病院経営の赤字率はどのくらい?原因と対処法を徹底解説

※本記事はあくまで一般的な公開情報をもとに作成しております。何か判断をされる場合は専門家の指示を仰ぐ必要性があります。

「病院の経営立て直しが必要だけど、どこから手をつければいいのか」多くの病院経営者がこのような悩みを抱えているのではないでしょうか。

経営状況を正確に把握し、適切な対策を打つことが、病院を継続的に運営していく鍵となります。

本記事では、病院の赤字経営の現状から、赤字になる原因、効果的な対処法まで解説します。この記事を読むことで、データに基づく現状分析と具体的な改善策について理解を深めていただき、経営改善に向けたヒントを見つけていただければ幸いです

▼この記事でわかる内容

  • 病院の赤字経営の現状
  • 赤字になる主な原因
  • 具体的な経営改善の方法

病院経営の赤字率はどのくらい?

日本病院学会などが実施した「2024年度病院経営定期調査*1」によると、2023年度の医業利益(病院の本業での収支)における赤字病院の割合は、2022 年度の 74.8%から 2023 年度は 74.9%に微増しています。

医業利益の赤字額は増加傾向にあります。2018年度の医業利益率は-3.7%でしたが、2023年度には-7.2%まで悪化しました。(2022年度(-7.6%)よりはやや改善)
特に、自治体病院の損益率は-18.8%と最も厳しい状況です。また、療養病床は急性期病床に比べて損益率が高い傾向にあり、経営形態による違いが明確に表れています。

病院経営で赤字になる3つの外部環境的な変化

病院の収益が悪化する主な原因には、以下の3つがあります。それぞれの要因について、詳しく見ていきましょう。

▼病院経営が赤字になる要因

  • 給与水準の引き上げによる人件費の増加
  • 病床利用率の低下
  • 医療従事者の不足による人材確保のコスト増加

給与水準の引き上げによる人件費の増加

病院における人件費は医業費用のなかで最も大きな割合を占めており、2023年度の医療施設経営安定化推進事業調査によると、医療法人立の一般病院の人件費比率は2022年で55.7%と、半分以上であることがわかります*2

以下に、職種ごとの人件費の項目と経営に与える影響を詳しくまとめました。

職種

経営に与える影響

医師

医師の人件費は、給与水準が高く病院経営に大きな影響を与えます。
2024年度から実施されている医師の働き方改革により、時間外労働の上限規制や宿日直の適正化が必要となり、人件費のさらなる増加が見込まれます。また、専門医の確保のために、高額な給与設定が必要となるケースも増えています。

看護師

看護師の人件費は、24時間体制の維持に必要な人員確保により、病院経営の大きな負担となっています。賃金構造基本統計調査によると、看護師の平均年収は2017年以降、2024年まで毎年増加の傾向にあります*3

医療技術職

医療技術職の人件費も増加傾向です。チーム医療の推進により、技術職の需要が高まっており、人材確保のための給与水準の引き上げが必要となっています。

事務職員

医療DXの推進や診療報酬の複雑化に対応するため、専門性の高い人材の確保が必要となり、人件費の増加につながっています。

病床利用率の低下

病床利用率の低下も病院経営を悪化させる深刻な問題です。厚生労働省の令和4年度医療施設(動態)調査・病院報告によると、病院の全病床における平均利用率は令和3年の76.1%から令和4年の75.3%*4に減少しています。

以下に、病床利用率が低下する原因をまとめました。

在院日数短縮政策の影響

医療費適正化の観点から、国は在院日数の短縮を推進しています。診療報酬制度においても早期退院を促す仕組みが設けられており、長期入院の減少が病床利用率の低下につながっています。

地域における医療需要の変化

人口減少地域では入院患者数が減少。一方、都市部では病院の競合が激しくなっています。また、在宅医療の推進により、これまで入院していた患者が在宅での治療を選択するケースも増加しています。

入院診療は、病院収益の主軸であり、病床利用率の低下は直接的に医業収益の減少につながります。また、病床を維持するための人件費や設備費などの固定費は、病床利用率にかかわらず発生するため、必然的に利益の減少を招きます。

医療従事者の不足による人材確保のコスト増加

医療従事者の不足は、病院経営に関わるリスクです。人材不足により診療科の閉鎖や診療時間の短縮を余儀なくされる病院も増加しています。

特に、地方や過疎地域では医師や看護師の確保が困難になっており、医療提供体制の維持に支障をきたすケースも出てきています。また、医療従事者の過重労働による離職率の上昇も慢性的な人手不足の原因です。

こうした人手不足を解消すべく、人材紹介会社を活用する病院も増えています。人材紹介会社への平均支払い手数料は医師で300万円*5を超えるケースもあり人材確保のコストが経営を圧迫する一因となっています。

 病院経営の赤字におけるの対処法

厳しい経営環境のなか、医療機関の収益改善が課題となっています。以下では、赤字を改善するために必要な6つの対処法を紹介します。

▼病院経営の赤字を改善するためのつの対処法

  • 財務状態の把握     
  • 業務効率化
  • 離職率の改善
  • 組織マネジメントの見直し
  • 患者満足度の向上
  • 認知度拡大による見込み患者の増加

財務状態の把握

経営状態を見直すためには、現状把握が重要です。財務分析では、医療収益率と経常利益率のバランスを詳細に評価しましょう。収益性の分析では、DPC(Diagnosis Procedure Combination)」データに基づいた収益の精査、未収金の回収状況の確認をし、回収できるバックオフィス体制の構築が欠かせません。

また、各院の患者状況に合わせた病床稼働率や平均在院日数、手術室の稼働状況なども洗い出しましょう。これらの数値化やそれに伴う分析を定期的に行い、PDCAサイクルを確立することで、収益の改善につながります。

業務効率化

医療DXの推進や電子カルテの導入による業務効率化は、カルテ管理の人件費削減や診療報酬請求の精度向上につながります。

また、在庫管理システムで医療材料費の適正化、予約管理システムで待ち時間短縮と人員配置の最適化も可能です。医事会計システムの活用により、請求漏れや査定減を防ぎ、収益向上にもつながります。

システム投資は短期的なコスト増加となりますが、中長期的な経営改善に寄与します。IT導入補助金などを活用することでコストを削減する方法もあるのであわせて検討してみても良いでしょう。

離職率の改善

医療従事者の定着率向上は経営安定に重要です。しかし、看護師の人材確保は深刻な状況にあると言われています

職場環境を見直し、離職率低下に繋げましょう具体的には、休暇取得の促進や柔軟なシフト管理、評価制度の透明化などの施策が考えられます。

医療従事者が働きやすい環境を整えることは、短期的にはコストがかかりますが、中長期的には人材確保・定着による経営の安定化や、医療サービスの質の向上につながります。

組織マネジメントの見直し

経営改善には組織全体の効率的な運営が重要です。2023年度の調査では、医療収益の伸び(+2.8%)に対し、医業費用も増加(+2.5%)*6しており、組織的な経営効率の改善が求められています。

病院経営の改善には、部門間の連携強化、リーダーシップの強化、そして具体的な目標設定とデータに基づく進捗管理が不可欠です。

例えば、平均在院日数の最適化を図るために、医師、看護師、リハビリスタッフ、医療ソーシャルワーカーなどが連携し、患者の退院支援計画を早期に策定・共有する取り組みが有効です。

具体的には、入院後3日以内に多職種カンファレンスを実施し、患者の個別ニーズに合わせた退院目標を設定、定期的な進捗確認を行うことで、退院遅延を削減し、病床利用率・回転率向上に繋がります。

また、病院幹部は、具体的な経営ビジョンと目標を設定し、それを全職員に明確に伝達する必要があります。 例えば、『年間病床回転率〇〇回達成』『平均在院日数〇〇日以内』といった数値目標を設定し、各部門の目標達成状況を定期的に評価・フィードバックすることで、組織全体のモチベーション向上と目標達成に繋げます。

さらに、データに基づく進捗管理も重要です。病床利用率、平均在院日数、患者満足度などのデータを定期的に分析し、課題を特定、改善策を実行することで、経営改善の効果を最大化することができます。

職員の貢献を適正に評価し、教育研修制度を充実させることで、スタッフのモチベーション向上や医療の質向上につながります。

患者満足度の向上

患者満足度の向上は、安定した経営基盤の構築に直結します。

そのためには、患者待ち時間の短縮や予約システムの改善、医療スタッフの接遇研修の実施は、患者満足度を高めることにつながります。

また、患者からのフィードバックを積極的に収集し、サービス改善に活かすことで、より質の高い医療サービスの提供が可能となるでしょう。 

具体的なフィードバック収集の手法としては、以下のような手法が挙げられます。

  • アンケート調査(入院・退院時、外来受診後)
  • 患者満足度調査
  • 患者相談窓口の設置
  • 患者懇談会の開催
  • オンラインでの評価・口コミなど

これらの手法を組み合わせることで、多角的な視点から患者ニーズを把握し、サービス改善に繋げることが重要です。

認知度拡大による見込み患者の増加

地域における病院の認知度向上は、新規患者の獲得に重要です。そこで、外来をはじめとする新規患者が通いやすいような積極的な広報活動や、口コミ拡大の必要があるでしょう。施策実施にあたっては、医療広告ガイドライン*7に抵触しないよう注意をしてください。

地域医療機関とのネットワーク強化や、ウェブサイト・SNSを活用した情報発信では、専門的な医療情報や病院の特色を分かりやすく伝えることができます。

また、健康講座や予防医療の情報提供、地域住民向けの病院見学会の開催は、病院への信頼感を高め、新規患者の獲得につながるでしょう。これらの活動を通じて、地域に根差した医療機関としての価値を高めることが可能となります。

まとめ

病院経営の収益悪化の原因には、人件費の増加、病床利用率の低下、医療従事者の不足などが挙げられました。

これらの問題に対処するためには、経営状態の正確な把握と見直し、雇用の適正化、業務効率化、離職率の改善、伝染病対策、組織マネジメントの強化、患者満足度の向上、そして認知度拡大が重要です。

病院経営の改善には、データに基づいた現状分析と、具体的な改善策の実行が不可欠です。本記事で紹介した内容を参考に、自院の状況に合わせた戦略を立て、実行していくことが、赤字経営脱却への第一歩となるでしょう。

さらに、黒字経営のためには、患者さんの細かなニーズに応えることが重要です。例えば、かかりつけ病院としての信頼に応える、健診・診療のワンストップサービス提供などが考えられます。

健診においては、従来の健診結果だけでは将来の健康リスクを十分に把握できない場合があります。健康リスクの提示方法として、近年ではAIを活用する事例も見られます。

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受診者へのメリット

  • 将来の健康リスクを具体的に把握し、健康意識を高める
  • 個別化された生活習慣改善アドバイスを受け、主体的な健康管理をサポート

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  • 競合他社との差別化による集客力向上
  • 受診者の満足度向上、リピーター獲得
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