※本記事はあくまで一般的な公開情報をもとに作成しております。何か判断をされる場合は専門家の指示を仰ぐ必要性があります。
病院経営において、コスト削減は避けて通れない課題です。人件費や医療機器の維持費、光熱費などの固定費がかさむ中、適切な対策を講じなければ、経営の安定を揺るがすことになりかねません。ここで押さえておきたいのが、無理なコストカットを行うのではなく、現場の効率化や最新のシステム導入を活用することです。
無駄を省きつつ質の高い医療サービスを維持することで、現場で働くスタッフだけでなく、顧客満足度の向上も期待できます。
本記事では、病院のコスト削減に役立つ具体策を紹介し、すぐに実践できる改善方法や、成功事例をもとにした最適な運用法を解説します。病院経営の持続性を高め、患者満足度を維持しながら経費を最適化するためのヒントを押さえましょう。
▼この記事でわかること
- 病院経営とコスト削減における現状の課題
- 病院経営で欠かせないコスト削減に欠かせない具体的な施策
- 病院経営におけるコスト削減プロジェクトの進め方
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- 病院経営とコスト削減の現状
- 病院経営におけるコストの特徴と内訳
- 病院経営でコスト削減を成功させる鉄則
- 医療の質を維持しながら病院経営のコスト削減を実践する具体策
- 病院経営のコスト削減プロジェクトの進め方
- 病院経営のコスト削減でのよくある失敗パターンと対策
- まとめ:病院経営における持続可能なコスト削減に向けて
病院経営とコスト削減の現状
近年では長年にわたる新型コロナウイルス感染症の影響により、病院経営は深刻な課題に直面しています。患者数の減少や医療材料費の高騰、補助金の減少などにより、多くの病院が赤字経営に陥っています。
このような状況下で経営の安定化を図るためには、コスト削減が不可欠です。しかし、医療の質を維持しながらコストを削減することは容易ではありません。
医療機関特有の課題として、患者の安全確保や高度な医療サービスの提供が求められるため、単純な経費削減が難しいのが現状です。病院経営者には、効率的な資源配分や業務の見直しといった戦略的なアプローチが求められています。
病院経営におけるコストの特徴と内訳
病院経営にかかるコストには、固定費と変動費の2種類があります。それぞれの特徴は以下のとおりです。
- 固定費:売上や業務量に関係なく一定期間ごとに発生する費用
- 変動費:業務量に応じて変動する費用
病院経営にかかるコストにおいては、給与費や減価償却費、家賃などが固定費に該当し、業務量に応じて変動する医薬・材料費や委託費などは変動費に含まれます。
固定費は、人件費や施設の維持管理費など、売上高に関わらず発生する費用であり、増加すればするほど経営を圧迫する要因となります。
適切な固定費管理は、収益性を高め、将来への投資を可能にし、患者様に安心安全な医療を提供するための基盤となります。
病院経営でコスト削減を成功させる鉄則
病院経営におけるコスト削減を成功させるためには、以下2つの鉄則を実践する必要があります。
- 明確な目的を設定する
- 具体的な数値を盛り込んだ目標を立てる
コスト削減の取り組みを効果的に進めるためには「何のためにコスト削減を行うのか」を明確に設定することが重要です。目的が曖昧だと、従業員の意識も高まらず、期待される結果を残すことはできません。
さらに目標達成の度合いを客観的に評価するためには、具体的な数値目標の設定が必要です。「従業員一人あたりの業務時間を月平均で20%削減する」などの数値目標を設定することができます
医療の質を維持しながら病院経営のコスト削減を実践する具体策
医療の質を維持するには、以下4つの具体策を実践する必要があります。それぞれ解説しますので、必ず目を通しておきましょう。
▼医療の質を維持しながら実践する具体策
- 医療材料費の削減
- 人件費の適正化
- 設備管理費の見直し
- その他の経費削減
【医療材料費の削減】
病院経営のコストに該当する医療材料費の削減にあたっては、以下の施策の実行がポイントです。
- 適正在庫管理の方法
- 仕入れ単価の見直し
- 発注方法の最適化
医療材料の過剰在庫や不動在庫は、コスト増加の原因となります。定期的な棚卸しを実施し、在庫状況を把握することが、適正在庫量の維持につながります。また、在庫管理システムの導入により、リアルタイムで在庫情報を管理し、発注の自動化や在庫の最適化を行うことが可能です。
また、医療材料の仕入れ単価を適正化するためには、医療関連商材の卸業者との価格交渉が重要です。複数の業者から見積もりを取り、適切な値段で取引することが効果的です。院内の総発注数をまとめて交渉することで、割引価格を適用してもらえる可能性もあります。
【人件費の適正化】
病院経営における大きなコストとなる人件費の適正化には、以下3つの施策が有効です。
- 適切な人員の配置
- 業務効率化によるコストの削減
- ITツール活用による生産性の向上
まずは、各部門の業務量や患者数に応じて、適切な人員配置を行うことが重要です。業務の負担が偏らないように配置を見直すことで、スタッフの過剰配置や不足を防ぎ、労働生産性の向上につなげられます。
次に、業務プロセスの見直しや標準化を進め、業務の効率化を図りましょう。医師や看護師の業務負担を軽減するために、医療スタッフを配置し、事務作業を分担させることで、専門職が本来の業務に集中できる環境を整えます。
さらに、電子カルテや予約管理システムなどのITツールを導入することで、業務の自動化や効率化が可能です。
結果として、少ない人員でも高品質な医療サービスを提供でき、人件費の適正化につながります。
【設備管理費の見直し】
病院経営における設備管理のコストを見直すにあたっては、以下3つの施策を行いましょう。
- 医療機器の保守管理費の最適化
- 清掃費の見直し
- 賃貸料の交渉
高度な医療機器は、初期導入費用に加えて、毎年の保守管理や修理費が発生します。定期的に保守契約の内容を精査し、必要に応じて契約形態の見直しを検討します。たとえば、故障時のみ費用が発生する「オンデマンド型」の契約や、保守管理を外部委託から内部対応に切り替えることで、コスト削減が可能です。
清掃業務にもコスト削減の余地はあります。一般的に外部委託されることが多い業務ですが、業者との契約内容を見直す、防汚加工を施して清掃の頻度を下げるなどの工夫により、サービスの質を維持しながらコストを削減できる可能性があります。
また、清掃業者との契約内容を見直し、サービスの質を維持しつつ、コストの最適化を図ることも重要です。
病院の賃貸料は固定費として大きな割合を占めます。契約更新のタイミングで条件の見直しや、他の物件との比較検討を行うことも効果的です。
【その他の経費削減】
病院経営におけるその他コストを削減するには、以下の施策を実行しましょう。
- 委託費の見直し
- エネルギーコストの削減
- 消耗品費の適正化
病院では、給食、清掃、警備など多岐にわたる業務を外部に委託することが一般的です。これらの委託業務を洗い出し、必要性やコストパフォーマンスを評価しましょう。
電気、ガス、水道などのエネルギーコストは、病院運営において無視できないコストの一つです。エネルギーコストを削減するためには、エネルギー使用状況のモニタリングや、省エネ設備の導入が効果的です。さらにLED照明への切り替えや高効率な空調システムの導入だけでなく、職員への省エネ意識の啓発を行うと良いでしょう。
具体的には、電気のスイッチの横に「出る時は必ず消す」という張り紙をするなどのレベルから始めてみても良いでしょう。
病院経営のコスト削減プロジェクトの進め方
コスト削減プロジェクトを進めるには、4つのステップを順序ごとに行う必要があります。それぞれのステップにおけるポイントや、具体的な注意点を解説します。
▼コスト削減プロジェクトの進め方
- 現状分析を行う
- 具体的な数値目標を設定する
- SMARTの原則を使った行動計画を立てる
- 成果の測定と改善をサイクル的に行う仕組みを作る
上記の手順を踏むことで、全体像を把握した上で、事実に基づいた効果的な削減策を実施することができます。
現状分析の方法
まず、病院の現状を正確に把握することが重要です。各部門のコスト構造を詳細に分析し、無駄や非効率な部分を特定します。具体的には、以下の項目について詳細な分析を行います。
- 診療科別、部門別のコスト構造
- 医薬品、医療材料の購入単価、使用量
- 職員の人件費、残業時間
- 設備の稼働率、修繕費用
- 患者数、病床稼働率
- 収益、費用
これらのデータを収集・分析することで、コスト削減の余地がある部分を明確にすることができます。例えば、医薬品の購入単価が高い場合は、共同購入やジェネリック医薬品の使用を検討することができます。また、残業時間が多い場合は、業務効率化や人員配置の見直しを行うことで、人件費削減につながる可能性があります。
現状分析は、病院経営改善の基礎となる重要なプロセスです。現状を正確に把握することで、より効果的な改善策を講じることができます。
具体的な数値目標の設定
現状分析によって病院の経営状況が詳細に把握できたら、いよいよ達成すべき具体的な数値目標を設定します。この目標設定は、コスト削減プロジェクトの方向性を定め、成功に導くための羅針盤となる重要なステップです。目標設定においては、以下の3つのポイントを意識することが重要です。
まず、具体性が挙げられます。目標は、誰が見ても理解できるように、具体的な内容でなければなりません。「コストを削減する」といった曖昧な目標ではなく、「医薬品費を半年以内に5%削減する」、「残業時間を月平均10時間削減する」といった具体的な数値を盛り込んだ目標を設定します。
次に、測定可能性です。目標達成度を客観的に評価できるように、測定可能な指標を設定します。「医薬品費削減率」や「残業時間」などが具体的な指標となります。
最後に、達成可能性です。現状の資源や状況を考慮し、達成可能な目標を設定します。あまりにも非現実的な目標を設定してしまうと、現場のモチベーション低下につながり、プロジェクトの推進が困難になります。
目標設定の注意点としては、以下の点が挙げられます。
- 目標設定は、経営層だけでなく、現場の意見も積極的に聞き取りながら行うこと。
- 目標達成に向けた具体的な行動計画とセットで目標を設定すること。
- 目標達成状況を定期的に評価し、必要に応じて目標を見直すこと。
これらの点に注意しながら、病院経営の効率化を目指しましょう。
SMARTの原則を使った行動計画
目標達成のための行動計画を立てる際には、SMARTの原則は非常に役にたつフレームワークです。
項目 |
内容 |
病院経営における具体例 |
Specific(具体性) |
誰が、いつ、どこで、何を、なぜ行うのかを明確にする。 |
・〇〇部長が、〇〇病棟で、〇〇科の医薬品費を、〇〇(理由)のために、半年以内に5%削減する。 |
Measurable(測定可能) |
目標達成度を評価するための指標を設定する。 |
・医薬品費削減率、〇〇科の医薬品使用量、〇〇科の患者一人当たり医薬品費 |
Achievable(達成可能) |
現状の資源や状況を考慮し、達成可能な目標を設定する。 |
・過去の医薬品費削減実績、類似病院の医薬品費削減事例、〇〇科の医薬品使用状況などを考慮し、達成可能な目標を設定する。 |
Relevant(関連性) |
病院の経営目標と関連性のある目標を設定する。 |
・病院全体のコスト削減目標、〇〇科の収益改善目標、〇〇科の医療サービスの質向上目標などと関連性のある目標を設定する。 |
Time-bound(期限設定) |
いつまでに目標を達成するか期限を設定する。 |
・〇〇年〇月〇日までに医薬品費を5%削減する。 |
これらの要素を満たす計画を策定することで、実行性と効果性を高めることができます。
成果の測定と改善サイクル
病院経営改善プロジェクトを実行した後は、定期的に成果を測定し、PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)を回すことで、継続的な改善を図ることが重要です。PDCAサイクルとは、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の4段階を繰り返すことで、業務効率化やコスト削減、患者満足度向上などを目指す手法です。
段階 |
内容 |
具体的な取り組み例 |
期待される効果 |
Plan(計画) |
目標設定、行動計画策定 |
・コスト削減目標(医薬品費〇%削減など)の設定 ・患者満足度向上目標(アンケート評価〇%以上など)の設定 ・目標達成のための具体的な行動計画(医薬品購入ルート見直し、業務効率化など)策定 |
・目標明確化 ・計画的な行動による効率的な改善 |
Do(実行) |
計画に基づいた施策実行 |
・医薬品購入ルートの見直し ・業務効率化のためのシステム導入 ・患者向けアンケート実施 |
・計画の具体化 ・具体的な成果の創出 |
Check(評価) |
実行結果の測定、評価 |
・医薬品費削減効果の測定 ・患者満足度アンケート結果の分析 ・目標達成状況の評価 |
・現状把握 ・改善点の発見 |
Act(改善) |
評価結果に基づく改善策実施 |
・計画修正(目標見直し、行動計画変更など) ・追加施策の導入(新たな業務効率化策など) |
・継続的な改善 ・目標達成度の向上 |
ただし、PDCAサイクルは一度回すだけでなく、継続的に回し続けることが重要です。また、評価結果は客観的なデータに基づいて行い、改善策は現場の意見を参考にしながら、具体的な内容で検討する必要があります。PDCAサイクルを効果的に活用し、病院経営の継続的な改善を目指しましょう。
病院経営のコスト削減でのよくある失敗パターンと対策
病院経営におけるコスト削減において、よくある失敗パターンは以下のとおりです。
- 医療の質低下を招く削減策
- スタッフのモチベーション低下
- 部門間の連携不足
必要な医療機器や人員におけるコストを削減しすぎると、診療の質が低下し、患者の満足度や信頼を損ないかねません。コスト削減は、医療の質を維持しながら行うバランスが重要です。
また、人件費の見直しや過度な業務負担の増加は、スタッフの士気を下げ、離職率の上昇につながります。働きやすい環境を整え、適正な評価制度を導入することが必要です。
さらに、コスト削減の方針が現場へ共有されないと、部署ごとの調整が不十分になり、非効率な運用につながります。全体の方向性を明確にし、定期的な情報共有を行うことが重要です。
まとめ:病院経営における持続可能なコスト削減に向けて
病院経営におけるコスト削減を行う際には、長期的な視点を持つことが重要です。短期的なコストカットだけでは、医療の質低下やスタッフの負担増につながり、結果的に経営の安定性を損なう可能性があります。無駄を削減しつつ、効率的な運営を継続できる仕組みを整えましょう。
また、コスト削減を経営層だけの課題とせず、全スタッフが「コスト意識」を持つことで小さな改善の積み重ねが大きな成果につながります。
コスト削減における施策の定期的な見直しを行い、施策の効果を測定しながらPDCAサイクルを回すことが、持続可能なコスト削減の鍵となります。
また、コスト削減だけではなく売上も重要です。売上を増やす施策として、健診センター充実による健診・診療のワンストップのサービス提供などが考えられます。健診については、従来の健診結果通知だけではなく、健康リスクの提示として、最近ではAIの活用事例も見受けられます。
例えば、NEC 健診結果予測シミュレーションは、健診データから数年後の健康状態や生活習慣病の発症リスクを予測し、一人ひとりに最適な生活習慣改善策を提案します。
受診者へのメリット
- 将来の健康リスクを具体的に把握し、健康意識を高める
- 個別化された生活習慣改善アドバイスを受け、主体的な健康管理をサポート
健診センターへのメリット
- 競合他社との差別化による集客力向上
- 受診者の満足度向上、リピーター獲得
- 最新技術を活用した先進的な健診センターというブランディング
上記のようなメリットがあるので、ぜひ導入を検討してみてください。