「将来の疾病リスク」と「現在の体の状態」を可視化するサービス「フォーネスビジュアス」において欠かせない要素のひとつが「血中タンパク質」です。この血中タンパク質とは、そもそもどういったものなのか。また血中タンパク質を測定することが、私たちの健康にどう役立つのか。2回目の記事では、血中タンパク質について解説していきます。
前の記事:タンパク質を測定し病気のリスクを予測する「フォーネスビジュアス」、開発の裏にある「ライフスタイル医学」のトレンド
なぜ、血中タンパク質を測定したほうがよいのか?
── 改めてタンパク質について教えてください。どういったものなのでしょうか?
和賀巌(以下、和賀) “タンパク質”について、みなさんはどんなイメージがあるでしょうか。きっと多くの人は「栄養素」というイメージがあるかもしれません。確かに、タンパク質は“3大栄養素”と呼ばれるエネルギー源のひとつで、私たちの体には欠かせないものです。
ただ、タンパク質は「栄養素」という役割だけではなく、体に必要な情報を“伝達”するという重要な役割を担っています。特に血中タンパク質は、ターゲットとなる臓器に対して必要な情報を届けます。
例えば、体内に“ウイルス”という外敵が侵入してきた際に、敵が来たことを知らせるために、免疫能力を高める働きをする「インターロイキン」というタンパク質を体が分泌します。また、抗ウイルス作用などを持つタンパク質の一種「インターフェロン」を分泌することで、体中にウイルスと戦うスイッチを入れるのです。
また、日常生活において徹夜でフラフラな状態のときは「眠らせた方がいい」という情報も伝達します。体が何かしらの悲鳴を上げているときに、そのシグナルを伝える役割を果たしているのです。
体調を崩したり、病気になりそうな状態になったりすると、一部の血中タンパク質は不足や過剰傾向になります。そして、さまざまな研究結果から、血中タンパク質のバランスと、「将来の疾病リスク」、「現在の体の状態」に関連がある*1ことも分かってきました。
── タンパク質は何種類くらいあるのでしょうか。
和賀 設計図である遺伝子数からヒトの体内のタンパク質は20,000種類以上と言われています。正確な数値に関しては研究者ごとに議論があり、総量のカウントは終わっていません。
私たちが活用している技術では、血液中に含まれている11,000種類ほどのタンパク質を測定することができており、フォーネスビジュアスではその中でも再現性が高く測定できる約7,000種類のタンパク質を測定しています。
生活習慣を変えれば、血中タンパク質のバランスが変わる
── 生活習慣を改善することで、血中タンパク質のバランスは変化するのでしょうか。
和賀 変化します。例えば、朝にウォーキングをするなど体を動かすことで、血中タンパク質に良い反応が起こることが分かっています。一方で、夜にスマートフォンを見てブルーライトを浴びると、いくつかの病気のリスクが高まることも知られています*2。そのため、生活習慣による体への影響が血中タンパク質に反映されると考えられています。
── それはつまり、生活習慣を軌道修正すれば、血中タンパク質のバランスを良いものにすることができるということでしょうか?
和賀 その通りです。世の中にはさまざまな病気が存在していますが、心臓病、脳梗塞、がん、認知症など、現代の病の8割ほどは日々の暮らしの中で生まれています*3。病気は、良くない生活習慣がある人を「病気の世界」に連れていこうとしているので、まずはその良くない生活習慣をやめる。例えば、椅子に座る時間を短くする、就寝前にスマートフォンを見るのをやめるなどです。また、寂しいと病気になるリスクが高まる*4ので人との交流を増やしていく。そうやって生活習慣を変えることで、血中タンパク質のバランスが変わっていきます。
これまでは病気になるまで放っておき、病気になったら医者が薬を処方する医学が当たり前とされてきましたが、今は変わりつつあります。スタンフォード大学の研究者を中心に、生活習慣によって生まれてくる体の変化を生活習慣の改善によって治していく、いわゆる「ライフスタイル医学」の情報が活発に発信され、大きなムーブメントとなっています。
私たちが提供する「フォーネスビジュアス」は、血液中のタンパク質のバランスを測定し、その人の生活習慣によって生まれてくるであろう病気のリスクをいち早く見つけることで、ご自身の体の強みや弱みを踏まえた生活の見直しや維持に役立てていただくことができます。
このサービスを提供するにあたって、重要な役割を担っているのが米国SomaLogic社のタンパク質測定技術です。次の記事では、このタンパク質測定技術の有用性について解説していきたいと思います。
次の記事:700以上の論文などにも引用、7,000種類のタンパク質を一括で測定する世界初の技術はいかに生まれたか?
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*1:Ganz P, et al. Development and validation of a protein-based risk score for cardiovascular outcomes among patients with stable coronary heart disease. The Journal of the American Medical Association (JAMA). 2016;315:2532-2541 など
*2:Francesco P. Cappuccio et al. Sleep. 2010;33(5): 585–592
*3:David L Katz et al. Am J Health Promot. 2018;32(6):1452-1458
*4:Siiri-Liisi Kraav et al, Psychiatry Research 2021;299:113868