
自己免疫疾患の診断を受けると、血液検査を進められるケースがあります。しかし、「血液検査で何が分かるのか」「治療にどう役立つのか」といった疑問や不安を抱える方は少なくありません。自己免疫疾患や花粉症のようなアレルギー性疾患は、その原因や症状が複雑で、適切な対応が必要です。
自己免疫疾患は、免疫系が自らの組織を攻撃することで起こる病気です。血液検査は、これらの疾患を正確に把握するための重要な手段であり、原因の特定や治療方針の決定に役立ちます。
本記事では、自己免疫疾患の血液検査の種類や費用、検査でわかることを詳しく解説します。また、代表的な自己免疫疾患であるリウマチや全身性エリテマトーデス(SLE)についてもご紹介します。
この記事を読むことで、自己免疫疾患や花粉症について理解を深め、血液検査を受ける際の不安を軽減できるでしょう。
▼この記事でわかる内容
- 自己免疫疾患とは何か
- 自己免疫疾患の原因
- 血液検査の種類と費用
- 検査結果の見方
- リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)の特徴
自己免疫疾患とは?

自己免疫疾患とは、免疫系が本来守るべき自分自身の正常な細胞や組織を誤って攻撃し、炎症や機能障害を引き起こす疾患の総称です。本来、免疫系は体を守るために働きますが、自己免疫疾患ではその働きが誤作動を起こします(※)。
この状態は「免疫寛容の破綻」と呼ばれ、原因は完全には解明されていませんが、遺伝的要因や環境要因、ホルモンバランスの乱れなどが関与していると考えられています。
代表的な疾患には関節リウマチや全身性エリテマトーデスがあり、症状は多岐にわたります。治療では、免疫抑制剤やステロイドなどの治療法で症状のコントロールを目指すことが一般的です。
自己免疫疾患の原因

自己免疫疾患は、遺伝的要因と環境要因などが絡み合うことで発症します。以下では、それぞれの要因を詳しく見ていきましょう。
▼自己免疫疾患の原因
- 遺伝的要因
- 環境要因
遺伝的要因
特定の遺伝子変異によって、自己免疫疾患の発症リスクが高まることが知られています。これらの遺伝子は免疫システムの調節に関与しており、変異が生じると免疫寛容が破綻しやすくなります(※)。
また、家族内に自己免疫疾患の患者がいる場合、同様の疾患を発症する可能性が高まる傾向にあります。これは、遺伝的な素因が疾患の感受性に影響を及ぼすことを示唆していると言えるでしょう。
環境要因
環境要因も自己免疫疾患の発症に大きく影響します。たとえば、ウイルスや細菌に感染したり、花粉やハウスダストなどのアレルギー源に触れたりすると、免疫システムを過剰に刺激し、自己抗体の産生を誘発することがあります。
また、特定の薬物が免疫システムに異常を引き起こし、自己免疫疾患を発症させるケースも報告されています(※)。
さらに、女性ホルモンの乱れや喫煙、長期的なストレスは、免疫系に悪影響を与え、疾患リスクを高めます。これらの要因が複雑に絡み合うことで、自己免疫疾患が引き起こされると考えられています。
自己免疫疾患の血液検査の検査項目

血液検査では、炎症の程度や免疫系の異常を評価するためのさまざまな項目が測定されます。ここでは、主な検査項目とその意味を解説します。
▼自己免疫疾患の血液検査の検査項目
- 炎症反応
- 免疫グロブリン
- 自己抗体
1.炎症反応
炎症反応を評価する際、CRP(C反応性タンパク質※1)や赤血球沈降速度(ESR※2)が重要な指標となります。
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検査項目 |
詳細 |
測定の意義 |
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CRP (C反応性タンパク質) |
炎症時に増加するタンパク質 |
炎症の有無と程度の評価 |
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赤血球沈降速度 (ESR) |
炎症時に赤血球の沈降が速くなる現象を利用した検査 |
炎症の有無と程度の評価 (CRPと併用されることが多い) |
CRPは、炎症が発生すると肝臓で産生されるタンパク質で、その値は炎症の程度を反映します。
ESRは赤血球が血液中で沈降する速度を測定するもので、炎症が存在すると沈降速度が増加します。
これらの検査は、体内で進行中の炎症を検出し、その重症度を評価するために欠かせないものです。特に、自己免疫疾患における炎症の範囲や活動性を知る手がかりになります。
※1「CRP(血液)」医療法人社団 健診会 東京メディカルクリニック
※2「赤血球沈降速度(ESR)」FALCO 臨床検査案内サイト
2.免疫グロブリン
免疫グロブリンは免疫系が産生する抗体で、IgG、IgA、IgMの3種類が主な検査対象です。
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免疫グロブリン |
役割 |
測定の意義(簡潔版) |
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IgG |
・過去に感染した病原体に対する「記憶抗体」 ・長期間の免疫を維持 |
・過去の感染やワクチン効果の判定 ・慢性感染の評価 ・免疫不全のスクリーニング |
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IgA |
・粘膜面(鼻・喉・腸等)を防御 ・外敵の最前線で活躍 |
・粘膜免疫の評価 ・慢性下痢、腸炎、気道感染の評価 ・IgA腎症等自己免疫疾患の補助診断 |
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IgM |
・初期免疫反応を担う抗体(感染直後に増加) ・抗体の「第一軍」 |
・急性感染の有無の判定 ・最近の感染かどうかを判断(例:風疹IgM) ・免疫不全やB細胞異常の評価 |
これらの値を測定することで、免疫系が正常に機能しているか、あるいは異常があるかを把握できます。特に、自己免疫疾患の早期発見や進行度の確認に役立ちます(※)。
※「免疫グロブリン(IgG、IgA、IgM)と疾患」広島市医師会 臨床検査センター
3.自己抗体
自己抗体の検査は、自己免疫疾患の診断において極めて重要です。
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自己抗体 |
関連する疾患 |
測定の意義(簡潔版) |
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抗核抗体 (ANA) |
さまざまな自己免疫疾患 |
自己免疫疾患のスクリーニング、さらなる詳細検査の必要性判断 |
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リウマチ因子 (RF) |
関節リウマチ |
関節リウマチの診断の補助 (他の所見と合わせて判断) |
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抗CCP抗体 |
関節リウマチ |
関節リウマチの診断、特に早期診断に有用 |
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抗DNA抗体 |
全身性エリテマトーデス (SLE) |
SLEの診断、疾患活動性の評価 |
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抗SS-A抗体, 抗SS-B抗体 |
シェーグレン症候群 |
シェーグレン症候群の診断の補助 |
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抗Scl-70抗体 |
強皮症 |
強皮症(びまん皮膚硬化型)の診断の補助 |
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抗好中球細胞質抗体 (ANCA) |
ANCA関連血管炎 |
ANCA関連血管炎の診断、病型の分類 |
抗核抗体(ANA)は細胞核の成分に対する抗体で、全身性エリテマトーデス(SLE)やその他の自己免疫疾患で頻繁に検出されます。
リウマトイド因子(RF)は関節リウマチの診断に役立ち、抗CCP抗体はその特異性から早期診断に有効です(※)。
また、抗DNA抗体や抗SS-A抗体なども特定の疾患の診断に使用されます。これらの抗体の存在は、疾患のタイプや病態の進行度を評価し、適切な治療計画を立てるための基礎となります。
【検査別】自己免疫疾患の血液検査で何が分かる?

ここでは、自己免疫疾患の診断に用いられる代表的な血液検査について、その特徴や診断意義を詳しく解説します。
▼自己免疫疾患の血液検査
- 抗核抗体(ANA)検査
- リウマトイド因子(RF)検査
- 抗CCP抗体検査
抗核抗体(ANA)検査
抗核抗体(ANA)検査 は、全身性エリテマトーデス(SLE)をはじめとする多くの自己免疫疾患で陽性となる重要な検査です。
特に自己免疫疾患のスクリーニング検査として広く活用されています。ANAの陽性は、疾患の種類や進行度を推測する手がかりとなる場合があります(※)。
ただし、陽性が確認されてもそれだけで診断が確定するわけではありません。診断する際には、他の検査結果や臨床症状を総合的に判断します。SLEだけでなく、関節リウマチやその他の自己免疫疾患に関連する可能性もあるため、医師に相談しましょう。
リウマトイド因子(RF)検査
リウマトイド因子(RF)は、関節リウマチの診断において頻繁に用いられる検査です。RFは、関節リウマチの患者の血中で高頻度に検出される自己抗体であり、疾患の可能性を示す重要な指標となります(※)。
しかし、RFの陽性は必ずしも関節リウマチに特有のものではありません。他の自己免疫疾患や感染症でも陽性となる場合があるためです。診断精度を向上させるために、抗CCP抗体検査と併用することがあります。
抗CCP抗体検査
抗CCP抗体は、関節リウマチの診断において特異性の高い検査です。RFよりも早く陽性を示すことが多く、関節リウマチの早期発見に大いに役立ちます(※)。
抗CCP抗体が陽性である場合、関節リウマチである可能性が非常に高いと考えられますが、確定診断には他の検査結果や臨床的な症状も考慮しなければなりません。なお、RFと併せて陽性が確認されると、診断の信頼性がさらに高まります。
※「抗環状シトルリン化ペプチド(CCP)抗体(ACPA)」一般社団法人日本リウマチ学会
自己免疫疾患の代表例

ここからは、自己免疫疾患の代表的なものを挙げ、それぞれの特徴や症状を解説します。
▼自己免疫疾患の代表例
- リウマチ
- 全身性エリテマトーデス(SLE)
リウマチ
リウマチは、免疫の異常により関節に炎症が起こり、痛みや腫れを引き起こす疾患です。初期症状として、手足の指など小さな関節に違和感や軽い痛みを感じることが多く、進行すると肘や膝などの大きな関節にも症状が広がります(※)。
特徴的なのは、朝起きた際に手指がこわばり動かしづらくなる「朝のこわばり」で、日中の活動で徐々に改善します。また、全身の倦怠感や微熱、食欲不振などの全身症状が現れることもあります。早期発見と適切な治療が、関節の変形や機能障害の予防に重要です。
全身性エリテマトーデス(SLE)
全身性エリテマトーデス(SLE)は、全身のさまざまな臓器や組織に炎症を引き起こす自己免疫疾患です。主な症状として、発熱、全身倦怠感、関節痛、皮膚の紅斑などが挙げられます。特に、頬と鼻にかけて蝶の形をした紅斑(蝶形紅斑)が特徴です(※)。
また、腎臓に炎症が及ぶと、むくみや尿異常が現れることがあります。症状は多岐にわたり個人差が大きいため、総合的な診断と継続的な観察が必要です。
※「全身性エリテマトーデス(SLE)(指定難病49)」難病情報センター
まとめ

自己免疫疾患は、免疫系が自身の組織を攻撃することで発症する複雑な疾患です。早期の診断と治療が、症状の進行を防ぎ、生活の質を守るために欠かせません。
血液検査は、自己免疫疾患の診断の手助けとなります。自己免疫疾患に不安を抱える方は、まず専門医と相談し、適切な検査とケアを受けましょう。