私たちフォーネスライフは、NECグループのヘルスケア事業を担う会社の一つとして2020年4月に立ち上がったベンチャー企業です。
米国SomaLogic社の血中タンパク質測定技術と、NECグループのビッグデータ解析・ICT技術を用い、「将来の疾病リスク」と「現在の体の状態」を可視化し、“誰も病気にならない未来。誰もが自分らしく生きられる社会”の実現を目指しています。
現在、主力サービスとして展開している「フォーネスビジュアス」とは一体どういうものなのか。また、血中タンパク質を測定することと自分らしく生きることはどう関係するのか。全5回にわたり、フォーネスビジュアスについて解説していきます。
タンパク質を測定し病気のリスクを予測する「フォーネスビジュアス」、開発の裏にある「ライフスタイル医学」のトレンド
── フォーネスビジュアスとは、具体的にどのようなサービスでしょうか。
和賀巌(以下、和賀) 私たちが展開するフォーネスビジュアスは、少量の血液から約7,000種類のタンパク質を分析するという世界初*1の技術を活用したサービスです。
これにより、「将来の疾病リスク」と「現在の体の状態」がわかります。具体的には、20年以内または5年以内*2の「認知症」、4年以内の「脳卒中・心筋梗塞」と「慢性腎不全」、5年以内の「肺がん」の発症リスクを可視化することができます。また、一般的な血液検査では容易に分からない耐糖能(血糖値をコントロールする能力)・肝臓脂肪といった「現在の体の状態」についても把握することもできます。
このサービスのポイントとなっているのは「タンパク質」の測定です。
── タンパク質を測定することで、病気のリスクが予測できるのは驚きですね。
和賀 筋肉や骨、臓器、皮膚、爪といったものの主成分はタンパク質です。分かりやすく説明すると、水分と脂質を除くと、私たちの体は『ほとんどタンパク質でできている』と言っても過言ではありません。そのため体に何か変化が起こる際は、タンパク質の構成も変わります。
特に注目すべきは「血中タンパク質」です。体の様々な臓器に必要な情報を“伝達”するという重要な役割を担っています。例えば、体調を崩したり、病気になりそうな状態になると、一部の血中タンパク質は不足や過剰傾向になります。体が何かしらの悲鳴を上げているときに、そのシグナルを伝える役割を果たしているのです。そして、さまざまな研究結果から、血中タンパク質のバランスと、「将来の疾病リスク」、「現在の体の状態」に関連がある*3ことも分かってきました。
つまり、血中タンパク質の変化を測定することで、体が今どのような状態にあり、これからどんな変化が訪れるかを予測することができるのです。血中タンパク質については、別の記事でさらに詳しく解説します。
── 米国SomaLogic社の血中タンパク質測定技術「SomaScan®」は世界初の技術とのことですが、これまでのタンパク質の測定方法はどういったものがあったのでしょうか?
和賀 タンパク質の測定方法として、これまでは化学物質をイオンの状態にし、その質量を測定する「質量分析」という手法が使われていました。この手法は量が多いタンパク質であれば一度に数百種類を測定することができるのですが、微量なものは再現性が高く測定できない難点がありました。一方、SomaScan®は質量分析では測れないような微量のタンパク質も一括で測定できます。これが世界初の技術です。
── 従来の健康診断や人間ドック、遺伝子検査との違いは何でしょうか。
和賀 健康診断や人間ドックも「現在の体の状態」を可視化する点においては重要ですし、遺伝子検査であれば遺伝的にかかりやすい病気の傾向を知ることはできます。しかしながら、いずれも「いつ、その病気になる可能性があるのか」という時間軸の情報が入っていません。また、遺伝子検査は、赤ちゃんのときに測っても、年老いたときに測っても同じ結果が出るということが特徴です。
一方で、フォーネスビジュアスは、世界中のバイオバンクで数十年かけて蓄積されてきた、数万人の血中タンパク質と診療情報を活用することで、「いつ、その病気になる可能性があるのか」という時間軸を含めてリスクを可視化することに成功しました。また、血中タンパク質の検査は、そのとき、そのときの体の状態のスナップショット(静止点)が取れるため、より正確に「将来の疾病リスク」を予測できることが特徴です。
事前の食事制限が不要かつ少量の採血のみの検査手法となっているため、健康診断や人間ドッグなどの一般的な検査と比べて体の負担や時間の負担を低減できます。
開発の背景にある「ライフスタイル医学」の流れ
── なぜ、このようなサービスを開発したのでしょうか。
和賀 開発の背景には「ライフスタイル医学(Lifestyle Medicine)」という考え方が大きく関係しています。
ライフスタイル医学とは、食事・運動・睡眠などの生活習慣を見直し、病気の原因を改善していくというものです。なぜ、生活習慣を見直すのか。それは米ハーバード大学の先生たちの研究により、現代の病気の8割は生活習慣が原因で引き起こされるものだと分かったからです。*4
例えば、南アフリカで昔ながらの生活を過ごしていた健常人男女20人を、アメリカに連れてきて2週間ほど生活をしてもらったところ、老化の数値が上がったり、ガン発症のリスクが上がったりすることがわかりました*5。生活習慣によって、病気の発症リスクが変わるのです。
血中タンパク質の構成バランスから、「将来の疾病リスク」や「現在の体の状態」を可視化するサービスを立ち上げたのは、その結果から、ご自身の体の強みや弱みを踏まえた生活の見直しや維持に寄与できると考えたからです。
── ちなみに、どういった生活習慣が疾病リスクを高めるのでしょうか。
和賀 分かりやすいものとして、「椅子に座る」「スマートフォンを見る」「孤独」といったものが挙げられます。
例えば、仕事などで椅子に座る時間が長いと寿命が短くなるリスクが高まると言われています。椅子に座る時間は世界平均で1日4時間と言われていますが、日本のホワイトカラーは1日11時間にも及ぶと言われています。その結果、死亡率が40%上昇するというデータがあります。*6
また、夜間に浴びるブルーライトも私たちの体に影響を与えます。就寝前にスマートフォンを見ることでブルーライトを浴びると、循環器疾患のリスクが高まるほか、うつ病などの心の病になる確率が上がることが研究結果からもわかっています。*7
このライフスタイル医学において、最も問題視されているのが孤独です。意外に思われるかもしれませんが、人は寂しいと病気にかかりやすくなります。「寂しい」と感じるだけで死亡率が上がるほか、認知症になる確率が64%増えることもわかっています。*8
少し怖くなるようなことを言ってしまいましたが、生活習慣を変えれば、疾病リスクを減らせる可能性もあります。私たちが提供する「フォーネスビジュアス」では、「将来の疾病リスク」と「現在の体の状態」の結果から、生活習慣の改善ポイントをコンシェルジュが教えてくれます。ぜひ、フォーネスビジュアスの結果を活用して、自分の体のことを理解し、素晴らしい未来を設計してほしいと思います。
次の記事では、フォーネスビジュアスの軸となっている「血中タンパク質」と「健康」の関係性について、もう少し詳しく解説していきます。
次の記事:生活習慣を改善して、血中タンパク質のバランスを変える──「フォーネスビジュアス」が血中タンパク質に着目したワケ
「フォーネスビジュアス」についてもっと詳しく
購入前のお問い合わせ・ご注文
- 0120-009-439
- 受付時間 平日 9:30 ~ 17:30
<検査のご利用にあたって>
フォーネスビジュアス検査は、以下の方のデータを対象として行われた分析結果に基づき判定します。
- 20年以内の認知症発症リスク:49歳以上かつ、認知症を発症していない方
- 5年以内の認知症発症リスク(※):65歳以上かつ、認知症を発症していない方
- 4年以内の心筋梗塞・脳卒中の発症リスク:40歳以上の方
- 5年以内の肺がん発症リスク:喫煙歴のある50歳以上かつ、がんを発症していない方
- 4年以内の慢性腎不全発症リスク: 23歳以上の方
- 現在の体の状態:18歳以上の方
※5年以内の認知症発症リスクは65歳以上の方のみご提示いたします
上記の対象外の方による本検査のご利用、ご活用については、取り扱い医療機関の医師とご相談いただく事をお願いしております。
- 全身性エリテマトーデス (SLE) の方は、検査結果を算出できない場合があります。
- 慢性腎臓病の方および 75歳以上の方は、4年以内の心筋梗塞・脳卒中発症リスク以外の項目の検査結果について正確に算出できない場合があります。
- 18歳未満の方および妊娠中の方はご利用いただくことができません。
本検査は、健康保険の対象ではありません。医療機関の自由診療として実施されます
本検査は、特定の年齢層の方のデータを対象として行われた分析結果に基づき判定します
医師の判断によることなく、本検査の結果を、疾病の判断・治療・予防等に用いることはできません
本検査は、その結果の正確性や、他の検査方法と同等の結果の提供を保証するものではありません
将来の疾病予測に関する検査結果は、生涯にわたってのリスクを予測するものではありません
コンシェルジュによる健康相談およびアプリは、フォーネスライフからご利用者に直接ご提供するサービスです。これらは、ご利用者の生活習慣の改善、健康意識の向上をご支援するものであり、検査結果の改善や、疾病の診断、治療、予防等を目的とするものではありません
*1:本サービスは米国SomaLogicの約7,000種類のタンパク質を一度に解析する世界初の技術を活用しています。
*2:5年以内の認知症発症リスクは65歳以上の方のみご提示
*3:Ganz P, et al. Development and validation of a protein-based risk score for cardiovascular outcomes among patients with stable coronary heart disease. The Journal of the American Medical Association (JAMA). 2016;315:2532-2541.など
*4:David L Katz et al. Am J Health Promot. 2018;32(6):1452-1458
*5:Stephen J. D. O’Keefe et al. Nature Communications. 2015; 6:6342
*6:A.Biswas, BSc et al. Ann Intern Med. 2015;162(2):123-132
*7:Francesco P. Cappuccio et al. Sleep. 2010;33(5): 585–592
*8:「The Guardian」掲載。タイトル「Dementia linked to loneliness, study finds 」https://www.theguardian.com/society/2012/dec/10/loneliness-dementia-link