なぜ、フォーネスビジュアスは「将来の疾病リスク」が分かるのか? 裏側にあるユニークな「リスクモデル設計」


フォーネスビジュアスは、少量の血液から約 7,000 種類のタンパク質を測定することで、「将来の疾病リスク」と「現在の体の状態」を可視化します。この技術の開発の裏側には、世界中のバイオバンクの協力がありました。フォーネスビジュアスはどのようにして開発に至ったのか。その研究開発の裏側について解説していきます。

前の記事:700以上の論文などにも引用、7,000種類のタンパク質を一括で測定する世界初の技術はいかに生まれたか?




健常者が病気になっていくプロセスをもとにリスクモデルを設計

── なぜ約 7,000 種類の血中タンパク質から「将来の疾病リスク」と「現在の体の状態」がわかるのでしょうか?

和賀巌(以下、和賀) フォーネスビジュアスが提供する将来予測には世界中のバイオバンクの先生方の協力がありました。バイオバンクは、その地域の人に同意のもと提供いただいた試料(血液、DNA、尿、毛髪など)と、情報(診療情報など)を研究のために保管しています。そこから一部の試料や情報を分け与えていただき、科学者たちが医学研究に活用していきます。

フォーネスビジュアスの場合、血中タンパク質を測定したかったので世界中のバイオバンクから血液を貸していただきました。発症リスクの分析のベースはコホート研究*1でつくっていきました。具体的にはまだ病気でない健常者の血中タンパク質を分析し、その後、5年、10年の間に病気になったかどうか、タンパク質の発現量のパターンと照らし合わせて相関を見ます。その特異度を間違えないよう、どのタンパク質セットを評価に使うかを組み上げていきました。

── そもそも、バイオバンクとはどういった目的の施設なのでしょうか?

和賀 バイオバンクは世界中の大学や研究機関の中にあります。何千、何万人の試料(血液、DNA、尿、毛髪など)と情報(診療情報など)を医学研究に活用することで病気の原因解明、新たな治療法、治療薬開発(創薬)が行われています。

有名なものとして、ARIC研究(the Atherosclerosis Risk in Communities study)があります。これはアメリカでアテローム動脈硬化のリスクを調べるために実施された研究で、追跡期間は約40年にもなります。11,000人以上の参加者の健康状態が定期的に追跡調査され、様々な疾患のリスクや危険因子を検討する研究に利用されました。

日本国内では、2つのコホートを統合した「東北メディカル・メガバンク」といったものも生まれました。一般の人たちはあまり耳にすることはないかもしれませんが、バイオバンクは世界中にひっそりとあり、人々の健康に役立っています。

── 血中タンパク質からどのようにパターンを導き出しているのでしょうか?

和賀 パターンを導き出すには、モデル開発と妥当性の検証を行う必要があります。私たちは大規模コホート研究で集めた血液や情報を用いてモデル開発およびその検証を行い、さらに生活習慣や民族性の異なる他の地域のコホートを用いて汎用的に開発したモデルが利用できるか検証しました。

例えば、認知症の場合は、ARIC研究のって20年以内の発症リスクを予測するモデルを開発しました。また、がんについては、北米の6,000検体を使って、まだ体に病気がない人達の血液からビッグデータを作り、どこまで未来予測できるかのモデル開発にチャレンジしました。その後、日本人で検証するというプロセスを実施していきました。

── 日本人に適用可能かどうやって確認したのでしょうか?

和賀 日本人での評価確認は非常にチャレンジングな取り組みでした。もともと日本人の検体を手にいれること自体が大変だったのですが、私がお世話になっている東北大学 医学研究科の下川先生に助けていただき、日本人の血液を集めることができたんです。その実績をもとに、日本の国立大学や国立の研究機関、市民コホートなど様々なところに協力してもらい、日本人で検証して精度をあげていきました。

今後も、国内で新しい検査項目を提供する際は、各疾患の発症率を踏まえて、必要な数の日本人サンプルを準備して解析し、医学および統計学としても認められる検証データをそろえていく予定です。

「遺伝子検査」との違い

── なぜ、タンパク質を測定したほうがよいのでしょうか?

和賀 「病気のなりやすさ」を検査する手法として、よく知られているのが遺伝子検査です。遺伝子は人体の設計図で、幼少期から老年期まで基本的に変わることがありません。つまり、その人の生まれ持っての傾向を見ることはできても、現在の健康状態までは反映できないのです。

一方、血中タンパク質を測定するフォーネスビジュアスでは、そのときの体の状態のスナップショットが取れるため、遺伝子に比べてその人の健康状態を反映しやすいことが特徴です。

ここまでの記事を読んで、フォーネスビジュアスを活用してみたいと思った人も多いのではないでしょうか。最後の記事では、フォーネスビジュアスの具体的な活用方法について解説していければと思います。


次の記事: “誰も病気にならない未来。誰もが自分らしく生きられる社会”─フォーネスビジュアスが目指す未来

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<検査のご利用にあたって>

フォーネスビジュアス検査は、以下の方のデータを対象として行われた分析結果に基づき判定します。

  • 20年以内の認知症発症リスク:49歳以上かつ、認知症を発症していない方
  • 5年以内の認知症発症リスク(※):65歳以上かつ、認知症を発症していない方
  • 4年以内の心筋梗塞・脳卒中の発症リスク:40歳以上の方
  • 5年以内の肺がん発症リスク:喫煙歴のある50歳以上かつ、がんを発症していない方
  • 4年以内の慢性腎不全発症リスク: 23歳以上の方
  • 現在の体の状態:18歳以上の方

※5年以内の認知症発症リスクは65歳以上の方のみご提示いたします

上記の対象外の方による本検査のご利用、ご活用については、取り扱い医療機関の医師とご相談いただく事をお願いしております。

  • 全身性エリテマトーデス (SLE) の方は、検査結果を算出できない場合があります。
  • 慢性腎臓病の方および 75歳以上の方は、4年以内の心筋梗塞・脳卒中発症リスク以外の項目の検査結果について正確に算出できない場合があります。
  • 妊娠中の方はご利用いただくことができません。

本検査は、健康保険の対象ではありません。医療機関の自由診療として実施されます

本検査は、特定の年齢層の方のデータを対象として行われた分析結果に基づき判定します

医師の判断によることなく、本検査の結果を、疾病の判断・治療・予防等に用いることはできません

本検査は、その結果の正確性や、他の検査方法と同等の結果の提供を保証するものではありません

将来の疾病予測に関する検査結果は、生涯にわたってのリスクを予測するものではありません

コンシェルジュによる健康相談およびアプリは、フォーネスライフからご利用者に直接ご提供するサービスです。これらは、ご利用者の生活習慣の改善、健康意識の向上をご支援するものであり、検査結果の改善や、疾病の診断、治療、予防等を目的とするものではありません

*1:一つの街単位など大規模な範囲の人を長期間モニタリングする研究手法