高齢化率が36%(2023年時点)と全国平均を大きく上回る熊本県荒尾市。今後はさらなる高齢化と人口減が予測されており、同市は大きな危機感を抱いているといいます。
そこで同市が導入したのが、NECグループのフォーネスライフが提供する疾病リスク予測サービス「フォーネスビジュアス」です。フォーネスビジュアスでは、少量の採血により血中のタンパク質を分析し、将来の疾病リスクや現在の体の状態を可視化。さらにその結果を踏まえて生活習慣で改善すべきポイントを保健師の資格を持つコンシェルジュが提案します。
なぜ荒尾市はフォーネスビジュアスを導入したのか。導入によりどのような効果があったのか。2024年3月にNECソリューションイノベータ主催で開催されたオンラインセミナーでの、荒尾市による講演をレポートします。
👉熊本県・荒尾市に見る「デジタルヘルスケアによる健康寿命延伸の取り組み」少量の採血で疾病リスクを予測し生活習慣の改善をサポート: イベント・セミナー | NECソリューションイノベータ
フォーネスビジュアスについて詳しく知りたい方はこちらもどうぞ
👉未来の健康が見える「フォーネスビジュアス検査」って? 自身の未来を変えた社長に聞いてみた - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ
👉もうすぐ70歳の父にフォーネスビジュアスを受けてもらった。気になる認知症などのリスクは? - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ
目次
高齢化率36%の荒尾市が抱える課題とは
熊本県荒尾市スマートシティ推進室の宮本賢一氏
熊本県北西部に位置する荒尾市。福岡と熊本の両都市圏の中間にあり、鉄道や道路ネットワークが整っていることから都市部への通勤・通学がしやすく、居住地として魅力的な環境が整っています。
一方で、同市の課題となっているのが急速な高齢化。高齢化率は36%と非常に高く、さらに2030年ごろには75歳以上の後期高齢者人口がピークに達する見込みとなっています。それに伴って人口も減少していき、2060年には現在の約5万人から約3万人にまで落ち込むと予測されているのです。
人口が減少し、高齢化が進むということは、労働を担う生産人口が減るということ。そうなれば保険料収入は減少し、国保財政健全化のために保険料率の上昇や法定外繰入などを検討することになるかもしれません。
こうした課題を解消するため、荒尾市が取り組むのが医療費適正化事業です。これは特定健診*1や特定保健指導*2の実施率を向上させるほか、メタボリックシンドロームの該当者および予備軍を減らしていくことで医療費の適正化を図るという、国と自治体による取り組みです。
ただ、医療費適正化事業を推進するにはいくつかの課題があったと宮本氏は話します。
「課題の1つは医療費適正化の事業成果が上がっているかどうかをデータで定量的に測定できていないこと。特定健診を受けていただき、スクリーニングした上で特定保健指導や重症化予防のための保健指導、介入を行うのですが、その成果がデータで押さえられていないのです。
もう1つの課題は、保健師が国保事業に業務のボリュームを取られてしまい、国保以外も含めた全市民向けのアプローチがなかなかできていないことです」(宮本氏)
また、特定保健指導についても課題があるといいます。というのも、保健指導を始めようにもそもそも指導を断る人も一定数いますし、せっかくスタートしても取り組みが長続きせず達成できない人も少なくないのです。
少量の採血で将来の疾病リスクを予測する「フォーネスビジュアス」を導入
こうした課題を解消するにはどうすればいいのか。宮本氏が挙げるポイントは次の5点です。
まず、住民の健康に関する意識を高めること。そして危機感を共有することで生活習慣改善の意識も向上させること。こうした生活習慣と改善の取り組みをデジタルで蓄積すること。蓄積した生活習慣データと健診結果やレセプト*3データをもとに成果を定量化すること。データを分析してより効果的な保健指導プログラムを実施し、保健師の負担を軽減することです。
これらを踏まえて、荒尾市は「フォーネスビジュアス」とNECソリューションイノベータが提供する「デジタル健康手帳」を導入しました。
フォーネスビジュアスは、少量の採血で将来の病気の発症リスクを予測できるサービスです。20年・5年以内(※5年以内は65歳以上が対象)の認知症発症リスク、4年以内の心筋梗塞・脳卒中発症リスク、5年以内の肺がん発症リスク、4年以内の慢性腎不全発症リスクを予測できるほか、アルコールの影響、内臓脂肪や肝臓脂肪といった現在の体の状態も可視化することが可能です。
フォーネスビジュアスの導入により、「“自分自身の健康状態に対する危機感の欠如”という課題を解決できるのでは」と宮本氏は期待を寄せます。
「フォーネスビジュアスは生活習慣の取り組みが継続しない方や、そもそも保健指導を受けない方、あるいは保健師がお声がけしてもなかなか治療につながらない方々をターゲットとしています。フォーネスビジュアスを受けると病気の発症リスクが◯%とはっきり数値で出るので、それをきっかけに受診につながったり、生活習慣の改善に本気で取り組めたりするのです」(宮本氏)
荒尾市におけるフォーネスビジュアスの取り組みは2024年1月にスタートし、すでに200名の市民が検査を終えています。同市では今後、この200名に関する追跡調査を行い、医療給付費がどれくらい減少するのかを分析するとのことです。
コンシェルジュによる健康相談で生活習慣改善サイクルを実現
そのほか、宮本氏が見据えるのが生活習慣改善サイクルの実現です。具体的にはフォーネスビジュアスを受け、その結果をもとに保健師の資格を持つコンシェルジュに相談。生活習慣改善メニューの提案を受け、実践し、健康改善への意識を高めるという流れです。ここでポイントになるのがコンシェルジュによる健康相談です。
荒尾市ではさらに、特定健診を受診した先着3,000人限定で「健診結果から数年後のHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)*4やγ-GTP(ガンマジーティーピー)*5などの数値変化をAIが予測したシミュレーションシート」も無料で提供しています。
実際にフォーネスビジュアスを受けた市民からは、「少量の採血で認知症や心筋梗塞・脳卒中のリスクが分かるのがすばらしい」「事前に(なりやすい)病気が分かることで予防につなげられる。もっとこの取り組みを広げてほしい」といった声があがるなど、大きな反響が得られているようです。
デジタル健康手帳とフォーネスビジュアスでより効果的なPDCAを実現
続いて「デジタル健康手帳」ですが、これは日々の生活習慣や通院履歴、服薬情報などを一元管理できるアプリです。マイナポータルとも連携しており、住民が自分自身で入力することなくレセプトや服薬情報が蓄積されていきます。
また、本人の了承があればデジタル健康手帳の情報を家族にも共有することが可能です。これにより、離れたところに住んでいる家族の見守りもできるのです。
デジタル健康手帳は防災にも力を発揮すると宮本氏は言います。
「災害で避難が長期化する中、お薬手帳がなくて薬剤師さんがどう処方すればいいのか判断に困るケースもあります。デジタル健康手帳を防災避難所システムと連携することで、その避難所にどんな薬をどれくらいのボリュームで持っていけばいいのか分かるようになると期待しています」(宮本氏)
また、デジタル健康手帳はコンシェルジュによる健康相談にも役立てられます。例えばデジタル健康手帳に蓄積された健診結果データをもとにコンシェルジュから「HbA1cが高いので食事を中心に生活習慣の改善に取り組みましょう。具体的には、●●のような食材を取り入れるのがおすすめです」といった、より具体的なアドバイスが受けられます。加えて、体重や血圧などのライフログを記録してもらえば、食事や運動といった生活習慣改善の取り組みの成果も目に見えるようになります。このように、介入による取り組み状況を踏まえてPDCAサイクルを回すことで、住民の健康状態を改善し、医療費適正化の実現が期待できます。
今後、荒尾市ではフォーネスビジュアスのデータやデジタル健康手帳のデータに加えて、レセプトデータや健診データなど、自治体で使用しているさまざまなシステムを横串で連携し、より効果的な保健指導や介入につなげていく取り組みを目指しているといいます。
「フォーネスビジュアス」をもっと詳しく知りたい方へ
荒尾市のように、高齢化による保険料収入の減少や医療費の増大に課題を持っている自治体にも導入・活用されているフォーネスビジュアス。今回は自治体への導入事例を紹介しましたが、一般の方でも検査を受けることができます。
一般の方のフォーネスビジュアス体験談はこちらから
👉大好きな焼酎を楽しみながらフォーネスビジュアスで少しずつ生活習慣改善へ - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ
👉40歳目前で健康が気になるので、フォーネスビジュアスで「将来病気になるリスク」を可視化してみた - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ
👉もうすぐ70歳の父にフォーネスビジュアスを受けてもらった。気になる認知症などのリスクは? - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ
血中のタンパク質構成を解析することで将来の疾病リスクを予測して、あなたも自身のライフスタイルを見直してみませんか。
「フォーネスビジュアス」についてもっと詳しく
購入前のお問い合わせ・ご注文
- 0120-009-439
- 受付時間 平日 9:30 ~ 17:30
本検査は、健康保険の対象ではありません。医療機関の自由診療として実施されます
本検査は、特定の年齢層の方のデータを対象として行われた分析結果に基づき判定します
医師の判断によることなく、本検査の結果を、疾病の判断・治療・予防等に用いることはできません
本検査は、その結果の正確性や、他の検査方法と同等の結果の提供を保証するものではありません
将来の疾病予測に関する検査結果は、生涯にわたってのリスクを予測するものではありません
コンシェルジュによる健康相談およびアプリは、フォーネスライフからご利用者に直接ご提供するサービスです。これらは、ご利用者の生活習慣の改善、健康意識の向上をご支援するものであり、検査結果の改善や、疾病の診断、治療、予防等を目的とするものではありません
構成:山田井ユウキ
編集:はてな編集部
*1:生活習慣病の予防のために、対象者(40歳~74歳)に対して行うメタボリックシンドロームに着目した健診。(特定健診・特定保健指導について より)
*2:生活習慣病の発症リスクが高く、生活習慣の改善による生活習慣病の予防効果が多く 期待できる対象者に対して、専門スタッフ(保健師、管理栄養士など)が生活習慣を見直すサポートをすること。(特定健診・特定保健指導について より)
*3:医療機関が健康保険組合に医療費を請求するために、行った処置や使用した薬剤等を記載した明細書のこと。(SCSK健康保険組合 より)
*4:ヘモグロビンにグルコースが非酵素的に結合した糖化蛋白質である糖化ヘモグロビンの1つ。糖尿病の過去1~2カ月のコントロール状態の評価を行う上での重要な指標。(ヘモグロビンA1c / HbA1c | e-ヘルスネット(厚生労働省)より)
*5:たんぱく質を分解する酵素の一種。飲酒量が多いときや胆道系疾患などで値が上昇し、肝機能の指標とされる。(γ-GTP | e-ヘルスネット(厚生労働省)より)