心筋梗塞の予防法|運動・食事の見直しで改善へ
心筋梗塞といえば、突然、ギュッと締め付けられるような胸の痛みや息苦しさに襲われ、生命の危機にさらされる怖い病気であることはご存知の方も多いでしょう。なぜ心筋梗塞が起こるのか、引き金となるのは何か。そして、心筋梗塞にならないために大切な生活習慣についてお話しします。
心筋梗塞とは
心筋梗塞はこんな病気
心臓は血液を通して酸素や栄養を全身へと行き渡らせる、いわばポンプの役割を担う非常に大切な臓器です。心筋梗塞は、心臓を動かすための筋肉である心筋に血液を送る冠動脈が詰まって、血液が流れなくなる病気です。血流がなくなると心筋は死んでしまいます。一度死んでしまった心筋は元には戻りません。
心筋梗塞と同じく、心臓に血液が足りなくなる病気に狭心症がありますが、こちらは冠動脈が狭くなり血液が流れにくくなった状態です。
対して、完全に冠動脈が塞がってしまう心筋梗塞は、狭心症よりも危険度が高いため、命を失うことになりかねません。また、発症すると日常生活に支障をきたしたり、要介護状態になる恐れがあります。加えて、一度かかると再発する可能性が高まるため、特に注意が必要です。
心筋梗塞になる原因と症状
心筋梗塞の多くは血管が硬くなる動脈硬化が原因です。血液中の悪玉コレステロールなどが動脈の内側に沈着した粥状の塊(プラーク)ができてしまう動脈硬化の場合、プラークが破裂すると血栓ができて詰まり、結果的に心筋梗塞が起こります。自覚症状が無く、知らないうちに進行し重症化するケースもあります。
心筋梗塞の典型的な症状として、激しい胸の痛みなどが起こります。狭心症の場合は数分程度で症状はおさまりますが、心筋梗塞の場合は20分から数時間続くといいます。また、胸の痛みだけでなく、呼吸が苦しくなる、吐き気、冷や汗、動悸やめまい、場合によっては意識を失うなどの症状が出ることもあります。
特に注意したい人の特徴
いくつかの持病や生活習慣などが組み合わさると、心筋梗塞を発症するリスクが高くなります。下記の項目が、複数当てはまる方は要注意です。
高血圧 血管に高い圧力がかかると、次第に血管は厚く固くなり、動脈硬化を引き起こします。心筋梗塞だけでなく、脳卒中や腎臓病のリスクも高くなります。
糖尿病 血液中のブドウ糖が細胞に入るとエネルギー源になりますが、糖尿病により細胞に入ることができなくなったブドウ糖は血管を破壊し、動脈硬化を引き起こします。糖尿病の方は心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが2〜4倍高くなるといわれています。
肥満 高血圧や糖尿病といった生活習慣病につながるため、心筋梗塞のリスクも高まります。見た目でわかる肥満のほか、内臓のまわりに脂肪がつく、いわゆるメタボリックシンドロームの方も同様です。
喫煙 喫煙は、血液が固まりやすくなったり、血管がぼろぼろになり、動脈硬化のリスクが高まります。
脂質異常症(高脂血症) 中性脂肪やコレステロールなどの脂質代謝に異常をきたした状態のことを脂質異常症といいます。コレステロール値や中性脂肪が高いと、動脈硬化につながります。放置すると心筋梗塞につながる危険もあります。
高尿酸血症 尿酸の血中濃度が異常に高まった状態のことを高尿酸血症といいます。尿酸がたまると痛風発作などを引き起こし、動脈硬化のリスクも高まります。
家族歴 狭心症や心筋梗塞の方が家族にいる場合、生活習慣や体質から発症リスクが高まる危険があります。
また、心筋梗塞の発症は寒い季節に多いことが知られています。これは暖かい室内から寒い脱衣所、そこから熱い浴槽に入るなど、急激な温度差から血圧が乱高下することが原因です。ほかにも強い精神的・身体的ストレスやうつ状態、疲労の蓄積が直接の要因になることもあると考えられています。
心筋梗塞を予防する運動法
軽い運動を日常的に行う
先の項目でもあげましたが、心筋梗塞のリスク要因には肥満や糖尿病といった生活習慣病が大きく関係しています。体を動かさずにいると、筋肉量が減り基礎代謝が落ちます。そうすると当然太りやすくなり、動脈硬化につながってしまうので、運動を心がけましょう。
とはいえ、腕立て伏せや短距離走といった筋肉に直接負荷をかけるような無酸素運動は、かえって心臓に負担をかけてしまうので、おすすめできません。スローペースでのジョギングや水泳、水中歩行、サイクリングなど、無理なく呼吸しながらできる有酸素運動がおすすめです。血管が収縮する早朝や深夜以外の時間帯で、1週間に2〜5回、30分~60分程度を目安に習慣づけると良いでしょう。
歩くときは大股・早足を意識する
運動のために時間を取るのは難しい、そもそも運動が苦手という方は、なるべくエスカレーターやエレベーターには乗らず、歩くように習慣づけましょう。また、通勤や買い物の際は、大股で早歩きを意識するだけでも運動効果を高められます。
心筋梗塞を予防する食事法
塩分は控えめに
「健康のために塩分を控えよう」という声はよく耳にしますが、心筋梗塞にも塩分過多は大敵です。必要以上に塩分(ナトリウム)を摂取し続けると、血液中に残ってしまいます。そうなると、塩分濃度を薄めるために細胞内の水分が血液中に移動して、血液量が増えることに。結果的に循環させようとする心臓に負担がかかります。また、血液量が増えることで血管に圧力がかかるため、高血圧や動脈硬化につながってしまいます。
目安となる1日の塩分摂取量は男性7.5グラム未満、女性6.5グラム未満ですが、令和元年国民健康・栄養調査報告によると、日本人は1日に男性10.9グラム、女性9.3グラムを摂取しています。これは世界的に見ても非常に多い量です。塩分が多い漬物や干物、加工肉は極力控え、ラーメンなどのスープは飲み過ぎないように心がけましょう。塩味を薄くするとはじめのうちは物足りなく感じますが、徐々に舌が慣れてきます。塩の代わりにお酢や香辛料を活用するのもおすすめです。
タンパク質は肉より魚から
体の約15〜20%を占めるタンパク質は、大事な栄養素のひとつです。タンパク質を多く含む食材に、肉や魚、乳製品、納豆や豆腐などの豆類が挙げられます。
魚に含まれるDHAやEPAなどの多価不飽和脂肪酸には、中性脂肪を減らして、動脈硬化や血栓を防ぎ、血圧を下げるほか、LDLコレステロールを減らすなど、さまざまな作用を持っています。一方の肉類や乳製品は血液中の中性脂肪やLDLコレステロールを増やす働きがある飽和脂肪酸が多いため、動脈硬化の促進することに。主食は、なるべく魚を選ぶように心がけると良いでしょう。
野菜や海藻は積極的に
心筋梗塞の原因のひとつとして冠動脈の詰まりを挙げましたが、野菜や果物、海藻類に多く含まれる食物繊維は、血管の炎症を抑える効果があります。ゴボウやモロヘイヤ、サツマイモ、コンニャクや切り干し大根、キノコ類、ひじきや昆布などは食物繊維が豊富なので、メニューにうまく取り入れるようにしましょう。満腹感を得やすい食材も多いので、食べ過ぎの防止にも役立ちます。
嗜好品はほどほどに
「酒は百薬の長」という言葉がある通り、適量であれば血管が拡張して一時的に血圧が下がるため、血行促進やリラックス効果もあります。具体的には1日あたり20g程度のアルコール摂取が目安とされ、ビールなら中ビン1本、日本酒1合、ワインはグラス2杯弱の量となります。女性や高齢者、アルコールに弱い人は、これより飲酒量を少なくすることが推奨されています。
お酒のつまみは味が濃く、塩気が強いものが多いので、塩分の摂り過ぎにもつながります。
バランスの良い食事を心がける
体に良いからといって同じものばかりを食べていると、栄養が偏ります。特に高齢の方は、運動量と比例して食欲も落ちて栄養不足になりがちです。全身の栄養状態が悪いと心臓にも負担がかかってしまうので、1日3食、バランスを考えて食べるようにしましょう。また、できるだけ決まった時間に食べるようにすると、生活リズムも整います。
まとめ
命に関わる恐ろしい病の心筋梗塞ですが、その主な原因は動脈硬化にあります。一方で、動脈硬化は運動や食事といった日頃の生活を見直すことで予防することができます。積極的に体を動かして、塩分を控えたバランスの良い食事を摂るなど、生活習慣を見直してみましょう。
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この記事の監修者
東北大学 医学系研究科 客員教授
下川 宏明