高血圧による合併症リスク、心筋梗塞やその他の病気について解説

高血圧による合併症リスク、心筋梗塞やその他の病気について解説

高血圧とは慢性的に血圧が高い状態をいい、放置しておくと心筋梗塞をはじめとするさまざまな合併症のリスクとなります。

本記事では高血圧とは何か、診断される基準、高血圧症、高血圧症から起きる合併症について解説します。

(監修者)臼井亮介 先生

株式会社レノプロテクト 代表取締役

医師、医学博士。日本内科学会や日本腎臓学会の専門医・指導医などの資格を持つ。基幹病院で腎臓病診療に取り組む過程で、「腎臓外来にたどり着かないようにする・たどり着くまでの時間を延ばすためのサポート」への思いが募り、医師20年目の2022年に株式会社レノプロテクトを設立、代表取締役に就任する。慢性腎臓病は健康寿命を縮める大血管症(心筋梗塞や脳梗塞)の重要なリスクファクターであり、大血管症予防の観点からも腎臓について知ってほしいと講演活動等を行っている。日本内科学会・日本腎臓学会・日本透析医学会・日本糖尿病学会に所属。

こんな人におすすめ

  • 高血圧とはどのような状態なのか、高血圧症とはどんな症状なのかを知りたい人
  • 高血圧の傾向があり、心筋梗塞などの合併症リスクについて気になっている人

高血圧とは

高血圧による合併症リスク、心筋梗塞やその他の病気について解説

高血圧とは、安静状態での血圧が正常値よりも高い状態を指します。

血圧とは、心臓から送り出された血液が、動脈の内壁を押す力のことです*1。血圧の高さは、心臓が血液を押し出す力と血管の拡張によって決まりますが、以下の要因なども影響してきます。

  • 1回の拍動で送り出される血液量
  • 血管の弾力性
  • 末梢血管の抵抗力
  • 血液粘度
  • 腎臓や神経の働き
  • 食塩の摂取量

高血圧になると血管に負担がかかって動脈硬化を促進し、さまざまな病気のもととなることが分かっています。

高血圧と診断される基準

日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン」によると、高血圧と診断される基準は、診察室血圧が140/90mmHg以上、家庭血圧135/85mmHg以上です*2

<成人における血圧値の分類>

                         
分類診察室血圧(mmHg) 家庭血圧(mmHg)
収縮期血圧 拡張期血圧 収縮期血圧 拡張期血圧
正常血圧 <120 かつ <80 <115かつ <75
正常高値血圧※ 120-129 かつ <80115-124 かつ <75
高値血圧 130-139 かつ/または 80-89125-134 かつ/または75-84
I度高血圧※ 140-159 かつ/または 90-99135-144 かつ/または 85-89
II度高血圧※ 160-179 かつ/または 100-109145-159 かつ/または 90-99
Ⅲ度高血圧※ ≧180 かつ/または ≧110≧160 かつ/または ≧100
(孤立性)収縮期高血圧※ ≧140 かつ <90≧135 かつ <85

  • ※正常高値血圧:高血圧ではないものの、正常より血圧が高い状態
  • ※I度高血圧:診察室血圧測定が140-159/90-99mmHgの高血圧
  • ※II度高血圧:診察室血圧測定が160-179/100-109mmHgの高血圧
  • ※Ⅲ度高血圧:診察室血圧測定が≧180/≧110mmHgの高血圧
  • ※(孤立性)収縮期高血圧:収縮期血圧(最高血圧)だけが高く、拡張期血圧(最低血圧)は高くない状態

診察室血圧とは病院の診察室で測定した血圧をいい、家庭血圧とは、家庭用の血圧測定機などを用いて家庭で測定する血圧値のことです。

近年は家庭での血圧測定ができる機器も多く普及してきており、家庭血圧の診断基準も確立されています。

家庭血圧は自宅でリラックスした状態で測定していると推測されるため、診察室血圧と家庭血圧に差がある場合は、家庭血圧を優先します。

高血圧症とは

高血圧症とは、一時的ではなく慢性的に血圧が高い状態を指します。たまたま測った血圧が高ければ「高血圧」の状態とはいえますが、「高血圧症」とはいい切れません。

高血圧症には原因が特定できない「本態性高血圧症」と、特定の原因がある「二次性高血圧症」があります。

高血圧症の約90%が本態性高血圧症にあたり、以下のような生活習慣が深く関わっていると考えられています。

  • 過剰な塩分摂取
  • 肥満
  • 過剰飲酒
  • ストレス
  • 自律神経の調節異常
  • 運動不足
  • 喫煙

一方で、二次性高血圧症の原因疾患には、腎動脈狭窄、内分泌疾患の原発性アルドステロン症や褐色細胞腫などがあります。これら病気の治療によって高血圧症が治る期待が持てますから、高血圧症の原因を十分に調べておくことも大切です。*3

高血圧症から起きる合併症

高血圧による合併症リスク、心筋梗塞やその他の病気について解説

高血圧症が長引くと、動脈硬化を促進し、心筋梗塞をはじめとする重大な病気につながりやすくなります。

動脈硬化とは、血管の柔軟性が失われて硬くもろくなったり、血管内が狭くなったりする状態のことです。高血圧の状態が続くと、もろくなった血管の内皮細胞が傷つき、そこからコレステロールが入り込んで、アテロームと呼ばれる柔らかい塊を作ります。それが血管内でプラークと呼ばれるこぶのような膨らみとなり、血管の内部が狭くなってしまいます。やがてプラークが破裂して血栓ができると、血管が詰まってしまいます。

動脈硬化の起きる様子

動脈硬化は心筋梗塞の他にもさまざまな合併症を起こすリスクがあります。代表的な合併症である心筋梗塞と脳卒中、慢性腎臓病について見ていきましょう。
 

心筋梗塞

心筋梗塞とは、心臓に酸素と栄養素を運ぶ冠動脈が詰まって血液が流れなくなり、冠動脈の先にある心臓を動かす筋肉である「心筋」が壊死(えし)に至ってしまう病気です。

心臓の部位

心筋梗塞を発症したら、強い胸の痛みや圧迫感などが症状として起こります。壊死した心筋は再生しないため、迅速に治療しなければ死に至る恐れもある、危険な病気です。
 

心筋梗塞と狭心症の違い
心筋梗塞と似た病気に狭心症がありますが、狭心症は、冠動脈の内径が狭くなった状態です。冠動脈が完全に塞がってしまっている心筋梗塞と異なり、狭心症はまだいくらかの血液が流れているため、心筋梗塞の方が危険といえます。

心筋梗塞も狭心症も症状は似ていますが、狭心症は数分から15分程度と発症時間が一時的である点が異なります。心筋梗塞は継続した症状が出て、救急薬を服用しても治まらない点が特徴です。

脳卒中

脳卒中は、脳の血管が破れたり詰まったりして、脳に障害が起きる疾患です。

動脈硬化によってできた血栓が脳の血管を塞いでしまうと、救命できても運動障害や言語障害など、重い障害が残る可能性があります。

慢性腎臓病

慢性腎不全は、高血圧や糖尿病、生活習慣病、加齢などのさまざまな原因により、腎臓の機能が低下してしまった状態です。慢性腎不全は進行すると腎不全となり、透析や腎臓移植が必要になることもあります。

慢性腎不全を起こすと、脳卒中や心筋梗塞による死亡リスクも高まります。慢性腎不全については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

👉慢性腎不全と慢性腎臓病の違いは? 症状・原因・治療方法について解説 - lala a live(ララアライブ)│フォーネスライフ

高血圧にならないためにも、生活習慣に注意しよう

高血圧による合併症リスク、心筋梗塞やその他の病気について解説

高血圧とは、安静状態での血圧が通常よりも高い状態を指し、「高血圧症」は慢性的に血圧が高い状態です。高血圧を放置してしまうと、心筋梗塞をはじめとするさまざまな病気を発症するリスクがあります。

高血圧の対策には、生活習慣を改善することが大切です。塩分や糖分の過剰摂取をやめるなど食事バランスを意識し、肥満に気を付けてみてください。ストレスがあれば解消するように努め、禁煙を行うなど、意識して生活しましょう。

編集:はてな編集部
編集協力:株式会社イングクラウド


フォーネスライフが提供する疾病リスク予測サービス「フォーネスビジュアス」は、4年以内の慢性腎不全をはじめとした各種疾病の将来の発症リスクを予測することができます。

さらに、保健師の資格を持つコンシェルジュから予測の結果と体の状態を踏まえた生活習慣改善のアドバイスを受けることも可能です。

その提案を実践し生活習慣が改善されれば、腎臓病などの各種疾病リスクへの対策にもつながるでしょう。

※フォーネスビジュアス検査は、医療機関の医師を通じて提供します。

心筋梗塞のリスク、調べてみませんか?

将来病気になる可能性は、
発症前に予測できる時代に

*1:参考:国立循環器病研究センター「高血圧

*2:参考:日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019

*3:参考:国立循環器病研究センター「高血圧