遺伝性の心臓病の種類と発症リスク検査方法について徹底解説

遺伝性の心臓病の種類と発症リスク検査方法について徹底解説

心臓病には、遺伝するものとそうでないものがあります。

家族に心臓病を患っている人がいたり、心臓疾患が原因で突然死した人が身近にいたりした場合には、その疾患が遺伝するものなのかどうかを調べることで、適切なリスク対策が取れるかもしれません。

本記事では、遺伝性のある心臓病の主な種類や、それらのリスクを調べられる遺伝子検査について詳しく解説します。

結論からいえば、遺伝性のある心臓病はさまざまな種類が存在しています。突然死の原因となる危険な疾患もあるため、心配な症状がある場合は医師への相談をおすすめします。

(監修者)臼井亮介 先生

株式会社レノプロテクト 代表取締役

医師、医学博士。日本内科学会や日本腎臓学会の専門医・指導医などの資格を持つ。基幹病院で腎臓病診療に取り組む過程で、「腎臓外来にたどり着かないようにする・たどり着くまでの時間を延ばすためのサポート」への思いが募り、医師20年目の2022年に株式会社レノプロテクトを設立、代表取締役に就任する。慢性腎臓病は健康寿命を縮める大血管症(心筋梗塞や脳梗塞)の重要なリスクファクターであり、大血管症予防の観点からも腎臓について知ってほしいと講演活動等を行っている。日本内科学会・日本腎臓学会・日本透析医学会・日本糖尿病学会に所属。

こんな人におすすめ

  • 家族に心臓病を患っている/患っていた人がいて、自身や子に遺伝するかもしれないと不安な人
  • どんな心臓病が遺伝するのか知りたい人
  • 心臓病が遺伝しているかを調べられる遺伝子検査について知りたい人

遺伝性のある心臓病

遺伝性の心臓病の中でも代表的なものに、遺伝性不整脈疾患と肥大型心筋症があります。それぞれに特有の症状とあわせて詳しく解説します。

遺伝性不整脈疾患

遺伝性不整脈疾患は、心臓を動かすために発生している電気刺激に関係している遺伝子に異常が起こることで引き起こされる病気のこと。突然死の原因としてアジアに多い病気で、子どもから中高年まで幅広い世代での症例が見られます。多くの場合、両親のどちらかから受け継がれますが、まれに両親とは関係なく新たに発症するケースもあります。

遺伝性不整脈疾患には、主に以下の種類があります。

  • 先天性QT延長症候群(LQTS)
  • カテコラミン誘発性心室頻拍(CPVT)
  • ブルガダ症候群
  • 早期再分極症候群(ERS)
  • QT短縮症候群(SQTS)

先天性QT延長症候群(LQTS)

失神や突然死の原因になる遺伝子性症候群で、主な症状は多形性心室頻拍(心拍が異常に多くなる心室頻拍の一種で、危険な不整脈*1)による動悸、ふらつき、失神です。このような症状を経て心室細動(心室が細かく震え、心室全体としての収縮ができなくなり、血液を送り出すことができなくなっている状態。数分以内に治療しないと死亡する危険性の高い不整脈のこと)に移行した場合には突然死を来す危険もあります。運動中やストレスによって起こることがほとんどですが、まれに夜間や睡眠中などの安静時に起こることもあります。2,000人に1人の割合で起こり、女性にやや多い傾向があります*2

カテコラミン誘発性心室頻拍(CPVT)

突然死の危険性が高い遺伝子性症候群で、LQTSと同様に運動やストレスによって誘発されます。主な症状は心室性不整脈(心臓の4つの部屋を順番に動かしている電気系統に異常が起こり、異常な電気刺激が心室から発生し、そのために脈が乱れること)による動悸、ふらつき、失神などです。

ブルガダ症候群

若年〜中年の男性が夜間に突然死する、いわゆる「ポックリ病」に関与していると考えられている遺伝性症候群の一つです。主に睡眠中や安静時に動悸や失神といった症状が出ることもありますが、多くが無症状です。ただし、心室細動が起こると突然死する場合もあります。年間10万人に14.2人の割合で発症し、2割が遺伝子異常であるものの、7割以上が原因不明とされています*3 *4 *5

早期再分極症候群(ERS)

ブルガダ症候群の類似疾患で、基礎心疾患を伴わない特発性心室細動の一種と考えられている疾患です。遺伝性不整脈疾患の一つではあるものの明確な原因や原因遺伝子は不明で、心室細動や多形性心室頻脈(心室細動や突然死につながる恐れがある不整脈の一種)による突然死が主な症状です*6

QT短縮症候群(SQTS)

突然死の原因となる致死性不整脈を特徴とし、心房細動(心房が十分な収縮をせず、けいれんするように細かく震える(異常な興奮が持続する)ことで脈が不規則になる)を合併することも多い疾患です。主な症状は、失神、心肺停止、突然死で、心房細動を合併している場合は動悸や胸部の不快感といった症状が出ることもあります。生後1年位内に症状が出るケースもあり、乳幼児突然死症候群の原因の一つともされています *7

遺伝性の心臓病の種類と発症リスク検査方法について徹底解説

肥大型心筋症

肥大型心筋症は、500人に1人の割合で発症する疾患で、最も頻度の高い遺伝性心疾患の一つです。無症状かわずかな症状を示すだけのことが多いですが、重症化して心臓の機能が大幅に低下し、心移植が必要になるケースもあります*8。症状がある場合、主に不整脈や、それに伴う動悸やめまい、運動時の呼吸困難・胸の圧迫感などがあります。

心筋の異常な肥大によって心室の壁が厚くなり、心臓の部屋が狭くなることで血流が阻害される状態になる場合があります(閉塞性肥大型心筋症)。さらに、傷跡のように残る瘢痕化(はんこんか)やコラーゲンが過剰に蓄積される線維化が心筋で引き起こされることもあり、これらが発生した場合は不整脈や心停止につながることもあります。

心臓病の発症リスクが分かる遺伝子検査

遺伝子検査では、遺伝性不整脈疾患や肥大型心筋症などといった心臓病について、そのリスクが高い遺伝子を持っているかどうかを検査できます。通常は血液検査で行われます。

遺伝子検査によってリスクを調べることができますが、結果を受け止める上では、以下のような遺伝情報の特性をあらかじめ理解しておきましょう。

  • 検査結果は生涯変わらない
  • 疾病の原因となる変異遺伝を持っていても必ずしも発症するわけではない
  • 発症時期や症状、重症度には個人差がある など

保険適用される場合もありますが、日本で保険適用が可能な遺伝子検査は19種類(2024年現在)と多くはありません。保険が適用されない場合は、自費診療や研究として検査を行います *9 *10

遺伝性のある心臓病について

ここまでで紹介してきたように、心臓病の中には遺伝性のある疾患が存在しています。遺伝性不整脈にはさまざまな種類があり、突然死の原因の1割以上を占めるとも言われています。すでに失神や動悸、胸の圧迫感といった症状がある場合はすぐに医師に相談し、詳しい検査を受けることをおすすめします。また、家族が突然死した、家族に遺伝性の心疾患がある場合にも医師に相談してみるとよいでしょう。

編集:はてな編集部
編集協力:株式会社イングクラウド


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