20代でも心不全リスクはある。急性心不全の要因となる病気と症状を解説

20代でも心不全リスクはある。急性心不全の要因となる病気と症状を解説

心不全は高齢者に多いと思われがちですが、20代でなる可能性もゼロではありません。その要因として、生活習慣の乱れが影響しているケースが多くあります。

本記事では、20代で心不全になるリスクや心不全の概要のほか、特に危険とされる急性心不全について、20代で発症する場合の疾患例を解説します。

心不全について理解を深め、生活習慣を改めることで、対策を心がけましょう。

(監修者)臼井亮介 先生

株式会社レノプロテクト 代表取締役

医師、医学博士。日本内科学会や日本腎臓学会の専門医・指導医などの資格を持つ。基幹病院で腎臓病診療に取り組む過程で、「腎臓外来にたどり着かないようにする・たどり着くまでの時間を延ばすためのサポート」への思いが募り、医師20年目の2022年に株式会社レノプロテクトを設立、代表取締役に就任する。慢性腎臓病は健康寿命を縮める大血管症(心筋梗塞や脳梗塞)の重要なリスクファクターであり、大血管症予防の観点からも腎臓について知ってほしいと講演活動等を行っている。日本内科学会・日本腎臓学会・日本透析医学会・日本糖尿病学会に所属。

こんな人におすすめ

  • 健康診断で気になる指摘があり、心不全について詳しく知りたい人
  • 身近に急性心不全になった人がいて、自分にもその可能性があるのか知りたい人

20代で心不全になるリスク

心不全は高齢者に多く、特に基礎疾患を持つ70〜80代で最も多く見られるため、20代~40代の若い世代で発症することは一般的に少ないと言えます*1

しかし、生活習慣が乱れていると、20代~40代でも、将来、心不全の要因になる心筋梗塞のリスクが高まります。

乱れた生活習慣とは、喫煙や脂肪分の多い食事の頻繁な摂取、運動不足、ストレスなど。特に生活習慣病を抱えた人が喫煙をしている場合、そのリスクはさらに増大し、糖尿病や高血圧と診断されていない若い世代であっても、心筋梗塞を発症するリスクが高くなります*2

20代でも心不全リスクはある。急性心不全の要因となる病気と症状を解説

心不全とは

心不全とは1つの病気ではなく、心臓に何らかの異常が生じ、血液を送るポンプ機能が通常どおりに働かなくなった状態を指します。心臓の病気や高血圧などが原因で異常が起こります。

心臓の動きが悪くなった初期段階では自覚症状がほとんどありませんが、進行するとさまざまな症状が現れてきます。症状は主に以下の2つに分類されます。

  • ポンプ機能の低下によるもの
  • 心臓に血液が戻る機能が弱まることで血流が滞る(うっ滞)ことによるもの

ポンプ機能の低下による主な症状には、動悸やだるさ、疲労感、四肢の冷感やチアノーゼ(皮膚や粘膜が暗紫色になる状態)、夜間頻尿、心臓の肥大化などがあります。一方、血流のうっ滞による症状としては、息切れやむくみ、呼吸困難、食欲不振、食後のお腹の張りや鈍い痛みなどが挙げられます。

心不全は大きく分けて急性心不全と慢性心不全の2つに分類され、急性心不全は時間や日単位で急激に心臓の機能が低下し、激しい呼吸困難が現れ、時には突然死に至ることも。急性心不全の多くは、慢性心不全が急激に悪化することで起こります。一方、慢性心不全は時間をかけて徐々に心臓の機能が低下し、心不全状態が常に続いているものの、状態は安定していることが特徴です。

急性心不全を引き起こす可能性がある病気

ここからは20代でも急性心不全を引き起こす可能性がある病気について紹介します。ただし、先ほど説明したように、こうした疾病以外でも生活習慣が乱れていると、20代~40代でも心不全の要因になる心筋梗塞のリスクが高まるため、注意が必要です。

虚血性心疾患

虚血性心疾患とは、動脈硬化や血栓などによって冠動脈が閉塞するなどし、心筋に血液がいかなくなることで起こる病気のことです。主なものに狭心症や心筋梗塞があります*3

高血圧症(高血圧症性心不全)

高血圧症は心臓に負担をかけて心臓の機能を悪くする可能性があります。高血圧症は診察室血圧で最高血圧が140mmHg以上、もしくは最低血圧が90mmHg以上です。また、家庭血圧では最高血圧が135mmHg以上、もしくは最低血圧が85mmHg以上が高血圧症とされます*4


上記は生活習慣が大きく関わる疾患ですが、生活習慣が原因とならない疾患としては以下のようなものがあります。

先天性心疾患

先天性心疾患とは、心臓や血管の構造の一部が生まれつき通常とは異なっている状態のこと。約100人に1人の割合で、先天性心疾患を持つ子どもが生まれます。

遺伝性不整脈疾患

遺伝性不整脈疾患は、遺伝的な要因によって致死性不整脈を発症し、心臓突然死を引き起こす可能性のある疾患です。両親からの遺伝的素因に関係なく、新たな変異として発症することもあります*5

遺伝性不整脈疾患それぞれの詳細と、そのほかの遺伝する心臓病についての詳細は以下の記事で説明しています。
👉遺伝性の心臓病の種類と発症リスク検査方法について徹底解説 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ

心筋炎・心膜炎

心筋炎は、ウイルスが心筋に感染して炎症を起こし、心筋の収縮不全や不整脈を発生させる病気です。主な原因はウイルスのほか、細菌や寄生虫による感染、薬物や毒物による中毒、膠原病(こうげんびょう)など全身疾患の続発が挙げられます。

基礎心疾患がない人が風邪を引き、風邪の症状が落ち着いた後に動悸や呼吸困難、胸痛、疲労感などの症状が現れた場合、心筋炎が疑われます。ウイルス性心筋炎の多くは数週間で治癒しますが、回復に1〜2カ月かかる場合や、慢性の心不全に進行する場合もあります。

心膜炎は、心臓を覆っている固い膜(心膜)に炎症が起こる病気で、心筋炎と同様に主な原因はウイルス感染です。持続性の胸痛や深呼吸時の胸痛などが見られ、ウイルス性心膜炎であれば、風邪と同じように数日程度で治癒します。

周産期心筋症

周産期心筋症とは、妊娠に伴って心臓の機能が低下し、心不全を引き起こす病気です。約1.5万件の出産に1人の割合で発症し、高齢、多胎妊娠、慢性高血圧症、妊娠高血圧症候群、切迫早産、がん治療後の女性が特に発症しやすいとされています。

主な症状には、軽い労働による息切れ、咳、全身のむくみ、疲労感や倦怠感、体重増加などがあり、特に安静時でも息切れが続いたり、1週間に0.5〜1kg以上の体重増加とともにむくみが強くなったりしている場合には、心不全状態に陥っている可能性があります。

心不全の対策には生活習慣の改善が有効

心不全は高齢者に多い疾患ですが、生活習慣や、生活習慣病やメタボリック症候群の管理に問題があると20代からでも将来的な心不全のリスクを上げてしまう可能性があります。心不全の中でも急激に心機能が低下する急性心不全になると、呼吸困難や突然死を招くことがあるため、注意が必要です。

編集:はてな編集部
編集協力:株式会社イングクラウド


フォーネスライフが提供する疾病リスク予測サービス「フォーネスビジュアス」は、4年以内の心筋梗塞・脳卒中をはじめとした重大な疾病の将来の発症リスクを予測することができます。

加えて、保健師の資格を持つコンシェルジュから予測の結果を踏まえた生活習慣改善のアドバイスを受けることも可能です。その提案を実践し生活習慣が改善されれば、心筋梗塞・脳卒中などの各種疾病リスクへの対策にもつながるでしょう。

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*1:参考:厚生労働省「心不全の総患者数の推移及び年齢階級別総患者数[PDF]」

*2:参考:SBS静岡健康増進センター「座談会|教えて健康!

*3:参考:国立循環器病研究センター「虚血性心疾患

*4:参考:国立循環器病研究センター「高血圧

*5:参考:国立循環器病研究センター「対象疾患・治療法 - 遺伝性不整脈疾患の遺伝子診断