
筋肉ムキムキのマッチョは風邪をひきやすい—。
一見意外そうに思えるマッチョ界の「あるある」も、実は根拠のある現象でした。
本記事では、パーソナルトレーニングジムのトレーナーと、フィジークアスリートとして活躍するマッチョの二人に、実体験や、普段実践している細やかな体調管理術を伺いました。激しいトレーニングで鍛え上げた体が、なぜか体調を崩しやすい。その意外なメカニズムに迫ります。
対談するマッチョトレーニーのご紹介

永窪 健太 氏
宮城県仙台市出身のパーソナルトレーナー。中・高・大学と10年間ハンドボール競技に熱を注ぐ。スポーツクラブ業界大手セントラルスポーツにて8年間のキャリアを経て、2016年に独立した後は、筋肉の美しさとスタイルの良さを競う「スポーツモデル」としても活動。現在は横浜市南区にてエクササイズスタジオ「FUNRISE」を運営している。

安井 駿弥 氏
メガベンチャー勤務の敏腕営業マン兼フィジークアスリート。高校時代はバスケ部に所属し、補助的なトレーニングの一環としてウェイトトレーニングを始めた。2019年頃から本格的にボディメイクを開始。朝4時起きのルーティンを継続しながら、仕事・筋トレ・大会出場を両立するストイックな生活を送る。フィジーク大会に複数出場し、優勝経験あり。
本日の対談会場「FUNRISE」
今回の対談では、横浜市南区のスタジオ「FUNRISE」をお借りして実施しました。
パーソナルトレーニング、キッズダンスFUNBURGER、各種ヨガ、エクササイズなどのメニューがある、地域密着型のジムです。インストラクターとアットホームに交流しながら低価格で通い続けられ、子どもから大人まで、目的に合わせて楽しくトレーニングできるのが特徴です。
「マッチョは風邪をひきやすい!?」減量期のマッチョは「そっとしておいてほしい」くらいデリケート!
―よく「マッチョは風邪をひきやすい」と言われますが、実際はどうなんでしょうか?
安井駿弥さん(以下、安井): 実は僕、つい最近帰省先で体調を崩しました。昼夜の気温差が激しい日に、半袖で自転車に乗っていたら、夜には鼻水が止まらなくなって…(笑)。軽く済みましたが、翌日まで引きずりましたね。

永窪健太さん(以下、永窪): それ、ありますよね。マッチョトレーニーの間でも、寒暖差で「体調を崩してしまった」という話はよく聞きます。
体脂肪率が下がると体温自体も下がっちゃうんですよね。体温が1度下がるだけで、免疫力もガクッと下がるんです。だから僕らは、夏でもコンビニの冷房対策でパーカーを羽織り、とにかく「着込む」ことが日常なんです。
安井:あとは、 一昨年の減量末期に、普段なら何でもない食事でアレルギー反応が出て、救急車で運ばれたこともあります。その時は睡眠も短く、旅先だったこともあって免疫が落ちていて、体が過剰に反応してしまったみたいで…。
永窪:それはきつかったですね。減量末期なんて「ずっと体温も低いし、常に体調が悪いような感覚」ですよね。見た目は小麦肌で健康そうでも、下を向いて歩いているマッチョがいたら、大会が近いですね(笑)。この時ばかりは「そっとしておいてほしい」くらい、デリケートなんです。
安井:わかります(笑)。 あと心がけていることとしては、「ボディメイクしてるから仕事にも影響出ちゃうよね」みたいな見られ方をされてしまうのが嫌なので、日常生活でできる予防を大事にしていますね。
永窪:体を不用意に冷やさないこともそうですし、睡眠や食事も合わせて、日常から気をつけたいところですよね。

激しいトレーニングで免疫力が低下する?「オープンウィンドウ現象」って何?
―特に激しいトレーニングの後に免疫力が下がるって本当ですか?
永窪:はい、「オープンウィンドウ現象」 と言います。簡単に言うと、トレーニング後の数時間から数日間、一時的にウイルスの侵入を許す、免疫のバリアの「窓」が開いた状態になることです。
筋肉が炎症を起こしていると、体はそれを治そうとして免疫細胞や栄養、酸素を筋肉に集中させてしまう。その結果、鼻や喉など、ウイルス侵入口の防御が手薄になっちゃうと言われています。

安井: そうなんですね。言葉自体は初めて聞きましたが、感覚としてはすごく納得します。大会後とかも、体調崩しやすいですよね。僕の場合、体調が悪くなる前はまず口内炎ができやすくなるので、そういったサインをキャッチしたら、いつも以上に気を遣って過ごします。

永窪: ボディビルダーのような人たちは、この「窓」が開いていることを自覚しているから、サプリを飲んだり、睡眠をとったりして早めに窓を閉めようとする。
でも、初心者の人が「大会に向けて頑張るぞ!」と無理してトレーニングだけすると、窓が開いたままになって風邪をひく……。これが一番危ないですよね。
不調の時はどうする?マッチョの体調管理・オーバーワーク対策

―体調が優れない時、トレーニングはどうしていますか?休むことへの罪悪感もありそうです。
永窪: 僕は「やらない選択肢」はなくて、ルーティンは守りつつボリューム(セット数)を減らすようにしています。早めに切り上げて、グルタミンとビタミン(サプリ)を飲んで、とにかく暖かくして寝る。これが永窪流です。
私のようなスポーツモデルの細いタイプのマッチョは、筋肉がすぐに落ちてしまうんです。筋肉には「永遠の片思い」なので…(笑)。
安井: 僕は救急搬送されたときの経験から、「休む勇気」も大事だと思うようになりました。ただ、やらない罪悪感が一番辛いので、自宅に40kgのダンベルを買って、ジムには行かないけど家でサイドレイズだけやる、といった調整もしています。
―「睡眠」についても、強いこだわりがあるとか。
永窪: 大会前は、子どもたちより早く寝ていました。毎日7〜8時間は絶対に確保して、オフの日は10時間寝ることもあります。あの大谷翔平選手も10時間寝ると言いますし、やっぱり重要ですよ。
安井: 僕はスマートウォッチで睡眠スコアを見ています。寝る前のスマホを控えるのはもちろん、遮光カーテンをしっかり閉める、寝る前に必ずトイレに行くといった細かいことも、質の高い睡眠のために徹底しています。
―睡眠時の体温調節はどうしていますか?
安井:それで言うと、布団をかけて寝ることはマストですね。こういった基本的なことは行いつつ、体調が悪くなったとき、なりそうな時は、「何が原因なんだろう」と振り返るクセがついたように思います。
永窪:僕の場合、体温をきちんと測っていました。減量中に体温が0.3〜0.5℃ずつ下がってくると、「ちょっと危ないな」と感じます。体温が下がるタイミングは、筋肉量や体脂肪率も一緒に落ちてきているサインなので、そういうときは炭水化物の量を少し増やして体温を戻す、という使い方を体温計でしていましたね。
減量中ってどうしても体重計ばかり乗りがちで、数字が下がると「よし!」ってゲーム感覚でどんどん落としたくなるんですよ。でも体重と一緒に体温もガンガン下がっているときは、脂肪だけじゃなく筋肉まで削れているということ。
目標体重に達したときには、もう大会に出られるような体じゃなくなっていた—。競技1年目には、そんな失敗もありました。
だからそれ以来、体重が一時的に増えても筋肉を守るために「ちゃんと食べる勇気」も大事だと分かってきて。体温はその判断の指標として、減量中もずっと測り続けていましたね。
マッチョが気にする食事管理。オススメの栄養素やサプリメントは?
―食事や栄養で気をつけていることも教えてください。
安井: 僕は野菜不足を補うために、ブロッコリーやキムチを基本に、あとは腸内菌を整える「プロバイオティクス」サプリを毎日摂っています。

永窪: 免疫維持と筋肉分解抑制のために「グルタミン」サプリは欠かせません。あとは、しっかり栄養を吸収できるように「エビオス」などの整腸剤も重宝しています。
せっかく食べたものが無駄にならないように、ですね。一度ルーティンが決まれば、あとはそれを続けるだけなので、毎日内容を変えるようなことは特にしていませんでした。
プロテインやサプリメントは、仕事や日常生活のなかで食事だけでは補いきれない栄養素を手軽に摂るためのものなので、一般の方にも取り入れてみてほしいですね。

―外食などでどうしても付き合いがある時はどうしていますか?
永窪:減量中は、周囲にちゃんと事情を説明していますね。減量前後で人付き合いが変わるマッチョトレーニーは多いのではないでしょうか。
安井: 僕の場合は、自分からお店の予約を引き受けちゃいますね(笑)。焼き鳥、焼肉、刺身、寿司……。このあたりなら脂質をコントロールしやすいので、相手も自分もハッピーになれます。
マッチョの情報収集に欠かせないインフルエンサーの見分け方
―最近は、サプリやトレーニング方法もさまざまな情報が出てきました。信頼できる情報源の見分け方は?
永窪:私たちが筋トレを始めた頃と比べると、今は本当にやりやすい環境になりましたよね。本はもちろん、YouTubeでも手軽に質の高い情報が手に入るし、それだけ多くの人が発信してくれているという前提もある。
最近はAIも普及してきて、AIと対話しながら自分の疑問をぶつけると、的確な情報を返してくれる。情報へのリーチがとても容易になった時代だと感じます。
安井:信頼できるインフルエンサーの見分け方はあるのかというと、やっぱりその人自身の体が一番の証明だと思います。
どれだけ結果を出しているか体を見ればわかる、それに尽きるかなと。

永窪:もちろんトレーニングの方法論はいろいろあって、高重量派・低重量派などさまざまな意見があります。そういった内容って、言い切る形で発信されるほど「これが正解だ」と受け取られやすい。
でも実際には、ボディビルで結果を出しているトップ選手が、特定の方法論にとらわれず、ただひたすら筋力向上に向き合ってトレーニングしているケースも多い。
だから見分け方は一概には言えないんですが、やっていればなんとなく分かってくるものだし、結局はその人の体を見るのが一番の判断基準になるかもしれないですね。
健康のためには、まず自分自身の「タイプ」を知ること
―そうすると、自分の体や、筋肉タイプ(速筋・遅筋)を知ることが大事なんですね。
永窪: そうですね。まずは自分の体のタイプを知ることが大切です。遺伝子検査でも分かります。
安井:小学校の時に50m走が速かったか、マラソンが速かったかでも、大体わかりますよね(笑)
永窪:それ、自分も言おうとしてました(笑)小学校の50m走で1番だった人は「ボディビルやフィジーク向き(速筋派)」、マラソン大会で上位だった人は「スポーツモデル向き(遅筋派)」である可能性が高いですよね。自分は、中学時代に駅伝部に借り出されるほどの「遅筋派」でした。
安井:僕は100m走は得意だけどマラソンは苦手な「速筋派」ですね。自分のタイプに合った強度のトレーニングと栄養、休養のバランスを見つけることが、体調を整えながら健康的に体を鍛え続ける、一番の近道だと思います。

まとめ
「マッチョは風邪をひきやすい」と言われている背景には、体脂肪減少による体温低下や、トレーニング後の「オープンウィンドウ現象」という明確な理由がありました。 激しい運動をした後こそ、しっかり対策をとったり、体のサインを見極めたりすることが大切です。
日々のトレーニングにとどまらず、睡眠や栄養管理など、日常生活からコツコツとできることを積み重ね、健康な体を目指しましょう!