狭心症は、心筋梗塞につながる可能性を持つ心臓の疾患であることは分かるものの、それぞれがどのような病気かについてはよく分からないと感じていませんか?
本記事では、不整脈と狭心症について、症状や種類、治療方法を解説します。 また、不整脈と狭心症の関係性についても解説していますので、双方の病気を知って早期発見・改善につなげましょう。
こんな人におすすめ
- 自分や身近な人に気になる症状があるので、不整脈と狭心症について詳しく調べたい
- 健康診断などで指摘され、不整脈や狭心症のリスクが心配な人
- 不整脈や狭心症の原因や症状を知って対策をしたい人
不整脈とは
不整脈とは、通常なら一定の間隔で刻まれているはずの拍動のリズムや速さが乱れる病気のことです。
心臓は心筋と呼ばれる筋肉でできており、その筋肉に電気刺激が加わると収縮します。この電気刺激は、右心房にある「洞結節(どうけっせつ)」と呼ばれる細胞の集まりから発生しており、一定のリズムで拍動します。そして心筋内には電気回路が張り巡らされており、拍動が起こるたびに血液を押し出すポンプとして動くのが心臓の主な役割です*1。
しかし、洞結節から送られる電気刺激に異常が発生したり、通常とは異なる部分から電気刺激が起こったりすると、拍動が乱れ不整脈の状態に陥ります。不整脈の種類については、このあと詳しく解説します。
なお、不整脈の検査方法としては、問診や心電図、運動負荷心電図、ホルター心電図、エックス線、心臓超音波(エコー)が一般的です*2。
症状
不整脈の症状は不整脈の種類によって大きく異なります。大まかには、以下のような症状が見られます*3。
- 胸部の違和感
- 胸が詰まるような感覚
- 脈が飛ぶ
- ドキドキする胸の苦しさ
- 胸の痛み
- めまい
- 倦怠感
- 動悸
- 息切れ
重度になると、心不全や失神発作などが引き起こされることもあります。
不整脈の種類
不整脈の主な種類としては、以下3つが挙げられます*4。
期外収縮
期外収縮は、規則的な心拍の間に時々追加で脈が入る不整脈です。
通常の電気回路とは異なる部分からの電気刺激によって、心臓の「心室筋」や「心房筋」が興奮することで起こります。いずれも心臓を作っている筋肉の一種で、ともに血液の受け入れや輸送を行うポンプ機能を担っています。
特に、心室筋の方がポンプ機能のメインであるため、分厚い壁を持った構造をしているのが特徴です。
期外収縮は不整脈の中で最も多く、若い世代でも珍しくなく、不規則な生活習慣や睡眠不足、ストレス、疲労、飲酒などに関連するものが多く見られます。多くは経過観察で済みますが、中には心臓に問題があって生じていることもあり注意が必要です。
頻脈性不整脈
頻脈は、洞結節が異常に電気刺激を発生させたり、通常とは別の電気回路で電気が回ったりすることで引き起こされます。そして、その頻脈が原因で起こる不整脈が頻脈性不整脈です*5。
運動や体の痛み、飲酒、カフェインの摂取、精神的な不安など日常生活の中で発生する「洞性頻脈」の場合もあれば、脱水や発熱、感染症、貧血、低酸素、心不全、内分泌異常など病的な原因で引き起こされる「発作性上室頻拍」などの場合もあります。
頻脈には他に、「発作性心房細動」「心房粗動」「心室頻拍症」などの種類があります。症状としては、動悸やめまい、失神などが一般的です。命に関わることも珍しくありません。
徐脈性不整脈
徐脈性不整脈は、心臓内の電気が正常に発生せず、電気回路がうまく回らなくなることで脈が遅くなってしまう不整脈です。通常1分あたりの脈拍が60〜100回のところ、1分あたり50回以下になると、徐脈性不整脈と判断されます*6。
徐脈性不整脈の主な種類には、「洞不全症候群」「房室ブロック」などがあります。徐脈性不整脈は、自然な老化現象によって引き起こされるほか、他の疾患や脈を遅くする薬の服薬などに起因するケースもあります。
重度の徐脈になると、ペースメーカー植え込みが必要になることも珍しくありません。
治療方法
不整脈の主な治療方法には、薬物療法、心臓ペースメーカー、植え込み型除細動器(ICD)が挙げられます*7。
薬物療法では、抗不整脈薬やベータ遮断薬、心臓収縮を増強させる薬(強心薬)が用いられることが一般的です。
脈拍が遅い患者には、ペースメーカーを心臓に植え込み、人工的な電気刺激を発生させて脈拍を通常に戻す方法が用いられます。
ICDは、超小型の機械を心臓に植込み、心臓に強い電気ショックを与え、通常の脈拍に戻す方法です。主に、命に関わる重症な頻脈性不整脈の治療に利用され、危険な拍動異常がある際に自動で作動します*8。
なお、不整脈が睡眠不足やカフェイン摂取など日常生活に起因するときは、症状を誘引しないよう、日常生活を見直す指導が行われることもあります。
狭心症とは
狭心症とは、冠状動脈と呼ばれる血管が狭くなり、心臓に供給される血液量が減ることで心筋が酸欠になる病気のことです*9。
狭心症は大きく分けて「労作性狭心症」と「不安定狭心症」、「冠攣縮性狭心症」があります。労作狭心症は運動時や精神的な興奮などにより心筋活動量が増えることで発作が起こるもので、冠攣縮性狭心症は安静にしている時に起きるものです。
また、心筋梗塞に移行する一歩手前の状態を不安定狭心症と呼び、緊急性の極めて高い病態です。
狭心症の主な原因には、糖尿病や高脂血症、高血圧、喫煙などが挙げられます。検査方法としては、心電図、胸部レントゲン、心臓超音波、冠動脈CT、冠動脈造影が一般的です。
症状
胸が圧迫されるような重苦しい痛みが、狭心症の主な症状です。症状は、1〜10分以内に落ち着くことが多いとされています。
胸の痛み以外には、歯や喉、みぞおち、背中、左肩、腕などが痛む「放散痛」と呼ばれる症状が出ることがあります。
治療方法
狭心症の治療では、薬物療法と外科的療法の2つが主に用いられます。
薬物療法では、発作薬として血管を拡張させる硝酸薬、予防薬としてカルシウム拮抗薬やベータ遮断薬が使われることが一般的です。
外科的療法は、狭心症が悪化した場合に検討する治療方法です。主な方法としては、冠状動脈に管を挿入し、管の先についたバルーンを病変部で膨らませ、狭くなっている部分(狭窄部)を広げる経皮的動脈形成術(PTCA)や、狭窄部から動脈へ血液の通り道を作る冠動脈バイパス術が行われます。
また、狭心症を引き起こしている動脈硬化の治療や、原因となる生活習慣を改善することも有効です。
不整脈と狭心症の関係
不整脈の中でも特によく見られる期外収縮は、狭心症が原因となっているケースもあります。
狭心症の発生で心臓の血流が悪くなり、酸欠状態になれば、心臓に血液を送り届ける冠動脈の形や機能にも異常が生じるため、不整脈につながります。
不整脈・狭心症は早期発見が大切
不整脈は、経過観察で済む期外収縮であることも多い一方で、動悸やめまい、失神といった症状が出る可能性もあります。
狭心症がある場合には、それを原因として危険な不整脈になる可能性も考えられます。
もし、動悸、胸の痛みといった強い症状がある場合は、心疾患の可能性が考えられるため、なるべく早く検査・受診することをおすすめします。
また、不整脈・狭心症はともに、飲酒や喫煙などの日常習慣によって症状が誘発されることもあるため、生活習慣の見直しも検討しましょう。
編集:はてな編集部
編集協力:株式会社イングクラウド
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