
みなさんは、健康診断を毎年受けていますか?
「受けてるけど結果をちゃんと見たことがない」
「会社を辞めてから何年も受けていない」
このような方も少なくないかもしれません。
お笑いコンビ・日本エレキテル連合の中野聡子さんは、約10年間、健康診断を受けていませんでしたが、あるとき“しぶしぶ”受けたがん検診で、子宮体がんが見つかりました。
手術を経て現在は元気に活動されていますが、「健康診断を受けていれば……」と今でも思うそうです。その一方で「結果の活かし方が分からない」「そもそも、毎年受ける意味はあるの?」という疑問も残っているのだとか。
この記事では、医師の臼井亮介先生とともに、疑問を一つずつ紐解きながら、健康診断を毎年受ける意味と、結果の活かし方を探っていきます。
- タバコもお酒もしない私が、病気になるはずないと思っていた
- 言われて「しぶしぶ」受けた検診で、がんが発覚
- 11年前の健診結果を医師と見てみたら、意外な事実が……
- 人間ドックは高解像度の1枚、毎年の健康診断は連写
- 毎年の健康診断データが、将来の自分を守る財産になる
タバコもお酒もしない私が、病気になるはずないと思っていた
──中野さんが、最後に健康診断を受けたのはいつですか?

中野聡子さん(以下、中野):2015年に、人間ドックを受けたのが最後です。当時はまだ事務所に所属していたので、毎年会社から案内があったんですよ。受けないと怒られるから、「めんどくさいな」と思いながらも受診していました。
その後、事務所との契約が所属から業務提携に変わり、いわゆる「フリーランス」のような働き方になったんです。住んでいる自治体から健康診断の案内は来るけど、受けていないからと怒る人はいなくなりました。そしたら、自然と足が遠のいてしまって。
──中野さんのように、「会社員じゃなくなってから、健康診断を受けなくなった」という人は多いですよね。
中野:芸人仲間も受けていない人が多かったので、危機感もありませんでした。さらに私の場合は、健康に自信があったんです。お酒やタバコは一切やらないし、風邪もほとんどひかない。親族も健康に長生きしている人ばかり。だから、私が大きな病気なんてするわけないでしょう、と思っていました。
──では、ガンがわかるまでは、病院にかかる機会もほとんどなかったのでしょうか?
中野:そんなことはないです。過労で肺炎になって入院したり、骨にひびが入って通院したりはしていました。そのときに、たしか血液検査もしたと思います。でも、特に指摘はなかったから、さらに「私は大丈夫」と過信してしまったんです。だから、自分ががんになるなんて、これっぽっちも思っていなくて。

臼井亮介先生(以下、臼井先生):なるほど。「定期的に通院しているから、健康診断を受けなくてもいいのでは」とおっしゃる方、いますよね。でも、通院と健康診断は、目的が大きく異なります。そのため、「通院しているから大丈夫」ではないんですよ。
中野:え、そうなんですか?
臼井先生:たとえば肺炎で病院にかかった場合、医師は「肺炎の状態はどうか、どう治療するか」に焦点を当てて診ていきます。一方で健康診断は、生活習慣病のリスクがないかを幅広く確認するためのものです。
中野:なるほど。それぞれ診るポイントが違うんですね。
臼井先生:通院時の診察では、今治療している病気についてのやりとりが優先されます。ですから、血液検査をしたとしても、その結果を一つひとつ説明する時間まではなかなか取れないんです。結果の紙自体は渡されますが、数字の羅列だけを見て、どこが良くてどこに注意が必要なのか、自分で判断するのは難しいですよね。
中野:たしかに。何を表す数値なのか、どんな数値以上だと注意した方がいいのか、ネットで調べればいくらでも出てくるのは分かっています。でも、一つひとつ検索するのも、正直言って面倒なんですよね。
言われて「しぶしぶ」受けた検診で、がんが発覚
──中野さんはがん検診を受けたことで、子宮体がんであることが分かったのですよね。健康診断の必要性は感じていなかったのに、どうしてがん検診を受けることになったのでしょうか?
中野:実は、相方の橋本(橋本小雪さん)が、「もっと健康を気にしたほうがいい!」と言って、勝手にがん検診の予約を入れたんです。その時は自覚症状なんて全くなかったから、渋々受けに行きました。それで子宮体がんが見つかったのだから、本当に私はラッキーでしたね。2023年に手術を受け、今は経過観察として、半年に1回の血液検査と、年に1回CTを受けています。毎回検査の結果は良好で、元気に過ごしています。
ただ、発覚してからしばらくは、活動は自粛。予定していたライブも、中止にせざるを得なくなり、家族や相方、そしてファンの方にはご心配とご迷惑をかけてしまいました。「もう少し早く健康診断を受けていれば、ここまで大事にならなかったんじゃないか」と後悔しましたね。
──しかし、中野さんはがん発覚以降も、特に健康診断は受けていないそうですね。
中野:術後の経過観察で定期的に病院に通っているから「もし何かあったらそこで教えてくれるだろう」と思っていたんです。でも、先程の臼井先生のお話で「通院と健康診断は違う」と分かったから、今年からまた受けなきゃですね。
ただ、定期的に受けていたときから「この結果ってどう判断すればいいんだろう?」と疑問に思っていたんですよね。診断結果ってAからEで判定されるじゃないですか。たとえばC判定「要経過観察」とコメントが併記されていることが多いですが、結局何をしたらいいのかな、と。一応、なんとなく体に違和感がないか「様子見」はしていたんですけど、この対応であっているでしょうか……?
臼井先生:実は、健康診断の要経過観察の主語は、患者さんではなく医師です。つまり、「医師の指示に従って、今後の対応を検討してくださいね」という意味なんです。

中野:ということは、C判定でも受診が必要だったのですか!?
臼井先生:急を要するほどではないですが、そうなりますね。ただ、健康診断で確認する項目の多くは、自覚症状が出にくいものです。また、結果は後日郵送で届くことが多いですよね。「不調を感じていないから受診しなくてもいいか」と患者さんが受け取ってしまうのは自然なことです。
ただ、仕組みがすぐに変わるわけではないので、まずはBやCの判定がついた時に「これは何だろう」と一度立ち止まっていただけると嬉しいですね。
11年前の健診結果を医師と見てみたら、意外な事実が……
──今回の取材にあたって、中野さんには11年前に受けた人間ドックの結果を持ってきていただきました。
中野:恥ずかしながら、当時は受けっぱなしで。見方もよく分からないから、内容もさっとしか確認していなかったんです。とはいえ、ほとんど「A」だったから「やっぱり私、健康じゃん」と思っていました。
──臼井先生、ご覧になっていかがですか?

臼井先生:たしかにAばかりですね。中野さんの認識通り、基本的には問題ないと言ってよいでしょう。ただ、一つだけ気になるところが。子宮頸部の細胞診で、総合判定はA判定(異常なし)なのですが、「クラス2」という所見がついていますね。
中野:クラス2?
臼井先生:クラス2は、細胞にわずかな変化が見られた、という所見です。A判定はあくまで「今すぐ治療が必要な異常はない」という意味で、「今後も気にしなくていい」ものではないんですよ。それを示すように、「1年後に再検査してください」というコメントもつけられていますね。

中野:A判定だから問題ないと思って、そのコメントがあることにすら気づいていませんでした。ということは、あの時にちゃんとコメントまで読んで、再検査を受けていたら、早い段階で何かできていたのでしょうか……。
臼井先生:コメントまでしっかり目を通していただくのが理想ではあります。とはいえ、クラス2の軽度変化の場合、そのまま問題なく経過する方も多いんです。だから、「あの時再検査しなかったから」と、過度に自分を責める必要はありません。それよりも、今日こうして結果を振り返れたこと、そしてこれから健康診断を定期的に受けていくことの方が大切です。
中野:定期的に、ということは、やっぱり毎年受けた方がいいのでしょうか?1回受けて問題なければ、数年空けても大丈夫なのかな、とも思うのですが。
臼井先生:毎年受けることには、ちゃんと理由があるんです。健康診断の検査値って、「正常」か「異常」かの二択ではないんですよ。基準を決めてAからEで区切っているだけで、実際には「AよりのB」や「CよりのB」などグラデーションがあるんです。経過観察がついた項目でも、正常値に近い場合もあれば、今すぐにでも診察を受けた方がいい場合もあります。そしてこうした変化は、1回の結果だけでは見えてきません。毎年受け続けることで、「検査値が去年より少し上がっているな」「この検査値はずっと横ばいだな」と、体の変化が見えてくるんです。
人間ドックは高解像度の1枚、毎年の健康診断は連写
中野:毎年健康診断を受けないと会社から怒られていたのも、年に一度は自治体から健康診断のハガキが来るのも、ちゃんと意味があったのですね。ただ、毎年受けるとして、私の場合は検査値に変化って出るのかな……。お酒もタバコもやらないし、自覚症状もないし。
臼井先生:実は、健康診断で検査する項目のほとんどは、自覚症状が出ないものなんです。体がだるいとか、どこかが痛いとか、そういうサインが出る頃には、検査値上はかなり進行していることが多い。つまり、「不調がないから大丈夫」ではなくて、「不調がないからこそ、検査値で確認するしかない」んですよ。
たとえば、不規則な食事や運動不足が続くと、お酒を飲まなくても肝臓の検査値が少しずつ上がっていくことがあります。いわゆる脂肪肝ですが、「疑い」時点での自覚症状はほとんどありません。
中野:私、睡眠時間はバラバラですし、食事も栄養バランスが摂れているとは言い難くて、まさに当てはまっているかもしれません。自覚症状がないことに安心していたけど、そもそも自覚症状が出ていたらヤバいんですね。
ただ、そうなると気になるのが、自治体の健康診断って血液検査と尿検査くらいじゃないですか。それで何が分かるのかなって。かといって人間ドックを毎年受けるのは、費用も時間もかかるし正直ハードルが高くて。

臼井先生:いい質問ですね。人間ドックは検査項目が多い分、その瞬間のスナップショットとしては優秀です。でも、体の変化を追う「定点観測」としては、項目が少なくても毎年受け続ける健康診断が力を発揮するんです。
中野:そう言えばさきほども、健康診断の検査値にはグラデーションがあるとおっしゃっていましたよね。1回じゃそのグラデーションに気付けないから、毎年受けたほうがいいって。カメラにたとえると、人間ドックが高解像度の1枚で、毎年の健康診断は連写みたいな感じでしょうか?
臼井先生:そうですね。1枚の写真では気づけなくても、連続で撮っていれば動きが見えてくる。同じA判定でも、3年前と比べて基準ギリギリまで上がってきているなら、それは体からの小さなサインかもしれません。
大事なのは、項目が少なくてもいいから年に1回は受けて、データを残しておくこと。それが「自分の体を知る手段」になっていきます。
毎年の健康診断データが、将来の自分を守る財産になる
──冒頭で中野さんは、11年以上健康診断を受けていない、とおっしゃっていました。今日臼井先生と話してみて、「受けよう」という気持ちにはなりましたか?
中野:はい!ただ、臼井先生のお話から結果を見るポイントは分かったのですが、それをどう活かせばいいかは、まだよく分かっていません。健康診断でも、AからEの判定だけじゃなくて、将来の病気のリスクや、そうならないための予防方法まで教えてくれたら助かるんですけど……。
臼井先生:おっしゃるとおり、検査値の変化を見て「あなたはこういう傾向があるから、このように生活を変えてみましょう」と具体的なアドバイスを提供するのが理想です。ただ、現状の健康診断だと、5段階の判定と「要経過観察」などの簡単なコメントのみの場合がほとんど。そこから必要な対応まで読み解くのは、専門家でない限り難しいと思います。
──実は、健康診断にまつわるそんな「あったらいいな」を形にしたツールがあるんです。NECソリューションイノベータが開発した「NEC 健診結果予測シミュレーション」は、医療機関の協力のもと、過去に蓄積された膨大な健診データなどをAIで分析し導き出した予測モデルにより、健康診断の結果から、将来の検査値の推移や疾患発症リスクを予測してくれるシステムです。
|
NEC 健診結果予測シミュレーションとは……健康診断の結果をもとに、「今の生活習慣を続けていたら3年後の検査値はどうなるのか、また、同性・同年代と比較した4年以内の疾患発症リスクは何倍か」の予測値を見ることができるサービス。おすすめの生活改善(例:毎日飲んでいるお酒をやめる、お酒はやめないけど運動で改善してみるなど)を試した場合、検査値や疾患発症リスクがどう改善する可能性があるのかも確認できる。 ※予測は、利用者ごとの健康状態に対して医学的判断を加えて行うものではなく、入力した健診結果に似た傾向を持つ集団に基づいて算出しています。 |
■検査値リスク予測

■生活改善シミュレーション

■疾患発症リスク予測


中野:同年代と比較したリスクの度合いや、万が一その病気になった場合の医療費や入院日数の目安まで出るのはいいですね。病気になると、心身が辛いのはもちろん、お金の面でも不安が尽きないので……。お金のリスクまで見えると、「予防のために毎年健康診断を受けよう」って、もっと自分ごと化できそうです。
NEC 健診結果予測シミュレーションの開発者インタビューはこちら▼
健診結果を“生かす”時代へ。ビッグデータをAIで分析し導き出した予測モデルにより、未来の検査値と疾病リスクを可視化 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ
──今紹介したNEC 健診結果予測シミュレーションは、導入している健診施設や企業などで利用できます。一方で、まずは気軽に体験してみたいという方には、無料で誰でも使える「NEC 健診結果予測シミュレーション Lite」があります。
|
NEC 健診結果予測シミュレーション Lite とは……誰でも無料で体験できるサービスです。健康診断の結果を入力すると、将来の疾患発症リスクの傾向を確認することができます。こちらでは、これらのリスクを「脳」「心臓」「肝臓」「腎臓」「内分泌・代謝」「動脈」「骨・関節」「その他」の8つの分類に分けて表示します。健診結果をもとに、自分の生活習慣を見直すきっかけとして活用できます。 |
中野:無料で試せるなら、早速11年前の健康診断データを入れてみようかな(笑)。健診結果って、見方がよく分からないし、「何か悪い検査値が出ていたらどうしよう」ってビクビクしながら開くものでした。でもこのツールなら、ゲーム感覚で楽しく自分の体と向き合えそう。こうやってリスクを可視化できるツールがあれば、健診データが自分を守るための財産になりますね。

臼井先生:数字の羅列でしかなかった採血結果が、いろんな角度から可視化される。そうすることで「自分の体に何が起きているのか」「何を変えればいいのか」がぐっと見えやすくなりますよね。健康診断を受けるだけで終わりにせず、結果を行動に結びつけるきっかけとして、こうしたツールの活用は効果的だと思います。
──最後に、今日のお話全体を振り返って、改めて感じたことを聞かせてください。
中野:がんになった後、たくさんの方から心配のお手紙をいただいたんです。「周りに心配をかけないためにも、ちゃんと健康に向き合わなきゃ」と思って、術後の通院はサボらず続けてきましたし、生活習慣も自分なりに見直してきたつもりでした。
でも今日の臼井先生のお話で、通院と健康診断は目的が違うと知って、私の「向き合い方」にはまだ抜けている部分があったんだなと。しかも、ただ健康診断を受ければいいという話でもなくて、結果をどう読んで、どう行動に変えるか。そこまでやり切るのが大事なんだなって痛感しました。
臼井先生:良い気付きですね。ただ、だからといって気負いすぎる必要はありません。大事なのは、無理のない範囲で「定期的にデータを貯めていく」ことです。そのために、最低限の項目でいいから、年に1回は健康診断を受けてみる。まずは、そこから始めてみてください。

NEC 健診結果予測シミュレーションLite/NEC 健診結果予測シミュレーションに関する注意事項
*本システムは、倉敷中央病院付属予防医療プラザが保有する約10万人分の定期健康診断と倉敷中央病院が保有するカルテの過去10年分の匿名化したデータに、コックス比例ハザードモデルと呼ばれる統計解析手法を適用して構築された予測モデルで、将来起こりうる生活習慣病の発症リスクを算出しています。
*利用者の方の健康診断の検査値(年齢、体重、血圧、血糖値、コレステロール値等)をこの予測モデルに入力することで、利用者と同等の検査値等の方が4年以内に心臓病、脳梗塞などの生活習慣病を発症するリスクを算出します。発症リスクは、同性、同年代の中央値と比較した発症リスクの比で表示します。
取材・文:仲奈々
撮影:橋本美花
編集:早川大輝(プレスラボ)

