臓以外にあれば、同時にその疾患の治療を行うことで腎臓病の進行を抑えることにつながるでしょう。

病気以外で腎臓の数値が指摘される(ひっかかる)理由や危険因子

4.病気以外で腎臓の数値が指摘される(ひっかかる)理由や危険因子

腎臓の数値は、生活習慣の影響を受けることもあります。

特に高血圧や喫煙などの生活習慣、肥満は、腎臓の健康に悪影響を与え、腎機能の低下を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。

ここでは生活習慣が腎臓に与える影響について解説します。

高血圧

腎臓の動きが悪くなると、余分な塩分と水分の排出が不十分になることから、血液量が増加し血圧が高くなります。

血圧が高くなると腎臓の機能は低下し、その結果慢性腎臓病(CKD)を患いやすくなるため注意が必要です。

喫煙

喫煙は、煙に含まれる化学物質が血管を収縮させたり血管にきずをつけます。
喫煙習慣が長期に及ぶと、腎臓の糸球体内の毛細血管の収縮やきずが不可逆的となり腎臓機能の低下につながります。

肥満

肥満(メタボリックシンドローム)は糖尿病や高血圧症などの生活習慣病のもと。タンパク尿や末期腎不全への進行に関連することも報告されています。

腎臓病が気になったら早めの検査を

腎臓病が気になったら早めの検査を

腎臓病は血液検査や尿検査で早期に発見できるため、定期的な検査が重要です。

早期の発見と治療によって腎臓病の進行を抑え、それが健康な生活を維持することにつながります。そのほか、生活習慣の見直しやバランスの取れた食事、適度な運動を日常生活に取り入れることが腎臓の健康を守る鍵となるでしょう。

編集:はてな編集部
編集協力:株式会社イングクラウド


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*1:参考:一般社団法人 全国腎臓病協議会「腎臓病について

*2:糸球体とは、毛細血管が毛糸のように丸まってできた構造物。腎臓の中にあり、血中の老廃物をろ過する働きがある

*3:参考:一般社団法人 日本腎臓学会「腎臓がわるくなったときの症状

*4:参考:東京都「ほっとけないぞ!CKD慢性腎臓病

*5:参考:日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」[PDF]、公益財団法人 日本腎臓財団「腎臓って何をするところ?

*6:参考:一般社団法人 全国腎臓病協議会「腎臓病について

*7:参考:一般社団法人 奈良県医師会「eGFRとは

*8:参考:公益財団法人 日本腎臓財団「腎臓って何をするところ?