
誰しもが人生の中で1度は経験する、不調・ドン底の中にいるような日々。連載『ご自愛のルーツ』では、そんな苦悩の毎日から立ち上がり、再び輝きを取り戻した著名人の現在と、健康への向き合い方をお届けします。
第2回は、作家・タレントとして活躍する宮田愛萌さんです。
|
宮田愛萌さん 作家・タレント。1998年4月28日生まれ、東京都出身。2023年アイドル卒業時にデビュー作『きらきらし』を上梓。現在は文筆家として小説、エッセイ、短歌などジャンルを問わず活躍。著書『ないなら書けばいいじゃない!』大和書房 5月20日発売 |
世界がぐるぐる回り出すのは、普通ではないらしい
めまいが起こることが普通でないと知ったのは22歳の大学4年生のとき、アイドル3年目を超えたあたりだった。
そのころの私は大学で学ぶことに対して必死だった。毎日予復習を欠かさず、仕事で出られなかった授業のプリントは先生のもとにもらいに行ったり、友人に持ってきてもらったり。どうしても図書館の開館時間内に資料を借りに行けないときは、他大学に通う友人に国立国会図書館に行ってもらったこともある。おかげで出席がギリギリの学生にしては成績も悪くなかった。

今思うと、あの時の私は執念で勉強していた。当時は大学に通いながら仕事をすることを快く思っていない大人の方もいて、何度か「そろそろ大学を辞めたらどうか」と言われた。仕事が忙しくなっていく時期で今が頑張りどき、という時期に1人だけ大学があると、スケジュールの調整も大変だろうし、私の体力についても考えてそう言ってくれていたのだと思う。しかし、当時の私は、言われるたびに「絶対に4年で卒業してやる」という意志を強くしていった。
元々、人よりも体力のない私。大学と仕事を両立するには気力だけでは足りず、頻繁に過呼吸で倒れるようになり、自分の体が思うように動かせなくなり、メンタルクリニックにお世話になった。柔らかい言葉で言えば、頑張りすぎてしまった、ということだった。そこで私は、いつも体がふわふわとして、頻繁に世界がぐるぐる回りだすというのは普通ではないと教えてもらい、やっと、自分の体に向き合うことができたのだった。
体調を崩すということ
一度大きく体調を崩してしまうと、少し怖がりになる。
また歩けなくなったら嫌だな。過呼吸になったら嫌だな。そういう考えが私のなかで広がって、一歩踏み出すことをためらうようになった。
実際、私の病は寛解してはいるが、息を吸うのが上手く行かないときや、前に過呼吸になった場所に行くたびに、体が震える。私自身、当時の経験をなんとも思っていないし、むしろ良い経験だったと思えているのに、肉体は執念深く忘れないらしい。持ち主に似ているな、と自分の肉体に対して微笑ましく思ってしまう。
体調を崩すとはそういうことなのだろう。
今でも行きたくない場所はある。聞けない曲もある。少しずつ慣らして、行ける場所も聞ける曲も増えたけれど、元の私に戻ったとは言い難い。それに対して納得のいかない気持ちもあるが、一度経験しないとわからないこともあるので、小説やエッセイの良いネタになったと思うことにしている。
私は、私のために健康でいてあげたい
今、自分の体調を整えるためにしていることは三つある。
まず一つ目は、自分でスケジュールを決めること。どうやら私は先の見えない日々が苦手らしい。なので、ある程度自分でスケジュールを決めることで、年間で予定が見えやすくした。急に入る仕事もあるが、ある程度のイレギュラーは楽しめるので大丈夫。
それに、まとまった休みを取って、海外旅行に行ったりICL手術をしたり、親知らずを抜いたり(これはまだやっていないが予約を取ってあるので近いうちに抜く予定)、プライベートを優先する時間を取ることができてとても嬉しい。体力のない私は、仕事の合間に弾丸でなにかするということが出来ないため、数ヶ月前には決めていたいのだ。

二つ目は整体とリハビリに通うこと。実は2025年の5月に2つ目の頸椎椎間板ヘルニアができてしまった。元々20歳くらいの頃に1つ目の頚椎椎間板ヘルニアが出来、それ以来右手がちょっと痺れていたのだが、2つ目が出来てしまったことでもっと手が痺れるようになった。最初はペンで文字も書けなかったが、リハビリと整体通いのおかげで、日常生活は問題なく送れるようになった。
この、毎週自分の体のためにリハビリと整体に通う時間は、自分のことを大切に出来ていると実感できる大切なものだ。自分の体の変化を専門家と一緒にじっくり捉えていくことは、この先私の人生にもずっと良い影響を与え続けるだろうと確信している。
最後に三つ目はご飯をたくさん食べること。なんといっても私はストレスで痩せるタイプ。どんどんやつれてしまうので、食べたいときに食べたいものを食べようと決めた。栄養バランスも大切だけど、なによりもまず、食事を楽しむことで食べる量を増やすことにした。そうすると、活き活きしていると言ってもらうことも増えて、少し体力も増え、前向きで元気な毎日につながっている。

いっぱい食べていっぱい動けるようになることが私の目標だ。
「ご自愛」というのは難しい。
ゆったり生活を送る日々が不安になって、忙しいあの毎日を恋しく思ってしまう日もある。それでも私は、私のために健康でいてあげたい、と思う。
だから「ご自愛」を大切にするのだ。
『ないなら書けばいいじゃない!』

気鋭の若手作家・宮田愛萌さん初の書き下ろしエッセイ。
別れ話の記憶、家族への思い、本棚への偏愛、オタクライフの楽しさ、そして「書けない」と向き合う時間まで。
ときにこじらせつつ、ときにオタクモードを暴走させつつ、出来事のなかに潜む感情や違和感をすくい上げる筆致は、ページをめくるたびに「わかる!」と「なんで!?」を交互にもたらします。
著者 宮田愛萌
発売 2026年5月18日
価格 1,760円
発行 大和書房
文:宮田愛萌
イラスト:しわしわ倶楽部
編集:早川大輝(プレスラボ)
